☆ 列 車の旅を表す音楽をつく ろう! (3 年生:音 楽づく り) 「 音 楽 づ く り」 は 、 音 楽が 得 意な 子ど もに とっ ては も ち ろ ん 、 苦手な子どもにとっても楽しく、取り組み や す い 学 習 の一つです。とはいえ、子どもが、音楽の 要 素 を 生 か した表現をつくることができるようにする に は … と 考 えると、なかなか難しいものです。 子ど も が 楽 し み ながら、自分なりの音楽をつくり出すこと をねら いとした音楽づくりの学習を紹介します。 ○ 指 導の実際 第1時 間目 「国際急行列車」の鑑賞 まず、導入で、 「国際急行列車」(ブーエ)を鑑賞しました。「国際急行列車」は、 列車が発車・停車する際の速さの変化を感じ取りやすく、汽笛や蒸気の音、発車 のベル等、列車の特徴を表現した楽器の音色から、様子の移り変わりを想像しや す い 曲 で す 。子どもたちは、この曲を1回聴いただけ で 、 す ぐ に 「列車が走っている様子だ」と気付きまし た 。 そ こ で 、「 ど こ で そ う 感 じ た の ? 」 と た ず ね な が ら 、 そ の 子 なりに聴き取ったことと、その理由を具体 的 に 語 ら せ ま し た 。 そ し て 、「 音 楽 で 、 列 車 の 走 る 様 子 を 表 す こ とができるなんて面白いね」という発言が 出たと ころで、音楽づくりをすることを提案しました。 第2時 間目 列車の様子を表す音を探す まず、列車の様子をどう表すか楽器で音を出して試す活動を行いました。子ど もたちは、タンブリン、カウベル、トライアングル、木琴、鍵ハモ、カバサ、マ ラ カ ス の 中 から、実 際に音 を出し て「カバサ は車輪が動く音を表せそう」「ト ラ イ アングルは出発ベルみたいだ」と、速さや強さを変えながら試し、楽器を選んで いまし た。 第3時 間目 思い描く旅を設計図に表す 5,6人 のグループごとに、 「明るくて楽しい旅」 「急 行 列 車 の 旅 」というような表したい旅のイメージを決 め ま し た 。 そして、旅のイメージに合う「列車の旅の 様 子 」 を 具 体的に思い浮かべ、設計図に表すよう促し ました 。 設 計 図 に か き こ ん だ の は 、「 表 し た い 旅 の イ メ ー ジ と そ の 様 子」「使う楽器」「演奏方法」です。このとき、「列車が速く走る様子を 表 すために、どう演奏するのかな」と、子どもが工夫したいことを具体化できるよ うに、 個別指導をしながら、その子なりの工夫の意図を確かにしていきました。 第4∼ 7時間目 グループごとに音楽をつくる 設計図をもとに、いよいよ音楽をつくります。子どもは、主となる木琴のふし に、タンブリンやカウベル、カバサ等の楽器を選び、実際に音を出して試しなが ら、音を音楽にしていきました。この過程では、自分たちの音楽を録音して聴く 活動、 ペアグループで聴き合う活動を取り入れるようにしました。 ①自分 たちの演奏を聴く(自己評価) 自 分 た ち の 音 楽 を 自 己 評 価 す る と き に は 、「 列 車 が 停 ま る 様 子 を表すために最後をゆっくりする」という よ う に 、 工 夫点を明確にしてから録音し、聴かせまし た 。 そ し て 、その工夫点についての感想を評価カード に 書 か せ ま し た 。 す る と 、「 最 後 は 、 も う 少 し 遅 く し てみん なの音をもっと合わせるようにするとよい」等、 具 体 的 に 自 分たちの音楽を見直す姿が見られました。 ②ペア グループで聴き合う(相互評価) ペ ア グ ル ー プで 聴 き 合う 活動 は、「列 車が 遠ざ かる 様子 が表 れて い るか な」 と い うよう な悩みが見られた時に行いました。 ( グル ー プ 同 士 の相 互 評価 の例 ) ○ …演 奏す る 子ど も 、◆ … 聴く 子 ど も ○ R児:途中で音の速さを変えているところと、カウベルの音の大きさをよく聴い てね。 ◆ A児:Tくんが、途中でカバサをシュシュシュって速く動かしていたのが列車が 急いでいるみたいに聴こえたよ。 ◆ T児:同じところで、Rさんがタンブリンのリズムをタッタッタッ…からタタタ …に変えていて、列車が速くなる様子がよくわかったよ。 ○ M児:私のカウベルの音はどうだった? ◆ K児:だんだん音を小さくしていて、列車が遠くなっていく 感じに聴こえたよ。もう少し大げさに強弱をつけると、 もっと遠くなる感じがよくわかると思うよ。 こ の 後 、 R 児の グ ル ープ は、「列 車が 遠ざ かる 様子 を表 すた めに は 、も っと 強 弱 をつけるとよさそうだ」と自分たちの表現のよさや課題を見つけて工夫を重ねて いまし た。 ③全体 で表現を聴き合う どのグループも、ある程度満足のいく音楽ができてきたところで、表現を見直 すきっかけとなるグループの表現を全体で聴き合い、そのよさや工夫点について 語り合う場を設定しました。取り上げたのは、工夫の意図が明確なグループと、 リズムや速度の変化を生かした工夫がよく表れていたグループです。これらのグ ループの演奏を聴き合う中で、実際に「自分たちも列車のガタンゴトンのリズム を変えてみよう」と、よさを取り入れたり、自分たちの音楽を見直したりする姿 が見ら れました。 第8時 間目 「○○な列車の旅」発表会をする 学 習 の 終 わ り に 、「 ○ ○ な 列 車 の 旅 」 発 表 会 を 行 い ま し た 。 発 表会では、工夫したことを自分たちの言葉 で 伝 え 、 自 信をもって堂々と演奏する姿が見られまし た 。 仲 間 の 演 奏 を 聴 い た 子 ど も は 、「 だ ん だ ん と 列 車 が 近 づ い て きて、本物のふみ切りのような音がしたと き に 、 列 車 が 目 の 前 を 通 過 し て い く 感 じ が し た よ 。」 と、感 じ取ったよさを伝えていました。 学習の 終わりには、以下のような子どもの振り返りが見られました。 O児 : どのグループも、めざす旅のような音楽だった。次に音楽づくりをする ときも、自分たちのめざす音楽に近づきたい。 I児 : 最後、Wくんの「プシュー」と停まる音がよく聴こえたということは、 他 の 楽 器 の 音 が 、 ゆっ く り で 静 か にな っ て い た か ら だと 思 う。 工 夫 し た ことがみんなに伝わってよかった。 ○ 振 り返り活動の充実 題材をとおして継続的に行ったのが、ポートフォリオによる自己評価です。ポ ートフ ォリオには、 「学習中に使用した評価カード」 「授業の終末に書いた振り返り」 「設 計図」を蓄積しました。 これら を も と に 振 り 返 り を 行 う こ と で 、「 前 よ り も 少 し 早 め に 汽笛を鳴らすと、本物の急行列車みたいに な っ た 。 次 は、楽しそうな感じにするために高い音で 鳴 ら し て み たい」と、工夫したことのよさや課題、自 分の表 現の変容を感じ取ることができていました。 ○ 授 業を終えて 今 回 の 学 習 では 、 子 ども たち が「 私に もで き た!」「作 曲家 にな っ たみ たい 」 と 音楽づくりの楽しさを十分に感じることができたようです。学習過程で、意図的 に評価活動を取り入れたことで、より切実感をもって聴いたり、さらに工夫を重 ねたり する子どもの姿が多く見られました。
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