3分で8割減! 肝臓がん撲滅SP

NHK総合テレビ 毎週水曜日・午後8時から放送中
http://www.nhk.or.jp/gatten/
3分で8割減! 肝臓がん撲滅SP
2014年11月12日放送
今回の番組について
ほんのちょっとしたことで、がんと無縁の生活を送ることができたら……。
今回は、そんな切なる願いが本当にかなうかもしれない、「肝臓がん」が
テーマです。
数あるがんの中で、年間の死亡者数が第4位という「肝臓がん」は、自覚
症状がないまま肝臓が侵されてしまい、やがて死に至るがん。
肝臓だから、アルコールが一番の原因かと思いきや、じつはわずか5%ほ
どで、ほとんどの原因は肝炎ウイルスだったのです。
この肝炎ウイルスが原因の肝臓がんは、なんとたった3分、ある簡単なこと
をするだけで、8割なくせることが可能になったのです!
肝炎ウイルスの意外な感染経路や肝炎ウイルスの検査、治療法など、肝
臓がんから身を守るための最新情報をお伝えします。
番組ディレクターのひとこと
感染症と差別
患者さんへの取材は簡単なことではありませんが、今回は特に大変でした。
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理由は感染症への「差別」です。
B型の感染者もC型の感染者も地域や会社などで差別される不安から、そう
簡単には取材に応じてもらえないのです。私はまだまだ現存するこの「差
別」という問題に愕(がく)然としました。
B型、C型肝炎ウイルスは、主に血液での感染なので、会話、咳(せき)・
くしゃみ、握手など体に触れるといった通常の生活ではうつりませ
ん。
「知らない」という理由で生まれる差別。少しでもなくなってくれればと願
います。
肝臓がんの原因の多くはお酒じゃなくてウイ
ルス!
30年前、体調を崩し病院で検査を受けたAさんは、急性の肝炎と診断さ
れました。幸い、すぐ治療を受けたため、回復することができましたが、こ
れをきっかけにお酒を控えたり、食事に気をつかったり、定期的に検査を受
けたりすることにしました。その後20年近く、肝機能の数値は正常正常
でした。ところが、突然、肝臓にがんができていたのです。
ずっと肝臓の機能が正常だったAさんが、いきなり肝臓がんになったのは、
B型肝炎ウイルスに原因がありました。
じつは、肝臓に侵入したB型肝炎ウイルスは、何かの拍子で肝細胞をがん
化してしまうため、いつがんになるのか、予測することができません。つま
り、一度感染したら、常に気をつけていないといけないのです。
肝炎ウイルスは、輸血(血液製剤)や予防接種などが感染経路になりま
す。ところがAさんの場合は、それらとは全く異なる経路で感染しました。
じつは、輸血や予防接種以外にも感染経路があったのです。
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B型肝炎ウイルスの意外な感染経路は「母
親」!?
輸血や予防接種以外で、B型肝炎ウイルスに感染する感染経路とは、「母
親」です。実は、B型肝炎ウイルスの多くは、出産時に母親からうつる
のです。
出産時、子宮内で出血した血液の中にウイルスがいると、その血液が胎盤か
ら赤ちゃんの体内に侵入します。また、産道にも母親の血液が付着するた
め、それも原因と考えられています。
母親がB型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、1986年から出産
時に必ず検査しています。母親が感染していれば、赤ちゃんにすぐワクチン
を打つため感染は防ぐことができます。そのため、母子感染の可能性が高い
のは29歳以上の人です。
また、ウイルスによる肝臓がんの原因は、B型だけではなく、C型もありま
す。肝臓がんの原因のうち、なんとC型がおよそ65%も占めているんで
す。
C型肝炎ウイルスもB型と同様、血液で感染するため、輸血や注射器の使
い回しなどが感染経路になります。ただし、B型のように母親からうつる
ケースはまれだと考えられています。
現在は、輸血も精密な検査をしていて、予防接種の注射器の使い回しもな
く、たとえ大人になってから感染しても、通常は免疫力でウイルスをほぼ退
治で きます。つまり、いま感染している人のがんを予防することができれ
ば、肝臓がんはほぼ8割がた撲滅することができるはずなのです。
感染しているかどうかは、肝炎ウイルス検査でしかわかりません。
肝炎ウイルス検査は、保健所で受けることができますが、じつは、ほかにも
いい方法があるんです。
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肝炎ウイルス検査は最寄りの病院で採血する
だけ!
