明神恵里

■リレー随想
明神恵里
︵高 回︶
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●みょうじん・えり
1958年伊賀良生まれ。埼玉
大学卒。コピーライターとして
広告の制作に従事。1993年、
鳩レース愛好家向けの月刊誌を
発行する出版社「㈱愛鳩の友社」
入社。2012年より、同誌発
行人。
に興味があり、飼育していると言われた時代です。セレ
モニーで鳩を放つアトラクションを請け負う業者があり
ますが、数十羽から百羽程度ならともかく、一万羽とな
ると業者の手におえる数ではありません。オリンピック
年前の第 回大会をご記憶の方
も多いと思います。国立競技場での開会式で1万羽の鳩
鳩レースは動物飼育の趣味ですが、スポーツにたとえ
られます。わが『愛鳩の友』誌も、ピジョン・スポーツ・
「永遠の少年の楽しみ」
鳩レースです。
る技。この本能を利用して、帰還のスピードを競うのが
て飛び去ったわけです。まさに鳩の持つ帰巣本能のなせ
た鳩たちは、速やかに方向判定し、自分の寝ぐらめがけ
たと記録されています。国立競技場の上空を埋め尽くし
という国家の大プロジェクトのために、鳩レースの二協
鳩舎に帰っていったのですが。当時は日本における鳩飼
ませんでした。もちろん、鳩たちは自分たちの巣である
の友』の編集に関わるまで、特段疑問に思うこともあり
国立競技場で放たれた1万羽の鳩たちは、その後どこ
に飛び立ったのか。縁あって鳩レースの専門雑誌『愛鳩
1万羽の鳩はその後どこへ
前年のことだったと思います。
が放たれたことを覚えていらっしゃいますか。父と一緒
リンピックといえば、
月 日の未明、2020年の第 回オリンピック、
パラリンピックの開催地が東京に決定しました。東京オ
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会が関東一円の愛鳩家たちを組織し、飼育鳩を持ち寄っ
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にテレビ観戦した思い出があります。私が小学校入学の
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育者人口がピークにありました。男子の三人に一人は鳩
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鳩少年よ、
帰還せよ
リレー随想
鳩レース、放鳩の瞬間
マガジンというタイトルを冠しています。鳩の飼育者をフ
ライター(鳩を飛ばす人)と呼びますが、フライターはマ
ラソン選手を育てるように鳩を調教します。ヒナのうちか
ら自分の鳩舎を覚えさせ、少しずつ距離を伸ばしながら飛
ぶ訓練を施します。エサにも気をつかい、体を絞り、筋肉
をつけ、コンディションを徐々に高めながら満を持して
レースに参加させるのです。一方、レース鳩はアスリート
と称せられます。フライターとアスリート、二者が一つに
なってレースに挑むピジョン・スポーツ。この魅力に一度
魅せられた者は、生涯の趣味とする場合が多いようです。
平たく言うと、面白くてやめられないのです。
キロ
キ ロ、 時 に に は
キロの猛スピード
「 鳩 は 命 を か け て 自 分 の と こ ろ へ 帰 っ て く る。 遠 く は
千キロ以上彼方の放鳩地から一度も地上に降りることな
く、 時 速
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最近ある愛鳩家から聞いた本音です。東京オリンピッ
クの時代から鳩飼育を続けてきた人たちは、
すでに 代、
しいし、鳩レースは面白い」
る存在なんてあるかい。だから、鳩たちがたまらなく愛
くちゃならないよ。今時、自分のために命をかけてくれ
に帰還できるように、自分も命がけで世話をしてあげな
越えあり、猛禽類の脅威もある。命がけの鳩たちが確実
で、水も飲まずに何時間も飛び続ける。山越えあり、海
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60
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リレー随想
代となり、老いてますます鳩の趣味に熱心です。レー
の鳩レースの世界は「永遠の少年の楽しみ」と形容する
うです。愛鳩家の高齢化は避けられない現実ですが、こ
それどころか、この趣味の存在すら知らない人が多いよ
代で鳩レースに関心を寄せる人はめっきり減りました。
どの感動が胸に湧き起こるのです。残念ながら、若い世
が鳩の姿を上空に確認したときは、言葉では言えないほ
んぼまで鳩に見えると苦笑します。しかし、やがて、わ
られます。燕が飛んでも鳩にみえてくる。終いには赤と
