2013年2月4日 香港宝飾産業プロファイル ∙ ∙ ∙ ∙ 香港の宝飾品産業では、高級宝飾品部門が大半を占める。同産業は、観光客への販売を含め、 地元市場の拡大とともに発展してきた。 香港では中級品から高級品まで多種多様なジュエリーが生産されている。香港メーカーは、小さな 石をセットしたジュエリーの製造が得意である。香港は純金製品の生産では世界トップであるととも に、翡翠を使った宝飾品の生産拠点としても長年にわたって高い評価を得てきた。最近では、真珠 の貿易・流通拠点としても発展している。 高付加価値をつけるための工程は依然として香港にあるが、その他の製造工程は、深圳や番禺を 中心とする中国本土への移転が進んでおり、中国本土に製造工場を建造したり、工程だけをアウト ソーシングする動きが活発化している。また、CAD(コンピューター援用デザイン)を導入して商品開 発期間を短縮するメーカーも増えている。 CEPA(中国本土/香港 経済貿易緊密化協定)にしたがって、中国本土政府は2006年1月1日から 宝飾品を含むすべての香港製品を香港原産品と認め、無関税措置を適用している。 宝飾品業界の特徴* 製造業(2012年9月現在) 事業所数 366 従業員数 2,884 注:* 宝飾品産業に関する統計は香港だけを対象とする。 香港の宝飾品産業は大きく分けて2つのセクターから構成されている。一つは貴金属を使った宝飾品、も う一つはイミテーションジュエリーだ。香港から輸出される宝飾品のおよそ86%が貴金属を使った宝飾品 である。 香港の宝飾品業界は、顧客ニーズに柔軟に対応することで知られている。一言で高級ジュエリーと言っ ても、中価格帯のものから高価格帯の製品まで幅広い範囲を指す。最も人気があるのが、石をセットした ジュエリーであり、特に、ダイヤモンドを14Kや18Kの台やイエローゴールドとホワイトゴールドのコンビネ ーションの台にセットしたジュエリーは人気が高い。香港メーカーは、現代的なデザインの、小さな石を使 ったジュエリーの生産を得意としている。石をセットする技術やデザイン開発能力は世界トップクラスの欧 州メーカーにも引けを取らない。 香港には、洗練されたデザインの宝飾品を少量、低コストで提供できる、高いスキルと生産性を誇る労働 力がある。高級ジュエリーメーカーの技術力はタイのメーカーよりは優れているが、イタリアや日本のメー カーのような世界的リーダーと比較すると劣ると見られている。香港は特にゴールド製品の製造では世界 的リーダーである。高付加価値をつけるための工程は依然として香港にあるが、その他の製造工程は、 深圳や番禺を中心とする中国本土への移転が進んでいる。 香港は翡翠を使った宝飾品、特にバングル、リング、ペンダントなどの主要生産拠点として長年にわたっ て知られてきた。香港はまた近年になって、真珠の貿易・流通拠点としても発展してきたが、これは中国 産真珠や南海真珠の業界が急成長するとともに、タヒチ真珠産業が衰退してきたことが主な理由である。 香港の宝飾品輸出の推移^ 貴金属を使った高級宝飾品 2010年 (SITC 897.3) 2011年 2012年 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 地場輸出 7,219 +25 8,382 +16 8,718 +4 再輸出 27,378 +21 38,210 +40 44,535 +17 19,069 +24 23,825 +25 23,414 -2 34,597 +21 46,592 +35 53,253 +14 そのうち、中国本土産 総輸出額 貴金属を使った高級宝飾品 2010年 2011年 2012年 の輸出市場 シェア(%) 成長率(%) シェア(%) 成長率(%) シェア(%) 成長率(%) 米国 35.2 +20 33.8 +29 29.5 * EU 21.4 +8 19.0 +20 17.4 +4 5.7 +2 5.6 +31 7.6 +56 5.8 +30 5.5 +28 4.0 -17 3.5 +2 2.8 +8 2.0 -19 インド 1,1 +9 5.2 +531 9.2 +101 スイス 7.8 +38 7.3 +26 8.9 +40 マカオ 3.6 +53 6.7 + 150 6.1 +4 ASEAN 4.9 +25 5.6 +56 5.6 +14 UAE 3.0 +26 3.3 +48 5.3 +85 カテゴリー別内訳 2010年 イギリス フランス イタリア 2011年 2012年 シェア(%) 成長率(%) シェア(%) 成長率(%) シェア(%) 