<テーマ1:団地の魅力・団地の価値>

<テーマ1:団地の魅力・団地の価値>
○矢部氏(コーディネーター)
これからパネルディスカッシ
ョン、おおよそ40~50分ぐらい
の時間で、これもかなり駆け足
になってしまうと思いますが、
進めてまいりたいと思います。
それでは、まず、きょうのパ
ネラーの紹介を改めてしてい
きたいと思います。
コメンテーターとして、私に近いほうから、まず本モデル事業の評価委員のお2人です。ま
ず一番初めに筑波大学名誉教授でいらっしゃいます大村謙二郎先生です。
続きまして、国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部 、長谷川洋先生です。
続きまして、パネリストとして、順番にいきます。取手アートの大我さんです。
そのお隣、小田急電鉄さんのホシノタニ団地でコーディネーターをされました株式会社ブル
ースタジオ専務取締役、大島芳彦さんです。
そして、こちらも引き続きのご登壇、団地再生事業協同組合の金丸さんです。
そのお隣、先ほど話題提供していただきました方からお3方、神戸すまいまちづくり公社の
中原様。
それと、名張中古住宅流通促進協議会の森さん。
最後に近鉄グループホールディングス株式会社の山本さんです。
○矢部氏(コーディネーター)
では、今、ご登壇のメンバーで、これから時間を使っていきたいと思いますが、まず 、大き
く2つのテーマで進めてまいりたいと思います。1つ目のテーマですが、きょうは 「団地」と
「住まい」、「魅力」と「価値」というこの4つのキーワードで進めていくというフレームで
すが、まずは団地というスケールで、どんなことを注目し、どんなアクションを起こしたかと
いうようなことにフォーカスして進めてまいりたいと思います。
口火を切っていただくのは、先ほど少し5分という短い時間で消化不良だったかもしれませ
んので、団地再生事業協同組合の金丸さんから一番初めに、NPOと自治体と管理組合というこ
と、第三の組織というようなお話、あとはMUST“7”という話を先ほどいただきましたが、その
あたりについて、どういう視点からそういうキーワード、MUST“7”、あるいは第三の組織という
のが生まれてきたのか、少し補足というか、ご説明いただければと思います。
○金丸氏(団地再生事業共同組合)
先ほど、すみません、ちょっと駆け足でお話させていただきまし
たが、今回のモデル事業でいろいろ取り組ませていただいて、先ほ
ど3カ所の事業に関わらせていただいたとお話しました。傾向とし
て、分譲の共同住宅型の団地はある一定の割合で空室がある。空室
でないにしても、それは非居住のオーナーがほかへ住んでいるとい
うような、空いている部屋、またはそれが賃貸化されているような
部屋があると。そういうことがわかってきました。そのオーナーたちに今回はいろいろアクシ
ョンを起こしたりしたのですけれども、そのアクションを起こすについても、オーナーがどこ
に住んでいるかとか、どんなことをされている人なのかという情報がもともと我々にはないで
す。そうするとやはりその団地の自治会なり管理組合なり、今回ご一緒させていただいた NPO
という存在と一緒にやっていかないと発信すらできないというような状況でした。
先ほど第三の組織をつくったほうがいいというご提案をさせていだたきましたが、自治会 と
か管理組合はどこの団地にも大体存在しているのですね。ただ、そこはほぼほぼボランティア
であったり、任期が決められていたりとか、活動内容に制限があるものですから、自治会とい
うのはどちらかというと安心とか安全 とかということを中心に、あとはコミュニティだとか、
管理組合というのは、団地の長寿命化とか維持管理のところが中心ですので、しかも任期が1
年とか2年。
今回ご一緒させていただいたNPOというのはその団地から誕生した団体なのですね。今回の
団地は800戸の所帯がありましたけれども、約1割の方がその NPOに加盟をされていらっしゃる
のです。ですから各棟に必ず何名かのNPOの会員がいる。今回のモデル事業の中で、今後の団
地は経営感覚を持たないといけないというような 内容のイベントを開催したのですけれども、
NPO自体が会社でいう経営企画部的なところですかね。最終的に決めるのは自治会で あり管理
組合であっても、団地の未来を考える、今後どういうブランディングをしていこうとか、どう
