実話に基づく作品の効用と課題 - PRODUCER HUB PRODUCER HUB

実話に基づく作品の効用と課題
USC School of Cinematic Arts, Peter Stark Producing Program
バック 淳子
目
次
1.
はじめに .......................................................................................................................... 2
2.
実話に基づく映画はドラマに集中 .................................................................................. 2
3.
マーケティングからみた魅力 ......................................................................................... 4
4.
ドキュメンタリーの可能性 ............................................................................................. 5
5.
リアリティではないリアリティ番組 .............................................................................. 6
6.
まとめ .............................................................................................................................. 7
‐1‐
1.
はじめに
“Based on a true story”(この物語は、実話に基づいています) という断り書きを映画の冒頭で
目にすることも多い昨今、実話に基づくからこそ登場人物に共感を覚え、勇気や希望を与えられ
た経験を持つ観客も少なくないだろう。インディペンデント映画プロデューサーや投資会社など
に米国内の映画産業のデータを提供する、映画に関するデータ収集サイト The Numbers によると、
実話に基づく映画の本数は 1929 年から 2016 年公開予定にかけて計 2,023 本。そのうち、ドキュ
メンタリーが 1,403 本と最多だが、ドラマも 447 本に上り、最近ではアカデミー賞にノミネート
された『フォックスキャッチャー』をはじめ、
『Black or White』
『McFarland USA』など良作が目
立つ。(※1) 好調に映る実話に基づく作品だが、映画のみならず、テレビ、ドキュメンタリー業
界で活躍する、あるいは経験を持つ数人に取材し、その効用と課題を探った。
2.
実話に基づく映画はドラマに集中
前出の The Numbers によると、米国内での実話に基づく映画の公開本数は、1920 年代から 1970
年代にかけてはほぼ一桁で推移していたが、1980 年代の 38 本と 1990 年代の 148 本を境に、2000
年代には 882 本、続く 2010 年代には 922 本と激増しており、年別に見ても、2011 年以降、年 200
本前後で堅調に推移している。
興行収入も、
『クレオパトラ』(1963 年) と『史上最大の作戦』(1962 年) を除いて 4 億ドルを
超える作品こそないものの、最近の作品では、米軍史上最強とうたわれた狙撃手 Chris Kyle のベ
ストセラー自伝を映画化し、337,208,992 ドルの興行収入を記録した『アメリカン・スナイパー』
(2014 年) が実話に基づく作品として歴代 3 位にランクインした。これは、1995 年から 2015 年
にかけての全体興行収入でも 4 位となる数字で、実話に基づくストーリーが観客をひきつけるこ
との証左と言える。
また、その間のジャンル別の公開本数はドラマが 3,849 本と、続くコメディの 2,086 本とドキ
ュメンタリーの 1,533 本を大きく引き離しており (※2)、さらに以下の表の通り、ドラマにおけ
る興行収入上位 25 位中、実話に基づく作品は、
『アポロ 13』(1995 年、323,111,972 ドル)、
『ビュ
ーティフル・マインド』(2001 年、240,741,999 ドル)、
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
(2002 年、226,700,817 ドル) など 7 作品が占めている。(※3)
Top-Grossing Movies 1995-2015, Adjusted for Ticket Price Inflation
Rank
Movie
Release Date
Distributor
MPAA
Rating
Total Gross
Inflation-Adju
sted Gross
1
パッション
Feb 25, 2004 Newmarket Films
R
$370,782,944
$487,776,860
2
プライベート・ライアン
Jul 24, 1998 DreamWorks SKG
R
$216,335,085
$373,037,854
3
キャスト・アウェイ
Dec 22, 2000 20th Century Fox
PG-13
$233,632,144
$345,168,243
‐2‐
Rank
Movie
Release Date
Distributor
4
アメリカン・スナイパー
Dec 25, 2014 Warner Bros.