成長率(%) 96.3 +23 97.2 +36 97.0 +14 真珠、貴石、半貴石を使用 3.2 した宝飾品 -11 2.7 +11 2.9 +24 金や銀を使用した貴金属 +180 0.1 -65 0.1 +37 貴金属を使用した宝飾品 0.5 真珠、ダイヤモンドやその 2010年 他貴石の原石(SITC 667) 金額 (100万 香港ドル) 2011年 2012年 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 地場輸出 130 -36 104 -20 137 +32 再輸出 95,678 +37 125,763 +31 115,522 -8 5,672 +31 6,136 +8 7,012 +14 95,808 +37 125,867 +31 115,659 -8 そのうち、中国本土産 総輸出額 世界的不況にかかわらず、香港の高級ジュエリーの輸出は近年、回復を見せている。2011年は前年比 35%まで増大したが、2012年の輸出額の成長率は14%に減速した。貴金属および貴石の価格は高騰した が、輸出量はわずかな増加にとどまった。2012年の香港製高級ジュエリーの輸出市場は米国とEUが、お よそ47%を占めている。しかし、平均よりは緩やかだが、この2つの市場シェアは2010年の57%から減少し ている。対照的に、近年インドへの高級ジュエリーの輸出は顕著な伸びを見せ、中国本土に下請けさせ るジュエリーメーカーとしてインドが参入する状況のなかで、前年比伸び率は2011年が531%、2012年が 101%拡大している。さらに、中東におけるダイヤモンドの貿易・流通拠点へと発展したUAEへの輸出の前 年比伸び率は、2011年が48%増、2012年が85%増と目覚ましい成長を遂げた。一方で、真珠、ダイヤモンド やその他貴石の原石の前年比輸出伸び率は、2011年に31%増と大幅な増加を見せた後で2012年には8% 減まで縮小した。 香港のジュエリー輸出企業は、中国本土やインド、タイなどのメーカー企業との厳しい競争に晒されてい る。このような熾烈な競争と、貴金属、ダイヤモンド、貴石、その他素材の価格上昇とがあいまって、香港 企業の利益がやや圧迫される傾向にある。だが、ジュエリーメーカーはジュエリーの価格の大半を占める 貴金属や石の価格高騰分を卸価格や小売価格に転換できるので、他の産業分野の企業よりは恵まれて いると言える。一方、海外の小売企業や輸入会社は香港企業に支払いの延長、未売品の交換、納期の 短縮、デザインの改善などを迫るようになっている。 中国元高の影響は他の産業分野より軽微と予想されるが、これは、貴金属や石のコストと比較すると、加 工のために香港から中国本土に輸出される宝飾品の価格に占める中国本土における材料調達や加工 のコストの比率が比較的小さいことが理由である。一方、元高と 中国政府の消費奨励政策があいまって、 中国消費者の購買力と輸入品に対する需要が拡大 しており、香港の対本土ジュエリー輸出が増大する とともに香港を訪れる中国人観光客の購入が増えるものと期待される。 イ ミ テ ー シ ョ ン ジ ュ エ リ ー 2010年 (SITC 897.2) 金額 (100万 香港ドル) 2011年 2012年 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 金額 (100万 香港ドル) 成長率 (%) 地場輸出 101 + 21 100 -1 103 +3 再輸出 8,293 +19 8,908 +7 8,790 -1 7,810 +19 8,251 +6 8,133 -1 8,394 +19 9,008 +7 8,993 -1 そのうち、中国本土産 総輸出額 注:^オフショア貿易は通常の貿易統計には反映されないため、上記の表は必ずしも香港企業による輸出 を正確に表しているとは限らない。*統計的に優位でない 香港は中国本土に次いで世界第2位のイミテーションジュエリーの輸出地域である。2012年のイミテーシ ョンジュエリーの総輸出高は89億香港ドルにのぼった。高級ジュエリーとは異なり、イミ テーションジュエ リーはほとんど香港内で製造されておらず、中国本土をはじめとする香港外で製造されたものが香港へ と再輸出されている。香港から輸出されるイミテーションジュエリーのなかで中国製は93%にのぼる。香港 のイミテーションジュエリーの輸出高は2011年に前年比7%増を記録したが、2012年には1%縮小した。 販路 香港の宝飾品産業は基本的に輸出指向である。