いう発信をしていこうとか、どうやってこの団地を 、まちづくりとかを考えていくというのは、
今の管理組合のちょっと高齢化したおじいちゃま、おばあちゃまたちだけではなかなか難し く
て、そういう若い世代によるNPO、またそれをとりまとめる自治会、管理組合の OB、OGの方が
それをちゃんと見守るふところというか、そういうことがないと、これからの分譲団地の流通
促進というのは、単なる部屋を格好よくしたとか、何か大きな企画を持ってわあっとやるので
はなくて、住んでいる方がどう意識改革していくかというところが一番重要かなと思いました。
ですから今回団地の管理組合、自治会、NPOとの協同のモデル事業の成果が、先ほどのような
ものです。
○矢部氏(コーディネーター)
ありがとうございました。今の話から、少し3つぐらいキーワードが、持続性の高い組織が
あることという話と、その組織は「経営企画部的な」とおっしゃいましたけれども、経営感覚
を持って、場合によってはスキルも必要なのかもしれませんけれども、そうい うのが今回のプ
ロジェクトから見えてきたというような、そんなようなことが会場にお越しの皆さんにとって
も1つ知見になるのかなというふうに伺いました。
初めは順番にというような形になりますが、大島さんに続いて伺いたいと思うのですが、ホ
シノタニ団地の一番初めに出会って、そこから、これはという魅力を抽出する大島マジックみ
たいなことがあるのかもしれませんけれども、魅力づくりの発信ということについて、大島さ
ん な りに ホ シ ノ タ ニ団 地 の ケー ス を 通 じ て考 え て いた こ と を 少し お 話 しい た だ け れ ばと 思 う
のですが。
○大島氏(ブルースタジオ)
はい、わかりました。まず団地はどういう魅力があるのかといっ
たときに、団地とは街であるということをもう一度しっかり認識す
る必要があると思うのですね。街って何なのかといったときに、街
は単機能ではないのですね。「住宅団地」という言い方をするので
すが、それが街であるとすれば、先ほど大我さんのプレゼンテーシ
ョンにもあったのですけれども、そこで稼ぐことができるとか、生
活の多様な要素がそこに含まれているかどうか、それが非常に 街の
魅力にとって大事なことだというふうに思うのです。
団地というのは、歴史的にみれば住環境を大量に供給するという理念に基づきつくられたと
いう背景があるのだけれど、その単体をどうこれから魅力を見出していくかというと、足りな
い部分があるのではないか、そういう気がしています。その団地の 街としての魅力が多様性と
いうところが1つのポイントです。多様性を持ち得るかということ。それから、あとは地方創
生と一緒なのですけれども、独自性です。 ひとつひとつの団地、2,000、3,000、4,000戸と、
それだけの街でございますから、均質な住環境ということが1つ の目標であったのかもしれな
いのですが、今はその中に個別性、独自性というものをしっかり見出していかないと選ばれな
い団地が生まれてしまうということ、これも1つのポイント。それから、あとは都市政策みた
いなものですね。地域のビジョン、これから先、この街はどうあるべきなのか、そのビジョン
をはっきりしていこうと、この3つが非常に大事なのではないかと思っています。
先ほど小田急電鉄の滝島さんがプレゼンテーションしていただいた内容の中にも、恐らくそ
れは含まれていたはずです。座間、これは団地ではなくて、 1企業の社宅ではございますが、
リビングタイプとなった団地。この特色、小田急電鉄さんでなければできないこと。鉄道会社
ですから広域性を持っています。不動産デベロッパーのやることと やはり違う。沿線という逃
げも隠れもできない存在、あるいは地域を開発した方々ということは小田急電鉄でなければで
きないこと。
それから、これは駅前であるということ。これは非常に幸せな条件だったかもしれませんが、
その特色をしっかり活かそうということで、団地というのは建ぺい率20%切っていますね。そ
んなことから8割を超える敷地の持っている広場と しての側面、しかもそれは駅前にある、駅
前に車が入ってこない広場がある、こんな進歩的な団地はないぞと、座間の独自性です。
そして、これから先のビジョンですが、これは駅前です。しかもこれは小田急電鉄さんから
言えば沿線の中で決して人気のある駅ではないです。各駅停車しかとまらない。新宿まで50分
