2008 年 4 月 香港の電子産業プロファイル 概要 z 中国本土と、CEPA(経済貿易緊密化協定)に基づき、電子製品を含むすべての香港 原産品に免税措置が適用されるため関税がかからない。 z 香港の電子産業は香港最大の輸出産業であり、2007 年には香港の総輸出高の 50%を 占めた。最新輸出統計によれば、2005 年の香港の輸出高(金額ベース)は計算機、 ラジオ、電話機、音響録音機器、コンピュータ部品/付属品、ビデオ録画再生装置(DVD /VCD プレーヤー&レコーダーを含む)では世界第 2 位の輸出国である。 z 香港の電子製品輸出は 2007 年に 11%と増加した。最大の輸出市場中国本土に対して は拡大傾向。一方対アメリカ、EU においては減少、停滞傾向にあった。 z 情報技術の重要性が高まる中で、IT やマルチメディア製品が依然、最も優れた業績を 上げている。ワイヤレス LAN や WiFi を中心とするワイヤレス製品が、インターネッ トへのワイヤレスアクセスのための手段として一般化しつつある。消費者電子製品で は、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、DVD プレーヤー、DVD レコーダー、 デジタルテレビの需要が増えている。 電子産業の特徴* 企業数 雇用者数 製造業 693 (2007 年 9 月) 12,042 (2007 年 9 月) 輸出入 9,629 (2005 年 12 月) 66,704 (2005 年 12 月) *産業統計データは香港での産業活動のみを対象にしたものである。 香港の電子産業は香港最大の輸出産業であり、2007 年には香港の総輸出高の 50%を占め た。最新輸出統計によれば、2005 年の香港の輸出高(金額ベース)は計算機、ラジオ、電 話機、音響録音機器、コンピュータ部品/付属品、ビデオ録画再生装置(DVD/VCD プレ ーヤー&レコーダーを含む)では世界第 2 位の輸出国である。 香港の電子製品輸出の 4 分の 1 を占める完成品の大半は家庭用の電子製品である。消費者 向け電子製品で最大の割合を占める製品カテゴリーは、ラジオ、光ディスクプレーヤー、 ハイファイ機器、TV、ビデオ(VCR)、DVD プレーヤー/レコーダー、MP3 プレーヤー 等から構成されるオーディオビジュアル(AV)製品である。また香港は、デスクトップ、 ノートブック型などのコンピュータや磁気や光ディスクドライブなどの各種コンピュータ 製品、有線電話やコードレス電話などの通信関連製品も輸出している。輸出高はやや少な いものの、電卓、電子辞書、翻訳機、乾電池、パーソナルセキュリティ製品、煙探知装置 なども輸出されている。 香港の電子製品輸出の約 4 分の 3 を部品、コンポーネントが占める。特に、香港は委託加 工のために、大量の半導体製品を主に中国本土に再輸出している。また、通信関連製品の 部品や付属品、AV 機器、事務機器、コンピュータ、レジスタ、コンデンサー、クリスタ ル、共振器、スピーカー、スイッチ、ブザー、液晶ディスプレイ(LCD)、プリント基板 (PCB)、変圧器などの部品も生産し、輸出している。 大半のメーカーは、価格競争力を維持するために、労働集約的な生産工程を中国本土に移 転しており、香港の拠点は、主に製品開発、品質管理、経営、マーケティング、物流サポ ートなどを担当している。このような企業は本土に生産拠点を移転して生産活動に従事し ていても、大半が非製造企業に分類されている。 しかし香港で高付加価値生産や資本集約的生産を行っている企業も沢山ある。こうした企 業が行っている生産活動としては IC のパッケージング、多層 PCB やリードフレーム・ボ ンディング、高価値製品のための表面実装技術 (SMT) による PCB アセンブリなどが 挙げられる。 香港電子産業の特徴は、IC、ダイスなどの主要コンポーネントの輸入に大きく依存してい ることである。香港企業は自由貿易港としての香港の利点と充実した通信インフラを利用 して、世界中から自由に製品や資材を調達することができる。また、PCB、受動素子、ス ピーカー、金属部品、プラスチック部品、コネクタ、ギフトボックス、などの部品やコン ポーネント、その他の梱包資材は主に香港内や中国本土の企業から調達できる。 香港電子産業の成功の秘密は効率経営にある。市場が急速に変化していく中で、香港企業 は、速やかに顧客に効果的なサービスを提供したり、製品トレンドの変化をモニターした りしている。さらに品質を重視する顧客が増大する中で、多くの企業が品質保証制度を強 化した。これは、品質管理制度の国際基準として認められている ISO9000 の認証を受けた 香港企業の増大を見ても明らかである。また、環境保護に対する関心が高まる中で、環境 管理制度の基準である ISO14000 の認証を受ける香港企業も増大した。 