欧州地方行政調査報告書(2月10日から17日)

平成 19 年度相模原市議会議員海外視察
欧州地方行政調査報告書
テーマ「21世紀のまちづくり」
市議会議員
金子
豊貴男
(表紙説明)
ロンドン近郊
サットン区都市計画局
再開発地区のショップモビリティ視察
実際に再開発地区商店街に備えてあ
る電動車いすに乗り、利用者になった
実感を体験する。08 年 2 月 11 日
目
次
Ⅰ
はじめに
1
Ⅱ
視察日程
2
Ⅲ
調査団構成・地図
3
Ⅳ
視察概要
①
イギリス
4
②
ドイツ
7
③
フランス
12
Ⅴ
個人的テーマと報告
16
Ⅵ
ま と め
20
Ⅶ
資 料 編
22
Ⅰ
はじめに
2 月 10 日から 17 日までの7泊8日で、ヨーロッパの三カ国、イ
ギリス、ドイツ、フランスの地方自治体の行政施策を視察する機会
を得た。今年度、9年ぶりに凍結が解除された、本市議会海外視察
の事業として、公職研主催の地方自治体職員海外研修視察に便乗し
てのヨーロッパ視察である。
全国の自治体から新進気鋭の職員が 10 名、そして議員としては私
一人が参加。21 世紀の地方自治体の環境施策や福祉の先進例、自治
体の電子化、その住民との関係などをさぐる旅であった。参加者は
それぞれ、勢力的に各都市を歩き回り、各自治体の担当に聞き、先
進自治体の取り組みに学ぼうと意欲的に動き回った。
各国2日間だけの訪問であり、短い時間、駆け足の視察ではあっ
たが、学ぶところは多かった。そして参加者の皆さんの意欲的な姿
勢にも学ぶところが多かった。
もう一つ、今回の視察は主催者団体である公職研によるテーマ=
21 世紀のまちづくり=が決められ、そのテーマに沿って視察先が選
定されていたが、各都市での自由時間を利用して、個人的なテーマ
も追求することができた。
個人的なテーマは歩行者空間の確保や自転車走行空間の確保など、
各自治体の取り組みや実態をこの目で見て来ること。
それぞれ時間のある限り、訪問した街で、バスの車窓から、さら
に現地のツアーコンダクターや通訳からも聞いて、可能な限り写真
を撮り、脳裏に刻み付けてきた。
また、パリでは2日間、市内を歩き回り、図書館や公文書館など
も訪ねた。観光客が行かない場所を見ることができ、都市の日常の
姿を見ることができた。
以下、3カ国の様子、視察の実態を簡略に報告する。
1
Ⅱ
視 察 日 程
日
時
内
容
成田発
1 2月
10 日(日)12 時 ロンドン空港着 ホテルへ
11 日(月)AM ロンドン・サットン区都市計画局現場訪問
計画の概要と高齢者に配慮した街づくりのレクチャー
2
ショップモビリティー施設建設経緯・地域の活性化への寄与
PM
3
4
5
6
7
サットン再開発地区視察 コべントガーデン地区視察
ロンドン市内文化公共施設視察 バス停や自転車通行帯
など
12 日(火)AM ロンドンから空路ミュンヘンへ
(霧のため出発が大幅に遅れ、半日飛行機内で待機)
PM ミュンヘン市内視察(到着が遅れ、夕方から)
都市の景観、歴史的建造物としての市役所、戦争の爪痕など
13 日(水)AM バスでアウグスブルグ市へ移動
アウグスブルグ市の視察
環境先進都市の自治体と民間の提携
環境政策における国際化
など
PM
環境先進都市建設の経緯と概要
河川の近自然化とレクリエーションゾーンの創出
ライト・レール・システムによる交通政策
14 日(木)AM ミュンヘンから空路、パリへ
(霧のため出発 2 時間あまり遅れる)
PM パリ市内調査
ラ・デファンス再開発地区(都市デザイン)視察
文化公共施設視察 街なみ景観の施策など
15 日(金)AM パリ市内独自調査(市内を歩いて、施設見学)
歴史的建造物の保存と活用
PM バニュー市訪問
情報技術(IT)先進自治体構築の経緯と概要
市民へのIT普及策のあり方、議会と市民の距離を縮める
