タバコに関する意識調査 - 十文字学園女子大学・十文字学園女子短期

十文字学園女子大学
社会情報学部 社会情報学科
星野ゼミ 4 年
熊耳 彩
小棹 七菜
高橋 和夏子
滝 順子
目次
はじめに
Ⅰ章
調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・3
1.調査対象
2.調査の概要
3.回答者の属性
Ⅱ章
結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・5
1.女子大生の喫煙状況
2.喫煙イメージについて
3.現在の喫煙環境においての意識、行動
Ⅲ章
まとめと今後の課題・・・・・・・・・・・・24
1.まとめ
2.今後の課題
文献資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
付表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
1.調査票
2.発表資料
-1-
はじめに
1. 研究の背景
都会を歩くと、以前はあまり見かけなかった光景を目にする。それは女性の歩きタバコ
である。私たちが通っている十文字大学の通学路でも大変多く見かけることがある。ファ
ーストフードやレストラン、駅構内でも若い女性の喫煙が目立つように思う。
以前日本では、女性はタバコを吸うのは好ましくないという社会通念があった。しかし
女性の社会進出や、細いおしゃれなタバコの販売に伴い喫煙ファッション化が、特に若い
女性の喫煙が目立つようになった。電車の中での広告も、綺麗で目を引くものが多い。最
近では、男性向けの広告よりも、女性向けの広告の数のほうが多いように思う。新たな喫
煙者の獲得の為に、タバコ業界も女性をフォーカスをあてている。
最近、タバコはポイ捨て禁止に関する条例が各地で次々と制令され、話題になっている。
特に、千代田区で制令されたことは、テレビでかなりの話題になった。顔は見えないよう
に放送されていたが、女性が半数近く取締りを受けていたように思う。
それに加えて、「健康増進法」が最近施行された。そのことによって、「タバコ」はマナ
ーや健康を害するものとして改めてその存在・用途が注目されている。このような様々な
情報があふれる中でタバコに対してのイメージが変化しつつあるが、身近な存在である女
子大生はこの状況をどのように捉えているのであろうか。
こうした背景を踏まえ、私たちは研究の目的を「喫煙する女性が目立つ中で、「喫煙」に
関する女性の意識を明らかにしたい」ということにした。細かい内容は以下のとおりであ
る。
第 1 に、女子大生の喫煙状況を明らかにする。
第 2 に、タバコを吸う女性のイメージ実態を明らかにする。
第 3 に、喫煙者と非喫煙者で日常生活にどのような違いがあるのかを明らかにする。
-2-
第Ⅰ章 研究の方法
1.調査の概要
私達は大学生を対象に、喫煙に関する意識調査のアンケートを実施した。対象者は、十
文字女子大学、東洋大学に通っている女子大学生である。女性を対象とした理由は、現代
の女性の喫煙率の増加や喫煙行動のイメージとはどのようなものか、喫煙習慣の有無によ
ってイメージに差が生じるかを詳しく分析したいと思ったからである。
最近、喫煙する女性が増加しているのに対し、女性から見た喫煙者に対する意識、喫煙
者と非喫煙者の意識の違いなどを調査し、日常生活において喫煙はどのような位置づけに
あるのかについて考察した。
調査項目として、「①女子大生の喫煙状況」、「②喫煙に対してのイメージ調査」「③現在
の喫煙環境においての意識調査」と 3 つである。①では、増加していると言われる喫煙状
況の中で、実際の女子大生の喫煙状況はどの程度のものなのかを質問した。②では、好意
を持っている男性、異性の友人、同性の友人、家族、自分より年上の女性、自分より年上
の男性が喫煙者の場合にその人に対しどのように感じるのかを質問した。③では、現在の
喫煙環境をどのように感じているかを質問した。
回答者の属性では、サンプル数は 127 であり、有効サンプル数は同数の 127 である。
サンプルをとった女子大生の、属性は次のグラフで示した通り、図表Ⅰ-3-1 は学年別のグ
ラフである。その内訳は「大学 2 年生」は、44 人(33%)であり、
「大学 3 年生」は、34 人(26%)
であり「大学 4 年生」は 49 人(37%)である。
図表Ⅰ-3-2 は学部別のグラフである。その内訳は「社会情報学部」101 人(77%)、
「文学部」
23 人(17%)、「社会学部」3 人(2%)、「その他」は 5 人(4%)である。
図表Ⅰ-3-3 は住まい形態のグラフである。その内訳は「一人暮らし」32 人(24%)、「実家」
95 人(72%),「その他」5 人(4%)である。
<回答者の属性>
学部別
2%
学年別
4%
4%
17%
37%
77%
33%
26%
N=127
社会情報学部
社会学部
2年生
文学部
その他
図表Ⅰ-3-1 学部別
3年生
4年生
図表Ⅰ-3-2 学年別
-3-
N=127
その他
住まい形態
4%
24%
72%
自宅
一人暮らし
その他
N=127
図表Ⅰ-3-3 住まい形態
2.分析方法
私たちは今回、データ解析するにあたって、spss を使い、分析方法は、度数分布表・記
述統計量・独立サンプルのT検定・一元配置分散分析の4つを使った。
図表Ⅱ-2-1・図表Ⅱ-2-2・図表Ⅱ-3-1・図表Ⅱ-3-11・図表Ⅱ-3-12 のグラフは、127 サン
プル分の平均を出すために記述統計量を使用した。図表Ⅱ-2-3 は、「女性の喫煙イメージ」
と「女性が考える“男性からみた女性の喫煙”のイメージ」を比較するために独立したサ
ンプルのT検定を使用した。
図表Ⅱ-3-13・図表Ⅱ-3-14 は、全体の割合のうち占める割合をみるために度数分布表を使
用した。
図表Ⅱ3-2、図表Ⅱ-3-6 は、「喫煙者」と「過去に喫煙」「非喫煙」の3つのグループを比
較するために一元配置分散分析を使用した。また、0.001 以下を“1%水準で有意”0.005
以下を“5%以下で有意”とした。
本論文の構成としては、Ⅰ章では、調査対象、調査の概要、回答者の属性について記し
た。
Ⅱ章の 1 では、喫煙者のイメージについて分析する。
「タバコを吸う女性のイメージ」と
「男性から見たタバコを吸う女性のイメージ」という質問をし、女性から見てタバコを吸
う女性はどのようなイメージがあるのか、また、男性から見たタバコを吸う女性のイメー
ジを女性はどのように考えているのかそれぞれの考え方を比較する。
Ⅱ章の 2 では、現在の喫煙環境においての意識、行動について分析する。喫煙者・非喫
煙者の「日常の考え方」や、「タバコに関しての考え方」を比較しどのような考えを持つ人
が喫煙するのか、禁煙するのかを明らかにする。また、喫煙者に対し「それぞれの人の前
でタバコを吸う時抵抗を感じるか」や「タバコをやめてほしいといわれた場合どの程度努
力できるか」を比較し人によってタバコを吸う時の意識が違うのかを明らかにする。
Ⅲ章では、まとめと今後の課題について記した。
-4-
第Ⅱ章 結果と考察
1.女子大生の喫煙状況
1-(1)喫煙者の割合
女子大生の喫煙者の割合がどの程度のものなのかを、吸っている・以前は吸っていたが
今は吸っていない・吸ったことがない、の 3 項目に分け当てはまるものを選んでもらった。
現在タバコを吸っているか
11%
12%
77%
吸っている
以前吸っていたが今は吸っていない
N=127
吸ったことがない
図表Ⅱ-1-1 喫煙者の割合
私たちの調査対象である女子大生では、図表Ⅱ-1-1 で分かるように 9 人に 1 人が喫煙者
という結果が出た。その内訳は、
「吸ったことがない」の 77%が一番多かった。次に「以前
は吸っていたが今は吸っていない」は 12%で、「吸っている」は 11%である。
下記の 2000 年 5 月の JT 実施の調査結果(図表Ⅱ-1-4)では、2000 年の女性の喫煙率は
13.7%であり減少傾向であることが、と読み取れる。
この結果から、女子大生の喫煙率と全体の女性の喫煙率がほぼ同数であることが分かり、
私たちが予想していた喫煙する女子大生の割合がはるかに少ない結果となった。
自宅
一 人 暮 らし
13%
9%
11%
13%
78%
76%
N=127
吸っている
以前吸っていたが今は吸っていない
吸ったことがない
N=127
吸っている
以前吸っていたが今は吸っていない
吸ったことがない
図表Ⅱ-1-2
図表Ⅱ-1-3
-5-
図表Ⅱ-1-2 のグラフは、現在タバコを吸っているか否かと現在の住まい形態との関係を表
したグラフである。若干ではあるが、一人暮らしの方がタバコを吸っている人が多かった。
<JT「全国たばこ喫煙者率調査」>
喫煙者率
2000 年 5 月現在の全国の喫煙者率は次のとおりである。
図表Ⅱ-1-4
(対前年増減)
(▲0.5%)
男性
53.5%
(対前年増減)
(▲0.8%)
女性
13.7%
(対前年増減)
(▲0.7%)
男女計
32.9%
JT(本社:東京、社長:本田勝彦)では、1965 年以降毎年実施してきた「全国たばこ喫
煙者率調査」について、2000 年 5 月実施の調査結果を上記のようにとりまとめた。
1-(2)喫煙の理由
男性と女性とでは、喫煙する理由も体への影響も異なると思われる。女性の場合「女性はたばこ
など吸ってはいけない」という社会的な圧力に反発を感じる人が意外に多く、たばこを吸うと太らな
いという理由で喫煙がやめられない人が多いと言われている。そして、女性の社会進出によってス
トレスが増え、そのことが理由になっているともいわれている。また、女性は体がニコチンを代謝す
るスピードが男性よりも遅く、男性より少ない本数でニコチン依存症になりやすいのである。
なぜ喫煙するのか?
