ディシジョン・メーキング とそのプロセス ディシジョン・メーキング とその

学習予定日 月 日
1-1
学習日 月 日
ディシジョン・メーキング
とそのプロセス
ディシジョン・メーキングとは何でしょうか。私たちは、毎日の生活にお
いて多くのディシジョン・メーキングをしているように思えますが、あらた
めて何かと問われると、明確に答えられないのではないでしょうか。本節で
は、ディシジョン・メーキングとは何かを明確にすると同時に、ディシジョ
ン・メーキングとは、どのようなプロセスで進めるのかについて学びます。
◆ディシジョン・メーキングとは何をすることでしょうか
◆ディシジョン・メーキングはどのようなステップからなるのでしょうか
1
ディシジョン・メーキングとは
ディシジョン・メーキングは、日本語に訳すと意思決定です。以下、章や節
の見出しでは「ディシジョン・メーキング」という言葉を使い、本文中では「意
思決定」という言葉を使っていきます。
私たちは日常、多くの意思決定をしています。進学、就職、結婚などは人生
を決定づけるともいえる重大な意思決定です。自家用車を購入するときにも、
メーカー、車種、色などを意思決定しなければなりません。これらは決定後の
影響が大きいだけに慎重に時間をかけて意思決定することでしょう。このよう
な意思決定は、人生において何十回も行うようなものではありません。
一方、日常繰り返して行う意思決定もあります。
あなたの昨日一日を思い出してみてください。どのような意思決定をしたで
しょうか?
朝は何時に起きるかに始まって、朝食に何を食べるか、服、靴はどれにする
かなども意思決定です。休みの日は、とりたてて何もしないから意思決定して
いないと思うかもしれませんが、それは、何かをやるかやらないかの選択肢か
2
○
C
○2007 JMAM
■■ 第1章 ■ ディシジョン・メーキングとその原則
ら「やらない」ほうを選択しているのです。
それでは、意思決定とはそもそも何でしょうか?
意思決定とは、複数の選択肢 (以下、代替案と称します)の中から適切なも
のを選択することです。ですから、もし代替案が1つしかなければ、意思決定
の必要はありません(図表1−1)
。
図表1-1
意思決定とは?
代替案1
代替案2
代替案3
1つを選択する
決定案
代替案4
---
選
択
肢
For Example :さまざまな場面で必要になる意思決定
A地点からB地点に行く場合を考えてみよう(この場合には、行かないと
いう代替案はないと考える)。
複数の経路があれば、どの経路を通るかを決めなければならない。つまり、
意思決定が必要になるわけである。ところが、経路が1つしかなければ選択
の余地はないため、意思決定の必要もない。
また、企業でビジネスに携わる場合を考えてみよう。
企業で働くということは、意思決定の連続だといっても決して過言ではな
い。それは、次から次へと意思決定を迫られるからである。どんな商品を扱
うのか、事業を行う地域はどこか、対象とする顧客は誰か、商品の価格をい
くらにするかといった戦略的な意思決定から、きょうはどの取引先をたずね
るか、どの書類から先に処理するかといった業務的な意思決定まで、さまざ
まな意思決定をしなければならない。
3
C 2007 JMAM
○
なお、意思決定には、いつも正解があるとは限りません。こうした場合、相
対的に優れた意思決定が求められることも少なくないのです。
では、正解あるいは、よりよい意思決定に導くには、どのようにすればよい
のでしょうか?
次の項では、それを導くための意思決定のプロセスについて考えてみましょう。
2
ディシジョン・メーキングのプロセス
,
Lethsink
t
次のショートケースを読んで、最後にある質問を考えてみましょう。
書店を営んでいる麻野さんは、1階が店舗、2階が住居という生活をし
ていたが、子供も大きくなって住まいが手狭になったので、最近、家を購
入して店舗と住まいを別にし、バスと鉄道を乗り継いで通勤することにし
た。
家から最寄りの鉄道の駅までは4キロほどあるので、当初、20分ほど
かけて駅までバスで通っていた。ところが、最近、道路事情が悪くなり、
バスが予定時刻に30分も遅れることがあるので、店の開店時刻に間に合
わない日が出てきた。
困った麻野さんは、1時間近くかけて、歩いて駅まで通うことにした。
すると、遅刻することもなくなり、交通費(バスの定期券代4,500円/月)
も節約になった。
しかし、朝晩1時間の徒歩は決して楽なものではない。次第に疲れを感
じることが多くなり、最近、妻も心配して自転車での通勤を勧めるように
なった。自転車の場合は、その購入費用(2万円)のほかに、駅前の駐輪
場代(5,000円/月)や自転車の維持費用もかかるが、30分ぐらいで家か
ら駅に着く。
4
C 2007 JMAM
○
■■ 第1章 ■ ディシジョン・メーキングとその原則
麻野さんは、いま、どのような意思決定を迫られていますか?
代替案は何でしょうか?
どのようなプロセスをたどって意思決定すればよいでしょうか?
通常、意思決定は、図表1−2のような4ステップで行います。
図表1-2
意思決定の4ステップ
︻目
第的
1を
ス明
テ確
ッに
プす
︼る
︻
第代
2替
ス案
テを
ッ作
プる
︼
各
︻代
第替
3案
スを
テ評
ッ価
プす
︼る
採
︻択
第す
4る
ス案
テを
ッ決
プ定
︼す
る
なお、このステップのなかに情報収集を挙げる考え方もありますが、ここで
は4つの各ステップで情報収集が必要になると考え、情報収集をステップの1
つとはしませんでした。
【 1 】第1ステップ:目的を明確にする
意思決定では、最初に何のために意思決定するのか、何を目的にして意思決
定するのかを明らかにする必要があります。麻野さんの意思決定の目的は、一
見「遅刻しないような通勤方法を選択すること」だと思えますが、本当にそう
でしょうか。よく考えてみると「毎日、定刻に開店すること」こそ本来の目的
ではないでしょうか。このように、目的を明確にすることは非常に重要なこと
ですが、必ずしも簡単ではありません。
5
C 2007 JMAM
○