下請け制度が確立しており、中小企業が大手メーカー や地元の小売企業に型造り、鋳造、石留め、研磨、電気めっきなどのサービスを提供している。最先端製 造機器を設置してジュエリーの大量生産を行っているのは大手メーカーに限られる。輸出向け製品には 顧客企業の名称やロゴを入れることが多い。香港ジュエリーメーカーのなかには海外に事務所や店舗を 置いて販売促進に努める会社もある。インターネットも販売に積極的に利用されている。 香港メーカーのなかには、景況に涌く観光産業に押されて、香港で小売・流通の分野に進出する企業も ある。香港政府観光局が2012年に行った調査によると、香港に滞在する観光客の買物総額に占めるジュ エリー購入額は約176億香港ドルと、全体の18%を占める。中国本土からの観光客に限ると、この比率が 上昇して20%となる。 香港のジュエリー小売企業数社がすでに、フランチャイズや提携により、中国本土で小売網を拡大してい る。そして、好ましいブランドイメージを確立している。香港貿易発展局が中国本土の消費者を対象として 最近行った調査の結果によると、大衆ブランドや高級ブランドを購入するときには中国ブランドや外国ブ ランドより香港ブランドを選ぶと答えた回答者が圧倒的に多かった。また、中国本土ブランドより香港ブラ ンドは35.9%も価格が高いことも明らかになった。 香港企業にとってトレードフェア(見本市・展示会)に参加して自社や自社製品をアピールすることは、輸 出機会を探る有効な手段である(有力なジュエリーフェアを以下に列記)。また香港貿易発展局は時折、 香港メーカーから成る使節団を組織して海外市場を訪れ、新たな顧客を見つけるサポートをしている。 国・地域 主要フェア 香港 ・香港インターナショナル ジュエリー ショー(3月) 中国本土 ・深圳インターナショナル ジュエリー フェア(9月) 米国 ・JCK ショー(ラスベガス、5-6月) 欧州 ・ヴィチェンツァ フェア(イタリア、1月、5月、9月) ・バーゼルワールド(スイス、4-5月) 業界トレンド ジュエリーはいちだんとファッション志向を強めている。価格を上げる上で斬新なデザインを開発すること が重要になっている。そのため、メーカーにとっては深い冶金学的知識を持つことが求められるようにな ってきた。また、最先端技術を導入することによって斬新なデザインの開発が可能にもなっている。かつ ては富裕層をターゲットとした宝飾品産業だが、今では最先端ファッショントレンドを反映させるとともに、 若年層の消費者や中流階級の消費者もターゲットにするようになった。そのための手段としてブランド構 築を進める企業もある。 最近はテクノロジーの発達により、高品質の宝飾品を大量生産し、競争力のある価格で提供することが 可能になっている。香港の宝飾品業界は依然として基本的に手作りが中心だが、最先端機器を導入して いる大手メーカーも少なくない。このような大手メーカーは電気鋳造をはじめとする先端技術と経験ある 職人の技術を融合させて効率向上を狙っている。CAD/CAM(コンピューター援用設計・製造)やCNC(コ ンピューター数値制御)システムを導入してデザイン開発や生産を行っている。香港メーカーはまた、新 技術のおかげで不具合の修正だけでなく、魅力的なジュエリーを開発するための新素材の開発や、デザ インを正確に製品に反映させることもできるようになった。 数多くの産業分野同様、宝飾品業界にも再編の波が押し寄せている。特に米国でそのような動きが顕著 に見られる。過去数十年間に、米国の宝飾品メーカーや宝飾品店の数は大幅に減少した。また米国では ウォルマート、ターゲット、コストコなどの大手量販店が着々と消費者の獲得に成功しており、このような 大手小売企業との競争に苦しむ小規模小売店の収益は下落の一途を辿っている。米国では、宝飾品の 売り上げでウォルマートがトップとなっている。リサーチ・アンド・マーケット社が最近行った調査からも、高 額品ジュエリーを求める米国の消費者の20%がこのような大手量販店で購入していることが明らかになっ ている。大手量販店は通常、サプライヤーよりも強い交渉力を持っており、香港メーカーは工場出荷価格 を引き下げたり、さらに付加価値のあるサービスを提供して注文を獲得せざるをえない状況に追い込ま れるものと予想される。 マーケティングや流通に関しては、独自のブランドを構築したり、ライセンス契約を締結したりする香港メ ーカーもある。これは長期的に競争力を強化する上で効果的な戦略だが、メーカーの流通分野への進出 が不可欠ともなる。直営店の開設に加えて、近年のオンラインチャネルの急速な発展も注目に値する。