その問いに、多くは「何となく」「理由はない」と答えている。医学
的に、健康被害に疑問の余地がない中で、ニコチン依存者の性質も見え隠れしている。
そこで私たちは、喫煙者はなぜ喫煙しているのかを、私たちが考えた12項目とそれ以
外の理由がある場合はその他の欄に書いてもらい、その中から喫煙理由を3項目選んでも
らった。そして、非喫煙者にも、どんな理由で喫煙者が喫煙しているかを考えてもらい同
じ項目の中で3項目選んでもらった。
タバコを吸う理由(喫煙者)
N=15
13人
9人
8人
7人
6人
4人
3人
1人
1人
0人
好きな人が
吸 っ て いる か
ら
0人
わ から な い
-6-
ダ イ エ ット の
ため
そ の他
付き合 い
周 り が 吸 って
いる か ら
お いし いから
暇 だ から
口 が 寂 し いか
ら
気持 ちを落 ち
着 かせる た め
習 慣 だ から
気分転換
図表Ⅱ-1-5 タバコを吸う理由(回答:喫煙者)
0人
図表Ⅱ-1-5 は喫煙者の喫煙理由を棒グラフにしたものである。複数(3項目)回答なの
で、1項目該当したごとに1人として数えた。
まず、1番多く票を集めた項目は、
「気分転換」
(1 位)の 13 人である。そして、続くの
は、
「習慣だから」
(2 位・9人)
「気持ちを落ち着かせるため」
(3 位・8 人)
「口が寂しいか
ら」
(4 位・7人)であった。逆に、
「ダイエットのため」
「わからない」
「好きな人がすって
いるから」は1票も得られず 0 人であった。
ここから考察できることは、喫煙理由の多くは、
“生活のリズムの一部になっているから”
という事のようだ。休憩の一服、食後の一服といったように、行動の区切り、区切りに喫
煙をし、何かの特別な目的をもって吸っているわけではないということである。
そして、「周りがすっているから」(7 位・3人)
、「付き合い」(8 位・1人)という項目
は意外と票を集めず、周りの環境の影響で喫煙をしている人はあまりいない事も分かる。
その他での項目に回答した人は 1 人であるが、とてもストレートに「やめれないから」
であった。ここには、ニコチンの依存性が関係しているように思えた。
タバコを吸う理由(非喫煙者からみて)
N=98
6 6人
6 0人
4 8人
42 人 3 6人
25 人
19人
11人
8人
7人
5人
4人
好 き な 人 が吸 って い
る から
ダ イ エ ット の た め
そ の他
わ から な い
付 き合 い
暇 だ から
お いし いから
周 り が吸 って いる か
ら
口 が寂 し い か ら
習 慣 だ から
気 持 ち を落 ち着 か せ
るた め
気分転換
図表Ⅱ-1-6 タバコを吸う理由(回答:非喫煙者)
図表Ⅱ-1-6 も同じ形式で、非喫煙者が考える喫煙理由をグラフにしたものである。
ここでも、同じく「気分転換」が 66 人で 1 位であった。そして次に、
「気持ちを落ち着か
-7-
せるため」
(2 位・60 人)であった。喫煙者には、吸わないとイライラするというイメージ
があるのであろうか。
注目したいのが、喫煙者の回答と同様の「気分転換」「気持ちを落ち着かせるため」「習
慣だから」といった項目が同じくベスト 3 に入っているということだ。喫煙者の喫煙理由
と考えがかけ離れていないのである。逆に面白いのが、喫煙理由で「ダイエットのため」
(11
位・5人)「好きな人が吸っているから」(12 位・4人)は、少数であるが票が入ったこと
である。何かしらの、目的があって吸っていると思われているということである。
そしてまた、その他(7人)の回答には、
「格好つけるため」
(4人)、
「ファッション」
(3
人)というものがあった。こちらは、喫煙行動について外見的イメージを持っており、「格
好つけるため」に関しては、批判的なニュアンスが含まれており、あまり喫煙行動をよく
思っていないことが分かる。
ここの回答から見ても、今回の研究テーマである“喫煙行動とイメージ”と深く関係が
ありそうである。
1-(3)禁煙の理由
昨年、2003 年 7 月 1 日からタバコの増税が始まった。そしてつい先日にも、2003 年 5 月 1 日「健
康増進法」(*2詳しくは巻末に文献資料を記載)という法律が施行された。高齢化社会に備え、国
民は自分の体調をしっかり管理し、健康増進に努めなければならない。また、国や地方自治体、多
くの人が利用する施設の管理者などは、国民の健康増進のために積極的にバックアップしなけれ
ばならない。という主旨の法律である。「健康増進法」の受動喫煙の内容で注目したいのが、公的
機関や公共の施設だけでなく、民間でも多くの人が集まる施設の管理者であれば、受動喫煙の防
止に協力しなければならないということである。
この法律を受け、西武、京王、東武、京成、小田急、東急、京浜急行、相模鉄道、新京成などの
首都圏の私鉄が駅構内を全面禁煙にするなどの動きが現れている。
また、学校やコンサート会場、美術館やデパート、喫茶店、飲食店、ホテル、娯楽施設なども、人が
集まる場所であればこの法律の対象になる。
このように、最近少しずつ喫煙しづらい環境になってきた。前の項目(女子大生の喫煙状況)で
調べたとおり喫煙は、減少傾向になってきている。
この中でも、女子大生は、具体的どのような理由で禁煙したかを以前喫煙していた人(前項目で
以前吸っていたが今は吸っていないと答えた、14 人。)9項目とその他の項目をもうけて当てはまる
もの複数回答(3つ)選んでもらった。
次の図表Ⅱ-1-7 は、以前はタバコを吸っていたが、今は吸っていない人にタバコをやめた理由
を聞き、その理由をグラフにしたものである。一番多かったの(14 人中4人)が体に悪いと思ったと
いう理由だった。やはり今まで健康面に対してあまり関心がなかったせいか、これから体を大切にし
ようとする人が多くなったのだろう。二番目に多かったのが、やめることをすすめられたから、という
理由だった。それはメディアや新聞などで喫煙の悪影響が騒がれている理由もあり、親や、友達な
-8-
どから言われたからが考えられる。周りの人がやめだしたからと、環境の変化が理由ではないのは
以外だった。タバコをやめることは、周りが関係しないことが分かった。
このグラフから分かることをまとめると、公共の場に喫煙場所が減って吸いづらい環境になったと
いうこともあり、健康に気を使いはじめたということである。
タ バ コ を や め た 理 由
4 人
3 人
3 人
2 人
2 人
2 人
1 人
1 人
0 人
0 人
環 境 の変 化
ら
周 り の人 が や めだ し た か
金 銭 的 な理 由
格 好 が 悪 い と 思 った か ら
そ の他
体調不良とた め
から
吸 い づ ら い環 境 に な った
な んと な く
た から
や め る こと を す す め ら れ
体 に 悪 い と 思 った か ら
N = 1 4
図表Ⅱ-1-7 タバコをやめた理由
2.喫煙者のイメージ
ドラマ・映画・CMなどでタバコを吸う人は「かっこよい、キャリアウーマン、自立し
ている女性、ゆとりがある人」と感じさせる。 このタバコの取り上げ方は、タバコをプラ
スのイメージにしている。そのため、タバコは映画や演劇の小道具として要所、要所に使
われてきた。タバコの吸いかた一つで感情を表現したり、個性を引き出すものとして強烈
な力があったと思われる。ちょうど憧れるブランド品のような役割、それ以上のものがあ
ったように思える。
しかし、その一方で女性にはマイナスイメージに捉えられることもある。さらに女性は、