と言います。夕暮れが迫ってくると心配で心が締め付け
スのある日は、空を見上げてひたすら愛鳩の帰りを待つ
ている現場を取材し、DVDを制作しました。 百羽の
す。最近では、東京のスカイツリーの真下で鳩飼育をし
県さいたま市にあります。関東は愛鳩家が多いところで
本各地の鳩舎におじゃましています。愛鳩の友社は埼玉
ることを幸いに、まずは体当たりの現場取材と称して日
た。ちょうど子供も手が離れ、気兼ねなく家を空けられ
した。今は、鳩をつかんで鳩撮影もやるようになりまし
り。かくいう私も、最近まで鳩をつかむことすら苦手で
スは女性には近寄りがたい世界です。鳩界人は男性ばか
以前に比べ、
事情が一変しました。正直なところ、
鳩レー
から発行人を引き継いでいます。裏方の仕事が主だった
と関わるようになりました。そして、昨年夫を亡くして
にふさわしい、若々しい活気に満ちています。
鳩群がスカイツリーの周りを旋回する様子は、実に壮観
です。こんな都会でも鳩を飼うことができるのかと驚き
4月に創刊されま
かつての鳩少年が、学校の授業中に机の下に隠して読
んでいた愛読雑誌が、『愛鳩の友』です。1956年の
べ、放鳩のタイミングを的確に判断する放鳩人は、まさ
リーを使ってトラックで運びます。気象条件を詳細に調
ました。何千羽の鳩を専用のコンテナに詰め、途中はフェ
ました。北海道の汐見や初山別からの放鳩にも立ち会い
した。以来 年間
月刊誌『愛鳩の友』
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ま夫が発行人だっ
ます。私はたまた
発刊され続けてい
お会いする機会がありました。辛い日々から、鳩飼育の
取材となりました。東北で津波被害にあわれた方々にも
にプロの集団です。日本の鳩文化のレベルの高さを知る
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再 開 に よ り 心 を 立 て 直 し た と い う 愛 鳩 家 がいらっしゃい
愛鳩の友1964年10月号表紙
東京オリンピックで鳩を放鳩
たため、この雑誌
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ました。日本各地で『愛鳩の友』を
年 以 上読 み 続 けて い
的な力について眼が開かれる思いでした。
季刊誌『愛鳩の友』創刊
今年の4月から月刊『愛鳩の友』に加えて、季刊誌『愛
鳩の友』を創刊しました。春、夏、秋、冬の4冊を発刊し
勉強会、イベント等で盛り上がります。日本人愛好家も
開催されました。世界の愛鳩家が集まり、鳩の品評会や
アのニトラ市で世界愛鳩家連盟によるオリンピアードが
わすことができるのです。今年の1月末には、スロバキ
あっという間に打ち解けて、旧来の友人のように心を通
をこえるということです。見ず知らずの異国人どうしが、
するのは、同じ趣味を持つ者どうしは、容易に国境の壁
鳩レースの本場は、ヨーロッパのベルギーやオランダ
です。イギリス、ドイツ、フランスでも盛んです。実感
ます。メールの文面に「飯田高校同窓生 春号プレゼント」
と書き添えてください。かつての鳩少年で退職後、鳩飼育
ルアドレスにアクセスしてください。贈呈させていただき
もしも季刊誌
『愛鳩の友』
をご覧になりたい方は弊社のメー
とお許しをいただきました。この同窓会誌をご覧の方で、
を感じていただけると思います。この随筆では、宣伝も可
鳩少年だった方なら、
「ミュニィエ号」ときいて懐かしさ
表紙は伝説の鳩「ミュニィエ号」の絵が飾りました。昔、
誌の生き残りをかけた改革に着手したつもりです。春号の
ます。月刊を薄く、季刊を厚く、私なりにこの伝統ある雑
多数参加されました。アジアでも鳩レースは盛んです。
を超えて発刊を
を再開される方が増えています。
『愛鳩の友』は、半世紀
国境を越える経験をし、鳩文化が国際交流に果たす実質
る事実は、逆説的でもあり興味深いところです。何度か
うマイナーな世界が、グローバルな世界につながってい
アのレースに参加するケースもあります。鳩レースとい
日本から鳩を送って、また自身が現地に住みついてアジ
スが認められているため、違った意味で非常に熱心です。
中国、台湾、フィリピン、タイ。日本と異なり、賞金レー
鳩文化で国際交流
というエールをいただいています。
ますという方にお会いでき、この雑誌を続けてください
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eigyo@
aikyunotomo.co.jp
メールアドレス
ります。
帰還を待ってお
続け、鳩少年の
2013 年季刊誌創刊号の表紙
伝説のミュニィエ号が富士山
をバックに飛翔
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