東 風 見 聞 録 - イーストウインド プロダクション

東 風 見 聞 録
巻頭コラム
平成17年5月発行 通巻第4号 イーストウインド プロダクション
http://www.east-wind.jp/
田中正人
経験から生まれる価値観=各々の自信
前回の『東風見聞録』では自信について話をさせて頂き、最後に「私のようにチーム競技をしていると個人の「根拠のない
自信」(=各々の価値観)が弊害になってチームメンバーとトラブルになることも多い」と書いたが、価値観の相違でトラブル
に発展するのは、会社、学校、地域など一般社会においてもよくあることだ。競技ではこれに「根拠のない自信」が絡むので、
「うまく説明できないが、私は絶対にこう思う!」などと性格が剥き出しになり、更に面白い展開になっていく。
私は以前、「サハラマラソン」に出場したことがある。モロッコのサハラ砂漠を7日間かけて走破するレースである。このレー
スはとにかく暑い。空気は乾燥しているので口内はパリパリに乾き、足元はまるでフライパンの上に立っているようだ。7日間
の食料を最初から全て背負い、足が沈むほどの砂丘越えもある。
2004年夏の「トランスジャパンアルプスレース」
(富山県早月川河口∼静岡県大浜海岸まで
の山岳ランニングレース)にて優勝に導いてく
れた足。レース後はしばらく歩くこともままなら
なかった。
このレースではシューズの中に砂が入りやすく足先を圧迫し続ける。 96年のレー
スでは、私の親指は爪下にマメができて膿んでしまった。膿みで指全体がパンパ
ンに膨らみ激痛が走る。だがレースは続き、ともかく進むしかない。私にとって死
闘とも言えるサハラ砂漠でのランとなった。あまりの痛みに灼熱下でも鳥肌が立
ち、そして貧血のように目の前が真っ白になり失神しかけたが、どうにか踏みと
どまって耐えた。それでも走り続けると皮膚が破れ膿が出て楽になった。やがて
17位(95年は日本人最高記録の10位だった)でゴールゲートをくぐった。その時
は不甲斐無いレースだったが、痛みは失神するまで耐えられるものだと強く自信
を持つことができた。
以来、多数のアドベンチャーレースに出場したが、サハラマラソンでの苦しみと
走りぬいた経験が自分の自信となり、「サハラに比べればたいしたことはない」と
心と体が反応するようになった。
アドベンチャーレースは個人の価値観のぶつかり合い
しかしアドベンチャーレースはチーム競技だ。メンバーそれぞれが持つ「苦しさ」「痛み」「恐怖」に対する基準値と私のそ
れは異なる。私が「これぐらいできるだろう!」と思っていてもできないメンバーもいる。逆に精一杯走っているつもりだがメ
ンバーに「もっと速く走ってください!」と言われる時もある。互いに思う事は「俺は精一杯やってるんだ!」。でもそれが認
められずケンカが生じるのだ。
こうしたケンカはレースの度に発生する。睡眠時間もなく、疲労も限界に達し、
食事や水も満足にない。ストレスが溜まり精神的な余裕が無くなってくる。思考
が自己中心的になり、他人の行動が目に付くようになっていく。 しかし、実のところ、この相違が私を成長させてくれている。すべての人は自分
とは違う価値観を持っている。当たり前のことだが、それを受け入れることは意
外と難しい。自然の脅威にさらされ逃げ場のない極限の環境下で、その価値観
がぶつかり合う。それはそれは凄まじいものがある。
幾度もそんな言い争いを経験して得たことは、まずはその人の価値観に関心
を持つこと。そして彼らがなぜそのように考えるのか、なにを求めているのかを
考える。レースであれば優勝したいのか、自分自身に勝ちたいのか、それともた
だ単に楽しみたいのか。レースで優勝するという大きな目的が一致していても方
法論が異なればチームワークは崩れる。長期間のアドベンチャーレースで途中
棄権の最も多い要因は「仲間割れ」である。
1999年エコチャレンジ・パタゴニア大会での雪山
セクション。アドベンチャーレースは、過酷な状
況下でのレースだからこそ、チームメンバーの