月経や妊娠、出産など様々な面で、タバコの害を受けるということが昔から言われ、ほと
んどの人がそれを認識している。
世間でも、「女性がタバコを吸うのは、好ましくない」というタブー感があると思われて
いる。吸わない女性の方が、特に男性にとって「女の子らしい」「かわいらしい」と思われ
るのではないだろうか。私たちの周りでも男性を意識して喫煙をしない女性も確かにいる。
私たちは、それを踏まえて「女性の喫煙行動」について、形容詞対5組を5段階評価し
て、喫煙者と非喫煙者でどの程度の差が出るか、さらに女性から見た「女性の喫煙」イメ
ージと、女性が思っている男性の「女性の喫煙」のイメージとわけて、比較した。
2-(1)タバコを吸う女性のイメージ
平均的な考え方を数字で表すために、マイナスイメージが強いほど大きな数字(最大値
5)で、プラスのイメージが強いほど小さな数字(最小値1)で表すことにした。
図表Ⅱ-2-1 喫煙者と非喫煙者の「タバコを吸う女性のイメージ」の平均値をグラフにした
-9-
ものである。
全体的にみると、マイナスのイメージを持っているようだ。しかし、極端に真ん中の値
からぶれている項目もない。その中でも、「好感がもてる・持てない」
、「不良・健全」の項
目でともに 3.9 の値で「好感が持てない」「不良」というマイナスイメージ側に振れがあっ
た。逆に真ん中から振れがないのが、「幼い」と「大人っぽい」の対比の項目でちょうど真
ん中の値の 3 であった。
ここから分かることは、未成年者の喫煙動機である「かっこいいから」、「大人っぽく」
見えるからといった喫煙動機(*1)は、年齢を重ねていくごとに薄れていくということで
ある。
*1 未成年者の喫煙経験率は中学 3 年男子:38.7%、女子:22.7%で高校 3 年にもなると、
男子:55.6%、女子:38.5%となっています。吸い始めた理由としては、「なんとなくカ
ッコイイから」「テレビや映画でみて吸いたくなった」「大人っぽくみえるから」など、
始める理由としては見た目がカッコイイという印象のもとに、というものが多いようであ
る。
<JT(日本タバコ専売公社)の統計による>
http://www.frontstyle.com/mailmagazine/backnumber/vol173.html - 7k
タバコを吸う女性のイメージ【平均】
1
2
4
3
好感が持てる
3 .9
センスが良い
3 .9
知的
大人っぽい
好感が持てない
センスが悪い
3 .6
健全
5
不良
知的でない
3 .6
幼い
3 .0
N=127
図表Ⅱ-2-1「タバコを吸う女性のイメージ」
- 10 -
2-(2)男性から見た「タバコを吸うイメージ」
次の図表Ⅱ-2-2 は、喫煙者と非喫煙者の女性が考える男性の「女性の喫煙イメージ」の
平均値をグラフにしたものである。
こちらも全体的に、マイナスイメージに傾いている。一番のマイナスイメージの傾きは、
「好感が持てる・持てない」の項目で 3.9 の値で、好感が持てない側に振れた。しかし、予
想していたような大きなマイナスイメージがでることはなかった。「女性の喫煙」が、男性
にも認知されているのだという女性の考えがある。喫煙によって、男性からそれほどのマ
イナスイメージのダメージを受けない時代になっているという考えもあるのだと思う。
しかし、プラスのイメージには傾くものがないというのも注目したい点である。女性は喫
煙することにより、良い印象を作ることは難しい、ということである。
この中で、一番マイナスイメージであるのは、
「好感が持てる・持てない」というかなり
漠然とした問いの項目で 3.9 の値で「好感が持てない」側に傾いた。
「好き」か「嫌いか」
であったら、やはり吸っていないほうが「好き」だと思われるのだと、思っているのであ
ろう。
男性から見た”タバコを吸う女性”のイ
メージ【平均】
1
2
3
4
好感が持てる
3.9
センスが良い
3.5
健全
3.7
好感が持てない
センスが悪い
不良
知的でない
知的
大人っぽい
5
3.4
幼い
3.0
N=127
図表Ⅱ-2-2 女性が考えた男性からみた「女性の喫煙イメージ」
- 11 -
2-(3)「女性の喫煙のイメージ」と「女性が考える“男性から見た女性の喫煙のイメージ”」
の比較
図表Ⅱ-2-3 は、「女性の喫煙イメージ」(喫煙者と非喫煙者の平均)、「女性が考える“男
性から見た女性の喫煙のイメージ」(喫煙者と非喫煙者の平均)を比較したグラフである。
ここでは、ほとんど両者で差が見られなかった。しかし、予想外なことに前者の方が、マ
イナスの傾向にかたむいている。ここから分かることは、男性のほうが喫煙に対して、ほ
んの若干だが、寛大な受け取り方をしてくれている、と女性側は考えているということで
ある。
男性側の方が、喫煙者と非喫煙者に意識の差が少ないと思っているのではないか。両者
が身近な存在であると考え、女性の方がむしろ「女性だから・・・」というような意識が
強く、喫煙行動に強い意識を持っているのではないか。
「タバコを吸う女性のイメージ」と「男性から見た”タ
バコを吸う女性”のイメージ」の比較
1
2
3
4
5
好感が持てる
好感が持てない
センスが良い
センスが悪い
図表Ⅱ-1-3
健全
不良
知的
知的でない
幼い
大人っぽい
―・―
男性からみた”タバコ
を吸う女性”にイメージ
(N=127)
―・―
タバコを吸う女性のイメージ
(N=127)
図表Ⅱ-2-3 タバコを吸う女性のイメージ」と男性から見たタバコを吸う女性のイメー
ジ」の比較
3.現在の喫煙環境においての意識・行動
3-(1)それぞれの人たちが自分の前でタバコを吸ったときどのように感じるか。
- 12 -
それぞれの人たちが自分の前でタバコを吸った時どのように感じるか
かなり嫌だと思う
嫌だと思う
2.2
2.1
2.4
2.7
21
どちらとも言えない
あまり嫌だと思わない
自 分 よ り年 上
の人
家族
同 姓 の友 人
異 性 の友 人
好 意 を も って
いる 男 性
全く嫌だと思わない
N=112
図表Ⅱ-3-1「それぞれの喫煙者が自分の前でタバコを吸った時どのように感じるか」
平均的な考え方を数字で表すために、
「かなり嫌だと思う」を 5、
「嫌だと思う」を 4、
「ど
ちらとも言えない」を 3、
「あまり嫌だと思わない」を 2、
「全く嫌だと思わない」を 1 とし
た。
図表Ⅱ-3-1 は、禁煙者に次にあげる人が自分の前でタバコを吸った場合、どのように感
じるかという質問を5段階評価にして答えてもらったグラフである。
「家族」(2.7)、「同性の友人」(2.4)に対しては嫌だと思うようだが、「好意を持ってい
る男性」
(2.2)、
「異性の友人」
(2.1)、
「自分より年上の人」
(2.1)に対してはどちらとも言
えないという考えだった。
同性の友人や家族のような自分の身近な人に対してはタバコを吸ってほしくないと感じ、
逆に好意を持っている異性、異性の友人、自分より年上の人のような自分にとってあまり
身近に感じない人に対しては考えないようである。好意を持っている男性に対しては、自
分はタバコを吸わないから好きな人にもタバコを吸ってほしくないというような願望は強
くないようである。また、異性の友人と同性の友人を比較すると、同性の友人に対しては
嫌だと思うのに対し、異性の友人に対してはあまり考えていない。つまり、女性に対する
考えと男性に対する考えが違うと考えられる。女性に対しては男性よりも嫌悪感を持つよ
うである。( )内は平均値。
3-(2)日常の考え方
