藤原 克哉,中所 武司,玉木 英夫

Web サービス連携とその課題
藤 原
克
哉†
中 所
武
司††
玉
本
英
夫†
本論文では、これまでに我々がフォーム自動記入のための Web サービス統合フレームワークを実
現した経験から、動的サービス連携、動的サービス統合の現状とその課題について考察する。
Problems in Federation and Integration of Web Services
Katsuya Fujiwara,† Takeshi Chusho†† and Hideo Tamamoto†
We have built a service wrapping framework for filling automatically in a form. Through
this experience, this paper describes a integrating method of Web services and its problems.
1. は じ め に
イントラネット
会社A
グループ
ウェア
企業ポータル
W ebサーバ
W ebブラウザ
期待されていたオープンで動的なサービス連携の実現
には至っていない。本論文では、現状の動的サービス
W ebサービス群
座席予約
( 1 ) 企業内イントラネットにおけるサービス連携
部屋予約
SO AP
ホテルA
旅行代理店A
ホテルB
インターネット
座席予約E
SO AP
統合が必要
SO AP
SO AP
部屋予約U
ホテルU 1
グループウェアなどの企業内システムを Web サービ
ホテルU 2
座席予約J
航空会社A
航空会社E
(1) は、図 1 の例のように販売、生産、人事管理や
スとして公開して、それらのプレゼンテーション層の
航空会社B
予約
システム
( 2 ) 企業間ネットワークにおけるサービス連携
( 3 ) インターネットにおけるサービス連携
航空会社A
SO AP
動的サービス連携は Web サービスの利用形態によっ
て以下の 3 つに分類できる。
グループ
ウェア
企業間ネットワーク
フォーム自動記入のための Web サービス統合フレー
2. 動的サービス連携
SO AP
生産管理
SO AP
連携、サービス統合とその課題について、これまでに
ムワーク1),2) を実現した経験を元に考察する。
販売管理
SO AP
生産管理
合モデルや、プライベート UDDI を用いた閉じた結
合モデルが中心となっており、当初 Web サービスに
SO AP
販売管理
現状の Web サービスは、UDDI を用いない静的結
航空会社B
予約
システム
部屋予約J
ホテルA
旅行代理店A
統合が必要
図1
SO AP
ホテルB
3 種類のサービス連携
ポータルサイトへの統合や、システム間連携などを実
現するものである。接続方式を Web サービスに統一
(2) は、企業間のサービス連携の形態である。例え
することで、連携が容易になることから広く利用され
ば旅行代理店の旅行予約システムでは、航空会社やホ
始めている。連携先の Web サービスは固定であるが、
テルの予約システムなどの各会社の Web サービスに
組織内のプライベート UDDI をネームサーバとして
接続し、一連の旅行予約を組み立てる。Web サービス
用いて実行時に結合する。
は、その仕様を企業間ネットワーク内で統一しておき、
ネットワーク内のプライベート UDDI に登録する。複
† 秋田大学工学資源学部情報工学科
Dept. of Computer Science & Engineering, Akita Univ.
†† 明治大学理工学部情報科学科
Dept. of Computer Science, Meiji Univ.
数サービスにまたがるトランザクションを実現する標
準仕様が開発・利用されており、最近では、サービス
の組み合わせを定義するオーケストレーション・コレ
W ebサービス群
書店
商品検索
検索
結果
サービス統合フレームワーク
検索
W ebサービス
変換
結果
フォーム
(H T M L )
出版社
書籍検索
変換ルール群
W ebアプリ群
書店
商品検索
検索
検索
結果
図書館
図書検索
記入ルール
問合せ
サービス
動的複合
W ebアプリ
変換
検索
結果
結果
複合
変換ルール群 共通IF ルール群 共通IF
書籍情報の
自動記入
自動記入
エージェント
記入内容
(書籍情報) 記入内容
自動抽出 (書籍情報)
記入済み
フォーム
(H T M L )
記入内容自動抽出エージェント
図2
サービス統合フレームワークによる書籍検索サービスの統合
オグラフィなどの記述言語が開発されている。連携先
の Web サービスは固定であることが多いが、新規の
取引先を実行時に発見するものもある。
をフォーム自動記入システムの一部として構築した。
自動記入システムとサービス統合フレームワークの
構成図を図 2 に示す。本システムは、例えば、研究室
(3) は、パブリックなサービス連携の形態で、今後
内の図書登録フォームに ISBN 番号を記入して自動記
の実用化が期待される。複数の企業間ネットワークに
入ボタンを押すと、書店などの Web サービスからタイ
またがるものやパブリック UDDI を用いるシステム
トルや著者などの情報を検索し、検索結果を図書登録
を想定している。これらの実現のベースとなる技術は
フォームに自動記入する。図の変換ルールは、サービ
(1)(2) と同じであるが、さらにいくつかの解決すべき
スのセマンティック情報であり、グローバルオントロ
課題がある。まず 1 つ目として、インターネットでは、
ジとの対応をルールとして定義したものである。書店
同分野でも異なるインタフェース仕様のサービスが存
や図書館は、共に書籍情報を検索できるが両者のイン
在する。利用者の立場では、一般に利用できる Web
タフェースは異なっているため、本フレームワークに
サービスが多い程、メリットが大きいため、このよう
より統合する。これにより、利用可能な書籍検索サー
な、複数の仕様に対応するクライアントの開発が必要
ビス数を容易に増やすことができた。自動記入システ
となるが、開発の負担が大きい。これは標準化が進む
ムでは、より多くのサービスに書籍検索を依頼した方
ことで改善されるが、完全に解消されることは無い。
が網羅性と耐障害性が高まるため、メリットが大きい。
また 2 つ目に、このような仕様の不統一の問題の他
なお、網羅性が高まるのは、例えば新刊の書籍は図書
に、現状では利用できるサービスの絶対数が少ない問
館に登録されておらず、書店には登録される傾向があ
題がある。広く普及している Web アプリケーション
るなど、各サービスに特色の違いがあるためである。
が、Web サービスとして公開されれば利用者側のメ
セマンティック情報による Web サービスの動的変換
リットが大きいが、これらの Web サービス化は進ん
は、同分野の異なるサービスを容易に統合する方式と
でいない。これらの問題の解決するための技術の 1 つ
して有効と考えられる。
として、動的サービス統合について以下に考察する。
3. 動的サービス統合
1 つ目の解決案として、各サービスのセマンティッ
4. お わ り に
本論文では、動的サービス連携の課題と、その解決
のためのサービス統合方式について考察した。また、
ク情報を定義することで、その情報に基づく自動メッ
例題としてフォーム自動記入のために構築した Web
セージ変換により異なるインタフェースのサービスを
サービス統合フレームワークについて考察した。
透過的に扱うような、Web サービス変換機能が考え
られる。2 つ目の解決案として、既存の Web アプリ
ケーションをそのまま Web サービスとしてラッピン
グする Web アプリケーション変換機能が考えられる。
我々は、この 2 つの変換機能により同分野のサービス
を統合して利用できる、サービス統合フレームワーク
参 考
文
献
1) 藤原, 中所, 玉本: フォーム自動記入のための Web
サービス変換フレームワークの開発, コンピュー
タソフトウェア, 21(4), 61–66 (2004).
2) http://www.fts.ie.akita-u.ac.jp/~fujiwara/