耐火性能検証における火災性状予測 - 一般財団法人日本建築総合試験

技術報告
耐火性能検証における火災性状予測
On the prediction of Fully-developed Fire Behavior in Fire Resistance Design
原田 和典*1
1.はじめに
となる。ただし、Qは室の発熱速度、Qaは室内ガスに単
実務的な建築物の耐火設計においては、フラッシュオ
位時間あたりに蓄積される熱量、Qlは室の開口からの流
ーバー後の盛期火災温度を平成12年度建設省告示第1433
出気流による単位時間あたりの熱損失、Qrは開口からの
1)
号(以下、告示式) などにより火災継続時間と温度の推
熱放射による単位時間あたりの熱損失、Qwは室の周壁に
移を求め、耐火構造部材の耐火性を検証している。この
単位時間あたりに吸収される熱量[kW]である。
方法に従うと、建築基準法施行令第107条の一律な要求
この考え方に基づいて、区画火災実験データを
耐火時間に従うのではなく、火災性状の厳しさに応じて
McCafferyらが簡易式にまとめ4)、後に松山らにより換気
必要な耐火性(鉄骨構造であれば、必要な耐火被覆厚さ)
支配火災にも拡張されている 5)。これが告示式のベース
を配分することができ、設計の合理化や革新的デザイン
となった式である。
の建築物実現に資するところが大きい。
検証法の運用を開始して6年が経過し、適用件数も相
1/3
Q
1/3
Q
Tf=6.45 t 1/6+T0
AT kρc
A H
2)
当数に上っている が、いくつかの技術的問題が顕在化
…………………(2)
している。本稿ではこのうち、火災性状予測に関して、
火災範囲の設定方法に関する問題を分析する。
ただし、ATは内表面積(室内側から見たときの壁、床、
天井の合計面積[m 2 ])、√
kρ cは壁体構成材料の熱慣性
2.告示式による火災性状予測方法
2.1
理論的背景
[kW. s1/2/m2 . k]
(kは熱伝導率
[kW/m.K]
、ρは密度
[kg/m3]
、
cは比熱[kJ/kg.K])、A√
H は室の開口因子(Aは開口面積
告示式で用いられている火災性状予測理論は、関根・
川越により提案され盛期火災性状予測の定説となった理
[m 2]、Hは開口下端から上端までの高さ[m])である。
論をベースにしている3)。基本的な考え方を図-1に示す。
この式は、発熱速度と周壁への熱吸収速度の比Q/AT √
kρc
室内での燃焼により発生した熱量は、室温を上昇させた
および発熱速度と開口からの熱損失速度の比Q/A√
H によ
後、最終的には開口から流出(換気・放射による熱損失)
り火災温度が定まることを示している。開口を大きくと
するか、もしくは壁体へ吸収される。この熱収支を式で
り、周壁材料を熱容量が大きく熱伝導率も大きな材料
書くと
(例えばコンクリート)とすれば火災温度は低くなる。
反対に、窓が少なく、軽量間仕切りを多用した建物では
Q=Qa+Ql+Qr+Qw ……………………………………(1)
*
1
2
HARADA Kazunori:京都大学工学研究科 建築学専攻 助教授
火災温度は高くなる。
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
とし、可燃物量を適宜割り増すことにより、上記の問題
に対処している。しかし、下記の問題点が指摘できる。
1)室の取り方に恣意性があって室の取り方によって
火災性状が異なって計算される
2)防火区画された室以外では、隣接室からの延焼の
影響を考慮するため、熱侵入係数を使って可燃物
図-1
盛期火災時における室の熱収支
量の割り増しを行っているが、数値の根拠が明ら
かではない
図-2に示すように、室内における発熱速度は、火炎や
煙からの熱を受けて可燃物が熱分解する速度と、開口か
3.複数室に延焼する火災性状の予測