肝炎ウイルス検査は、保健所だけでなく、最寄りの病院でも受けること
ができるんです。
検査法は、簡単な問診のあと、採血をするだけなので、3分足らずで終
わります。
ガッテンで人口10万人以上の都市のうちおよそ300か所を調べたとこ
ろ、9割の地域で病院でも検査を受けられることがわかりました。また、そ
のうちの7割が無料でした。
検査について詳しく知りたい場合は、お住まいの市区町村の役所や保健所
などに問い合わせてください。
劇的進歩!肝炎ウイルス治療の最前線
近年、肝炎ウイルス治療に劇的な変化が起こっています。
治療法には、免疫力を高めて肝臓内のウイルスを排除する「インターフェ
ロン治療」があります。現在はインターフェロンと飲み薬の併用で9割の
患者のウイルスを完全に排除することができるようになりました。さら
に、インターフェロンが効きにくい場合でも、2つの新薬を飲むことで
85%の患者さんのウイルスを排除できます。
B型の場合は、ウイルスを完全に排除することはできませんが、肝臓の状態
をコントロールすることが可能です。
ウイルスの増殖を防ぐ核酸アナログという薬の新しいタイプが登場したた
め、治療の幅が広がりました。副作用も少なく、患者さんのウイルスを活
動させないようにすることができるそうです。
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このように治療薬の進歩によって、7∼8割の肝臓がんを予防できる時
代になってきたのです。
※薬には副作用があります。治療には、薬の選択や経過観察がとても重要で
すので、できれば肝臓の専門医に相談してください。
今回のお役立ち情報
ウイルスが原因の肝臓がんについて
肝臓がんの原因の多くは、アルコールではなくウイルスです。B型とC型の肝
炎ウイルスが80%を占め、アルコールはたったの5%ほどにすぎません。
B型肝炎ウイルスは、輸血や予防接種などのほか、主に母親から感染し ま
す。出産時、子宮内で出血した血液の中にウイルスがいると、その血液が赤
ちゃんの胎盤から体内に侵入します。また、産道にも母親の血液が付着する
ため、 それも原因と考えられています。1986年から出産時に母親がウイ
ルスに感染しているかどうか検査しています。そのため、母子感染の可能性
があるのは、29歳以上の人と考えられます。
C型肝炎ウイルスは、母親からの感染はほとんどなく、輸血や注射針の使い
回しなどが感染経路になります。
※ただし、現在では輸血や予防接種では、肝炎ウイルスに感染しないよう対
策が取られています。
肝炎ウイルス検査の受け方について
肝炎ウイルス検査は、お近くの病院や保健所などで受けることができます。
ガッテンで、人口10万人以上の都市のうちおよそ300か所を調べたとこ
ろ、9割の地域で病院でも肝炎ウイルス検査を受けられることがわかりまし
た。また、そのうちの7割が無料でした。
地域によって、検査を受け付けている病院の数、検査の期間や対象年齢、無
料で受けられる人数などが異なるので、まずは役所か保健所などにお問い合
わせください。検査対象に含まれる場合、風邪で病院へ行った際、ついでに
検査を受けられる場合もあります。
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肝炎ウイルスの治療法について
B型肝炎ウイルスは、ウイルスの増殖を防ぐ核酸アナログという薬で治療し
ます。副作用が少なく、患者さんのウイルスを肝臓の奥に閉じ込め、活動さ
せないようにする働きがあります。
C型肝炎ウイルスは、免疫力を高めて肝臓内のウイルスを排除する「イン
ターフェロン治療」と「飲み薬」を一緒に使うことで、9割の患者さんのウ
イルスを完全に排除できるようになりました。また、インターフェロンが効
きにくい場合でも、2種類の飲み薬だけで85%の患者さんのウイルスを排
除することができます。
このように肝炎ウイルスの治療はかなり進歩しているため、以前、治療をや
めてしまった人にとっても、いまこそウイルスを排除するチャンスといえま
す。
ただし、薬ですので副作用もあります。薬の選択や経過観察などが重要です
ので、できれば肝臓の専門医にご相談ください。
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