近くかかる。賃料が安い、駅前、大体イメージできますね。子育て世代にとってはまたとない
ロケーションですね。しかもここは旧街道筋は里山を後ろに控えている とか、そんなこともあ
りまして、広域に捉えれば座間という町は高齢化がやはり進んでいる。ただ、駅前のこの環境
は子育てにとって非常に有効な場所だと。そうすると今のタイミングにおいて高齢化、住みか
え、そして子どもたちの生活環境、これは時代のまさにニーズだと思いますが、それを多世代
が共存していく街というものを駅前の団地、駅前広場という観点を持って、それを都市のビジ
ョンとして掲げましょう、そんなことを考えてやっていました。
○矢部氏(コーディネーター)
も と も とこ の パ ネ ル デ ィ ス カ ッシ ョ ン の 冒 頭 に 団 地 とい う ス ケ ー ル と い う とこ ろ か ら 始ま
るという話をしましたけれども、今の話は大島さんがホシノタニ団地を見たときにスケール 感
がもう少し広い視野で捉えていたというようなことをとても感想 として思うのですけれど も。
○大島氏(ブルースタジオ)
そうですね。沿線ということを考えますと、これは同じような問題を抱えていながら違うテ
ーマを持つべき街が広がっているわけです。特に先ほど郊外という話もありましたが、郊外の
可能性、郊外は日本全体で見れば各地方と同じ意味を持っていますから、1つの実験的なプロ
ジェクトだと捉えておりまして、これは地方創生のモデルとしても有効なのではないかという
ことを思っております。
物語ですね。共感というのがもう一つのキーワードです。先ほど 都市のビジョン、都市政策、
その街に暮らすことの魅力、そのビジョンを共感できる人たちがその街を選び、そしてコミュ
ニティを形成し、その共感の輪が連鎖していくと。座間でも商業地にそれが今連鎖しようとし
ています。それを積極的に推し進めようとしているということです。
○矢部氏(コーディネーター)
ありがとうございます。今、小田急さんのホシノタニ団地はある企業の持ち物をまちに開い
て い くと い う 小 田 急さ ん と いう 1 つ の 民 間会 社 の 経営 と い う 視点 で 入 って い っ た プ ロジ ェ ク
トですけれども、神戸の中原さんにも、神戸市が持っている公社と言ったほ うが正しいのでし
ょうか――持っている団地を経営していく・マネジメントがしていくという視点で、今回オー
ナーとしてというか、デベロッパーとしてというか、個別に提供したリノベーション、コンペ
ティションとか、そういったものはどういう意図とか、どういうねらいを持って企画されたの
かというようなところから少し教えていただければと思うのですけれども。
○中原氏(神戸すまいまちづくり公社)
神戸市全体では50を超えるぐらいの課題のある団地があるとい
う整理が神戸市でされておりまして、これは全国共通ですけれど
も、高齢化が進んでいる、世帯数が減っている、人口が減ってい
る、そういうことが市内、全国平均よりもかなり上回っていると
いう、これはどこでも同じような話だと思います。
先ほどご紹介した鶴甲につきましては、もともと神戸市が開発
をして、神戸市の公社が分譲住宅の大半を供給したという経緯も
あって取り組みをしてきたわけですけれども、やって思いました
ことを2つ感想といいますか、気づいたこととして申し上げますと、1つは団地の中に賃貸住
宅があったということが非常に動きやすかったということがあると思います。デベロッパーと
いうか、公社でございますので、動きを見ていただくことがすごく大事だと思うのですけれど
も、そういうときに分譲住宅ばかりであればどうしても合意形成 に時間かかって、それを素通
りは当然できないのはよくわかるのですけれども、なかなか話が見えてこないという課題が あ
る、時間がかかる。賃貸住宅があれば、公社のいわば判断でいろんなことができるということ
がありまして、先ほどご紹介したいろんなモデルをご提示する。それが 空き家の流動化とか、
そこでつながっていくような、次のステップはやっていかないといけないのですけれども、計
画づくりにはなったのではないかというのが1つ。
それから、市内に50を超える課題がある団地があるということなのですけれども、それぞれ
全部違うのですね。高齢化とか世帯数が減っているということは共通ですが、当然立地が違い