らの酸素流入速度との比率で決まる。熱分解速度に対し
室間の延焼過程を考慮して複数室の盛期火災性状を解
て酸素流入速度が十分な場合には発熱速度は可燃物の表
析すれば上記の問題の性質がある程度は見えてくる。そ
面積に比例する(燃料表面支配)が、開口が小さな室で
こで、火災温度の時刻歴を数値計算により求め、結果を
は酸素が足らなくなるので発熱速度は室への酸素流入速
分析してみる。
度に比例する(換気支配)。これらのことを考慮して、
2
式(2)の発熱速度は可燃物表面積A fuel[m ]と開口因子
5/2
6)
A√
H[m ]の比(燃焼型支配因子)により与えられる 。
3.1
解析方法
図-3に示すように、防火区画内に複数の室があり、出
火室から順次延焼して室毎にフラッシュオーバーを繰り
Q=16,000A fuel
返す火災性状を考える。これを解析するため、室毎の熱
0.007
収支と発熱速度、室間の開口流量、壁体の熱伝導を連立
{
×
(0.08<χ<
− 0.1)
0.12χexp
(−11χ)
+0.003
(0.1<χ)………………
(3)
する。解析手順を図-4に示す。
χ=A√
H /A fuel …………………………………………(4)
図-2
2.2
室内における燃焼現象
告示式の問題点
図-3
想定する延焼シナリオ
以上で概説したように、単室火災の盛期火災温度は、
開口因子、可燃物の露出表面積、周壁材料の熱慣性によ
り支配されている。従って、耐火設計において想定すべ
き火災性状はこれらのパラメータの組み合わせで決まっ
てくる。
現実の建物には室が1つしかないことは希であり、実
際の建物は複数の室で構成される。従って、建物内の気
流の流れは複雑となるので、単室火災の理論をどのよう
にして実建物に適用すべきかが技術上の難しい点とな
る。
告示式においては、室単位での火災性状計算をベース
3
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
壁体に吸収される熱量は、壁の表面温度をTw,i,k,とする
と、
Q w, i=ΣAw,i,k hi,k(Ti−Tw,i,k)………………………………
(7)
k
となる。ここに、Awは壁体の見付面積[m2]、hは壁表
面と室内ガスとの間の総合熱伝達率[kW/m2.K]、Twは壁
表面温度である。添え字kに関する総和記号Σは室i内の
全ての部位kに関する和を意味する。
以上の関係を整理すると、室iの温度は次式で計算され
る。
Q i+
(cpΣmji+ΣAijhr,ij)Tj+ΣAw,i,k hi,kTw,i,k
j
j
k
Ti=──────────────────── ………
(8)
cpΣmij+ΣAijhr,ij)
+ΣAw,i,k hi,k
j
j
k
ただし、hr,ijは室iとjの間の放射熱伝達率
図-4
解析手順
(1)室の熱収支
(Ti−Tj) ………………………………(9)
hr, ij=σ(Ti2−Tj2)
である。
図-5に示すような複数室延焼火災であっても、ある特
従って、室ごとの発熱速度Qi、室間の開口流量mij、mji、
定の室に着目すると室の熱収支は単室火災と同様に式
(1)
壁表面温度Tw,i,kを別途求めておけば、式(8)により火災温
で考えることができる。ただし、複数室火災特有の問題
度を計算することができる。
として、室間の開口流量(空気または煙の流量)が陽に
は求められないこと、壁体を伝導で通過した熱量が隣接
室の温度を上昇させることの2つを考慮する。
ある時刻における室iと室jの間の開口流量をm ijとする
と、換気により室iから流出する熱損失速度は次式で与え
られる。
Ql, i=cpΣ(mijTi−mjiTj) …………………………………(5)
図-5
火災室内の熱および質量収支
j
ただし、m ij は室iからj、m ij は室jからiへの質量流量
.
