自作スーパーボールの保存 9班 1. 中村信之 はじめに 子どもなら誰しも一度は遊んだ事があるスーパ で弾性を測定した。 ハ) 水分含有量の測定 ーボール。そんな沢山の人に馴染み深い玩具であ 作製したスーパーボールの重さを十日目まで測 るスーパーボールを自作することができるのを私 定し、水分のとび方を観測した。 が知ったのは最近である。科学教室などの催し物 ニ) 粘弾性(弾性率)の測定 などに行くと作ることができる。私はこのような 催し物で何かを作っても、保存方法がずさんであ 作製してから十日間保存したものの弾性率を測 定した。 ったため長く遊べなかった。そこで自作したスー パーボールをいい状態で遊べるように保存方法を 4. 実験結果 探そうと思い立ち、この件を研究することにした。 (イ)の結果 弾性の測定結果を保存方法の 5 種について図 2 2. 作製原理と目的 本研究では材料に生ゴムであるラテックスを使 に載せる。 (ロ)の結果 用する。ラテックスにクエン酸水溶液を加えるこ 25 ℃で保存したクエン酸の量が異なる 3 種の とでスーパーボールを作製する。ラテックスはイ ものの弾性についての測定結果を図 3 に載せる。 ソプレンが重合してできた液体であり、そこに酸 (本研究ではクエン酸)を加えることでさらに重合 が起こり固体として固まりスーパーボールとなる。 本研究は前述の方法でスーパーボールを自作し、 弾性を考慮してスーパーボールの作製における最 適なクエン酸の量と保存方法を提示することが目 図 1.作製したスーパーボール 的である。 3. 実験方法 使用するスーパーボールの作製方法はラテック ス 6 g に 70 g の水に溶かしたクエン酸水溶液を混 ぜて成形して 1 日乾燥させた。クエン酸の量は基 本的に 2 g である。 図 2.作製からの経過日数と跳ねた高さの関係 本実験における保存方法は 37 ℃、25 ℃、13 ℃ (11 月の平均気温)、3 ℃(冷蔵庫)、-18 ℃(冷凍 庫)の実用性のある温度帯から選択した。 イ) 弾性の測定実験 5 種の保存方法で保存したものを高さ 100 cm か らアクリル板に落とし、跳ね返った高さを調べた。 ロ) クエン酸の量による弾性への影響 特別にクエン酸の量を 0.1 g と 10 g にして作製 したものを 25 ℃で保存し、実験(イ)と同じ方法 図 3.クエン酸の量と跳ねた高さの関係 図 4 から-18 ℃,3 ℃の場合は他の保存方法と 比べ 1 g 以上重い。これはこの 2 種が他と比べ水 分が失われていないことを示す。また、図 5 を見 ると-18 ℃,3 ℃の場合は弾性率が他の 3 つの保 存方法の半分程度しかないことが分かる。以上の 実験結果から分かったことをまとめると、水分を 失ってないものほど弾性率が低いことが分かる。 この事実は水分を多く含んでいる作製直後の弾性 図 4.保存方法と質量変化の関係 率の値からも明らかである。 -18 ℃ ,3 ℃ で 水 分 が 失 わ れ に く い 原 因 は 、 -18 ℃ではゴム内の水分が凍り蒸発することがな かったため、3 ℃では凍りはしないものの温度が 極端に低かったため蒸発が起こりにくかったため である。 以上の考察から 13 ℃,25 ℃,37 ℃の場合は特 に弾性率への大きな影響はないことが分かるが、 図 5.弾性率と保存方法の関係 25 ℃,37 ℃の場合はカビが生えやすい条件で衛 生的によくないと考えられる。一方-18 ℃,3 ℃の (ハ)の結果 測定した重さの変化のグラフを図 4 に載せる。 場合は水分が飛びにくいため良い保存条件ではな いと言える。 (ニ)の結果 測定した弾性率のグラフを図 5 に載せる。ただ し、作製時とは測定直前に作製したものである。 6. おわりに クエン酸の量はラテックスの質量に対して 30% 以下の質量で作製し、スーパーボールが乾燥しや 5. 保存条件の弾性率への影響と考察 始めに 25 ℃,37 ℃で保存した場合、測定開始 すい 20~10 ℃あたりで保存することが良い事が 分かった。 から 2 週間後にカビが生えていたが、実験(イ)に 本研究では水の含有量が質量の 23%程度である おいて特に弾性への影響は見られなかった。カビ 時の弾性率は乾燥しきったものの弾性率の 50%程 が生えた原因は保管温度高めであり水分が多く存 度になり、それよりも水の含有量が減っていくと 在していて、カビが増殖しやすい条件が揃ってい 弾性率の値が大きく上昇する結果となる。つまり たためである。 水の含有量とスーパーボールの弾性率の値は反比 図 2 を見ると特に 3 ℃,-18 ℃で保存していた 例の関係にあると分かった。 ものは跳ね返った高さが大きく減少している。こ 一方で、温度と弾性率の関係性は今回の実験で のことから低温で保存すると弾性に影響を与える は示すまでに至らなかったため、改めて測定する 可能性が考えられる。 必要がある。 一方、図 3 を見るとクエン酸が 2 g と 0.1 g の 場合は大きな差は無いが、10 g の時は跳ね返った 参考文献 高さが他の 2 種よりも低くなるのでクエン酸の量 ●「はじめての高分子化学」 が多いと弾性率が良くない事が分かる。理由とし て考えられるのは、スーパーボール内でポリマー 分子の架橋が多くなり大きく固体化したためであ る。 (株)化学同人 井上祥平
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