ますし、住んでいる方の色も違いますしそこに入りたい方の希望も違うし、そのあたりで いろ
んな事業をされている、あるいは関心がおありの事業者さんも、神戸はそこそこ広いので、あ
る区では活動しているけれども、この区は全然わからないというような不動産屋さんもたくさ
んいらっしゃるのですね。鶴甲はああいう形で事業者さんの方とか 設計者の方をコンペで巻き
込ませていただいてやったわけですけれども、違う団地ではやり方は同じようにできるかもし
れないのですけれども、関わる方は当然違ってくるし、ターゲットが違ってくるのではないか
と思うので、そういう非常に小さな単位の取り組みの積み重ねというのは大事なのではないか
なということを思いました。
○矢部氏(コーディネーター)
今、積み重ねというお話が最後ありましたけれども、賃貸 棟を使ってやった仕掛けが分譲棟
に波及したというようなことは、既に実感値として、あるいは実績値として既に出始めている
ということですか。
○中原氏(神戸すまいまちづくり公社)
数は少ないのですけれども、聞いている話では、先ほどご紹介したように、我々のモデルを
ご覧になって、ご自身の団地の家をリノベーションされたとか、我々のモデルに関わられた設
計者・施工者の方にご相談をされたとか、そういう話は聞いていますので、本当に小さな動き
なのですが、起こっていることは起こっているというふうに思います。
○矢部氏(コーディネーター)
確かに形を見せるということがとても大事なのだというようなことを改めて思うわけなので
すけれども、団地というスケールで、今回のプロジェクトで起こしたこと、 あるいは着目した
ことに着目をするということで話を今お3方に伺ったのですが、長谷川先生、お3方の 話を聞
いていて、ご感想なりご質問がもしあれば振っていただいてもいいと思いますが。
<評価委員からの示唆コメント>
○長谷川洋氏(評価委員会委員
国土交通省国土技術政策総合研究
所・住宅性能研究官)
基本的に私、先ほど大島さんがおっしゃったことにすごく同感でご
ざいまして、団地はやはり街なのだと。つまり団地再生というとどう
しても団地というある一定のエリアを持って団地再生というふうに
考えてしまうのですが、それをいかに周辺の地域に溶け込ませるのか、
あ る いは 団 地 再 生 が地 域 再 生に ど う い う 貢献 が で きる の か と いう 視 点 が団 地 再 生 の ポイ ン ト
なのではないかと思っております。それとどうしてもこれからのマーケットを考えると、社会
経済状況も考えると、その団地の置かれているエリアニーズだけを 考えていると団地の魅力づ
けというのは非常に限定的になるのではないかと思っているのですね。
そういう中で、きょういろいろご発表があった、例えば小田急さんであればエ リアニーズを
あきらめてコンセプトニーズに転じたというようなお話もございました し、取手さんもアート
というところで、それは多分「アート」というキーワードがなかったら、取手だけの ローカル
なマーケットであれば、多分魅力はそれほどアップできないと思うのですね 。そこに「アート」
というコンセプトを入れることによって、先ほどもおっしゃったように、金沢からも移住者が
出てきたというように、そういうような魅力づけにもなっていくというような、そういうよう
なことにつながっていくのではないかと思っています。
○矢部氏(コーディネーター)
ありがとうございます。
今、取手というエリアで入るのではなくて、「アート」というもう少し範囲の広いというよ
うなところからつないでいくというような話がありましたが、大我さん、そういうコメントに
対して、もしそうですということなどがあれば。
○大我氏(オープン・エー)
そうですね。実際、今、我々がやっていったアーティストのアイ
ディアを住宅空き家の活用にインストールするというアイディア
ですけれども、別にアーティストが住んでいるわけではなくて、ア
ーティストに触発された普通の住宅、住むというだけの機能でもそ
もそもなくて、例えば1件目に紹介した陶芸作家さんは実際にギャ
ラリーを持ちながらそこで陶芸の釜も持ちながら、さらにそこで住
まいもあるというような3つの複合した住宅として活用して住ま
われている。
あともう一件、きょうご紹介はしてないのですけれども、あの近
くにもう一軒、空き家がありまして、そちらも取手アート不動産で