(2)室内の発熱速度
[kg/s]、cpは煙の比熱[J/kg K]、Tiは当該室、Tjは隣接室
燃焼型支配因子は、単室火災では開口因子を用いて式
の温度[K]である。また、Σは室iに面する開口について
(4)で与えられるが、複数室火災では開口の質量流量を
の総和を表す。
放射による熱損失速度は、室内のガスを黒体とみなすと
Qr, i=ΣAijσ(Ti4−Tj4) ……………………………………(6)
j
[m2]、σはス
となる。ただし、Aijは室iとjの間の開口面積
テファン・ボルツマン係数(=5.67×10−11 kW/m2.K4)で
ある。
4
直接的に用いて表す。単室火災で開口が1つだけの場合、
開口から流入する空気の質量流量は
mair=0.52A√
H …………………………………………(10)
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により表される。これに、外気の酸素濃度YO2,0を掛ける
と、室への酸素流入量となる。
mO2=0.52A√
H YO2,0……………………………………(11)
従って、式(4)は酸素流入量を使って次のように表す
ことができる。
A√
H mO2 / 0.52YO2 ,0
χ=──
Afuel =──────
Afuel ─ ……………………………(4’)
図-6
2室モデル
となる。隣接室が複数ある場合には、各開口からの酸素
流入量の和を考えると
室間の延焼条件については、可燃物の配置や噴出火炎
ΣmjiYO2,j /0.52YO2,0
j
χ=────────
─ ………………………………(12)
A
fuel
性状などの不確定な要素が多いが、今回の解析では、隣
接室の温度が初期値から140℃上昇した時点で延焼が起
こると考えた。延焼後は、室2についても初期火災と盛
ここに、YO2,jは周辺室jの酸素濃度、YO2,0は外気の酸素
期火災の発熱速度を計算し、小さい方の値を発熱速度と
して採用した。
濃度[kg/kg]である。
4.2
(3)室間の開口流量
各室の温度が所与の時、室間の開口流量は換気回路網
計算により求めることができる。ここでは、流量仮定法
7)
による一層ゾーンモデル を用いて計算を行った。
(4)壁体の表面温度
壁体各部位の表面温度は、壁体の一次元熱伝導方程式
を差分法で解いて求めた。
計算例
図-6の形状の建物で開口1∼3がともに幅5m×高さ2m
とした場合の計算結果を図-7に示す。発熱速度(上段)
を見ると、室1で出火後約4分までは室1だけの燃焼とな
る。4分時に延焼して室2の燃焼が成長すると、室1への
酸素供給が少なくなり、室1の発熱速度は減少する。定
常的には、室1、2ともに換気支配型燃焼となり、発熱速
度は
4.簡単な形状の建物に関する計算例
4.1
計算対象建物
Q=1,500 A√
H =1,500×(5×2)√
2=21,200kW ……
(15)
室間の相互影響の程度を調べるため、簡単な形状の室
で解析を行った結果を示す。計算対象は図-6に示す2室
となる。燃焼が進むと残存する可燃物の表面積が少な
モデルである。事務所用途を想定し積載可燃物密度qlは
くなるので、室1、2ともに発熱速度が減衰して燃え尽き
2
560MJ/m とした。室寸法は2つの室とも10m×10m×4m
で、外気との間に各室1箇所、室間に1箇所の開口を設定
る。
図-7の火災温度(下段)を見ると、室1の温度を延焼
時間だけずらせば、室2の温度とほぼ一致する。しかし、
した。
室1を出火室と想定し、出火直後は告示の火災成長率
に従って発熱速度が増加すると考えた。
詳細に見れば、室2への延焼前にも室2の温度は上昇して
いる。これは、室1で発生した高温の煙(火炎ガス)が
室2に流入するためである。また、最高温度はわずかで
2
Q=αt [kW]…………………………………………
(13)
あるが室2の方が高い。この例で示したように、出火室
α=(0.26×10−6)ql5/3=0.100 kW/s2 …………………(14)
から流出した熱が周辺室を予熱する効果がある。
すなわち、初期火災に対応する式(13)∼(14)と盛期火
災に対応する式(3)、
(12)の両者を計算し、小さい方を室
の発熱速度とした。
5
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
4.3
間仕切り壁の影響
以上のように、外周開口部が同じであっても、間仕切
りの存在により火災性状は異なる。間仕切りが及ぼす影
響を調べるため、開口1∼3の大きさを系統的に変えて前
節と同様の計算を行った。
外周開口部を均等に配置した場合の結果を図-9に示
す。開口1と2をW5.0m×H2.0mに固定したまま、開口3の
幅を1∼9mの範囲で設定して計算を行い、各計算におけ