意思統一がなければ勝てない。
相手を認めて受け入れるということ
リーダーとして個性の強いメンバーをまとめるのは簡単ではない。というより、無理である。メンバーをまとめようという考
え自体がおこがましいと常々感じている。大事なのはメンバー個人個人のやる気である。価値観や方法論はどうでもよい。
それぞれやる気を持ってチームの目標に向かって取り組めることである。リーダーとしては、メンバーの価値観、やる気を
尊重し、チームとして活動しやすい環境を整えることだと思っている。それが私の任務である。
以前、チームメンバーから『人のやる気を失わせる天才』と言われたことがある。自分自身のやる気が強いほどメンバー
のやる気を削いでいることを学んだ。この言葉は私を大きく成長させた。私の心に深く刻み込まれた宝物である。
最
新
レ
ポ
ー
ト
2005年11月ニュージーランドで開催される「アドベンチャーレーシング・ワールドチャンピオンシップ2005」(従来のサ
ザントラバース)にチームイーストウインドの出場が決定した。
この大会は、世界で開催される9つのシリーズ戦において優秀な成績を収めたチームなどが最終的なチャンピオン
を決定するものだ。チームイーストウインドは他大会に出場はしないものの、書類審査でチャンピオンシップの出場が
決定した。
大会出場にあたり、「ザ・ノースフェイス」がウェア類のサプライヤーとしての支援が決定している。チームはさらに協
賛スポンサーとメディアを募集中だ。
天気予報では東京は朝から雨と言われてたこの日、選手の気持ちが通じたのか陽
が差して好天気となった。東京都青梅市で開催された「モントレイル青梅丘陵高水山
岳マラソン」は500名近いエントリーがあった。ここ最近、トレイルランのエントリー数
が急増している。
チームイーストウインドから田中正人と佐藤浩巳が30kmクラスに出場。田中は初出
場で9位、佐藤は女子優勝(総合43位)。
女子優勝の佐藤浩巳
田中、横山、駒井の次なるレースは、4月30日∼5月1日に多摩地区で開催される
100kmトレイルラン、佐藤はアイアンマンジャパン(長崎)である。現在、メンバーは大
会に向けて調整中。
青梅トレイルランの翌週には、東京都あきる野市にて『秋川渓谷自然人レース』が開
催された。こちらのエントリーも約500名。このレースは秋川の河川を渡渉していくコー
スで、10kmクラスと5kmで編成されている。10kmは主に競技者が、5kmはファミリー層
が出場している。
チームイーストウインドからは田中正人と横山峰弘が10km出場。田中は昨年に引き
続き準優勝、横山は5位。
第2回KOCCiトレーニングキャンプ(講習会)「ホワイトウォーター&ロープアクティビティ」を群馬県水上町利根川で開
催した。ホワイトウォーターとは急流のこと。川の流れが激しいところは泡立って白く見えることから、このように呼ばれ
ている。
今回はラフティングでホワイトウォーターにチャレンジ。ラフティングとは、ゴム製のボートでパドルを使って川を下るリ
バースポーツ。最近の国内アドベンチャーレースにはこのラフティング種目も登場している。ラフティングで一番大切な
のは、川の流れを読む事とチームワーク。この2点を中心にプロ・ラフティングレーサーの浅野重人氏が講習。浅野氏
は日本初のプロチームを結成したラフティングレーサーである。
またこの講習会ではロープを使ったアクティビティのトレーニングも行なった。こちらは懸垂下降などを安全に素早く
行なうためのトレーニングで、今回は高さ5m程度の橋の上から降りた。
田中正人がアドベンチャーレースを始めて11年目。多くの方にご支援を頂き、心より感謝を
しています。田中をご支援くださる方々と久しぶりに酒を酌み交わしながら多彩な方面の談
義を竹内靖恵がレポートします。
「生活は数学からの恩恵を受けている。その恩恵を理解する事により数学が
もっと面白くなる」と説くのは数学教育専門の竹内英人さん。学力低下や教師
