平成27年度 日本トップリーグ連携機構 審判研修会 参加報告書

平成27年8月24日
東京ブロック 管 祐介
平成27年度 日本トップリーグ連携機構 審判研修会 参加報告書
1. 日程:平成27年8月22日(土)~平成27年8月23日(日)
2. 場所:味の素ナショナルトレーニングセンター アスリートビレッジ 小研修室1・2
3. 主催:一般社団法人 日本トップリーグ連携機構
4. 参加者: 下記のリーグから推薦を受けた国際審判員もしくは国際審判員を目指す者
なでしこリーグ(女子サッカー):3名
Vリーグ(バレーボール):5名
NBL/WJBL:13名
JHL(ハンドボール):4名
ジャパン・ラグビー・トップリーグ:7名
HJL(ホッケー):2名
女子ソフトボールリーグ:2名
Fリーグ(フットサル):2名
Xリーグ(アメリカンフットボール):2名
JFL(サッカー):4名
女性:14名男性:30名合計:44名
5. スケジュール
○8月22日(土)
時間
13:00~13:30
研修名及び講師
開講式、オリエンテーション
主催者挨拶(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 副専務理事 真下 昇氏)
13:30~15:00
特別講演:
「私のホッケー人生」「夢の実現」「目標を持つこと・挑戦することの大切さ」
相馬 知恵子氏(ホッケー国際審判員)
15:10~18:10
講義:チームビルド・オープンマインド
相馬 浩隆氏(日本オリンピック委員会)
18:30~20:30
懇親会(夕食) 終了後解散(宿泊場所へ)
○8月23日(日)
時間
研修名及び講師
8:50~9:00
集合、前日のアセスメント
9:00~10:30
講義:良い状態で試合日を迎えるために
トレーニングとコンディショニング概論
田中 章博氏(国立スポーツ科学センター スポーツ科学研究部)
10:40~12:10
講義:コンプライアンス
玉利 聡一氏(公益財団法人日本サッカー協会)
12:10~13:00
昼食
13:00~15:30
講義:コミュニケーションスキル~審判として状況に応じて適切に対応する~
守屋 麻樹氏(ローレルゲート株式会社)、上田 雅美氏(株式会社アネゴ企画)
15:30~15:40
閉講式 終了後解散
6. 研修内容
(1) 特別講演:「私のホッケー人生」「夢の実現」「目標を持つこと・挑戦することの大切さ」
講師:相馬 知恵子氏(ホッケー国際審判員)
最初にホッケーについての簡単な説明をしたのちに、相馬氏がホッケーを始めたきっかけや高校での取り組みの話、審
判を始めるきっかけとなった話をしていただいた。審判を始めたころから、オリンピック競技に携わりたいという思いがあり、その
目標に向けて、さまざまな人との出会いや多くの大会を経験して、審判の技術の向上はもちろん、一人の人としての人間
性を磨いてトップレフェリーになっていったことが伝わってきた。
相馬氏は、審判の転機点となった大会として、2002年に韓国で行われたアジア大会をあげていた。ホスト国である韓国
と中国の試合を吹いていた相馬氏は、韓国チームの反則を取り上げた。その反則の結果、得点が認められ、韓国が負け
てしまったという話であった。自分が正しいと思ったものを取り上げたにもかかわらず、監督や観客からブーイングを受け、自
信をなくしてしまったり、審判を続けるのが怖くなったりしたそうだ。しかし、そこから自分なりに気持ちを切り替えようとしたり、周り
の人からの温かい声かけをしてもらったりしたことで本来の自信を取り戻し、審判活動に復帰できたと話しており、その年の11
月にオーストラリアで行われたワールドカップに呼ばれたことで、審判を改めて続けていてよかったとお話していた。
また、オリンピックについての話もしていただいた。オリンピックの時には、日本チームや審判団のユニフォームをつくることや
オリンピックはほかの大会と雰囲気が異なること、アテネ、北京、ロンドンオリンピックでの体験を写真を交えて説明していただ
いた。初めて参加したアテネオリンピックでは、膝がガクガク震えるほど緊張をしたという自己の経験から、その時は、精神的
に負けてしまったと自己分析をされていた。
現在も来年行われるリオデジャネイロのオリンピックに向けて、取り組んでいることを紹介してくださり、重要な大会で決勝を
任されないという現実を受け止め、コミュニケーションの問題ではないかと分析し、英語でのコミュニケーション能力を今でも
向上しようとする姿勢は強く印象に残った。また、最後に長い間審判をやっていて、世界中の人に出会える経験やいろいろ