5
アポロ 13
Jun 30, 1995 Universal
6
MPAA
Rating
Total Gross
Inflation-Adju
sted Gross
R
$337,208,992
$337,208,992
PG
$172,070,496
$323,111,972
ニュームーン/トワイライ
Nov 20, 2009 Summit Entertainment
ト・サーガ
PG-13
$296,623,648
$322,655,220
7
エクリプス/トワイライ
Jun 30, 2010 Summit Entertainment
ト・サーガ
PG-13
$300,531,751
$311,197,008
8
トワイライト・サーガ/ブ
Nov 16, 2012 Lionsgate
レイキング・ドーン Part2
PG-13
$292,324,737
$299,968,315
9
トワイライト・サーガ/ブ
Nov 18, 2011 Summit Entertainment
レイキング・ドーン Part1
PG-13
$281,287,136
$289,777,882
10
パーフェクト ストーム
Jun 30, 2000 Warner Bros.
PG-13
$182,618,434
$276,807,533
11
しあわせの隠れ場所
Nov 20, 2009 Warner Bros.
PG-13
$255,959,475
$276,268,419
12
グッド・ウィル・ハンティ
ング/旅立ち
R
$138,433,435
$241,272,886
13
ビューティフル・マインド Dec 21, 2001 Universal
PG-13
$170,708,996
$240,741,999
14
キャッチ・ミー・イフ・ユ
Dec 25, 2002 DreamWorks SKG
ー・キャン
PG-13
$164,606,800
$226,700,817
15
トワイライト〜初恋〜
PG-13
$192,769,856
$218,580,172
16
トゥルーマン・ショー
Jun 5, 1998
PG
$125,618,201
$218,563,530
17
グリーンマイル
Dec 10, 1999 Warner Bros.
R
$136,801,376
$214,452,328
18
アメリカン・ビューティー Sep 15, 1999 DreamWorks SKG
R
$130,058,048
$203,707,071
19
評決のとき
Jul 24, 1996 Warner Bros.
R
$108,766,007
$200,934,246
20
幸せのちから
Dec 15, 2006 Sony Pictures
PG-13
$162,586,036
$199,323,596
21
ユー・ガット・メール
Dec 18, 1998 Warner Bros.
PG
$115,821,495
$196,550,600
22
フェノミナン
PG
$104,636,382
$193,393,075
23
エリン・ブロコビッチ
R
$125,548,688
$190,302,919
24
リンカーン
Nov 9, 2012 Walt Disney
PG-13
$182,207,973
$186,196,849
25
コンタクト
Jul 11, 1997 Warner Bros.
PG
$100,920,329
$179,364,744
Dec 5, 1997
Miramax
Nov 21, 2008 Summit Entertainment
Jul 5, 1996
Paramount Pictures
Walt Disney
Mar 17, 2000 Universal
Box Office Mojo によると、1980 年以降、ドキュメンタリーを除くジャンル別では、実際の犯
罪に基づく作品が、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002 年、226,700,817 ドル) を筆
頭に 52 本公開された。自伝などを基にした biopic は 40 本で、リアリティ番組にインスパイアさ
れた作品は 23 本となっている。(※4)
‐3‐
(※1)“Based on Real Life Events Movies." The Numbers. Nash Information Services, LLC. Web. <http://www.the-number
s.com/movies/source/Based-on-Real-Life-Events>.
(※2)“Market Share for Each Genre 1995-2015." The Numbers. Nash Information Services, LLC. Web. <http://www.the-n
umbers.com/market/genres>.
(※3)“Box Office History for Drama Movies." The Numbers. Nash Information Services, LLC. Web. <http://www.the-num
bers.com/market/genre/Drama>.
(※4)“Genre Index." Box Office Mojo. IMDb.com, Inc. Web. <http://www.boxofficemojo.com/genres/>.
3.