日常の考え方は、3つのグループにどのような差がでるのか 15 項目を 5 段階評価で回答
してもらった。平均的な考え方を数字で表すために、
「そう思う」を 5、
「ややそう思う」を
4、「どちらともいえない」を 3、「あまり思わない」を 2、「全く思わない」を 1 とした。
- 13 -
日常の考え方
そう思う
ややそう思う
ど ち らともいえない
あまり思わない
人 の 言 動 ・行 動
が気 に な る
ス ポ ー ツを す る
の が好 き で あ る
ボ ラ ン テ ィ ア活
動 に参 加 し た い
環 境 問 題 に興 味
があ る
バラ ンス の とれ
た食 生 活 を心 が
毎 日 食 事 の時 間
が決 ま って いる
起 床 ・就 寝 時 間
が ほ ぼ 決 ま って
メ イ ク ・フ ァ ッ
シ ョ ン に気 を 使
人 を 外 見 で判 断
す る こ と があ る
流 行 に左 右 さ れ
やす い
毎月購入 する
フ ァ ッ シ ョ ン雑
毎 日 、新 聞 ・
ニ ュー ス を 見 る
いず れ 結 婚 を し
た い と思 って い
い つ か は自 分 の
子 供 を持 ち た い
健 康 に は気 を
使 って いる
*
*
全く思わない
*
*
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
喫煙者(N=15)
過去に喫煙(N=14)
非喫煙者(N=98)
図表Ⅱ-3-2 日常の考え方
図表Ⅱ-3-3 日常の考え方
喫煙者 過去に喫煙 非喫煙者
健 康 に は 気 を 使 っ て い る **
2 .9
3 .3
4 .3
い つ か は 自 分 の 子 供 を 持 ち た い と 思 っ て い る 3 .6
いず れ 結 婚 をしたいと思 っている
3 .6
4 .1
毎 日 、 新 聞 ・ニ ュ ー ス を 見 る よ う に し て い る
3 .2
3 .7
毎 月 購 入 す る ファッシ ョン雑 誌 が あ る
2 .9
3 .1
流 行 に左 右 され や すい
2 .9
3 .5
人 を外 見 で判 断することが ある*
3 .1
3 .9
メ イ ク ・フ ァ ッ シ ョン に 気 を 使 う
3 .2
3 .4
起 床 ・就 寝 時 間 が ほ ぼ 決 ま っ て い る
2 .5
2 .5
毎 日 食 事 の 時 間 が 決 ま っ て い る **
2 .1
2 .3
バ ランスの とれ た食 生 活 を心 が けている*
2 .4
2 .5
環 境 問 題 に 興 味 が あ る **
2 .1
2 .2
ボ ラン テ ィア 活 動 に 参 加 した い *
2 .1
2 .8
スポーツをするのが好きである
2 .6
3 .1
人 の 言 動 ・行 動 が 気 に な る
3 .6
3 .3
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
- 14 -
3 .8
4 .1
4 .2
3 .5
2 .7
2 .8
3 .3
3 .2
3 .0
3 .1
3 .1
3 .0
3 .1
3 .3
3 .8
日常の考え方(喫煙者)
そう思う
人 の 言 動 ・行 動 が 気
に な る
ス ポ ー ツ を す る の が
好 き で あ る
ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に
参 加 し た い
*
人 の 言 動 ・行 動 が
気 に な る
ス ポ ー ツ を す る の
が 好 き で あ る
ボ ラ ン テ ィ ア 活 動
に 参 加 し た い
環 境 問 題 に 興 味 が
あ る
*
環 境 問 題 に 興 味 が あ
る
*
*
毎 日 食 事 の 時 間 が
決 ま っ て い る
バ ラ ン ス の と れ た
食 生 活 を 心 が け て
い る
*
2.5
バ ラ ン ス の と れ た 食
生 活 を 心 が け て い る
*
毎 日 食 事 の 時 間 が 決
ま っ て い る
*
*
*
*
起 床 ・就 寝 時 間 が
ほ ぼ 決 ま っ て い る
メ イ ク ・フ ァ ッ
シ ョ ン に 気 を 使 う
人 を 外 見 で 判 断 す
る こ と が あ る
*
*
る よ
る
・
る
雑 誌
流 行 に 左 右 さ れ や
す い
毎 月 購 入 す
フ ァ ッ シ ョ ン
が あ る
毎 日 、新 聞
ニ ュ ー ス を 見
う に し て い
い ず れ 結 婚 を し た
い と 思 っ て い る
- 15 -
起 床 ・就 寝 時 間 が ほ
ぼ 決 ま っ て い る
メ イ ク ・フ ァ ッ シ ョ
ン に 気 を 使 う
人 を 外 見 で 判 断 す る
こ と が あ る
流 行 に 左 右 さ れ や す
い
毎 月 購 入 す る フ ァ ッ
シ ョ ン 雑 誌 が あ る
毎 日 、 新 聞 ・ニ ュ ー
ス を 見 る よ う に し て
い る
い ず れ 結 婚 を し た い
と 思 っ て い る
い つ か は 自 分 の 子
供 を 持 ち た い と
思 っ て い る
図表Ⅱ-3-5 日常の考え方(過去に喫煙者)
2.2
2.5
2.3
あまり思わない
2.8
3.3
3.1
どちらともいえない
*
あまり思わない
3.1
3.4
3.5
3.7
3.3
2.1
2.1
2.6
2.4
2.1
2.5
2.9
2.9
*
3.6
3.9
4.3
4.1
ややそう思う
3.2
ど ち らともいえない
い つ か は 自 分 の 子 供
を 持 ち た い と 思 っ て
い る
健 康 に は 気 を 使 っ
て い る
*
*
全く思わない
健 康 に は 気 を 使 っ て
い る
全く思わない
3.2
3.1
2.9
3.6
3.6
ややそう思う
N=15
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
図表Ⅱ-3-4 日常の考え方(喫煙者)
日常の考え方(過去に喫煙)
そう思う
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
N=14
*
*
日常の考え方(非喫煙者)
そう思う
4.1
ややそう思う
4.2
3.8
3.5
どちらともいえない
3.3
2.8
2.7
3.2
3.1
3.1
3.0
3.1
3.0
3.3
あまり思わない
人 の 言 動 ・行 動 が
気 に な る
ス ポ ー ツ を す る の
が 好 き で あ る
ボ ラ ン テ ィ ア 活 動
に 参 加 し た い
*
環 境 問 題 に 興 味 が
あ る
*
*
バ ラ ン ス の と れ た
食 生 活 を 心 が け て
い る
*
毎 日 食 事 の 時 間 が
決 ま っ て い る
*
起 床 ・就 寝 時 間 が
ほ ぼ 決 ま っ て い る
メ イ ク ・フ ァ ッ
シ ョ ン に 気 を 使 う
人 を 外 見 で 判 断 す
る こ と が あ る
*
*
・
る
雑 誌
る よ
る
流 行 に 左 右 さ れ や
す い
毎 月 購 入 す
フ ァ ッ シ ョ ン
が あ る
毎 日 、新 聞
ニ ュ ー ス を 見
う に し て い
い ず れ 結 婚 を し た
い と 思 っ て い る
い つ か は 自 分 の 子
供 を 持 ち た い と
思 っ て い る
全く思わない
N=98
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
