禁煙指導に関する資料

禁煙指導に関する資料
【タバコとメタボリックシンドローム】
タバコが悪性腫瘍・動脈硬化性疾患・COPDなどの原因となり、甚大な健康被害をもたらしているのは周知の
事実である。日本人において、能動喫煙のみでも1年間に12.9万人の死亡をもたらしていると報告されている。
喫煙はインスリン抵抗性を惹起することが知られており、さらに喫煙者は、朝食欠食が2.5倍、運動不足が1.3
倍、2合以上の飲酒が2.3倍、濃い味付けが2.2倍多いと報告されている。したがって、タバコがメタボリックシン
ドロームや糖尿病を増加させるのは容易に理解される。その上、喫煙はメタボリックシンドロームの人の心血
管系疾患の危険性をさらに高める。タバコは微量アルブミン尿の発現を増加させ、糖尿病性腎症の増悪因子
ともなることから、喫煙対策は透析患者数を増やさないためにも重要である。
禁煙により様々な疾患の危険性は次第に低下することが知られているが、禁煙により体重が増加するのは
考慮すべき点である。禁煙後の体重増加に伴い血糖値・血中脂質値などが悪化することがある。しかし禁煙
による心血管系疾患の減少効果は体重増加にまさるので、特定保健指導における禁煙指導は重要な課題で
ある。
【特定保健指導における禁煙指導】
喫煙者を同定し、禁煙の重要性を説明し、動機づけを図る。本人自身で禁煙を行う方には、ニコチンパッチ・ニコチン
ガムは薬局で購入できることやタバコを吸いたくなった時の対処法を指導する。より楽に、より確実に禁煙を達
成する方法として、健康保険適用による禁煙診療(チャンピックス・ニコチネルTTS)を勧める(禁煙診療に要する費用
はタバコ代よりも安い)。ただし保険適応には患者条件があり、禁煙外来はすべての医療機関で実施されては
いないことにも注意を要する。精神神経科を含め他の医療機関に通院中の方は事前に主治医と相談をするこ
とを勧める。
非感染性疾病と外因による死亡数への寄与原因として
喫煙は高血圧にもまさる最大の因子である(2007年日本)
Ikeda N. et.al. What has made the population of Japan healthy? Lancet. 2011; 378: 1094-105. より作図
タバコがインスリン
抵抗性を引き起こす
喫煙者ではメタボリックシンドロームが増加するが、
禁煙によりそのリスクは低下する
4.0
*:p<0.01
**:p<0.001
***:p<0.0001
(vs 非喫煙者、χ2検定)
***
***
3.0
3.40
3.04
オッズ比
*
**
***
2.0
2.17
1.98
1.97
**
1.61
1.37
1.0
1.00
0
非喫煙者
<10
10~19
20~39
≧40
現喫煙者:喫煙本数(本/日)
対象:日本人男女5,033例
方法:メタボリックシンドローム(MS、NCEP-ATPⅢによる)のリスクと喫煙
状況の関連を検討。多変量補正(年齢、性別、TC)
<1
1~4
≧5
過去喫煙者:禁煙後の年数(年)
Ishizaka, N. et al.:Atherosclerosis 181(2):381, 2005 より作図
喫煙が2型糖尿病の発症リスクを増加させる
2.0
用量相関性あり(p=0.001)※
相対リスク
[ ]:95%信頼区間
1.73
1.5
1.57
[1.16~2.11]
1.55
[1.15~2.60]
[1.06~2.26]
受動喫煙曝露者に
おいても、空腹時血
糖およびBMIがより
高値であるという報
告がある。
1.22
1.0
[0.89~1.67]
1
0.5
0
非喫煙者
≦20
20.1~30
30.1~40
喫煙者:喫煙状況(箱・年※)
>40
※1箱・年:20本/日の喫煙を1年間継続
対象:日本人男性6,250例(35~60歳)
方法:前向きコホート調査。4~16年にわたり糖尿病発症と喫煙状況の関
連を追跡
多変量補正
Uchimoto, S. et al.:Diabet Med 16(11):951, 1999 より作図
※傾向性検定は各カテゴリーの中央値を用いた
Osaka Health Survey
糖尿病発症のオッズ比
3
2.84
性別
2.5
2
1.5
1
0.98
過去喫煙者
1.43
非喫煙者
喫煙中と禁煙後5年間は
糖尿病の発症が非喫煙者より多い
2.16
1.68
1.42
1
1
0.5
タバコ本数が多いほど多い
糖尿病家族歴がある方が1.86倍多い
BMI≧23の方が1.51倍多い
身体活動量が少ない方が1.58倍多い
3
糖尿病発症のオッズ比(男性)
喫煙者
過去喫煙者
非喫煙者
男性
新たに禁煙した者
男性の禁煙後の糖尿病発症は
新たに禁煙した者
喫煙者
0
女性
タバコ本数
2.654320988
2.5
2
1.666666667
1.5
1
1
0.5
0
<15本/日
15-24本/日
≧25/日
Smoking Cessation Increases Short-Term Risk of Type 2 Diabetes Irrespective of Weight Gain: The Japan Public Health Center-Based
Prospective Study . PLoS One 2012年7巻 e17061より作図
JPHC study
心血管系疾患発症のオッズ比
5
男性
4
喫煙とメタボリックシンドロームの
重複によって
心血管系疾患の発症リスクが上昇する
3.56
3
2
2.09
2.07
メタボ
非メタボ
1
1
0
非メタボ
日本人40-74歳男女3,911例
12年間の追跡調査
年齢、飲酒状況、GFR値、non-HDLコレステロール値で補正
メタボリックシンドロームの定義はNCEP/ATPⅢによる
非喫煙者
メタボ
喫煙者
5
心血管系疾患発症のオッズ比
女性
4.84
4
3
2
2.33
2.67
1
1