の資質低下が問題とされる現在の教育について、熱血教師の竹内さんに話を
聞いた。
田中
竹内
「ズバリ、数学の面白さって何ですか?」
「多くの人は、数学の答えを考えているうちにパッとひらめ
く事が楽しいと言いますが、それは数学の楽しさのほんの
一面なんです。それはそれで大切な事なんですが、プロの
教師としては、もう一歩上のレベルの面白さを教えていか
なければなりません。それは『こんなところで数学が役立つ
んだ』って伝える事。それを授業でどう教えるかがプロの教
師だと思います」
「例えばどんなことですか?」
「最近の新幹線や飛行機の座席って2列と3列になってい
るでしょ?あれは数学で言う<2と3のマジック>なんです。
2名で旅行に行く時は2列の座席に、3名だと3列の座席に、
4名だと2列の座席を2つ、5名だと2列と3列に、6名だと2
列が3つとか3列を2つとか。半端な空席ができないんで
す。ここで数学の理論が生きてくるんですが、これが数学
の恩恵なんです」
「数学が身近な出来事であれば面白いと思えてきますね」
「これはひとつの例なんですが、実は数学というのは日常
の中で使われている宝物なんですよ」
「でもそういうことを学校で教えてもらってない」
「今はそういった事を教えられる余裕がなかなかない。いか
に問題を上手に解くか、テストでいい点を取るか、そういう事
を意識した教師が多くなりましたね。でもそれはできて当たり
前。それ以上に日常生活に数学がどう使われているかを話
せる教師がプロです。」
「そういった教育の方向は見直されているんですか?」
「実はそれが<ゆとり教育>だったんです。3年1度開催され
ている学力の国際調査で2003年に日本の数学力が1位から
6位に下がってしまったんです。ここで文科省はゆとり教育の
間違いを認めたのですが、僕はどこでこんなに落ちたか調
べてみたんです。そしたら計算力などの基礎的な数学力は
さほど落ちてない、落ちたのは主に文章題や自分で課題を
作るような問題だったんです」
田中
竹内
「今、教師の資質低下が問題視されていますね」
「教師という職業は人気はあります。ただ、最近僕のと
ころに来る学生からは『初任給いくらですか?』とか『ど
うやったら校長・教頭になれますか?』という質問が多
いんです。そんな時、僕はまず『子供が好きか?』って
聞くんです。そうすると『まぁまぁですね』って返ってくる。
それじゃ困る。だってそれが基準ですからね」
田中
竹内
「つまんないなぁ」
「うん、つまらなくなるかもしれませんね。実際、教科書
に載っている事をそのまま黒板に書く教師が増えてき
ました。教科書とはあくまで教育の手段なんです。でも
今の若い教師は教科書そのものを教えているんです。
まさに、アニュアル通りですね」
「生徒は先生にそれを期待しているとは思わないので
すが・・・」
「以前いた高校の生徒に進路希望を聞いたら、塾の講
師の希望が多かったんです。東海圏で佐鳴学院という
塾があるんですが、そこのやり方が非常に面白く、生徒
を叱るべき時にはきちんと叱り、受験当日は旗を持って
応援に行き、合格したら涙を流して喜び、常に君の横に
いるよという事を子供に伝えるんです。そんな先生に出
会うと人生観も変わるでしょうね」
「へ∼すごい!子供は純粋に感激するでしょうね」
「このやり方がすべて良いとは思いませんが、学校側に
言わせると『塾は勉強だけ教えていればいいんだから
ラクだよ。でも学校は授業も、生徒指導も、部活もあっ
て、大変なんだ』って言うんです。なぜ生徒は塾講師に
なりたいのかという研究をしないで。そういった意味で
はこれからの学校教師もビジネス感覚が必要になって
きますね」
田中
「文章が書けないんですか?」
田中
竹内
「そう。無回答なんです。欧米の子供は合っていても間違っ
ていてもともかく文章を書く。でも日本の子供は書けないん
です。世論はこの結果だけを見て『ゆとり教育による学力低
下』と騒いだ。そして文科省は世論に負けて方針を変えつつ
ある。そもそも文科省の<ゆとり教育>の一番の目的は、