マーケティングからみた魅力
2000 年まで 12 年間、Universal Pictures Legal and Business Affairs で Executive Vice President を務
め、現在は Mattel で VP Licensing Acquisitions, Content, Biz Affairs を務める Jeffrey Korchek 氏は、
実話に基づくことが、greenlight と呼ばれる映画の成立を決めるプロセスへ与える影響について、
「マーケティングの観点からは特に魅力的だ」と話す。だが、実話に基づく作品が好調であるこ
とについて、
「それ自体が新しいジャンルとなるわけではない」とみている。
「映画にはサイクル
があり、スタジオは様々な要素を吟味しながら公開の 18 カ月前に作品を決める。かつてウェス
タン映画がもてはやされた時期もあったが、いまはそうではないように、あくまで決め手となる
のはストーリーであることに変わりはない」と話した。
Universal 時代、思い出深い実話に基づく作品の一つに、元美人コンテスト優勝者の Erin
Brockovich が、企業の巨悪を前に、史上最大級の集団訴訟に勝利するまでの軌跡を描く『エリン・
ブロコビッチ』がある。交渉過程では、登場人物らがスタジオを訴える権利を放棄することと、
スタジオがストーリーを脚色することを認めさせることの 2 点が最も重要だったといい、円滑に
交渉を進め、作品を成功に導くために、プロデューサーが相手との信頼関係を構築することの大
切さを強調した。そのためにも、Brockovich の私生活の一部を描かないことが条件となったが、
Brockovich の Period of Life を買う契約を結ぶうえで留意したのは、「プロデューサー側が、スト
ーリーの描き方をしっかりとコントロールすることだった」と振り返った。
同様に、実話に基づく作品が、「ストーリーに真実味が加わるため、マーケティングの観点か
らも非常に重要」と強調するのは、DreamWorks Studios Story Department で Senior Vice President
を務め、長年、脚本開発に携わってきた Andrea McCall 氏だ。
「よく知られた話の場合、また、
ヒーロー像が際立つ場合は特に効果的」という同氏は、アンケートに対し、
「実話に基づく作品
を通じて、観客は、描かれているのが同じ世の中に実在する誰かの体験であることに、より共感
を深め、感動と畏怖を覚えるのではないか」としている。前述の『アメリカン・スナイパー』や
『Wild』
『リンカーン』
『博士と彼女のセオリー』
『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数
学者の秘密』
『シルクウッド』
『潜水服は蝶の夢を見る』
『エリザベス』などはその好例で、作品
に共通するものが、登場人物が目標に向かって大きな困難を乗り越えることにある点は注目に値
する。このため、実話に基づく作品はサバイバル・ストーリーのジャンルに当てはまりやすいが、
フィクションが多いのもサバイバル・ストーリーの特徴という。
‐4‐
このように、展開がしやすく、どのスタジオにとっても魅力溢れる実話に基づく作品だが、国
内外での興行収入にはばらつきがある。McCall 氏は、
「興行収入面については、取り上げる題材
やインディペンデント、スタジオの違い、マーケティングなどの各要素が加わるため、単純比較
は難しい」としながらも、
「社内の記録では、実話に基づく作品の公開本数は近年、倍増した可
能性すらある」との見方を示した。また、そのきっかけは、プロデューサーが題材を持ち込む場
合や、life rights や本などのオプションを確保した場合が大半だという。
一方、greenlight の過程はスタジオ間で異なり、DreamWorks Studios の場合、
「Greenlight は、
予算のほか、監督やキャスト、クルー編成などを終えた最終段階にあり、準備が整って撮影をは
じめてもいいというオフィシャルサイン」だという。よって、実話に基づいた題材かどうかを考
慮するのは、「それよりずっと以前の packaging 段階 (パッケージング段階) になる」という。
アカデミー賞作品賞、監督賞など 7 部門を制覇した『シンドラーのリスト』(1993 年) も、
「当
初は、より小規模な作品と捉えられており、決められた予算の中で完成させるのは困難だった」
という。その大きな障害の一つが、
「歴史上の事実の正確性を保ちながら、スリラーのようなト
ーンを持った感動を生む脚本を作り上げることにあった」という。結果的に『シンドラーのリス
ト』は大成功を収めることとなり、
「ホロコースト生存者への関心を高め、(その経験を語り継ぐ)
Shoah Foundation 設立へとつながった」と同氏は指摘した。(※5)
ただ、実力派俳優の Benedict Cumberbatch を起用し、WikiLeaks 創設者の Julian Assange を描い
た同スタジオのスリラー『フィフス・エステート:世界から狙われた男』(2013 年) は 2,800 万
ドルの予算に対して、興行収入は 8,554,008 ドルにとどまり、失敗作と評された。(※6) これに
ついて、映画情報サイト Moviefone は、「公開時期など複数の要因があるものの、興味深いテー
マながら、人々の関心が米国経済の行方などにより向いていたためではないか」と分析している。
つまり、実話を基にした作品は、題材の社会的意義を高めると同時に、観客が現実を忘れるため
のエンタテインメント性を求める場合、かえって観客を遠ざけてしまう側面もあるようだ。
(※5) 実話に基づく作品に関するアンケート回答結果より
(※6)“The Fifth Estate." Box Office Mojo. IMDb.com, Inc. Web. <http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=fifthestate.ht
m>.