募集をした物件で、もともと文房具屋さんが住宅地の中に1軒だけあって、住まいプラス文房
具屋という形で使われていた物件が空いてしまって、募集をして、そこに文房具も売っていた
ので、逆にそこをアトリエにできますよというようなやり方で募集したところ、東京で家具屋
さん、製造から販売までやっていた方が取手にご夫婦でお住まいになって、そこで家具をつく
りながらお住まいにもなった。住宅という機能は、住宅地もいろんな住宅地ありますけれども、
結局住宅という機能だけで再生をしようと思っても、今の 郊外地はなかなか難しいという状況
の中で、アーティストという発想の豊かな方々が、違う用途、違う使い方というものを逆に提
案をして、アトリエだったり、工房だったり、時にはカフェだったり、違うものがその 住宅地
の中にまざり合っていくという現象が実際に取手の町ではちょっとずつ起こり始めている。そ
れがアーティストの発想によっていろんな人に気づきを与えているのかなと。それを町の魅力
として転換をしていくというようなことに新しい郊外、取手としての魅力づけがあるの かなと
いうふうに考えています。
○矢部氏(コーディネーター)
ありがとうございます。
森さん、今、取手のプロジェクトは結構ひとつひとつひっくり返していくようなすごく丁寧
な歩みを持っていて、そこの部分は、森さんの今日のプレゼンテーションとすごく私は共通し
ているところだと思ったのですけれども、一人ひとり対面でやっていくことのご苦労というか、
でも何で辛抱強く頑張れるのかというようなところについて、森さんなりに、こういう意味が
あるから頑張れるのだとか、こういう体制があるから頑張れるのだとか、何か 秘訣みたいなも
のがあれば教えていただきたいのですけれども。
○森氏(名張中古住宅流通促進協議会)
私どもの協議会のほうで、共同提案者になっている伊賀南部不動産
事業協同組合、いわゆる不動産の事業者と地元の自治会、桔梗が丘自
治連合協議会とこの2つが本当に連携がとれたというのが一番の成
功例ではないかと思っております。例えば一不動産業者が地元の中に
いても、いろんな情報を教えていただけないということ、これが1つ。
それと自治会のほうも、いわゆる空き家に困っている方が非常に多い。
隣が草が生えて困るのだとか、町全体の勢いがなくなってきておりますので、若い子たちに入
ってきていただきたい。
桔梗が丘の場合については小学校が3校、中学校2校あるのですけれども、小学校の学童数
が非常に減っております。将来的には統合の話等々ももう出ておるような、そういう状況です
ので、若い方に入っていただいて、お年寄りと若い人が共存共栄できるような、 そういうまち
づくりを、お年寄りの方も望んでおられるのではないかなと思いました。
○矢部氏(コーディネーター)
今の事業者と自治会ということなのですが、山本さんの先ほどの事例では、そういう地元の
人に加えて、今度行政というステークホルダーと一緒にという事例を最後にご紹介していまし
たけれども、行政・地方自治体としての今の団地というものを捉えたときの山本さんが感じる
行政の問題意識というか、関心事というところを、ご存じというか、ご理解の方も多いと思い
ますけれども、改めて教えていただきたいと思います。
○山本氏(近鉄グループホールディングス)
これは自治体だけでなくて、私どももそうなのですけれども、人
口減少という中でいかに人口を増やすのは難しいとしましてもど
う維持をしていくのか、また減らすスピードを遅くしていくのかと
いう視点が皆さんお持ちだと思うのですね。どちらかというと今ま
では我々も地方自治体もばらばらにやってきたというところが確
かにあるのかなと。それを今回のモデル事業によって一緒にできた
といったところが非常に大きな私は成果ではないかなと思ってお
ります。
あと、「連携」という言葉を申し上げましたけれども、私どもの中では、先ほどの第三組織
とかNPOさんというお話しがございますけれども、その辺 との連携というところも 今日教えて
いただきましたので、ぜひ今後は行政以外の行政と民間の中間にあるような組織、そちらとの
連携ということも今後考えていきながら、いかにこの地域を盛り上げていくかということに取
り組んでいきたいなというふうに思っております。
○矢部氏(コーディネーター)
ありがとうございます。
大村先生、今、ご登壇の皆様の話を少し総括的にというか、コメントいただければと 思いま