香港の電子製品輸出業績** - 2005 年 再輸出 うち本土原産品 総輸出高 主要市場別 2007 年 成長率 % 100 万 HK$ 成長率 % 100 万 HK$ 成長率 % 36,343 +65 36,584 +1 21,390 -42 1,023,232 +18 1,177,932 +15 1,327,958 +13 620,258 +24 734,668 +18 817,269 +11 1,059,575 +19 1,214,517 +15 1,349,347 +11 100 万 HK$ 国内輸出 2006 年 2005 年 2006 年 2007 年 シェア% 成長率% シェア% 成長率% シェア% 成長率% 中国本土 53 +23 56 +20 59 +17 EU(27 か国) 13 +21 12 +3 10 * ドイツ 3 +17 3 +8 2 -7 オランダ 3 +35 2 -5 2 +10 10 +16 10 +13 9 -3 ASEAN 7 +9 7 +11 7 +14 シンガポール 3 +8 3 +5 2 -2 日本 5 +18 5 +5 4 +1 米国 カテゴリー別輸出高 2005 年 2006 年 2007 年 シェア% 成長率% シェア% 成長率% シェア% 成長率% 完成品 26 +14 25 +10 25 +10 部品、コンポーネント 74 +21 75 +16 75 +12 製品種類別輸出高 2005 年 2006 年 2007 年 シェア% 成長率% シェア% 成長率% シェア% 成長率% AV 機器・部品 25 +12 24 +7 20 -4 IT 機器・部品 27 +31 26 +9 19 -17 通信機器、部品 6 +16 6 +24 14 +136 半導体、電子管 22 +16 24 +24 27 +24 * 僅少 **オフショア貿易は通常の貿易額には含まれないため、これらの数値は必ずしも香港企業 の輸出実績を正確に反映していない。 香港の電子製品輸出は 2007 年に 11%と増加した。AV 機器・部品、IT 機器・部品の輸出 は減少したが、通信機器、半導体製品は急増した。 市場別では、2007 年にドル弱まりの影響を受け対米輸出が 3%減、健全な通信機器の輸出 にもかかわらず対 EU 輸出も停滞気味であった。 アジアに関しては、2007 年に中国本土への輸出が 17%増大。委託加工生産の旺盛な需要 を受け、部品、コンポーネントの輸出は中国本土向けがほとんどを占め、下落するコンポ ーネント価格にかかわらず拡大し続けた。 それ以外のアジアに関しては、部品とコンポーネントが大半を占める対 ASEAN 輸出も現 地の輸出向け生産の増大に刺激されて 14%増大したが、対日輸出は微増に終わった。 販路 香港の大半の電子製品メーカーは、海外の有名ブランド向けに OEM や ODM による生産 を行っている。このような大口顧客のなかには香港に調達事務所を設置して、直接買い付 けを行っている企業もある。また香港企業は、独自の販路で商品を流通・再販する、北米 や欧州のエレクトロニクス製品を専門に扱う輸入会社や商社とも取引を行っている。 日本の場合、日本企業のアジア生産拠点からの逆輸入が電子製品輸入の大半を占めている が、日立、シャープ、東芝、ソニー、松下、サンヨーなどは香港のサプライヤーと OEM 契約を締結している。いずれにしても、香港企業は修理や整備などのテクニカルサポート を提供し、アフターサービスは海外の輸入側が提供している。 Truly、V-Tech、Group Sense、Venture、GP、SMC など、自社ブランドで電子製品を販売 している大手香港企業もある。このような企業は、先進国だけでなく、中南米や東欧など の新興経済地域にまで販売網を拡大している。 部品やコンポーネントに関しては、多くのメーカーがコンピュータ、レコーダー、ラジオ 等の部品や付属品、PCB や LCD などのコンポーネントなどを、米国、欧州、日本の有名 メーカーからの特別注文に対応するかたちで製造している。一方、規格品はほとんどが海 外の流通業者やメーカーに直接輸出されているが、海外に独自の販売拠点や駐在員事務所 を置いている香港企業もある。 香港は、アジア太平洋地域における電子部品やコンポーネントの重要な貿易ハブでもある。 中国製品以外にも、多くの日本、台湾、米国、韓国製品が香港経由で再輸出されている。 部品・コンポーネントの多国籍メーカーは、アジア太平洋地域における販売・流通・調達 活動を統括するための拠点を香港に置いている。 見本市(トレードフェア)への参加による販売促進は、香港の電子製品関連企業にとって 市場機会を開発するための重要な手段である。重要な見本市には、米国で開催される CES や COMDEX、ドイツの CeBit や Electronica、日本の CEATEC、台湾の台北国際電子製品 展示会、シンガポールの CommunicAsia、香港貿易発展局(HKTDC)が主催する香港エレ クトロニクスフェアなどがある。