図表Ⅱ-3-6 日常の考え方(非喫煙者)
図表Ⅱ-3-2 は、喫煙者、過去に喫煙していた者、非喫煙者の「日常の考え方」を比較し
たグラフである。
全体を見ると全体の喫煙者・非喫煙者で日常の考え方に差がある。しかし、「メイク・フ
ァッションに気を使う」や「毎月購入するファッション雑誌がある」などの項目では、ど
ちらともいえないという意見で差がひらかず、外見的な問題に関しては同意見である。ま
た、年代的になのか結婚を希望しているのが強いことが分かる。
喫煙者・非喫煙者共に多かったのは、
「いずれ結婚したいと思っている」
(喫煙者 4.10204、
非喫煙者 3.64286)で、
「人の言動・行動が気になる」
(喫煙者 3.57143、非喫煙者 3.76531)
であった。( )内の数値は平均値。
また、両者によって日常の考え方が異なるかどうかを調べるため平均値で比較した。
「ボランティア活動に参加したい」
(喫煙者 2.07143、非喫煙者 3.0612)で 0.98979 の差が
ある。
「健康には気を使っている」
(喫煙者 2.85714、非喫煙者 3.76531)で 0.90817 の差が
ある。
「環境問題に興味があると」
(喫煙者 2.14286、非喫煙者 3.03061)で 0.88775 の差が
ある。
「毎日の食事の時間が決まっている」
(喫煙者 2.14286、非喫煙者 3.09184)で 0.94898
の差があり、この 4 項目では 1%水準で有意差が見られた。
また、「人を外見で判断することがある」という項目では過去に喫煙者が 3.9 一番外見で
判断することが分かる。この結果によると喫煙者と非喫煙者の考え方に差があるといえる。
喫煙者も非喫煙者も日常の考え方に積極性は見られないが、喫煙者は非喫煙者に比べてよ
り意識が低い。
3-(3)タバコに対する考え方
- 16 -
タバコに対する考え方を 10 項目、5 段階評価にして答えてもらった。
平均的な考え方を数字で表すために、「そう思う」を 5、「ややそう思う」を 4、「どちら
とも言えない」を 3、「あまり思わない」を 2、「まったく思わない」を 1 とした。
タバコに対しての考え方
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまり思わない
喫 煙 者 の友 人 の健 康 が気
に な る こと が あ る
*
喫 煙 者 は身 近 な 人 の健 康
に与 え る 影 響 を 考 え て
**
友 人 が喫 煙 者 で あ る と 、
自 分 も健 康 上 影 響 を受 け
る
*
*
共 学 の 学 校 へ通 う 女 子 学
生 の 方 が 、女 子 大 よ り も
喫 煙 率 が高 い
女 性 の 歩 き タ バ コを 見 る
と嫌 な気 分 にな る
*
*
レ ス ト ラ ンな ど で は必 ず
禁 煙 席 を使 う
公 共 の場 は す べて禁 煙 に
し た 方 が良 い
禁 煙 ス ペー ス が 増 え て い
る こと は良 い こと だ と 思
う
女 性 の喫 煙 率 は増 加 し て
いる
一 般 的 に若 年 層 の喫 煙 率
は増 加 し て いる
全く思わない
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
喫煙者(N=15)
過去に喫煙(N=14)
非喫煙者(N=98)
図表Ⅱ-3-7 タバコに対する考え方
図表Ⅱ-3-7 は、
「喫煙者のタバコに対しての考え方」を喫煙者と過去に喫煙していた人と
非喫煙者の3つグループを比較したグラフである。このグラフを見ると、非喫煙グループ
はどの項目の質問に対しても、ややそう思うと答えた人が多いと分かる。逆に、喫煙グル
ープは、グラフの変化が激しかった。その中間なのが過去に喫煙グループである。
3つのグループ共に、一般的に女性の喫煙率は上がっていると考えていて、そしてそれ
は若者に急上昇しているとみられる。「禁煙スペースが増えていることは、良いことだと思
う」、「公共の場はすべて禁煙にした方が良い」、「レストランでは必ず禁煙席を使う」の質
問項目ではやはりとても差がでているのが分かる。この時点では、過去に喫煙グループと
非喫煙グループは考え方が似ていると言える。そして「友人が喫煙者であると、自分も健
康上影響をうける」、「喫煙者は身近な人の健康に与える影響を考えていない」、「喫煙者の
友人の健康が気になることがある」の質問項目でも、喫煙グループと非喫煙グループとで
はとても差がでていることが分かる。過去に喫煙グループは、「友人が喫煙者であると、自
分も健康上影響をうける」「喫煙者の友人の健康が気になることがある」の2質問は非喫煙
- 17 -
と同じ考えであり、一方「喫煙者は身近な人の健康に与える影響を考えていない」の質問
には、喫煙や非喫煙とは全く違う考え方を持っていることが分かった。
グラフから考えられることは、非喫煙者は自分の健康状態を考え、タバコを吸っている
人のそばに行くことを避けているようである。そして、レストランなどでも禁煙席を選ぶ
ことに徹底している。また駅構内、仕事場、など公共のスペースで喫煙スペースを作って
いるところが多くなってきているが、このことは非喫煙者にとって、とてもありがたいこ
となのである。喫煙者はもちろん禁煙スペースが増えることには、反対しているように思
われる。そして他の分析からも分かるように、健康のことはあまり気をつけていないこと
が分かる。
3つのグループの考え方を比較してみると、過去に喫煙グループは喫煙グループ・非喫
煙グループのどちらの気持ちも分かると同時に、中立的な考え方と思いきや一番はっきり
した答えが出ているような気がする。
タ バ コに 対 し て の 考 え 方 (喫 煙 者 )
そう思う
4 .3
4 .1
ややそう思う
3 .6
ど ち ら とも い え な い
3 .1
2 .9
2 .4
2 .3
3 .1
公 共 の場 は す べ て禁 煙 に
レ ス ト ラ ンな ど で は必 ず
2 .6
2 .6
あま り思 わ な い
にな る こ と があ る
喫 煙 者 の友 人 の健 康 が気
*
に与 え る 影 響 を 考 え て
喫 煙 者 は身 近 な 人 の健 康
**
友 人 が喫 煙 者 で あ る と 、
る
自 分 も健 康 上 影 響 を受 け
*
*
共 学 の 学 校 へ通 う 女 子 学
喫 煙 率 が高 い
生 の 方 が 、女 子 大 よ り も
と嫌 な 気 分 に な る
女 性 の 歩 き タ バ コを 見 る
*
*
禁 煙 席 を使 う
し た 方 が良 い
禁 煙 ス ペー ス が 増 え て い
う
る こ と は良 い こ と だ と思
いる
女 性 の喫 煙 率 は増 加 し て
は増 加 し て いる
一 般 的 に若 年 層 の喫 煙 率
全 く思 わ な い
N=15
** 1%水 準 で 有 意 *5%水 準 で 有 意
図表Ⅱ-3-8 タバコに対しての考え方(喫煙者)
タ バ コ に 対 し て の 考 え 方 (過 去 に 喫 煙 )
そ う 思 う
4 .3
4 .3
や や そ う 思 う
4 .0
3 .9
3 .8
4 .1
3 .9
3 .6
3 .6
3 .2
ど ち ら と も い え な い
あ ま り 思 わ な い
な る こと が あ る
喫 煙 者 の友 人 の健 康 が気 に
*
与える影響を考え て
喫 煙 者 は身 近 な 人 の健 康 に
*
*
友 人 が 喫 煙 者 で あ る と 、自