る室1と2の最高温度および等価火災時間注1を示している。
出火室の最高温度は、開口3の幅を変えても大きくは変
化せず、820∼850℃の範囲である。非出火室の最高温度
は、前述の予熱効果のため出火室よりも少し高く840∼
880℃である。
図-7
2室モデルの計算例(開口1∼3:W5.0
[m]
×H2.0
[m])
間仕切りを設置すると空気の流れが悪くなり熱が籠も
るため、火災温度を上昇させる効果があるが、同時に壁
次に、外周開口部の大きさに偏りがある場合を計算し
体による熱吸収の効果も生ずるので火災温度を下げる効
た結果を図-8に示す。この例では、開口2を無くし、そ
果もある。両者の効果を比べるため、2室モデルで間仕
の分だけ開口1を大きくしている。外周開口部の合計は
切り壁による熱吸収を無視した計算も行った。結果は図-
図-7の条件と同じである。発熱速度(上段)を見ると、
9に細線で示されており、熱吸収の効果を無視すると
室1は換気支配発熱速度(42.4MW)までは到達せず、燃
80℃ほど最高温度が高くなる。
料支配火災となる。その一方、室2には外周開口部が無
図-9の点線で示すように、室間の間仕切り壁が無く2
いため、燃焼に十分な酸素が供給されず、初期には換気
室が1つの部屋と近似して単室モデルで計算すると、最
支配火災になる。室1の燃焼が終了し、開口1→3を経由
高温度は熱吸収を考慮した計算値よりも高く、熱吸収を
して酸素が供給されるようになると発熱速度が増加す
無視した計算値とほぼ同じになる。ここで用いた室形状
る。
でコンクリート間仕切りであれば、間仕切り壁による熱
吸収効果の方が気流を妨げる効果よりも大きくなり、間
仕切り壁を設けると火災温度は少し下がる。
図-8
6
2室モデルの計算例(開口1:W10.0
[m]
×H2.0
[m]、
開口2:なし、開口3:W5.0
[m]
×H2.0
[m])
図-9
間仕切り壁の影響(開口1および2をW5.0×2.0
に固定し、開口3の幅を変化させた場合)
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
開口部寸法は、表-1および表-2の値とし、出火と同時
に全ての開口部が破壊して開放状態になると想定した。
また、間仕切り壁はLGS下地軽量壁の物性値を用いたが、
火災中を通じて崩壊せず初期の形状を保つものと仮定し
た。
5.2
延焼シナリオ
現実の火災は多様であるが、ここではいずれかの室か
ら出火し、全ての室へ延焼する火災を考え、5回の計算
を行った。また、参考のため、各室で燃焼が終了すると
想定した計算も行った。
図-10 間仕切り壁の影響(開口3をW5.0×2.0に固定し、
開口1と2の幅を変化させた場合)
図-10は、外周開口部が偏っている場合であり、開口3
をW5.0m×H2.0mに固定したまま、開口1の幅(W1)を1
∼9mの範囲で変化させ、開口2は開口1に応じて幅を
(10-W1)となるように変化させて計算した結果である。
気流を妨げる効果と熱吸収の効果の程度は図-9と同様で
あるが、室1と2の火災温度に大きな差が生じていること
に注目すべきである。大きな開口がある側の室では燃料
支配型の燃焼となり火災温度は低く抑えられるが、もう
一方の室では換気支配型の燃焼となって火災温度は高く
なるとともに、等価火災時間が長くなる。このような場
合には、室間の間仕切りを無視した計算(点線)は、2
つの室の火災性状を平均化したものとなり、意味のある
結果は得られない。
図-11
計算対象とした建物(▲は出火位置を示す)
表-1
計算対象とした室の諸元
5.実際の建物に関する計算例
5.1
計算対象
前節で示したように、間仕切り壁は様々な影響を及ぼ
す。これが実際の建物の火災性状にどの程度影響してい
るのかを一般論として定式化することは、現時点の知見
では難しい。そこで、以下では例題を示し、若干の考察
を加えておく。
計算対象は、鋼構造耐火設計指針 7)に所載の例題を一
表-2
内部開口の寸法
部変更して用いた注2。平面図を図-11に、室の諸元を表-1
に示す。火災荷重密度は、告示値(事務室560MJ/m 2、
会議室160MJ/m 2、廊下80MJ/m 2)とし、室の仕上げは
準不燃材料とした。
7
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
5.3
計算結果
計算結果も記入してある。これによると、最高温度につ
計算結果を図-12に示す。廊下から出火した場合(最
いては、各室毎に計算しても大きな誤りはないが、等価
上段)を見ると、出火後30分程度で廊下の可燃物はほぼ
火災時間については室毎の計算では過小評価となる。特
燃え尽き、温度が下がり始める。しかし、この頃には事