ジ ュエリー産業におけるeコマースはさらに普及するものと予想される。長期的に見れば、インターネットが、 香港メーカーが自社製品を訴求、販売するための新たな直販チャネルをもたらすであろう。 CEPA条項 中国政府は、CEPA(中国本土/香港経済貿易緊密化協定)にしたがって、2006年1月1日から宝飾品を含 むすべての香港製品を香港原産と認め、無関税措置を適用している。CEPA条項により、CEPAのなかに 原産国規定がない商品は、メーカーが申請し、香港と中国本土政府がCEPA のなかに盛り込むことで合 意し、その条件をメーカーが満たすことができれば、無関税措置が適用される。香港が原産地でない宝 飾品を中国本土に輸出する際には、依然として最大35%もの関税が課される。 すでに公表されている、無関税措置を享受するためのCEPA原産地規定は、香港政府が打ち出している このような製品の輸出規定とほぼ同じである。つまり、貴金属を使ったジュエリーが香港原産であると認 められるためには、主要工程とされる型取りが香港で行われなければならない。アセンブリー(組み立て) 工程が必要な場合は、それも香港で行われなければならない。真珠、貴石、半貴石を使う宝飾品の場合 には、型取りと台へのセッティングの両方が香港で行われなくてはならない。さらに詳細な情報に関して は以下のリンクを参照のこと。 http://www.tid.aov.hk/enalish/ceDa/tradeaoods/files/mainland 2013.pdf 宝飾品輸出に影響を与える一般貿易措置 中国本土では、生産者や卸企業を対象とする金の売買はすべて上海金取引所で行われており、市場価 格が取引に適用されている。2004年、金製品の製造、流通、小売に関して義務づけられていた認可取得 が撤廃され、中国本土の企業のなかには金を使った宝飾品の輸入を許可された企業もある。2010年8月 中国は、金の輸出入取引への参入銀行の増加、海外企業への貿易の開放、上海金取引所の海外会員 の増加、また、海外貴金属業者の取引業務に対する認可方法の検討を公表した。 2005年5月から、金をはじめとする貴金属を使った宝飾品の輸出に課されていたVAT(増値税)が免除さ れたが、そのような宝飾品に使用されていた金をはじめとする貴金属そのものに対して輸入の際に中国 政府が課していたVATの還付は受けられない。2007年7月から、一部の真珠や貴石、貴金属に対する VAT還付率が13%から5%に引き下げられた。一方、2009年4月から、イミテーションジュエリーに対する還 付率は5%から9%に引き上げられた。 一般貿易によるダイヤモンド(原石、研磨済みだが台にセットされていないダイヤモンドを含む)の輸出入 は、上海ダイヤモンド取引所(SDE)のなかにある税関施設で通関業務を行わなければならない。海外か らダイヤモンドを直接SDEに持ち込む場合には、輸入関税、VAT、消費税が免除される。SDE で売買され るダイヤモンドはすべてVATが免除される。中国国内の企業がダイヤモンドをSDEに持ち込む場合には 税金が還付され、加工段階で納付された税金は、輸出の際に全額還付される。だが、SDEからダイヤモ ンドを直接輸出する場合には、税金の還付は受けられない。中国国内の企業がダイヤモンドをSDEに持 ち込む場合には税金が還付され、加工段階で納付された税金は、輸出の際に全額還付される。だが、 SDE からダイヤモンドを直接輸出する場合には、税金の還付は受けられない。SDEを通して国内市場で 販売されるダイヤモンドには輸入関税は課されないが、VATが課される(研磨済みダイヤモンドに4%、原 石はVAT免除)。小売店から消費者に販売される際に5%の消費税が課される。 アフリカにあるダイヤモンド産地からダイヤモンドが非合法ルートを通って販売され、内戦や近隣諸国と の紛争の財源になっているのではないかとの懸念に対応するために、ワールド・ダイヤモンド・カウンシル (WDC)は一部の加盟国の協力を得て、アフリカの紛争地帯から輸出されるダイヤモンド原石を追跡する ための認証制度を立ち上げた(通常、「キンバリー・プロセス」と呼ばれる)。香港と中国はキンバリー・プ ロセスへの参加国として、2003年にこの認証制度を導入した。その結果、香港でダイヤモンド原石の輸入、 輸出、保管(積み替えの際の一時保管も含む)、売買に従事するすべての企業が工業貿易署(TID)への 登録を義務づけられている。香港企業はまた、ダイヤモンド原石の輸出入を行う前に、TID発行のキンバ リー・プロセス(KP)認定証を取得しなければならない。 