HKTDC が主催する中国本土やその他の地域向けの事業 使節団も、香港企業が潜在顧客との関係を構築するための重要な機会になっている。 業界の動向 ほかのアジア諸国のサプライヤーが次第に香港の電子製品輸出の脅威になっており、競争 が激化しているが、香港は依然として高価格帯の消費者向け製品の調達拠点として人気を 保っている。これは、技術的に遅れたサプライヤーとの競争が低価格帯の量産品や単純な 製品に限定されていたり、より進んだ台湾やシンガポール企業の製品構成が香港企業とは 違っていることが理由である。それよりも懸念されるのは、 中国本土企業との競争である。 中国本土には国内市場向け電子製品のための充実した産業基盤があり、特に OEM 生産で は国際市場でも香港企業の脅威になっている。 香港企業はこうした動向を受けて、付加価値の拡大に努めている。OEM を維持しながら、 海外の顧客により大きな付加価値を提供する ODM 事業に力を入れている。ODM のために は OEM よりも美しいデザインや技術への投資が必要になるが、ODM 事業の開発は、香港 企業の競争力強化のための重要な戦略となっている。ODM 事業で成功するために最も重 要なのは、製品設計や開発能力である。また、世界の製品トレンドや各市場の消費者の趣 味や好みに関する知識も競争力強化に役立つ。 香港企業が設計業務を担当するようになった結果、海外の輸入企業が欠陥製品の責任を香 港のメーカーや商社に負わせるようになってきた。そのため、香港企業にとって海外市場 の消費者保護や製造物責任に関する法律や規制の遵守がより重要になりつつある。 消費者向け電子製品の部品やコンポーネントはアジアでよく売れているが、大手企業は、 コンピュータ、通信機器、ナビゲーション・システムなどの産業機器用部品やコンポーネ ントへと重点を移している。例えば、多くの PCB メーカーは、ファインピッチ多層ボー ド製品の生産へと移行し、一部の LCD メーカーは高価格帯製品のための高解像度 LCD モ ジュールの開発を進めている。このようなメーカーは、付加価値拡大に向けて垂直統合を 強化する戦略を進めており、PCB のレイアウト、概略図、工具生産、生産、品質保証等が、 ひとつの屋根の下で行われるようになった。 その一方で、消費パターンの急速な変化に伴い、主要輸出市場では在庫が縮小し、在庫補 充への機敏な対応が求められるようになった。技術の進歩に伴って、製品ライフサイクル も短くなり、消費者を引き付けるために、製品機能やデザインをより頻繁に変更しなけれ ばならなくなった。香港企業は、急速に変化する消費者の好みや技術革新への速やかな対 応で広く知られている。香港企業は製品機能や外観を常に改善し、納期を短縮するために 調達や生産管理システムを再構築した企業も少なくない。 また、情報技術の重要性が高まる中で、eコマースが産業界の重要な柱になっている。香 港の電子製品メーカーや輸出企業にとって、オンライン化はマーケティング活動をサポー トするための基本要素になりつつある。企業は販促活動の手段やカタログとしてウェブペ ージを利用するだけでなく、電子的手段を積極的に利用してビジネス拡大に努めている。 たとえば、データ交換や物流手配のための顧客とのコミュニケーションにインターネット を活用したりしている。また、顧客がウェブサイトからソフトウェアをダウンロードして コンピュータ周辺機器や電子製品、電子玩具等の機能を更新したり、強化できるようにす ることによって、インターネットを販売拡大のための手段として利用している香港企業も ある。 CEPA の規定 中国政府は CEPA III に基づき、2006 年 1 月 1 日からすべての香港原産品に免税措置を適 用することに合意した。施行規則によれば、CEPA で原産規則が規定されていない品目は、 現地生産者が申請した後に CEPA の原産地規則に関して合意が成立し、その規則が満たさ れれば免税措置が適用される。 CEPA の原産地規則に基づいて香港原産と見なされるには、香港における関税品目の変更、 特定の製造工程の実施、FOB の 30%以上と規定される付加価値要件への適合、最終製造 または加工の実施が必要である。付加価値割合を算出する際には、原料費や労働コストの ほかに香港で生じた製品開発費も算入することができる。 詳細な情報や電子製品に関する原産地規則は、以下のリンクから閲覧できる。 http://www.tid.gov.hk/english/cepa/tradegoods/files/mainland_2008.pdf. 電子製品の輸出に影響を及ぼす一般貿易措置 海外市場 大半の電子製品や特定の部品の輸出には、安全性要件が適用される。例えば、米国に輸出 される特定の電子製品は、UL/ETL 安全認証や同等認証の要件に適合していなければなら ない。