ためのITの利用、情報化社会構築に向けたグローバルシ
ティダイアログの推進
16 日(土)AM パリ市内独自調査(市内を歩いて、施設見学)
パリ市 区役所 市立図書館 国立公文書館
セーヌ川沿いの古書露天など、レンタル自転車、地下鉄乗車
PM
8
17 日(日)15時
空路日本へ
成田着
バスで相模原へ
2
Ⅲ
№
公職研
氏
欧州地方行政調査団
名
団員名簿
勤務先
役
08.2.10 出発
職
1
金子
豊貴男
相模原市
市議会議員
2
宮崎
一郎
富
山
県
知事政策室副主幹
3
中村
良治
辰
野
町
総務課課長補佐
4
北村
幸治
小
谷
村
観光振興課水道係長
5
塩原
博
静
岡
県
市長会主幹
6
鈴木
朋宏
伊豆の国市
情報システム課副主幹
7
上道
幸胤
御殿場市
玉穂支所主幹
8
荒波
健
袋
井
市
防災課主査
9
福井
恒行
清
水
町
都市計画課主幹
10 多鹿
博昭
小
野
市
市民サービス課広報・広聴係長
11 徳留
龍仁
宮
崎
市
市街地整備課長
備考
団長
副団長
団の役員は事前学習会(1月23日・都内)で最年長者が団長に、最年少者
が副団長(幹事長)に選出された。
地図
ロンドン
パリ
バニュー
ミュンヘン
アウグスブルク
3
Ⅳ
視察概要
(1)イギリス
2月 10~11 日
15時間あまりの空路の旅を経て、
10日夕方(現地時間、以後現地時間
で記述)ロンドン、ヒースロー空港に
到着、旅行社の現地スタッフが出迎え、
ロンドン市内のホテルへ直行。
11日は午前9時30分、ホテル出
発、チャーターしたバスで、サットン
ロンドンの街並み ~ホテルの窓から~
市へ。バスから見たロンドン市内の
街区(?)公園、バス停などは参考
になった。
バスの車窓から見た街区公園→
サットン市の中心市街地、再開発
地区には午前11時到着、早速ショ
ップモビリティー事業を視察した。
「SUTTON SHOPMOBILITY(サ
ットン
ショップモビリティー) 事
業」とは、お年寄りや体の不自由な方々の為に、SUTTONN でより快適な買い
物、移動ができるように車いすの貸し出しサービスを行う団体の事業である。
SUTTONN 市はロンドン中心部から
南東20キロにあるケント州に属し、人
口約17万6500名。7700名の障
害者と3800名の85歳以上のお年寄
りがいる。ロンドンへの通勤圏内の街と
して発展している。
SHOPMOBILITY は SUTTONN 市の
中心市街地に
立地する再開発事業「セ
ント・ニコラウス・ショピングセンター」
サットン再開発地区のバスターミナル
を中心とした中心市街地を、歩行困難な人でも買い物が自由に行えるように、
車いすの貸し出しサ-ビスを行う事業。
4
運営主体は自身も車いす生活を送っ
ている同団体の理事長テッド氏以下、
10数名。運営資金は、チャリティー事
業収益を中心に、自治体からの援助、シ
ョピングセンターからの運営費補助な
どによっている。
視察はショピングセンターの駐車場
の一角にある SHOPMOBILITY 事務所
ショップモビリティーの入り口(駐車場内)
で電動車いすなど所有資器材の説明、実際に視察者(我々)が電動車いすに乗
って場内を運転するなどの行動から始まり、機材の使い方や貸し出しの方法な
ど、詳しく説明を受けた。その後、ショッピングセンター内の会議室に移動、
ショピングセンターの担当も加わって詳しいレクチャーを受けた。
レクチャーの内容は別紙資料のとお
り だ が 、 質 疑 の 中 で 、 SUTTON
SHOPMOBILITY 事業の発足のきっ
かけや事業内容、SHOPMOBILITY
の利用方法、運営、利用状況などが詳
しく聞けた。
ショップモビリティのレクチャー風景
ショピングセンター側の説明では、
利用者(消費者)に当然高齢者が多くな
