若者たちのために スーダン砂漠より - IDCJ

開 発の理 論と現 場をつなぐ
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財団法人
国際開発センター
若者たちのために
スーダン砂漠より
この写真、建設現場ではありません。炊
事場です。直径4メートルに達しようという
巨大な鍋でソルガム(モロコシ)を炊き、
スコップのような杓文字でかき混ぜている
のです。スーダンの北コルドファン州にア
ーメド・アブ・イザという寄宿舎兼学校が
あります。そこで6,000人もの子どもたちが
生活しながら勉強しています。この寄宿舎
では、日に2回、6,000人分の食事をこうして
自分たちで作っているのです。
ナイル川をエジプトから遡っていくと
青ナイルと白ナイルに分岐します。そこ
がスーダンの首都ハルツームです。スー
つくりあげていました。教育熱心なのはスー
人に達した」として、今年3月、国際刑事
ダンは人口4,000万、アラブ世界とアフリ
ダンの遊牧民も日本の親達も同じです。
裁判所(ICC)はバシル大統領に逮捕状を
カ世界が重なるところです。地方には遊
さて、私達はJICAの職業訓練システム
牧民が多く、彼らは牧草を求めて転々と
開発調査に参加し、この国の職業訓練プ
土地と水を巡る部族同士の対立、石油利
移動しています。そのため、決まった学
ログラムを提案中です。町工場や町の工
権を巡る対立、隣国チャドとの対立など
校に通えない子供たちが沢山います。
務店の雇用成長力に着目し、そうしたと
が複雑に絡んでいます。国際機関が大統
およそ50年前、州内ウム・オサラ地区のあ
ころでの就職や開業を促進するのが狙い
領を逮捕したらすぐ解決とはいきません。
る若者が、生徒10人余りの寄宿舎兼学校を立
の一つです。この寄宿舎の子供達が手に
対立を内戦にしないという政府の姿勢と、
ち上げました。それを聞きつけて多くの遊牧
職を持ち、自立していくことに私達の提
それを支援する国際協調活動が重要です。
民が子弟をここに預けるようになり、6,000
案も役立って欲しいものです。
出しました。ただし、紛争の背景には、
もう一つとても重要なのは、若者達に希
人にまで膨らんだというわけです。毎日コー
スーダンは1956年の独立以来、内乱続
望を持たせることです(この点については
ランとアラビア語を教えていますが、紙は貴
きでした。直近はダルフール紛争。教育
我が国もまさにそうなのですが)
。スーダン
重品なので、羽子板のような板に、書いては
や就業の機会に恵まれない遊牧民の子弟
の若者達が武器でなく仕事を持ち、平和な
消し、消しては書いて勉強していました。政
が武器を持たされ、戦闘に駆り出された
社会を築いていけるよう、私達もこの巨大
府や外国の援助は一切なし。校舎、寄宿舎、
といいます。「2003年以来、命を落とした
寄宿舎付学校と同じく貢献できるようにと
洗濯場、炊事場など、全て学校と親達の力で
住民は30万人、難民・国内避難民は250万
考えています。 (IDCJ理事
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薮田仁一郎)