**
分 も 健 康 上 影 響 を 受 ける
共 学 の 学 校 へ通 う 女 子 学 生
率 が高 い
の 方 が 、女 子 大 よ り も 喫 煙
嫌 な 気 分 にな る
女 性 の 歩 き タ バ コを 見 る と
*
*
煙席を使う
レ ス ト ラ ンな ど で は 必 ず 禁
た 方 が良 い
公 共 の 場 は す べて 禁 煙 に し
こと は 良 い こと だ と 思 う
禁 煙 ス ペー ス が 増 え て い る
る
女 性 の喫 煙 率 は増 加 し て い
増 加 し て いる
一 般 的 に若 年 層 の喫 煙 率 は
全 く思 わ な い
N =14
** 1 %水 準 で 有 意 *5 %水 準 で 有 意
図表Ⅱ-3-9 タバコに対しての考え方(過去に喫煙)
- 18 -
そう思う
タバコに対する考え方(非喫煙者)
3.7
3.5
どちらともいえない
喫 煙 者 の友 人 の健 康 が気
に な る こと が あ る
*
4.4
喫 煙 者 は身 近 な 人 の健 康
に与 え る 影 響 を 考 え て
**
友 人 が喫 煙 者 であ る と 、
自分も健康上影響を受 け
る
*
*
共 学 の 学 校 へ通 う 女 子 学
生 の 方 が 、女 子 大 よ り も
喫 煙 率 が高 い
*
*
- 19 -
女 性 の 歩 き タ バ コを 見 る
と 嫌 な 気 分 にな る
レ ス ト ラ ンな ど で は 必 ず
禁煙席を使う
公 共 の 場 は す べて 禁 煙 に
した 方 が良 い
禁 煙 ス ペー ス が 増 え て い
る こと は 良 い こと だ と 思
う
女 性 の喫 煙 率 は増 加 し て
いる
一 般 的 に若 年 層 の喫 煙 率
は 増 加 し て いる
い」を 2、「全く抵抗がない」を 1 とする。
4.1
4.0
4.2
4.1
4.3
4.3
ややそう思う
3.1
あまり思わない
全く思わない
N=98
** 1%水準で有意 *5%水準で有意
図表Ⅱ-3-10 タバコに対しての考え方(非喫煙者)
3-(4)どの程度抵抗を感じるか
これは、喫煙者と回答した人が、喫煙者・非喫煙者問わず下記の人の前でタバコを吸っ
た場合、どの程度抵抗を感じるか、を答えてもらった結果である。
「かなり抵抗がある」を 5、
「抵抗がある」を 4、
「どちらとも言えない」を 3、
「抵抗がな
どの程度抵抗を感じるか
かなり抵抗がある
抵抗がある
3.5
2.2
2.1
どちらとも言えない
1.9
抵抗がない
1.3
自 分 よ り 年 上 の男 性
自 分 よ り 年 上 の女 性
家族
同 姓 の友 人
異 性 の友 人
好 意 を も って いる 男 性
全く抵抗はない
1.4
N=15
図表Ⅱ-3-11
どの程度抵抗を感じるか
図表Ⅱ-3-11 は、喫煙者が「それぞれの人の前でタバコを吸った時の抵抗感」を調査した
グラフである。その結果、普段一緒にいることの多い「家族」(3.5)の前でタバコを吸う時
が一番抵抗を感じ、その次に抵抗を感じるのが「自分より年上の女性」(2.2)、
「自分より年
上の男性」(2.1)となっている。逆に全く抵抗を感じないのが「同性の友人」(1.3)の前であ
る。しかし、非喫煙者が自分の前でタバコを吸われた場合に一番嫌だと思われるのは「同
性の友人」という結果が出ている。喫煙者・非喫煙者でタバコを吸いやすい人・タバコを
吸って欲しくない人で考えが全く逆であることが分かる。また、一番抵抗を感じると思わ
れた「好意をもっている男性」はどちらとも言えないという結果が意外であった。好きな
男性の前ではタバコを吸わない、タバコを吸えないという意識は低いようである。これら
の結果、喫煙者は上記で記した人の中で一番タバコを吸いにくいと感じる相手は家族であ
るということが分かった。しかし、喫煙者はどのような人の前でタバコを吸ってもかなり
抵抗を感じるということはないようである。( )内は平均値。
3-(5)どの程度努力するか
これは、喫煙者と答えた人が、喫煙者・非喫煙者問わず下記の人に「タバコをやめて欲
しい」と言われた場合、どの程度やめることを努力するか、を答えてもらった回答結果で
ある。
「非常に努力する」を 5、
「努力する」を 4、
「どちらとも言えない」を 3、
「あまり努力し
- 20 -
ない」を 2、「全く努力しない」を 1 とする。
どの程度努力するか
非常に努力
する
やや努力
する
どちらとも言え
ない
あまり努力し
ない
自 分 よ り 年 上 の男 性
自 分 よ り 年 上 の女 性
家族
同 性 の友 人
異 性 の友 人
好 意 を 持 って いる 男 性
全く努力しな
い
N= 1 5
図表Ⅱ-3-12 どの程度努力するか
図表Ⅱ-3-12 は、喫煙者に「それぞれの人から“タバコをやめて欲しい”と言われた時の
努力度」をグラフにしたものである。
このグラフを見て、好意を持っている男性が平均的にダントツに高いのがわかる。やは
り好きな人にやめるように言われると、努力する人がたくさんいることが分かった。その
次に高いのが家族、同姓の友人である。同性の友人、自分より年上の女性、自分より年上
の男性に言われたときは、平均的にどちらとも言えないようである。
すべての結果から言えることは、一般的に年上の人に言われると、やめるように努力す
るとイメージしていたが、実際統計をとってみると、あまりそうではないことが分かった。
やはり喫煙者はタバコに依存しているせいか、簡単には喫煙することをやめないようであ
る。
- 21 -
3-(6)タバコをやめてよかったか
タバコ をやめてよかっ たか
43%
はい
57%
なんともいえない
N=14
図表Ⅱ-3-13 タバコをやめてよかった
図表Ⅱ-3-13 は、過去に喫煙だった人に、タバコをやめてよかったかどうかの回答結果で
ある。
「はい」と答えた人が 57%、「なんとも言えない」と答えた人が 43%、「いいえ」と答え
た人が 0%であった。やめて良かったと感じている人が多いのは想像通りであったが、意外
だったのは、「なんとも言えない」と答えた人が約半分を占めていたことと、「いいえ」と
答えた人が一人もいなかったことである。過去に喫煙者だった人は、今、タバコをやめた
ことを良かったと感じている人と、なんとも言えない人とにわかれた。なんとも言えない
人が多いということは、吸っていたことを後悔している人が少ないということに繋がるの
ではないかと思った。
3-(7)将来タバコをやめているか
将来タバコをやめているか
53%
20%
27%
やめている
やめていない
なんとも言えない
N=14
図表Ⅱ-3-14 将来タバコをやめているか
図表Ⅱ-3-14 は、現在タバコを吸っている人への「将来自分はタバコをやめているのか」
という質問結果のグラフである。
- 22 -
この質問には、「なんとも言えない」と答えた人が 53%、
「やめていない」と答えた人が
27%、
「やめている」と答えた人が 20%という結果になった。約半分の人がなんとも言えな
いと答えている。なんとも言えないということは、将来どうしたらいかが明確ではないと
言えるのではないだろうか。やめていないと答えた人 27%の人は、
「私はやめない!」とい
うよりかは「多分やめてはいないであろう」「今現在やめる気がない」「やめることができ
ない」という様々な考えからきているのでないかと思う。やめていると答えた 20%の人は、
のちのちはやめていたい、やめようという気持ちがあるのだろうと思われる。
- 23 -
第Ⅲ章
1.