り、センターへの来客が増えることを期
待し、かつ評価していた。こうした発想
は相模原市の再開発事業にとっても取
電動車いすの背面に付けられた案内板
り入れたい視点である。
再開発の大規模な商店街フロアーを高齢者や障害者の車椅子が自由に動き回
る様子は相模原では今だに見られない光景であった。相模大野の西側再開発事
業にぜひ取り込めないか、今後の課題として提起したい。
5
各フロアー(3F)の案内板
再開発ビル内ショッピングセンターの様子
なお、最近は SHOPMOBILITY 事業がショピングセンター内だけの利用から、
施設外での車椅子の貸し出し事業へと発展してきているということであった。
車いすで歩ける街づくりが広がっていた。この視点も重要である。相模原でも
もっと積極的に取り入れるべきである。
SHOPMOBILITY の屋内での状況を視察したあと、建物の外へ出て、午後は
昼食も抜きにして(時間がもったいない)町並みを見たいという全員の希望で
ロンドン市内に戻り、コベントガーデン再開発地域を視察。ロンドンきっての
ファッソナブル・ゾ
ーンで先端ファッシ
ョンのブティックや
ショップが集り、若
者から高齢者まで
様々な人々でにぎわ
っていた。1階の商
店街から、オープン
スペースになった地
下階のレストラン街。
そのオープンスペー
スと階段で歌手がソ
ロンドン・コベントガーデン再開発地区のオープンカフェ
ロで歌う一こま。誰でも聞くことが出来、上から観客が見ている。街の歴史と
伝統、そして考え方の違いを感じた一場面であった。
6
(2)ドイツ
2月12~14日
12日は午前6時半にホテルを出て、ヒースロー空港に向かうが、途中の道
路は一面霧に覆われ、ほとんど見えない。
7時過ぎには空港についたが、ほとんどの便が欠航。われわれが乗る飛行機
も未だ到着していないとのこ
と。しばらくしてやっと9時
半ごろに飛行機が到着、1時
間以上待たされた挙句、機内
へ。ところがここで離陸がで
きない。再び2時間ぐらい機
内で狭いイスに座ったまま待
たされる。ようやく昼頃霧が
晴れて、飛行機は離陸、ドイ
ツのミュンヘン空港へ。この
夕方に訪れたミュンヘン市役所
日は霧による遅れのためほとんどを移動時間に費やされ、ミュンヘン市内のホ
テルに到着したのは午後の 4 時すぎ。ほとんど市内を見ることができなかった。
ドイツの二日目は霧のアウトバー
アウグスブルク市
所 属 州 : バイエルン州
所属行政管区: シュヴァーベン行政管区
郡
: アウグスブルク市
面
積 : 146.78 km・
人
口 : 258,364 人
(2004 年 1 月 31 日)
人 口 密 度 : 1,880 人/km・
標
高 : 海抜 489m
平 均 気 温 : 7.8℃
市 外 局 番 : 0821
緯 度 経 度 : 北緯 48 度 22 分
東経 10 度 53 分
自治体コード: 09 7 61 000
市 の 構 成 : 41 市区、17 計画地域
ンをバスで走って、アウグスブルク
市役所へ。途中、最新の清掃工場を
横に見ながら、通訳氏からドイツの
地方自治制度や環境問題の取り組み
のレクチャーを受ける。アウグスブ
ルク市は別表のような自治体、位置
的にはミュンヘン中心部から車で1
時間半あまり、人口は25万人程。
紀元15年、ローマ皇帝アウグスト
ゥスの時代に建設されたドイツ最古
の都市のひとつ。モーツァルトの父
レオポルトの生家などがあるという
(今回は寄ることできなかったが)。
7
アウグスブルク市役所全景
市役所は歴史的な建物で、先の大戦
による爆撃で完全に破壊され、現在の
建物は復元されたもの。バスを降りて、
時間まで、一人でアウグスブルク市役
所を独自探検・視察。各階を見て回る。
市役所内には一般市民も職員もほと
んど見当たらない。静まりかえった古
めかしいビルという感じで、日本では