同じように EU に輸出する製品は、低電圧電気機器に適用される指令を含め、安全 性指令に適合し、基準適合の印である CE マークを明記しなければならない。電磁環境両 立性 (EMC) に関しては、対米輸出品は FCC 基準に適合していなければならない。ま た EU の CE マークでも、適用 EMC 指令の適合が義務づけられている。 香港の輸出企業は、市場にグリーン・コンセプト(環境保護意識)が普及しつつあること に注意しなければならない。特に欧州の消費者は環境保護意識が強い。EU が電子製品や 家電品の売上に影響を及ぼしかねない環境保護指令を採択したのも意外なことではない。 こうした指令には、水銀を含有する電池や蓄電池製品の制限や、2005 年 8 月に施行され た廃電気電子機器の回収に関する指令(WEEE)、2006 年 7 月に施行された特定の有害物 質使用禁止(RoHS)指令などがある。 中国の WTO 加盟 2001 年 12 月に中国は WTO に加盟した。これに伴う本土市場の開放が、香港企業に大き な機会をもたらすであろう。関税率の引き下げと輸入枠撤廃によって、香港製品やその他 の外国製品の本土への販売が加速された。また、中国政府による貿易・流通部門の自由化 も、これら製品の本土市場への浸透を促している。 中国政府は情報技術合意(ITA)に参加したことを受けて、特定の IT や通信関連製品、各 種部品やコンポーネントを含む大半の ITA 製品の輸入関税を廃止した。この措置によって、 ITA 製品の本土市場での販売が促進された。一方、香港の電子製品メーカーは、中国政府 の約束した通信やインターネットサービス市場の自由化の恩恵に浴している。市場開放が 進む中で電気通信料金が引き下げられたため、IT や通信関連製品の需要は過去数年間に確 実に増大した。それが電気通信サービスの浸透を促し、IT や通信関連製品の需要拡大につ ながっている。 製品トレンド IT やマルチメディア製品が、情報技術の重要性の高まりとインターネットの継続的人気に 支えられて、売れ筋商品としての地位を維持している。一方、競争激化の中での価格下落 に伴い、パソコンなどの従来の IT 製品がしだいに量産品化してきた。そうした製品の市場、 特に米国では、熾烈な競争のために、技術革新や機能強化を継続的に進めなければ事業継 続が困難になっている。 注目分野のひとつとしてワイヤレスが挙げられる。ブロードバンド・インターネット・ア クセスの人気上昇を受けて、ワイヤレス接続に対する需要が増大している。特に、ワイヤ レス LAN ソリューション、いわゆる WiFi は、インターネットへのワイヤレス・アクセス の方法として一般化した。一方、一部の企業はシステム・アプリケーションのためのワイ ヤレス LAN ソリューションを開発したが、それがネットワーキング市場の好況に支えられ てニッチ市場として浮上しつつある。また、コンピュータ、携帯電話、その他のポータブ ル機器を短距離無線でつなぐブルートゥースも普及してきた。 インターネットアクセス、e メール、SMS/MMS などの機能を持つ携帯電話が人気を呼ん でいる。また一部の携帯電話には、デジタルカメラ、ラジオ、MP3、動画再生機能が追加 され、特に若者の間で需要を伸ばしている。大手メーカーは依然として、3G 技術に力を 入れているが、料金低下が進む中で 4G 時代の幕開けも近いと見られる。 消費者向け電子製品分野の重要トレンドとして、AV 機器のデジタル化があり、特にデジ タル画像技術の伸びが顕著である。特に、デジタルカムコーダーやデジタルカメラが、価 格下落の中で急成長している。デジタルカメラの売上は今や銀塩カメラに追いついた。ホ ーム・エンターテイメント・コンセプトに支えられて、DVD プレーヤーを購入する消費者 が増えている。これが、高音質スピーカー、デコーダー、サラウンドアンプ、ホームシア ターなどの DVD プレーヤーを補完するオーディオ・システムの需要増につながっている。 また DVD プレーヤーの成功に続いて、大手メーカーはすでにビデオデッキの次世代製品 として DVD レコーダーを市場に投入している。 デジタル・ディスプレイ技術が進歩する中で、LCD やプラズマを利用したワイド TV の需 要が着実に増大しつつある。また、もうひとつの動向として、米国、EU、日本などの市場 でデジタル TV(DTV)放送が進められていることが挙げられる。特に米国は、アナログ 式 TV 放送を 2009 年までに段階的に全廃することを決めている。EU では国によって進展 状況に差があるが、英国やドイツが DTV 放送の導入で他の国をリードしている。大半の EU 加盟国では、2010 年までにアナログからデジタル放送への切り替えが完了する見込み である。したがって今後、デジタル TV 製品の需要が増大するであろう。
© Copyright 2024 Paperzz