す。
<評価委員長からの示唆コメント>
○大村謙二郎氏(評価委員会委員長
筑波大学名誉教授)
このパネルディスカッションのテーマのひとつが、「団地と住まい
×魅力と価値」ということで、きょうお話いただいた方々 、それぞれ
いろいろ示唆深いお話をされたと思うのですけれども、団地というの
は1つの大きなまとまりがあって、相当たくさんの方が住んでいると
いう形で、ただ、日本の今までの特質性で言えば、ある一定時期に大量に 供給されて、なるべ
く標準的につくっていくという、これは集合住宅型も戸建住宅型も比較的共通な話になってい
た。ただ、今、大きく共通に抱えている問題としては人口の高齢化とか、相当空き家が出てく
るとか、どちらかというと、かつての成長時代とは相当、様変わりしてきている。
改めてそういう中で団地をもう一回魅力づけするというか、再発見していくことの意味と何
だろうかということを考えたとき、先ほど来、何人かの方がおっしゃったように、団地を単な
る住まいの場というだけで捉えるのではなくて、まちとして、なおかつこの団地には長い物語
があったのではないかという気がしますね。そういう意味で長い時間とともに、住宅自身とし
ては、劣化が進んだりとか、老朽化が進んだりとかいろんな問題、単体としてはあるかもしれ
ませんけれども、全体としての環境としては、例えば外部環境がすぐれたものになってくると
か、それから、多分今までその人たちが長年住み慣れた中で、場所に対する思い出とか記憶が
相当残っている。それから、ここに住んでいる人たちのそれぞれの人生経験なり職業経験、金
丸さんがおっしゃっていましたけれども、狭山の団地の再生のNPOに加わっている中では、単
なる建築とか都市計画とか、いわゆるフィジカルな環境に関わる人だけでなくて、公認会計士
であったり、あるいは医療に関わる人とか、福祉に知識を持った人とか、そういう意味 では、
団地というのは1つの大きなまとまりで考えたときに人材の宝庫なわけですね。そういう人材
をどうやってうまく使っていくかというのはすごく大事な話ではないか。
それから、標準化時代には標準的に対応する形によってコストダウンというやり方をしてい
たと思うのですけれども、よく見てみるとそれぞれ個別の事情を抱えた住宅がたくさんあるわ
けですから、それぞれに対応するカスタムメイドというのか、カスタムメイドみたいな話がこ
れからすごく必要になってくるのではないか、非常に示唆深い話だろうと思います。そういう
意味では、時間をかけて少しずつ丁寧に、なおかつできれば居住者の参画も得ながら、あるい
はユーザーの参画も得ながらローコストをどうやって実現していくかという、いろんな工夫の
しどころが出てくる時代になってきているのではないかという気がいたします。
そういう意味では、多分一挙に問題を解決、先ほど森さんや山本さんたちは、中古住宅の流
通量が思ったほどいかないという、それは当然であって、かつてのように毎年何戸もつくって、
すぐどんどん、どんどん売れていく時代とは大分違うわけですから、むしろ丁寧に時間をかけ
て、だけど、今までこんな一見古びた住宅が、こういう手を入れることによって、マジックの
ように非常に魅力あるものに変わっていく、こういうことを実例として見せていくということ
で、これは多分広範囲な形の宣伝活動というより、むしろ、じわじわ、最近の言葉でいえばSNS
的な形で、人々に少しずつじわじわ広がっていくことによって、中古住宅のリノベーションは
なかなかおもしろいし、創造的だし、場合によっては、今までとは違うもの が、こんなふうに
変わっていくのだと、見なれた風景が変わっていくのだということの魅力づけになるのではな
いか。
そういう意味で、団地の魅力、価値づけというのは多分いろんな運動体を束ねていくという 、
先ほどの第三のNPOではありませんけれども、組織体がうまく経営企画をしていくというので、
その中にはいろんな人材が新陳代謝で入っていくということが大事なのではないか 。そういう
意味で団地を単なる古びたものとして捉えるのではなくて、新しい資源として再発見していく
ということの重要性、その芽は幾つかあるのではないか。ただ、それを一挙に短期間で成果を
上げることはなかなか難しいから、時間をかけてがまんをしながらやっていくことが大事なの
ではないか、というのが、きょう皆さんのご発表を伺っていて私が感じたメッセージでござい
ます。