とても考えられない。最上階の市民ホ
ール、黄金の間に行ってみる。このホ
ールは市民集会などにたまに使うこ
とがあるという。そのほか市役所内は
とても静かな場所で落ち着いたもの
だった。
視察はアウグスブルク市環境局の
話と、アウグスブルク市の環境政策を
委託されている民間の「クマス」とい
黄金の間の壁画
う企業からのドイツの環境政策全般
の説明。
ひとつめのアウグスブルク市環境
局の説明には、トーマスシャーラー
市議会議員=環境局のトップが具
体的に話をしてくれた。議員が行政
の一部門のトップを務めること自
体、日本では考えられないことで、
議会制度や自治体の在り方の違い
を認識させられた。
シャーラー局長の説明によると、
レクチャーの様子(立って説明するシャーラ局長)
アウグスブルク市では環境スタッフ
が1200人。年間事業費として8500万ユーロ(140億円)が使われて
いるとの事。廃棄物の回収には400人が容器の回収にかかわっている。リサ
8
イクル製品の販売や、地域へのエネルギーの供給、ガス・電力の供給などの事
業も行っている。さらに、公害防止政策、大気の監視、環境や汚染の除去など
も行っているとのこと。土壌改良、自然保護、環境保護なども任務とのことで、
相模原市との違いはあまりないように感じた。ただ5分おきに来るバスや路面
電車が市営であり、環境にやさしい
運行をしているという点は、本市と
の違いを強く感じた。
その他、たくさんある環境保全団
体の事やそれらの団体が行うプロ
ジェクトの支援、民間での熱エネル
ギーの節約、コーオぺレーションの
事、バイオテクノロジーの事、大学
食堂やホテルへの有機栽培野菜の
団を代表して記念品の交換
提供など、さまざまな取り組みにつ
いて聞いた。
また、各家庭の前に置かれた4種類の分別用のかご(4色のごみ箱)の説明、
緑色は紙のリサイクル用、茶色は生ゴミ、黄色はメタルやプラ、黒色はその他
のゴミ、といった説明だった。この色によって分別の区分けをするのはヨーロ
ッパ全体で統一された政策のようで、ロンドンでも、ドイツでも、フランス・
パリでも同じように色分けされていた。各国共通の色で識別するということは
すごいことである。日本においては、首都圏でみてもそれぞれの行政がバラバ
ラでリサイクルについて基本的な統一が
なされていないのは問題である。
4 色に作られたミニュチァアの
ゴミ箱を受け取る
黄金の間で説明を聞く
9
続いて、“クマス”の説明は、環境政策の企業が日本にも進出しており、滋賀
県との共同事業も行っているといった点。詳しい内容は当日提出された日本語
の資料があるので割愛するが、民間企業が行政と一体となっている例で、相模
原市などでも多くのコンサルタント会社がはいっている例はあるが、前面には
出てこないし、視察の説明などにはまず出てこない。ドイツでは(アウグスブ
ルク市では)コンサルが行政と一体になっている点がすごいと感じた。
環境局での説明を聞いたあと、記念品の交換をし(私は何も用意していなか
ったため、他都市から来た職員が持ってきた市の宣伝ポスターなどドイツの皆
さんに渡す)、アウグスブルク市の4種類のごみ箱のミニチュアをもらう。その
後、公式に市役所内の見学、黄金の間などを見て回り、説明を受ける。
視察後、昼食抜きで各自が市
内見学、私はひとりで路面電車
や2両連結バスなどを見て回
る。本屋さんにも立ち寄ってみ
た。路面電車とバスが共用で停
留所を利用し、電車の線路内も
バスは自由に走っていた。この
点は日本では見られないこと。
ドイツの合理主義か、感心した。
二両連結バスと路面電車が同時に線路式を走る
アウグスブルクからの帰り
のバスでは河川の近自然化
(多自然型河川改修)とレク
リエーションゾーンの状況を
見たり、清掃工場の様子を見
た。個人的な視察目的として