4.
ドキュメンタリーの可能性
実話に基づく作品の主流を占めるドキュメンタリーについて、ドキュメンタリーとフィクショ
ンの両方を手がける Mitchell Block 准教授は、
「問題は、マーケット規模よりも、テーマであり、
それは近年、平凡になりつつある」と指摘する。エグゼキュティブ・プロデューサーを務めた
HBO ドキュメンタリー作品 『Big Mama』(2000 年)がアカデミー賞を受賞した経験も持つが、
「ビジネスが主流のハリウッドでは受賞とビジネスの関連性は薄い。それでも、
『シンドラーの
リスト』や『ファインディング・ニモ』など、両方の要素を保った作品もある」と話す。
その中で物語映画が生き残る術としては、「オリジナル作品は難しいが、原作のアダプテーシ
‐5‐
ョンにはチャンスがある。日本を題材とした作品を海外で展開するためにも同様のことが言える」
とした。国際共同製作は商品化され、アート性が失われやすくなることも、アダプテーションを
勧める理由に挙げた。
同氏はアイデアを探すためにも「以前は新聞を 5 紙取っていた」そうであり、トレンドを反映
する Facebook も活用している様子である。そして、
「何より人との交流を積極的に持つことがカ
ギとなる」と強調した。
Block 准教授は現在、サンディエゴとフロリダ州にある Seaworld を舞台に、約 30 人のトレー
ナーとシャチとの関係性に注目しており、絶滅の危機に瀕しつつあるシャチを、逆にシーワール
ドがいかにして保護しているかを追ったドキュメンタリー『The Killerwhale』を制作中だ。フロ
リダのシーワールドで女性調教師がショーの最中にシャチに殺害されるという衝撃的な事件を
題材にした『Blackfish』をめぐっては、シーワールドが検証サイトで同作品について「客観的な
ドキュメンタリーではなくプロパガンダだ」と主張し、授業でもシーワールドの代理人を務める
ゲスト・スピーカーの Lawrence Iser 氏が、
「あのドキュメンタリーは大半が嘘だ」と真っ向から
批判するなど論争を巻き起こした。(※7) シャチを自然界から連れてきて、狭い水槽の中で飼育
することの状況改善を訴える『Blackfish』と、今回の『The Killerwhale』はいわば真逆のテーマ
だが、シーワールド内で撮影をするのが認められたのははじめてだといい、議論に一石を投じる
ことになるのか注目される。時に題材に斬り込んでいく必要があるドキュメンタリーにおけるラ
イツ確保については、
「対象が倫理的に守られることを条件としている」と語った。
日本で似た題材を扱った作品としては、和歌山県太地町のイルカ追い込み漁をめぐる『ザ・コ
ーヴ』が記憶に新しいが、同准教授は『ザ・コーヴ』について、「漁師にとって不公平な描き方
をしている」との見解を示した。その根拠については、「太地町におけるイルカ漁の歴史が 300
年におよぶ」としたうえで、「漁師にとって追い込み漁は生活スタイルであり、外交に配慮し、
漁師への補償を提案するなど間に立つべきは日本政府だ」と指摘した。
(※7)“Blackfish: The Truth About the Movie." SeaWorld. SeaWorld Parks & Entertainment, Inc. Web. <http://seaworld.co
m/en/truth/truth-about-blackfish/>.