Higashiyama A. et al. Risk of smoking and metabolic syndrome for incidence
of cardiovascular Disease – comparison of relative contribution in urban
Japanese population: the Suita study. Circ J 2009; 73: 2258-2263.より作図
0
非メタボ
メタボ
非喫煙者
非メタボ
メタボ
喫煙者
喫煙は糖尿病性腎症を増加させ、進行させる
禁煙により体重が増加する
Henri-Jean A. et al. Weight gain in smokers after quitting cigarettes:meta-analysis BMJ. 2012 Jul 10;345:e4439.より作図
禁煙後の体重変化(kg)
日本人ではニコチンパッチ
(+2.78 kg)よりもバレニクリン
(+0.94 kg)の方が体重増加
が少なかったとの報告があ
る。
Chie T. et al. Varenicline Is More Effective
in Attenuating Weight Gain
Than Nicotine Patch 12 Months After the
End of Smoking
Cessation Therapy: An Observational
Study in Japan
Nicotine Tob Res. 2014 Apr 4
月
減量は禁煙が安定してからにしましょう
禁煙により体重が増加しても
心血管イベントの発症率は低下する
糖尿病あり(1480名)
糖尿病なし(9668名)
心血管イベント発症率
6年間
100人・調査当り
年令と性別調整
喫煙者
≦4年
4年<
非喫煙者
禁煙者
Carole C. et al. Association of Smoking Cessation and Weight Change With Cardiovascular Disease Among Adults With and Without
Diabetes . JAMA. 2013;309(10):1014-1021より作図
Framingham Offspring Study
保険適用
バレニクリン
(チャンピックス®)
一般用医薬品
禁煙達成のために
工夫する方法が
いろいろとあります。
より楽に、より確実に
禁煙を達成するために
保険診療をお勧めします。
禁煙治療を行ってる医療機
関を事前にご確認ください。
ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト Tobacco Dependence Screener (TDS)
はい
(1点)
いいえ
(0点)
1.自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか
2.禁煙や本数を減らそうと試みてできなかったことがありましたか
3.禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることが
ありましたか
4.禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか
(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつ
き、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
5.上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか
6.重い病気にかかって、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか
7.タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても吸うことがありましたか
精神神経科を含め医療機
関に通院している方は、
禁煙外来を受診する前に
主治医とご相談されること
をお勧めします。
8.タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても吸うことがありました
か
9.自分はタバコに依存していると感じることがありましたか
10.タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか
「はい」(1点)、「いいえ」(0点)で回答を求める。
「該当しない」場合、(質問4で、禁煙したり本数を減らそうとしたことがない等)には0点を与える。
判定方法:合計点が5点以上の場合、ICD-10診断によるタバコ依存症である可能性が高い(約80%)
スクリーニング精度等:感度=ICD-10タバコ依存症の95%が5点以上を示す。特異度=ICD-10タバコ依存症でない喫煙者の
81%が4点以下を示す。得点が高い者ほど禁煙成功の確率が低い傾向にある。
参考となるウェブサイト
医療従事者向け
東京都医師会 > 東京都医師会禁煙宣言
東京都医師会禁煙宣言
タバコQ&A(東京都医師会 タバコ対策委員会作成) [興味深いQ&AのPDFあり]
学校防煙教育用(東京都医師会 タバコ対策委員会作成) [わかりやすいPowerPointスライドあり]
東京都福祉保健局 > 健康ステーション > 禁煙
厚生労働省 > たばこと健康に関する情報ページ [具体的な禁煙指導の解説を含む禁煙支援マニュアルあり]
日本循環器病学会 > 禁煙推進委員会 [禁煙治療の標準手引書あり]
ファイザー > PfizerPRO > ニコチン依存 [会員登録が必要ですが、禁煙外来の始め方の解説あり]
ノバルティス > 禁煙支援マニュアル
一般向け
ファイザー > すぐ禁煙.jp
ノバルティス > いい禁煙