いた、歩道や自転車道につい
ても多数見ることができた。
詳しくは後述する。
河川の様子、遊歩道が整備されている
バスでミュンヘンに戻り、その後はミュンヘン市役所や市内施設を見学。市
内に戻り着いたのが遅かったため、市役所の時計台は時間切れで、エレベータ
10
ーでついた時にはもう入れなかった(午後5時)。残念。
ミュンヘン市内には歴史的建造物がたくさん残り、日本の各都市や相模原市
とは全く街の様相が違う。この点は街づくりを考えるときに充分考慮していく
べきだ。安易にヨーロッパの街並みを日本に導入しようとしても無理が出る。
ミュンヘン市役所も先の第2次世界大戦で爆撃され土台のみしか残らなかっ
たようで、土台の石の部分には銃撃や爆撃の跡が残っていた。市場・バザール
会場にも行ったり、古い教会の塔にも登ってきた。いずれも歴史と伝統を強く
感じた。街づくりの在り方、スペースの取り方など、日本とは違う点を改めて
感じた。
2泊したミュンヘンのホテルが
ミュンヘン中央駅の近くだったた
め、中央駅には何回も出かけた。
日本と違い、中央駅には改札が
なく、誰でも列車にそのまま切符
なしでも乗ることができる。列車
内で検札があるようだが、これは
驚きであった。日本とは根本的に
考えが違うと思った。
改札口がないミュンヘン中央駅
~だれでも列車まで行ける
駅構内の売店もいろいろあり、今、
日本では“駅中”が話題になっている
が、駅がオープンで、改札もない点、
つまりホームと駅広の境が何もない
ということ、“駅広”がオープンスペ
ースになっていることは、なかなか面
白い経験であった。
実際に経験してみなければわから
ない点だ。
駅構内の売店
11
(3)
フランス
2月 14 日から 16 日
14日午前、ミュンヘン市内のホ
テルを朝早く出て、アウトバーンで
空港へ。この日も深い霧で、現地の
通訳は、
「ミュンヘン空港は霧でも大
丈夫です。時間どおりに飛びます。」
とのことであったが、空港に着くと
やはり待機。飛行機にはなかなか乗
れず、飛行機に乗っても出発できず、
時間を浪費した。
ラ・デフェンス再開発地区の様子
午後、パリ到着、出迎えのバスで、市内
に入り、早速ラ・デフェンス地区再開発を
見学、同再開発はフランスの国家規模で行
われているパリ市の再開発事業で、日本の
ものとの規模の違いに驚く。東京都内の海
浜地区や都心部で行われている再開発よ
りももっと大きな規模のように見えた。
再開発のシンボル的ビル(凱旋門をま
ねている)
再開発地区全体の案内図 →
写真を何枚か添付して、規模の大きさを実感できるように報告する。いずれ
にしても、相模原市で行っているような再開発とは規模が違い、あまり参考に
はならないと感じた。
パリ二日目は、午前中は独自視察。ホテルから歩いて市内を見て回る。パリ
の有名な観光地や施設を見て回った。市全体が観光地であり、やはり、日本と
は規模が違う。状況も違う。歴史が違う。景観も違う。パリ市の街づくりでは、
12
数百年前から、建物の高さ制
限を6階建に統一したとかで、
すべての石造住宅、ビルが6
階建てに統一されており、ビ
ルには洗濯物も干してはいな
い。街の美観が歴史と伝統の
中で作られている様は壮観で
あった。
相模原市は観光施設が少な
い、住宅地中心のまち。パリ
6 階建てに統一されるパリ街並み
市と比較するのは土台無理な話だが。パリ市は第二次世界大戦でも爆撃を受け
ず、無血開城した都市、そのこともドイツの都市と比較して違いを感じた。
午後はパリの周辺市である
バニュー市を訪問。同市の情
報技術(IT)先進自治体構
築の経緯と概要、市民へのI
T普及策のあり方、議会と市
民の距離を縮めるためのIT
の利用、情報化社会構築に向
けたグローバルシティダイア
ログの推進などの項目で説明
を受ける。視察の冒頭、同市
突然市長が現れ、あいさつ!
