2008 年 7 月 香港の家具調度品産業プロファイル 概要 ● 家具調度産業は、香港でも歴史のある製造業である。家具調度産業は、家庭用家具、 事務用家具、キッチン用家具のほか、マットレス、寝具、家具部品等の製造に従事 する。家具調度品の製造には、木材、ラタン、樹脂、金属を含め、幅広い原料が使 用されている。製品の中でも木製家具は、香港家具産業の主要な製品および輸出品 である。 ● 香港企業は個性あるデザイン能力を持っているが、一方で海外バイヤーの OEM 需要 にも応じている。入札契約ベースでホテル、オフィス、その他の不動産プロジェク ト向けの高級家具の設計製造を専門とする企業もある。 ● 中国本土と香港間の経済貿易緊密化協定(CEPA)に基づき、中国本土は、2006 年 1 月 1 日からすべての香港原産品に免税待遇を与えることに合意している。施行規則 によれば、CEPA で原産地規則の規定されていない製品に関しては、現地製造企業の 申請により原産地規則に関する交渉が開始され、合意に達すれば免税待遇が受けら れる。 家具調度品産業の特徴 香港の家具製造企業は、家庭用家具、事務用家具、キッチン用家具のほか、マットレス、 ベッド類、家具部品等の幅広い分野で家具製造に従事する。 現在、香港家具産業の製造活動の大半は、中国本土で行われている。企業は、経営、財務、 経理、マーケティングなどの高付加価値活動に従事する本社を香港に設ける一方、事業コ ストが低廉で豊富な土地が利用可能な中国本土に製造工場を設置している。 家具調度品の製造には、木材、ラタン、樹脂、金属を含め、幅広い原料が使用されている。 製品の中でも木製家具は、香港の家具調度産業の主要な製品および輸出品である。これに は、木製机、椅子、箪笥を含む紫檀、黒檀製家具が含まれる。多くの香港家具製造企業に とって、アジア諸国は原料の主要供給国である。例えば無垢材は主にマレーシア、タイか ら、突板および合板は台湾から輸入されている。またインドネシアはラタン、日本、台湾 は鉄鋼の主要供給国となっている。 香港製家具の輸出動向** 2005 年 100 万香港 ドル 国内輸出 再輸出 .うち中国本土原産 総輸出高 市場別 2006 年 成長率% 100 万香港 ドル 2007 年 成長率% 100 万香港 ドル 成長率% 16 -62 18 +8 14 - 19 4,493 -31 3,806 -15 3,315 - 13 4,234 -33 3,533 -17 3,066 - 13 4,509 -31 3,823 -15 3,329 - 13 2005 年 2006 年 2007 年 シェア% 成長率% シェア% 成長率% シェア% 成長率% 米国 48.0 -46 37.4 -34 33.8 - 21 中国本土 8.9 +10 11.8 +12 15.3 +13 EU 10.8 +1 12.4 -3 14.2 * 英国 4.1 -14 4.3 -13 4.6 -6 ドイツ 1.4 +15 1.3 -20 1.6 +8 フランス 1.1 +4 1.2 -11 1.4 -2 日本 16.8 -12 15.8 -21 13.2 - 27 オーストラリア 3.3 +8 3.3 -15 3.9 +4 品目別 2005 年 2006 年 2007 年 シェア% 成長率% シェア% 成長率% シェア% 成長率% 木製家具 43.4 -34 37.6 -27 33.2 - 23 椅子、椅子部品 25.2 -34 25.7 -14 28.9 -2 金属家具 10.5 -17 12.9 +5 16.1 +8 マットレス 12.8 -17 13.3 -12 13.5 - 12 樹脂製家具 1.3 +84 2.9 +91 4.0 +23 家具部品 2.2 -15 3.0 +17 3.0 - 14 その他の家具 4.7 -54 4.6 -17 1.4 - 74 * 僅少 ** オフショア貿易は通常の貿易統計データとして捕捉されていないため、上記の数値は、 香港企業が展開する輸出事業を必ずしも正確に反映していない。 香港家具産業の主要輸出市場は依然として米国で、これに中国本土、EU、日本が続く。総 輸出の約 33%を占める木製家具は、2007 年に輸出高が 23%減少した。その逆に樹脂製家具 の輸出が最大の伸び率を示した。 販路 北米小売市場では、チェーン店、ハイパーマーケットが最も一般的な販路である。日本で は、輸入家具は主に専門店やデパートで販売されている。これらの成熟市場では、バイヤ ーがメーカーから直に調達する傾向が強まりつつあるが、代理店や卸売業者を通じた調達 もまだ行われている。中国本土では、東莞の「家具街」に代表される家具専門店街が小売 でも卸売でも人気がある。 香港の家具製造企業の多くは、大手海外ブランドの OEM/ODM 生産を行っている。例えば香 港証券取引所の上場企業、捷豐家居用品有限公司(JF Household Furnishings Ltd)は、 IKEA のサプライヤーである。中国本土を初めとする海外市場に直販店を設置している企業 もある。例えば美时(Lamex)、華潤勵致有限公司(China Resources Logic)、四海家具制 造有限公司(Four Seas Furniture)は、国内販売拡大のために中国本土の主要都市に子会 社、支店、ショールームを展開している。 中低価格帯製品はハイパーマーケットで販売されるケースが多い。ガーデンチェア、折り 畳み椅子、シューズラック、マットレス等の標準製品に関しては、香港企業は主に商社や 香港に設置した海外調達事務所を利用して販売を行っている。販売代理店を指名して海外 市場の開発を行う場合もある。 業界動向 家具産業は競争が厳しい。家具製造企業や輸出企業は利益率の縮小に苦しんでいる。