な国や場所に行く経験をして、「出会いが大切」ということに気付いたという言葉が印象的であった。
(2) 講義:チームビルド・オープンマインド
講師:相馬 浩隆氏(日本オリンピック委員会)
・自己紹介におけるアイスブレイク(緊張感を溶かしていく)
・グループワーク「チームとグループの違いとは何か」
→グループは機械的に分かれている集団。チームはグループの中において、共通の目的や目標を持った集団。
・オープンマインドとは、レッテルを貼らずに、素直な心で人の話を聴くこと。他の人のアイディアに敬意を払い、自分を正直に
さらけ出すことが必要である。
・グループワーク「キーパンチ」
→リーダーを始めとした役割分担の必要性、お互いに意見を言い合える雰囲気づくり、不安などの感情の共有が大切。
・タックマンにおけるチームの発達段階
Forming(形成期)→Storming(混乱期)→Norming(規範形成期)→Performing(機能期)
・所属するチームを機能するチームにするためには、コミュニケーションの量を増やし、その後は質を高める必要がある。
・グループワーク「灼熱の砂漠からの脱出」
→ストレスがかかった状態でも、チームの中の提案を受け入れることやお互いの考えを尊重し合えることが大切。
リーダーシップには以下の6つの型があり、①~④、時には⑤⑥の良い面をうまく使えるリーダーは成果を出している。
①ビジョン型リーダーシップ
②コーチ型リーダーシップ
⑤模範型リーダーシップ
⑥強制型リーダーシップ
③関係重視型リーダーシップ ④民主型リーダーシップ
・他者との関係性を深めたり、生産性の高い協働を実現したりするためには、自らの目標達成のために努力して、積極的
に自分を表現すること。そして一方で、他者の目標を大切にして、受容する態度が不可欠である。そのような態度のことを、
アサーティブ(Assertive)と呼ぶ。
(3) 講義:良い状態で試合日を迎えるために
トレーニングとコンディショニング概論
講師:田中 章博氏(国立スポーツ科学センター スポーツ科学研究部)
・審判に求められる資質として以下の要素が考えられる。
① 良いジャッジをするための能力→決断力、判断力、集中力、協調性、忍耐力など
② ジャッジを伝えるための能力→表現力、正確性、語学力など
・審判はプレッシャーを感じることで、精神的緊張が促され、交感神経の亢進が起こり、筋の緊張や不眠、頭痛などの症
状を感じるケースも少なくない。その中で求められる良い状態とは、自然体で良い姿勢である。
・良い姿勢とは、全体の筋肉に負荷が分散されている状態であり、良くない姿勢とは、筋肉ではなく、関節に負荷がかか
り、特定の筋肉に集中していることをいう。
講義の後半は自己の骨盤や頚部について、セルフチェックを行い、コンディショニングやトレーニングの仕方を学んだ。
・骨盤タイプ→骨盤ニューラル、骨盤前傾、骨盤後傾の3タイプ。
・頚部タイプ→頚部ニュートラル、頚部前傾、フラットバック、頚部後傾の4タイプ。
・コンディショニングには2種類ある。筋膜リリース(固くなっている筋肉のマッサージ)とストレッチ(固くなっている筋肉のストレッ
チ)である。筋肉が効果的に伸びない時にストレッチを行ってもあまり効果が得られない。そういう場合には、筋膜リリースを
行う必要がある。その際に、補助の道具として、ストレッチポールやマッサージスティック、テニスボールが効果的である。
・トレーニングにも2種類ある。アクティベーション(上手く使えていない筋肉を動かす)と統合(負荷のかかった動作や複雑な
動作にも崩れないようにする)である。
・リカバリーとは、交感神経を抑制し、副交感神経の亢進を図り、筋の緊張を緩めることである。クールダウンや入浴、マッ
サージや灸などの方法を用いて行われている。
・一番大切なことは「自分の体は自分で守る」ことである。体をケアし、いかに自然体に近い状態で審判に取り組めるか、
日頃から準備をしていくことが求められている。
(4) 講義:コンプライアンス
講師:玉利 聡一氏(公益財団法人日本サッカー協会)
<コンプライアンス全般について>
・審判員としてだけでなく、組織構成員としても、一般市民としてもコンプライアンス感覚を身につけることが必要。
・コンプライアンス感覚を磨くためには、規則を遵守し、周囲の期待に応える必要がある。守るべきものは、法律や規則など
のハード・ローだけでなく、紳士協定や努力義務規定、倫理規範などのソフト・ローも含む。
・スポーツを取り巻く環境において、周囲の期待値が上がっていることを認識し、自分たちの意識も向上させる必要がある。