の市長も会議場を訪れ挨拶、現在市長選挙目前の時期とのことで、勝利を願う
との挨拶をこちらから返した。
バニュー市は相模原市とは人口
規模が違い、人口三万人ぐらいの
都市。規模の違いはあるが、市民
に情報をどう発信していくか、自
治体担当者の熱意が伺われた。ホ
ームページ作成の苦労や、市民へ
の普及・啓発の難しさは国や自治
IT事業について話を聞く
13
体が違っても、共通の課題であることも実感した。
夕方パリ市内に戻り、市内
の再開発地区を見学した。
街中いたるところに自転車の
駐車スペース、駐車スタンド
があり、通訳さんに聞いたと
ころ、パリ市の新市長が選挙
公約で低所得者向けに自転車
通勤などを奨励し、そのため
に自転車の通行帯ができたり、
駐輪スペースを確保している
パリ市内のレンタル自転車駐輪施設
という。市長の積極的な取り組みを感じた。写真は、レンタル自転車の普及の
ための駐輪スペースとのこと。ただしレンタル自転車を借りる手続きに2週間
余りかかるとのことで、短期滞在の観光客には不向きのようだ。
翌日は、海外視察最終日、午後にはパリを離れるため、午前中市内を歩き回
る。シテ島まで地下鉄に乗ってみる。多少不安もあったが、一人でも何とか行
けるものだ。その後は文字通り、市内を歩き回り、ポンピドー文化センターや、
噴水公園、パリ第3区役所。ここの区役所前の広場には冬場の特設スケートリ
ンクが屋外に作られており子供たちがスケートに興じていた。行政施設をこう
した形で開放することの発想がいいと思った。そのほか、パリの国立公文書館
を訪ねてみたが、ここは観光客
はシャットアウトのようだった。
最も言葉がわからずこちらの施
設を見学したいという意思が伝
わらなかったようにも見えたが。
その後、近くのパリ市立図書館
をのぞいてみる。図書館は一人
でも入れた。中の雰囲気は日本
の図書館とも違い、また、かっ
図書館のエントランス
て相模原市の友好都市訪問で訪
れたカナダのトロントやバンクーバーの図書館とも違いを感じた。
14
荘厳な建物の中に 3 階分ぐら
いの天井まで書棚が重ねられ本
がぎっしり詰まっている様子に
は圧倒された。
もう一点、パリの街中で見か
けたごみ収集用のボックスを紹
介する。ドイツのものより大き
いが、色による分別・リサイク
ルは各国で統一されており、こ
の点は素晴らしいと思った。
パリ市立図書館の閲覧室、天井まで書籍がビッシリ
灰色
茶色
パリ市内のゴミ箱の様子
緑色
午後、ホテルに集合、バスでシャルルドゴール空港に向かい、今回はスムー
ズに出発できたため、17 日午後 5 時ごろには成田に到着。無事6泊8日の海外
視察を終えることができた。
15
Ⅴ
個人的テーマと報告
今回の視察中、個人的テーマとしてヨーロッパ先進都市における、自転車通
行の区分や、歩行者専用歩道、そしてバス停留所の在り方などを興味を持って
観察してきた。それぞれの国によって、都市によって違いがあるが、与えられ
た条件の中で工夫している様子
が伺えた。あまり杓子定規に決め
るのではなく、柔軟に条件の許す
限り、人にやさしい街づくりを進
める、そんな発想を持たなければ
ならないと強く感じた。以下、三
都市で見た自転車用の走行区分
や歩行者用の施設、バス停などを
写真で紹介する。
イギリスの歩道に置かれた自転車
ドイツ、ミュンヘン市内で
ミュンヘン市内で
ミュンヘン市内で
~歩行者用歩道の表示~
16
ミュンヘン市内で
アウグスブルク市内で
~自転車の歩行帯を分離している~
パリ市内で
パリ市内で
~レンタル自転車の駐輪場~
17
パリ市内のバス停の様子
