発達心理学Ⅰ 副題:子どもの発達 [講義] 第2学年 前期 必修 2単位 《担当者名》中野 茂 【概 要】 この講義では、「子どもの心理」について解説をしていく。発達心理学は、受精から死までの時間の流れの中で、人間という 種としての生得的能力と生活環境から後天的に受ける影響の相互作用に基づいて、「人間らしい心性」がどのようにして形成さ れ、どのように変化していくか、そのプロセスを探る分野である。この講義では、このようなプロセスの基盤を作り上げ、その 後の私たちの行動、思考、情動、性格形成を方向付ける、子ども時代に焦点を当て、この人生の初期の「心」がどのように形成 され、時間(年齢)とともに変化するのかについて基本的事項を理解できることをゴールとしている。同時に、ここで学んだ事 項を、日常事象に当てはめ、子どもの心理に興味を抱くことが期待される。 【学習目標】 1)私たちの行動、思考、情動、性格が遺伝と環境の相互作用から、どのように形成され、どのように時間(年齢)とともに変化 するのかのを理解できること。とりわけ、子どもの心について理解できること。 2)発達プロセスの成り立ちを、基本的な発達理論、専門用語、生得的要因と社会文化環境の相互作用から理解できること 3)学んだ理論、発達現象、専門用語を、日常での人々の行動、自他の生育史の中から再発見できること 【学習内容】 回 テーマ 授業内容および学習課題 担当者 1 「心の発達」とは ●発達心理学とは何が、なぜ、どのように『発達』 するのか ・発達心理学はどのように生まれたか∼児童心理学 と進化論 ●発達の姿∼人生を展望する ・なぜ、発達的変化は生じるのか∼遺伝と環境と相 互作用 中野 茂 2 心の発達の始まり:胎児から乳児へ ●ヒトという種の発達過程のユニークさ、『発達精 中野 茂 神生物学』的視点 ・ヒトの妊娠・出産∼種の保存よりも社会的背景 ・長い胎児期と未熟出生∼ポルトマンの生理的早産 オオカミ少年は、本当にいたのか? ●胎児期の発達∼親子関係の始まり ●新生児の生得的な力 ・新生児反射とその機能、生得的コミュニケーション 3 乳児期の心の発達:生得性から社 会文化的存在へ ●乳児の発達里程標 中野 茂 ・生得的プログラムから随意運動、意図的・選択的、 社会的反応へ ●赤ん坊は親とどう関わるか:親子相互作用 ・微笑の発達、気質、同調行動、分離不安、共同注意 ●乳児の知性の発達 ・模倣、反復行動、物の永続性、実験的行為 伝える力の発達 ●言語の発達とそのプロセス 中野 茂 ・言葉を話せるのは生まれつき?親から教えられて? ・言語発達:チョムスキーと行動主義、 ●言語獲得とその波及効果 ・言語的行動調整作用、想像力、協力、乳児期健忘症 ・言語能力の発達遅滞が及ぼす影響 4 5 回 テーマ 授業内容および学習課題 担当者 6 関わる力の発達 ●なぜ親は必要なのだろう ●性格はどのように築かれていくのだろう ・性格の生得性:気質の個人差 ・アタッチメントの形成 ・自己意識の発達 中野 茂 考える力の発達 ●考える力は大人と子どもでどう違うか? 中野 茂 ・ピアジェの認知理論∼経験、直感から論理的操作へ ・大人の考えは子どもより優れているか 7 8 9 ●ビゴツキーの社会・歴史的発達理論 ・発達の最近説領域 10 遊びと仲間関係の発達 11 ●なぜ遊ぶのか、遊びは必要か、遊びは何の役に立 つか ・遊びの意味 中野 茂 ●遊びの発達:何が発達をするのか ・遊びと仲間関係 ●利他性、自己犠牲、愛他性、向社会性の発達 ・社会的価値感の発達 12 心の発達のつまずき ●定型発達からの逸脱 ・生得的要因 ・親子関係 ・仲間関係 ・貧困 中野 茂 13 発達心理学の応用 ●調べよう、考えよう ・子育てパンフレットを作ろう ・おもちゃを考案しよう ・迷子の防止策を考えよう ・子どもの事故の予防策を考えよう ・子どもが好む色の家具を考えよう ●グループ発表 中野 茂 まとめ:事例集と問題集を作る ●学んだ事項の事例集を作ろう ・インタビューで事例を探そう 中野 茂 14 15 ●ここまで学んだ事項の問題集を作ろう ・グループワーク 【評価方法】 グループワーク+期末総合試験 【備 考】 教科書 : 藤村宣之編著 『発達心理学』 (ミネルヴァ書房) 2009年 【学習の準備】 教科書の指示された範囲を事前に読んでくること。
© Copyright 2024 Paperzz