従来の知識だけを詰め込む教育では限界があるので、ゆと
りを持った内容にし、その分を自分の頭で考えて欲しいとい
うのが狙いだったはず。この部分は日本人の教育で一番欠
けている部分なんです。資源のない日本はアイデアで勝負
するしかないですからね」
「小学校の算数の授業も電卓を使用するし、ますます考
える事をしなくなりますね」
竹内
田中
竹内
田中
竹内
田中
竹内
田中
竹内
田中
竹内 「中学生に数学の文章問題を与えると『これって割るんだっ
け?掛けるんだっけ?』って文章の意味が分からない生徒
が増えたんです。これは大きな問題です」
田中
竹内
田中
竹内
「竹内さんにとって教師って何ですか?」
「これからの日本で一番大切な仕事。日本がどちらに
傾くかを握っているのは教育だと思います。中・高生に
『大人になったら何になりたい?』という質問をすれば
今でも教師は5本指に入ります。子供たちが先生になり
たいと言っている間は日本の教育は大丈夫だと思いま
すし、そういう子供を減らさない事が今の教師の仕事だ
と思います」
竹内英人(たけうちひでと)
1967年愛知県生まれ。名城大学教職センター講師。専門
は数学教育。現在、中日新聞にて毎週月曜日の「中高生
WEEKLY」のコラムを担当。今年12月に東京法令と学研よ
り数学と日常生活の関連についての本を出版予定。趣味
はサッカー、料理、歩くほどのスピードでマラソンラン。
森本泰介(もりもとたいすけ)
以前から数回アドベンチャーレースに出ていた嫁に「面白いよ!!」という話を聞かされてい
ました。どんなものだろうと伊豆アド2003の会場に足を運びましたが、「こんな競技、無茶だよ
…」というのが最初の印象です。
その2カ月後、同じくKOCCiメンバーの長谷川毅さん(第2
号のこのコーナーで紹介)に「里山アドベンチャーに出ない
か」と誘われて出場したのが私のアドベンチャーレースのデ
ビューです。
その時は体力不足と膝の不調で谷川岳に登れませんでした。それが悔しくて、気
が付けば長谷川さんに「伊豆アド2004に一緒に出てください!」と頼んでました。
ハマった今では、伊豆アド2004に続き次の伊豆アド2005に向け準備中です。
町田吉弘(まちだよしひろ)
アドベンチャーレースをはじめて知ったのは、ディスカバリーチャンネルでエコチャレンジのチュ
ニジア大会を見て。泥臭いけど、カッコいいと思いました。でも自分とは縁遠い世界とも思ってま
した。
そんなアドベンチャーレースを意識したのは、2000年の9月にたまたま帰省(静岡県賀茂郡松
崎町)していたら、家の前の川から「三聖苑」(松崎町の道の駅)に上陸する本物の田中正人さ
んに遭遇しビックリ!それがきっかけとなり、翌年に伊豆アドベンチャーレースのボランティアを
体験し、選手のみなさんの活躍を直接見ることがかなり刺激になったみたいです。
ハセツネやシーカヤックマラソンは出場経験あるけど、総合種目的なレース経験
はほとんどなし。でもいつかは出てみたいので、KOCCiで只今修行中!
とは言っても、伊豆アドベンチャーレースみたいな高いレベルは無理。今年もどこ
かのアシスタントポイントでボランティアしていると思います。今年の伊豆アドに出場
するKOCCiメンバーのみなさん、頑張って、そして楽しんで下さい!
◇アートスポーツ・OD-BOX ◇コロンビアスポーツウェア ◇ザ・ノースフェイス ◇サロモン&テーラーメイド ◇モントレイル ◇GoLite
日程
レース名
開催地
田中の担当業務
5/14-15
ADVENTURE TRAIL AZUMINO 2nd
長野県安曇野
「ひみつのひらめ筋」
(日本テレビ)選手
5/21-22
KOCCiトレーニングキャンプ「伊豆
アドベンチャーレース」トレーニング
西伊豆・松崎町
主催
5/28-29
ジャパンロゲイニング
長野県菅平高原周辺
選手
詳細またはこちらから! http://www.east-wind.jp/
KOCCi特典
参加費割引