に、廊下については事務室1と2での燃焼の影響を受ける
務室1、2の燃焼が激しくなっており、その間に挟まれた
ので、廊下単独の計算では延焼を考慮した場合の半分に
廊下の温度はすぐには低下しない。最終的に温度が下が
しかならない。
るのは、事務室1、2だけでなく会議室1、2の燃焼も終了
する頃である。
6.まとめ
他の室から出火した場合も同様であり、対象室全体の
本稿では、耐火性能検証に用いられる火災性状予測式
燃焼が終了するまでは、可燃物が燃え尽きた部屋であっ
の理論的背景を解説し、それを複数室からなる現実の建
ても温度は高いまま継続する。
物へ適用する際の問題点を述べた。そのうち、複数室間
上記の計算で得られた火災温度から、最高温度と等価
の延焼の影響について、換気回路網計算を用いた予測に
火災時間を室毎に抽出した結果を図-13に示す。出火室
より、最高温度と等価火災時間について以下の結果を得
位置による影響は、この結果を見る限りは最大でも1割
た。
程度でありそれほど大きくない。
1)間仕切り壁があると、気流の流れが悪くなるので火
同図中には、出火室だけで燃焼が終了すると想定した
災の熱がこもり易くなる。一方で、間仕切り壁によ
る熱吸収があるので火災温度を下げる効果がある。
両者の効果は相殺する方向なので、間仕切り壁を捨
象できることもある。しかし、熱吸収の効果と換気
抑制の影響との定量的比較をすることなく間仕切り
壁を無視することは危険である。
2)外周開口部の配置に偏りのある建物では、間仕切り
壁の影響は大きい。耐火設計においては、偏った部
分毎に火災性状を計算する必要がある。
3)延焼を考慮せずに室毎の可燃物量に対して火災性状
図-12
8
複数室火災の計算結果(c:廊下、o1:事務室1、o2:
事務室2、m1:会議室1、m2:会議室2)
図-13 出火場所による火災性状の変動(上段:最高温度、
下段:等価火災時間)
GBRC Vol.32 No.1 2007.1
築学会論文報告集,140号,pp.63-70,1977.
を計算すると過小評価になる。特に、等価火災時間
の計算には、周辺室の燃焼の影響を何らかの形で考
慮する必要がある。
7.今後の課題
耐火設計の実務では、本稿で示したような詳細な検討
をすることは残念ながら少ない。実用性から考えると、
告示式のように室単位あるいは数室単位での火災性状計
算が便利である。当面の所は、告示のように熱侵入係数
を用いた可燃物量の割り増しを使わざるを得ないが、将
来的には火災性状計算のための空間単位の取り方と、必
要な安全率の取り方についてのルール作成が望まれる。
【参考文献】
1)平成12年建設省告示第1433号,耐火耐火性能検証法に関する
算出方法等を定める件.
2)(財)日本建築センター,建築基準法防火規定関係の性能評価
の現況(その2),ビルディングレター,2006/10.
3)関根孝,「コンクリート造建物の室内火災温度の推定(その
1・熱収支式と温度上昇曲線)」,日本建築学会論文報告集,
85号,pp.38-43,1963,川越邦雄,関根孝,同上(その2・
火災温度曲線とその応用),日本建築学会論文報告集,86号,
pp.40-45,1963,同上(その3・推定法式の実用化),日本建
4)McCaffrey, B., J., Quintiere, J., G., Harkleroad, M., F.,
“Estimating Room Temperatures and the Likelihood of
Flashover Using Fire Test Data Correlations” Fire
Technology, vol.17
(2),pp.98-119, 1981.
5)松山賢,藤田劉史,金子英樹,大宮喜文,田中哮義,若松孝
旺,「区画内火災性状の簡易予測法」,日本建築学会構造系論
文集,第469号,pp.159-164,1995.
6)大宮喜文,佐藤雅史,田中哮義,若松孝旺,「換気支配型火
災時の可燃物への入射熱流束と燃焼速度」,日本建築学会構
造系論文集,第472号,pp.169-176,1995.
7)松下敬幸,流量仮定法による一層煙流動計算プログラム,煙
流動および避難性状予測のための実用計算プログラム解説
書,(財)日本建築センター,1990.
8)(社)日本建築学会編,耐火設計例,鋼構造耐火設計指針,第
7章,1999.
注1
数値計算で得られた火災温度の時刻歴から、最高温度が
等しく、300℃以上となる部分の継続時間のヒストグラムが
最も近くなるように関数T=αt 1/6+20をあてはめ、告示式t e=
3/2
(α/460)
tfを用いて等価火災時間に換算した。
注2
指針所載の平面図から倉庫等の小室を省略した。また、
計算結果において差が顕著となるように、外周開口部の大
きさを1/4に減じた。
9