屋根とベンチが……
パリ市内の電話ボックス
~スケルトン対応~
パリ・セーヌ川沿いの歩道
~自転車道、歩道~
18
パリ市内の公衆トイレ、
簡単なもの
パリ市内、バイクの駐輪場の様子
パリ市内、歩道、自転車道の表示と様子
19
Ⅵ
まとめ
6泊8日のヨーロッパ先進都市の視察、30年ぶりのヨーロッパだったが、
当時の視点とはだいぶ街の見方が変わっていた。議員として21世紀の街づく
りを見る視点が変化したのだろうか。30年前はパリの舗道の煉瓦の形などが
気になって都市の景観などにはなかなか目が行かなかった。今回は市民の目線
と市民にとっての生活空間の創出がどういう形でできるか、こうしたことに興
味があっていろいろ観察してくることができた。
1番目の訪問都市ロンドンでは、福祉の課題、とりわけ、障害者や高齢者が
街に出てこられる環境づくり、その受け皿を市民団体が行っている実践例はと
ても参考になった。かつてお隣の町田市で、大下勝正市長(当時)が、
“車イス
で歩けるまちづくり”を提唱し、具体化してきた点、大変学ばされたが、その
発想を商店の中にまで押し広げているイギリスの実践例は素晴らしいものと感
じた。日本でもこうした事業を進める市民団体と行政、事業主の在り方が問わ
れているのではないか。
2番目の訪問国、ドイツではミュンヘン市とアウグスブルク市を訪ねた。ア
ウグスブルクの環境政策は、日本の“今”と共通するものも多く、今後ドイツ
の先進的環境行政にもっと注目していきたい。相模原市内にも生ごみの処理な
どで、ドイツの先端企業と連携している事業体もあるが、こうした企業の仕事
に本市行政が向いていないという現状もある。この点、今後の課題としたい。
3番目に訪問したパリ市、歴史と伝統の違いを今さらながら感じた。古いも
の、歴史や伝統を大切にしながらも、新しい政策、特にレンタル自転車の大量
導入などは流入する外国人労働者の対策にもなっているようではあるが、21 世
紀の環境にやさしいまちづくりをして、もっと注目する必要がある。相模原市
でも歩行者専用道路、自転車専用道路など、充実していかなければならない。
旧市内の平坦な街という特性をもっと生かして。
一週間あまり、三ヶ国の訪問は駆け足で、十分な視察になったとはいえない
が、それでも得るものは大きかったと思う。海外視察という制度を十分に活用
できたと思う。
また、全国各地の自治体職員の研修視察団に参加したことで、他都市の職員
の皆さんとの交流もできた。今後の人的つながりも貴重な財産となることと思
20
う。こうした機会を与えてくださった議会の皆さん、市民の皆さんに改めて感
謝を申し上げ、今回の視察で得てきた様々な成果を議会活動にも反映していき
たいと思う。
早速、三月議会の代表質問や総務委員会の質疑の中に街づくりの視点や職員
の海外研修の積極的な取り組みなどについて発言・提案したが、今後も歩道の
整備や自転車道、バス停の在り方なども丁寧に議会内外で問題提起していきた
い。
百聞は一見に如かず、このことを改めて感じた海外視察であったことを述べ
てまとめの言葉としたい。
追
記
ヨーロッパ三ヶ国の主要都市をめぐって、軍人を見たのはパリ市内の駅前広場
で1回だけだった。ロンドンでもミュンヘンでも軍人や軍の車輌、施設など、
市民の目に触れない状況だった。
ひるがえって、我が相模原市では最近米軍車輌や自衛隊車輌が国道 16 号や主
要県道を走り回り幅をきかせている。米軍機の騒音もひどいものだ。基地のな
い平和な街づくりを目指して、今後もヨーロッパの実情を生かして問題提起を
行っていきたい。
21