まとめと今後の課題
まとめ
研究により次のような結果がでた。
第 1 の女子大生の喫煙状況の研究をしたところ、他の年代と同じく 9 人に 1 人の割合で
しか喫煙者はいなかった。実に意外な結果であった。JTの「全国タバコ喫煙調査」によ
ると、すべての世代の日本女性の平均喫煙率は 13.7%である。ということは、特に女子大
生だからということで他の世代の喫煙率と変わりはなかった。
第 2 のタバコを吸う女性のイメージ実態を研究したところ(喫煙者のイメージ)、喫煙者・
非喫煙者の意見にあまり差がなく、全体的にマイナスイメージであり、一昔前の「かっこ
いい」というプラスのイメージはなかった。また、女性が考える「男性からみる女性の喫
煙イメージ」については、意外なことに女性の目線での喫煙イメージよりもイメージのマ
イナスの傾きが少なかった。男性のほうが、喫煙行動に対して寛容なとらえかたをしてい
てくれていると、考えていることが分かった。しかし、決してどの回答者に聞いても喫煙
によってプラスのイメージが得られることはないようだった。
第 3 の喫煙者と非喫煙者で日常生活の違いにおいてどのような違いがあるのかを研究し
たところ、「メイク・ファッション」など外見的な問題に関して、ほぼ同じ意見をもってお
り、「ボランティア活動」「環境問題」「健康に気を使っている」「毎日の食事の時間が決ま
っている」という項目で違いが出た。社会問題・健康問題においての、喫煙者の意識が低
いという結果になった。
また、調査をしてわかったことは、女子大生の喫煙の理由は、喫煙者も非喫煙者が考え
る喫煙理由と、
「気分転換」
「習慣だから」
「気持ちを落ち着かせるため」の 3 項目に票が集
まった。逆にほとんど票が集まらなかったのは「ダイエットのため」
「好きな人が吸ってい
るから」である。この項目には、喫煙者からは、1票も集まらなかった。ここから考えら
れることは、特に目的意識があって喫煙者はタバコを吸っているわけではないということ
だ。そして、「気分転換」「習慣だから」「気持ちを落ち着かせるため」が票を集めたのは、
喫煙行動が“生活のリズムの一部”になっており、ニコチンの依存症状が関係しているか
らである。そして、面白かったのは、非喫煙者のその他の回答で「格好つけるため」とい
うものが 3 票はいっており、少し批判的なニュアンスで喫煙者をとらえていることが分か
ったことである。
また、喫煙者が、誰の前だと抵抗を感じるかについては、喫煙者が人前でタバコを吸う
時に全く抵抗を感じない相手は「同性の友人」であるのに対して、非喫煙者が自分の前で
タバコを吸われた時一番嫌だと思う相手は「同性の友人」である。同性の友人だからタバ
コを吸いやすく感じる喫煙者に対して、同性の友人だからこそタバコを吸って欲しくない
と考える非喫煙者の願望のすれ違いが明らかになった。また、喫煙者は好きな男性の前で
- 24 -
はタバコを吸わない、タバコを吸えないという意識は低いことが分かった。喫煙者はどの
ような人の前でタバコを吸ってもかなり抵抗を感じるということはないということが分か
った。
タバコに対しての考え方では、非喫煙者は全体的に「健康増進法」よりに禁煙スペース
が増えていることを歓迎しており、やはり喫煙者は禁煙スペースが今後も増加していく事
についてあまりよく思っていない。そして、喫煙者は喫煙行動によって、身近な人に与え
る影響を考えておらず、逆に非喫煙者は喫煙者の友人の健康が気になるようである。
私たちのグループには、喫煙者・非喫煙者・以前喫煙していた者と3パターン存在して
いる。その中で、女子大生は他の年代の女性に比べて喫煙者の割合が約半数近くはいると
予想していた。この予想は、私たちのグループに喫煙者がおり身近な存在として非喫煙者
も喫煙者をとらえており、喫煙行動については、特別な感情を持っていないからであった。
2.今後の課題
今回の私たちの調査は、喫煙者・非喫煙者(以前吸っていた人含む)と様々な立場の者
から構成されていることを考慮し、今後の課題をまとめる際には、両者のどちらとともに
傾いた意見にならないようにしようと思う。
今回の調査をすることにおいては喫煙の健康影響および諸外国の政府機関・国際機関等
のタバコ対策への取り組みについて、多くの資料を目にした。喫煙者本人への健康影響と
して、肺がん、肺気腫、虚血性心疾患など多くの疾病の発生や死亡が非喫煙者に比べて増
加することや、周囲の非喫煙者の健康に対しても悪影響を及ぼすことがわかった。しかし、
タバコと病気との因果関係、ことに受動喫煙への影響に対しては、非喫煙者にとっては大
変な迷惑であるということも思い知らされた。タバコには、一旦喫煙し始めるとやめたく
てもやめにくいという、タバコ煙中のニコチンによる依存性がある。
一方、タバコは個人の嗜好品であり、長い歴史を持ち“プラスイメージ”の文化として
の一面もある。しかし、現代では、健康を守ることは、第一である。
健康への危険性があるものに対し、未然防止の観点から、何らかの対応がなされるのは
当然であるとの考えが、タバコにおいては、他の先進国に日本は遅れている。
喫煙経験のない、特に未成年者の喫煙開始をいかにして防ぐか(防煙)、喫煙者と非喫
煙者を分離する方策(分煙)、喫煙の健康影響などに関する情報提供のあり方を考えてい
かなくてはならない。
① 防煙
防炎の必要性、特に、未成年者の喫煙防止は特に必要である。我が国では未成年者喫煙禁
止法(明治 33 年制定)が存在し、未成年に対するタバコの販売者等に罰則規定が定められ
ている。防煙対策は新たな喫煙者の発生を防ぐという意味で、長期的に見ても有効的な策
であり、世界保健機関(WHO)の勧告を踏まえ、国際的には、未成年者に対する販売禁止や
- 25 -
広告・販売促進活動の規制、価格政策などの対策が進められている。
成人は、一旦喫煙習慣がつくと、「なんとなく」「気分転換」「イライラするから」と
いったニコチン中毒特有の症状でなかなかそれから抜けられない。喫煙と健康との関わり
について十分な情報を与えられれば、その喫煙行動を自己判断して選択することが可能で
あるが、未成年者は、そのような判断力がないものとして扱うべきである。
未成年者が喫煙すべきでない理由として、喫煙開始年齢が早いほど、がんや虚血性心疾
患など種々の疾患に対する危険性が大きくなることがあげられる。そして、私たちの世代