2008年7月、米国はビルマ(ミャンマー)に対し経済制裁を拡大し、ビルマからの輸入すべてを禁止した。 なお、2008年9月からは、ビルマで採鉱もしくは採取されたルビーや翡翠に加え、それら貴石を使った宝 飾品の米国への輸入も禁じた。この規制は、ビルマ産のルビーや翡翠を使う宝飾品すべてに適用される ため、香港や中国本土のジュエリー輸出企業には注目すべきことである。さらに、ビルマ産ではないルビ ー、翡翠およびジュエリーの輸出企業は、ビルマ産を使った品物の取引を防ぐための措置が必要とされ る。 EUでは、環境や健康に対する関心が引き続き重要な課題である。EUは皮膚に触れるとアレルギー反応 を起こす可能性のあるニッケルを含む宝飾品の輸入を禁止している。この規制に対応した香港宝飾品メ ーカーは他の素材を使った宝飾品の対EU輸出を行ってきたが、他国メーカーも同規制への対応を進め ており、香港メーカーを追い上げ始めた。また、米国消費者製品安全委員会は、鉛を含むイミテーション ジュエリーの輸入を厳しく規制している。 上記のような政府が導入した法律や規制に加え、さまざまな組織が宝飾品に使用する素材を対象とする 認証・認定制度を導入している。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)、ナチュラル・カラー・ダイヤモンド・ アソシエーション(NCDIA)、ダイヤモンド・トレーニング・カンパニー(DTC)などの組織だ。たとえば、タンザ ナイト・ファンデーションは、タンザナイトの等級制度を立ち上げた。このような認証・認定制度に対応する ことが宝飾品業界のトレンドとなっており、このような制度が近い将来一つのスタンダードとして確立する ものと予想される。 製品トレンド 素材的には、白い金属(ホワイトメタル)が今後も主流だろうが、色石(カラーストーン)を使ったジュエリー への関心や需要が再燃している。おしゃれなデザインのものに対する需要の高まりとともにイエローゴー ルドの需要が再び増加している。チタンが、軽量さ、強度、人体に刺激を与えないことなどが評価されて 人気を得ている。また、注目されるのは、近年、ダイヤモンドを使ったジュエリーの消費が急増したが、特 に中国やインドなどの、収入が急速に上昇し、消費者の購買力が強い新興経済国で見られることだ。そ れでも、高品度の金や合金とクリエイティブなデザインを組み合わせた低価格製品も、比較的可処分所 得の少ない消費者の間で人気が高まるであろう。 若年層消費者はこの数年間で増えている。彼らはおしゃれに強い関心を持ち、デザインを重視する。アパ レルファッションの最新トレンドを雑誌やテレビ、映画などで見て、影響を受けている場合が多い。デビア ス社の調査によると、アジアでは学校を卒業して就職する女性たちが一番のジュエリー購買層となってい る。 製品トレンドとしては、ジュエリーデザインはアパレルファッションの影響をますます強く受けるようになっ ている。特に女性の消費者はジュエリーなどを使って自分のファッションセンスを表現することを好む。フ ェミニンでロマンチックなデザインが高級品市場で人気があるものと見なされている一方、若い女性の間 では使いやすさも重視されるようになっている。これは、ミックス&マッチ・ファッションで、ジーンズでもジ ュエリーを着けるような傾向が強まっていることの反映である。 男性もおしゃれに関心を持つようになっており、メンズジュエリーへの需要の高まりも見られる。「ジュエリ ーは女性的なもの」という概念は消えつつある。男性は「ジュエリーは男性的にもなりうる」と認識している。 ジュエリーはトータルコーディネーションに不可欠の要素であり、男性ファッションのなかで重要な役割を 果たす、と考え始めた。男性はブレスレット、リング、ペンダント・ネックレスなどを購入することが多い。ま た、カフスやタイピンなどの宝飾品を使って身だしなみを整えることも少なくない。しかし依然としてメンズ ジュエリーの市場シェアは非常に小さく、膨大な成長の可能性を秘めている。 アクセサリーの人気が再燃している。多くのブティックがトレンディなファッションとコーディネートする要素 として宝飾品を扱っている。このような展開が上品でロマンチックなダイヤモンドジュエリーの需要拡大に 貢献するものと予想される。ダイヤモンドジュエリーは富裕層に最も好まれるが、半貴石やカラークリスタ ルを使った宝飾品はそれほど可処分所得が多くない消費者の間で人気が高まるであろう。
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