多く の企業は、生産コスト削減と効率改善に努めており、中国本土など、事業コストの低廉な 地区に生産施設を移転させる企業もある。一方、海外メーカーのなかには、製品の専門化 を進めて国内生産能力を強化する企業もある。例えば米国企業数社は、ほかの地域では入 手できない人気木材を集中的に使用している。 香港の家具製造企業も自社ブランドの構築に着手している。例えばあるマットレス・メー カーは、現地および海外市場で自社ブランド製品を販売している。またターゲットとする 市場の法律や環境要件に適合するよう、国際基準に即した原材料を慎重に選択する企業が 増えている。 米国や日本を含め、多くの国にとって、中国本土は最大の家具輸出国である。2007 年の中 国本土の家具輸出高は、前年比 29%増の 270 億米ドルであった。中国本土のなかで最大の 家具製造拠点は広東省である。香港企業以外にも、台湾や米国の企業も中国本土に工場を 設置している。 中国は、家具メーカーにとって巨大な成長の可能性を秘めた市場だ。国民の購買力の増大、 不動産市場の急成長、有望な観光産業が、住宅用家具やホテル用家具だけでなく、高級品 全般の需要増大を後押ししている。中国本土における製造拠点設立の機会を得ようと、中 国で積極的にビジネスパートナーを探し求める外国企業も少なくない。本土市場での長年 の製造経験や流通ネットワークに恵まれているだけでなく、品質、誠実な姿勢、確実な納 品、優れた経営などで高い評価を得ている香港は、こうした外国企業が本土に進出するた めのベースとしての役割を果たすことができる。 CEPA 中国本土と香港間の経済貿易緊密化協定(CEPA)は 2003 年 6 月に締結され、その後 2004 年から 2006 年にかけて拡大された。CEPA の原産地規則によれば、すべての香港原産品を 免税で中国本土に輸出できる。詳細については http://www.tid.gov.hk/english/cepa/tradegoods/files/mainland_2008.pdf 参照。 家具輸出に影響を及ぼす貿易政策 家具輸出には、安全性や環境に関する基準が適用される。例えば安全性基準としては、児 童用家具の安定性、強度、高さ基準や、寝具、マットレス、布製ソファ、カーテンなどの 火災安全性基準などがある。日本では 2002 年 10 月に家具や建設資材等から室内に放出さ れるホルムアルデヒド等の有害物質の濃度指針値が規定され、このような有害物質を放出 する素材の使用が困難になった。 米国商務省は、中国からの木製寝室用家具の輸入に関する反ダンピング関税調査の最終判 定結果を 2004 年 12 月 28 日に修正し、調査対象品目に関しては 0.83%から 198.08%、 「個別 レート」の適用対象となる企業には 6.65%、その他のすべての輸入品に 198.08%の中国一律 税率を適用することを決定した。また 2008 年 5 月、米国政府は、木製品を含む、植物や植 物製品の輸入規制を大幅に強化する法律を制定した。輸入企業はおそらく 2008 年 11 月ま でに、輸入時に、(i)輸入品に含まれるあらゆる植物の学名(属名および品種名を含む)、 (ii)輸入品の価値や数量(数量単位を含む) 、 (iii)植物の栽培国、の申告を義務づけら れるようになるだろう。 2005 年 10 月 28 日、カナダの家具製造業者協会や加盟企業は、家庭用木製・金属製家具、 金属製家具、数種類のマットレスの輸入が国内市場を混乱させるか、混乱させる恐れがあ るとして、カナダ貿易裁定法に基づくセーフガード措置の適用を申請した。しかしカナダ 国際貿易裁定委員会(CITT)は、この申請は継続調査要件を満たしていないとして、それ 以上措置を講じないことを 2006 年 3 月 15 日に決定した。 製品動向 グリーン家具: 環境保護意識の高まりや世界的な環境関連法の強化に伴い、家具メーカー も素材をより慎重に選択するようになりつつある。例えば、張地にも、ポリプロピレンな ど生産の際に有毒性化学物質が発生しない素材が利用されるようになった。また環境保護 の観点から、代替素材を使用して木材の消費量を削減している企業や、再生木材や木造建 築から回収されたチークの古材等のリサイクル素材を使用して家具を生産している企業も ある。 多機能家具: 複数の機能を兼ねた、より柔軟で多機能な小型家具の人気が高まっている。 こうした家具は、部屋が狭い人だけでなく、部屋が物でいっぱいの人にも人気がある。マ ットレスの下に収納スペースのあるベッドは、便利な収納方法を与えてくれる。また壁に 掛けられる折り畳み椅子は、室内のフリースペースを拡大してくれる。 米国のホームオフィス用家具: 米国では、在宅勤務の普及に伴いホームオフィス用家具の 需要が増大している。 組立式家具(RTA)および DIY 家具: 欧州や北米を中心に、世界中で RTA や DIY 家具の人 気が高まりつつある。労働時間の短縮、高齢者の増大、早期退職傾向が、こうした家具の 需要を増大させる主要要因になっている。 ナチュラル家具: アメリカ住宅家具内装連盟によれば、デザインがシンプルなニューアメ リカンクラシックが再び流行しつつある。ラインがきれいで手作りであることが見て分か る家具が米国では人気がある。木材では、チェリー、ホワイトオーク、メープル、パイン が好まれている。 モダンな張地家具:欧州では、コンテンポラリーでトレンディーな張地の人気が過去数年 間に急速に高まった。別の素材を用いたラインが明確でシンプルな製品も人気がある。皮 革や耐久性のある布地が張地としてもっとも多く使用されている。
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