である、妊娠可能な年齢の女性では、妊娠中の喫煙が胎児に悪影響を与えるので喫煙しな
いことが望まれる。未成年者の喫煙防止は社会全体で取り組むべき問題であるとともに、
喫煙の原因となるプラスイメージばかりのタバコ広告などは、やめるべきである。それが
無理であるならば、タバコの害についての、説明を盛り込むなど工夫をすべきである。
タバコの広告・販売促進活動のあり方については、タバコ事業法(昭和 59 年制定)に基
づく広告指針(平成元年大蔵省告示)を踏まえ、タバコ業界が広告・販売促進活動に関す
る自主規準を定めており、従来から未成年者や女性を読者とする雑誌では広告を行ってい
ないこと、平成 10 年 4 月からはテレビ・ラジオ等でタバコ製品の銘柄名の広告を自粛して
いることが報告されている。
これに対し、印刷媒体や電車の中吊り、屋外看板などでの広告が最近増加していること、
テレビのドラマや新聞、雑誌の広告などで、タバコに対して良いイメージが未成年者に植
え付けられていること、女性向け銘柄の広告が大々的に行われていること、また、マナー
広告でタバコは大人のものと強調することが、逆に未成年者に「大人に対する憧れ」とし
ての喫煙を助長しているのではないか。
タバコの自動販売機のあり方は、厚生省の調査によると日本では、タバコの自動販売機
は設置台数が50万台に達していることが報告されている。自販機は消費者にとって、と
ても便利であるが、このことが未成年者のタバコ入手を容易にしていると指摘する意見が
出された。しかし、平成元年以降、タバコ事業法に基づき小売店を新しく許可する際に、
店舗併設型以外の自動販売機は許可されなくなったこと、タバコの販売業組合が、平成8
年より自動販売機の深夜稼働を自粛している。
これに対し、未成年者の利用の少ない深夜の稼働を停止しても、未成年者の喫煙防止に
は効果がほとんどないと思う。また、酒類販売業界では 2000 年までに購買者の年齢が確認
できない屋外の自動販売機については、自主的に撤廃することを目標としている。タバコ
販売においても、対面販売と年齢確認の徹底による未成年者喫煙禁止法をきちんと守らせ、
自動販売機による販売の禁止や設置場所の制限の強化、販売自粛時間枠の拡大をすればよ
いのではないか。
社会全体の取り組みの防煙対策としては、タバコ業界の取り組みだけでなく、家庭、学
校や地域ぐるみの喫煙防止対策が必要であるとされた。さらに、従来の知識重視の教育だ
けでなく、自主的に判断し行動できる能力を身に付けさせる教育を重視し、周囲から喫煙
- 26 -
を強要された場合の対処法の訓練や、広告のイメージとタバコという商品の本質の違いを
見極める教育なども必要であるのではないか。未成年の喫煙理由はそこにあると考えるか
らである。
②分煙
分煙は喫煙者にとっても、非喫煙者にとっても必要性がある。受動喫煙により非喫煙者
に起こりうる健康への悪影響をおよぼさないためのするための措置が分煙である。喫煙者
は、自己責任において喫煙する場合でも、他者に危害を与えないことが大原則であろう。
これに関連して、多くの発がん物質や有害物質を含むたばこ煙に対して、環境基準と同様
の危険性管理の考え方を導入すべきである。
諸外国では公共の場所や職場における喫煙規制が積極的に進められているが、日本でも
既に、「健康増進法」が施行された。一部の企業(トリンプなど)では厳格に社内でこの
指針を実行している。
分煙環境の実現は、非喫煙者だけでなく喫煙者にとっても好ましいことである。
a.喫煙者のマナー項目と条例の制定
マナー教育については、すでに吸い殻の投げ捨てをしないことを中心に行われてきたが、
吸い殻の投げ捨てや歩行中の喫煙など依然として多く見られる。このような喫煙者のマナ
ーの悪さは、タバコ問題に対して強い態度をとる人が多い一因となっている。このような
行為は非喫煙者の健康への悪影響だけでなく、火災の発生や他の歩行者、特に子供に対す
る危害の点からも、喫煙者自らが慎むべきであるとして、マナー教育を強化する必要があ
る。業界もマナーの向上啓発に取り組んでいるものの、それを一層強化すべきである。
それでもマナーを守らないものを規制するために、条例など法的な措置を採用すべきで
あるのではないか。
b.公共の場所での分煙の強化
公共の場所、特に鉄道・飛行機等の輸送機関における禁煙・分煙はかなり進められてい
るが、それ以外の施設では不十分であるので、ホテルでの非喫煙階やレストランでの禁煙
席の設置、増設をしたらよいのではないか。
③.情報の提供
タバコについて正しい情報を持っていない消費者に対しては、タバコ製品そのものに関
する情報や、喫煙が人の健康に及ぼす危険性についての情報が提供されるべきである。必
要な情報の収集とその提供手段について次のようなものがよいのではないか。
a.タバコ包装や広告における表示
製品への表示は消費者に対する最も直接的な情報提供の手段であるが、我が国の注意表
示はタバコ事業法で規定されており、文章、はタバコ事業法施行規則で定められている。
- 27 -
この点について、健康を所管する厚生省がその内容に関与できない。現行の表現は抽象的
で曖昧な表現であり、肺がんなど具体的な疾患になる可能性、死亡する危険性の上昇、ま
た、依存性があり一旦喫煙習慣がつくとやめるのが難しくなることなどを含む文言にすべ
きである。
b.タバコの危険性に関する情報収集・提供体制
厚生省は、喫煙と健康問題に関する報告書(「タバコ白書」)を既に2回刊行するなど、
従来よりタバコの危険性に関する情報提供をしている。しかしながら、世の中には広告や
メディアなどを通じて、タバコに対して良いイメージを持つような情報も多い。
今後も、客観的な情報を国民に広く分かりやすく提供する必要がある。その基盤として、
タバコの危険性に関する情報収集・提供体制の整備が望まれる。
④.今後の課題
今後の課題として、健康問題としての観点からのタバコ行政のあり方や、タバコ事業法
とは別個の公衆衛生上の法などについては国側が、早めに作るべきである。
具体的な課題、たとえば、学校教育におけるたばこ問題の取り扱い、タバコによる空気汚
染の実態調査とその方法、表示や価格、成分など、についてはタバコ業界側が取り組んで
いくべきである。そして私たちは、喫煙者・非喫煙ともに健康に生活していけるよう、お
互いの努力をし、歩み寄っていくべきである。
- 28 -