・ひとたび不祥事が起こると、その損害は甚大になることを理解する。競技そのものに対する不信感につながる。
・スポーツ界は組織整備の段階であることからも、自分自身からしっかりと受け止めて、コンプライアンス感覚を磨き、より一
層気をつけることが大切である。
<コミュニケーションについて>
・コミュニケーションの体系には3つある。①個人内コミュニケーション②社会的コミュニケーション③メガ・コミュニケーション
である。今の時代は SNS も発達して、発信が多く、受信されない時代であることを理解する必要がある。
・コミュニケーションをとるときには、その特徴をしっかりと理解することが大事。誰に向けて発信しているのか、人によって感受
性が違うことや、文化の違い、言葉には感情価があることなどを意識してコミュニケーションをとるようにする。
・うわさについて理解する。
R(うわさ)=I(重要性)×A(曖昧)
・ソーシャルメディア(SNS)の特性を理解する。
① 手軽かつ即時性がある。→熟慮せずに発信する可能性
② 拡散性が高い。→第三者が保存し、半永久的に拡散する可能性
③ 公共的空間→様々な属性や価値観のある人が利用している。
④ 部分的利用→発言の一部が意図せず流用させることがある。
⑤ 断片的情報が集まると、集合的情報になる。→まとまると、特定の価値観になる。
⑥ 人間関係の縮図サービスである。→発言、写真等で人間関係を可視化する。→トラブルになることがある。
⑦ 慣れ合いが起こる。→継続的な関係などが思考停止に陥らせる。(真偽を疑わない)
<まとめ>
・知識+感覚+行動実践+教育・連携
→正しい知識を持ち、一人の人間としての倫理観や市民感覚、ビジネスパーソンとして感覚を磨く。また、その感覚に基
づいてすぐに行動に移すことが大切。そうすることで、自分自身の人生に役に立つことはもちろん、自分の家族や友達
を守ることにつながる。
(5) 講義:コミュニケーションスキル~審判として状況に応じて適切に対応する~
講師:守屋 麻樹氏(ローレルゲート株式会社)
上田 雅美氏(株式会社アネゴ企画)
・自己紹介(名前、担当競技、審判として大切にしていること)
・グループワーク「審判に求められていること」
→どの競技も共通して、正しい判定や公平性、安全に進行させること、試合の管理が挙がった。
・グループワーク「試合での失敗体験を語る」
→自分の話を聞いてもらう中で、自分が審判をするときに大切にしていること(選手やチームを第一に考えていること)が
明確になった。また、他の人の話を聞いて、失敗や反省から学ぼうとする姿勢や失敗の要因を自分自身の中から見
つけていこうとする姿勢が大切であることに気付いた。
・グループワーク「言語/非言語コミュニケーション」
→同じコミュニケーションでも受け手のとらえ方が違うことに注意する。(例:笑顔→必ずしも好意的にとらえてくれないこと)
・グループディスカッション「場の感情に対応する」
→コーチや選手の細かいしぐさに目を配ることが大切。その感情を見逃さず、話しかけるなどの対応をすることが必要。
また、規則に違反している場合にも、毅然とした態度で冷静に対処することが求められる。
⇒上記のグループワークを通して、自分自身がどう見られているかの自己認知能力を高める必要がある。また、コミュニケ
ーションは発信することも大切であるが、受け取る側がどう感じるかを考慮していくことが大切である。
7. 所感
今回の審判研修会に参加して、一番感じたことはどの競技においても審判が大切にしていることが共通していることでした。それ
は、判定の正確性であったり、ゲーム管理であったりと日頃から指導していただいていることでした。他の競技においての国際審
判員の方とお話をさせてもらう中で、もっともっとバスケットボールについても、審判についても突き詰めて考えていかなければならな
いと痛感しました。
また、今回の研修をきっかけにして、自分自身を変えていく良い機会になりました。具体的には、多くの人とコミュニケーションをと
り、自分の考えをしっかりと伝え、精神面を強くしていくことです。トップレフェリーに近づくためには、人間性を磨くことが不可欠だと自
覚しています。今回出会った仲間との縁を大切にし、お互いが切磋琢磨し、日々精進していきたいと強く思います。
最後になりましたが、今回の研修会参加にあたり、ご尽力頂きました吉田委員長、宮武様、久保ブロック長を始め、本研修の
講師並びに事業推進委員の皆様、そしてたくさんの刺激をもらえた受講生の皆様に厚く御礼を申し上げます。
ありがとうございました。
以 上