5.
リアリティではないリアリティ番組
また、リアリティ番組を含むテレビにおける実話に基づく作品について、NBC で 13 年から放
送中の人気テレビ番組『THE BLACKLIST / ブラックリスト』の Showrunner を務める Jon
Eisendrath 氏は、Columbia University Graduate School of Journalism を卒業し、報道記者としてワシ
ントン DC で政治ニュースなどを担当した経験が、視聴率低下を食い止めようとする大都市のニ
ュースルームの奮闘を描いたシリーズ『WIOU』(1990 年、CBS) の制作に活きたという。ただ、
「実話に基づくテレビ番組は、時に当たることもあれば、外れることもある」といい、ライター
としては、実話であるかどうかを特に意識していない様子が伺えた。
2004 年に『アメージング・レース』でエミー賞を受賞したプロデューサーJohn Kroll 氏による
‐6‐
と、
「特定の形式を保ったフォーマットテレビや、ドキュソープは、ケーブルテレビの帯番組と
なる一方で、ネットワークでは新規視聴者の獲得が難しいために展開しづらい実態がある」とい
う。ネットワークは多くの視聴者をひきつけるが、より競争が激しく、ケーブルテレビに比べて
暴力や性描写の制約が大きいのが特徴だ。そのため実話に十分に斬り込めない側面もあるとみら
れる。
リアリティ番組では、筋書きのないストーリーはほとんどないものの、視聴者の多くは、画面
に映し出される内容を信じる傾向にあり、面白いテーマを持った人々や、有名人らの非日常な日
常を追い、特に出来事がない場合は、何かイベントを加えるなどの提案をして、テンポある展開
を保っているという。また、番組によっては、会話をまったく文脈にそぐわない形で切り取るこ
とも多々あるため、一概に現実とは言えない実態が浮かぶ。
6.
まとめ
以上、見てきたように、映画やテレビ、ドキュメンタリーにはそれぞれ実話を基にした場合の
作品の効用と課題とがあり、商業的に有効な反面、情報をどう受け取るか、観客の混乱を招きか
ねない側面もあるようだ。
業界誌 Variety によると、Washington University in St. Louis の Jeffrey M. Zack 教授 (心理学) は、
「観客は作品によってつくられた事実の善悪を判断しない傾向があり、例えそれが、既に知って
いる歴史上の事実であっても、作品中で目にした情報によって上書きされてしまうのだ」と語っ
た。それだけ映画の持つインパクトが大きいということだが、記事はフィルムメイカーはその影
響力を肝に銘じるべきだと指摘している。60 年代、70 年代はベトナム戦争を踏まえて、Paul
Newman 主演の『WUSA』など政治的なメッセージの込められた映画が並んだが、その内容が事
実と乖離していることも少なくなかったという。
さらに、Zack 教授の実施した調査によると、歴史を基にしたエッセーを読み、その反対の内
容や不正確な事実の含まれた映画を見せられた学生たちは、映画の内容の 30%を事実として受
け入れたという。この結果について、記事は、
「作られた事実の方がエンタテイニングだからで
はないか」と指摘している。(※8)
USC に入学した際、最初にインプットされたフレーズの一つが、“Reality ends here (ここから
先は夢の世界)”である。映画やテレビには登場人物に自身を重ね合わせる効用もあるため、現
実の持つ真実味や共感を呼ぶ力を認識しつつ、いかに夢の世界へと観客を誘うかの力学を身につ
けることが、責任ある作品づくりの鍵となりそうだ。
(※8) Bart, Peter.“Movies Often Play Games With History — And Filmgoers Embrace Them."
Variety. Variety Media, L
LC, 26 Feb. 2015. Web. <http://variety.com/2015/voices/opinion/films-based-on-real-events-sometime-play-with-facts-but-audie
nces-dont-seem-to-mind-1201441633/>.
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