平和学習の取組について 長崎市立西泊中学校 本校では今年度より,個々に位置づけていた人権教育と平和教育を統一し,人権平和教育として命や平和の 大切さについての教育活動を,各教科,道徳及び特別活動の指導を通じて取り組んでいる。 本校における人権平和学習のねらい ○人権が尊重される社会を築く一員となるために,自分の人権だけでなく,他の人権についても正しく理解 させる。 ○自分と異なった人格や意見を尊重し,互いに認め合える集団づくりに努める。 ○生命を尊重し,世界の平和を大切にする心とともに差別を許さない心を育てる。 ○生徒の諸活動の中で,過去の歴史に学び,平和を希求する精神を育む。 と定め,被爆70周年を迎えた今年,以下の平和学習を行った。 取組内容 「長崎っ子の心を見つめる教育週間」の取組の一環として ○被爆写真パネル展 6月29日(月)~7月3日(金) ○被爆体験講話 7月1日,校区内にお住まいの中村一俊さんを講師に招き,被爆体験講話をしていただいた。被爆後70 年経った今でも,「目を閉じれば鮮明に蘇ってくる」という原爆の惨状は,月日が経とうとも薄らぐものでは ないことを生徒に明示された。生徒からは「世界中の核兵器をなくし,平和にするのには時間がかかると思 うが,1人1人が戦争はいけないものだという気持ちを忘れずにいることが大切だ」「被爆者の方々の体験を 次の世代に語り継いでいき,戦争の恐ろしさと平和の大切さを伝えていくことが私たち若い人たちの役目だ」 など,平和を継承していく被爆都市の中学生として,本講話をしっかりと心に刻むことができた。 各学年における平和学習 第1学年 学習テーマ:被爆遺構や遺物に込められた思いや願い,平和の尊さについて ○原爆の被害に関する事前学習 ○「平和さるく」 7月3日(金)実施 (1)平和集会 場所:原爆落下中心地公園 黙祷,折り鶴奉納と実行委員による平和アピール ( 2)原爆資料館,長崎市歴史民俗資料館,国立長崎原爆死没 者追悼平和祈念館の見学 (3)被爆遺構巡り 長崎さるくを活用し,浦上界隈の「アンゼラスの鐘の丘 を訪ねて」と「原子野に思いをはせて」の2コースで碑巡 りを実施。さるくガイド案内人の説明を聞きながら,被爆 直後の惨状や実相,平和についての理解を深めた。 ○「平和さるく」学習の取組のまとめ 各班でまとめを行い,パワーポイントや書画カメラ等を 用いて学級内で発表。各学級の代表班が平和祈念集会で発 表を行った。 ○平和祈念標語の作成 「平和さるく」の振り返りとして平和祈念標語を作成し, 校内に掲示した。 ○広島被爆エノキの植樹(3学期実施予定) 第2学年 学習テーマ:第二次世界大戦時における日本について 第1学年の平和学習で得られた知識を基盤に,第2学年では特攻隊や空襲被害などをテーマに 取り上げ,班活動を行った。パソコン等で調べ学習を進める中,戦時中の暮らしや疎開先での生活 など,当時の人々の生活について理解を深めることができた班もあった。また,被害ばかりではな く,日本の加害問題についても目を向けることによって,戦争の脅威について考えることができた。 <生徒感想より> 戦時中に他国に与えた被害や特攻隊のこと,長崎以外における被害ついて学んだ。特に長崎以外 の被害については今まで全く知らなかった。各地で何度も空襲があったことを知り,失われた命の 重みと戦争の恐怖を強く感じた。 第3学年 学習テーマ:世界の紛争問題について ストリートチルドレン,奴隷問題,杉原千畝などに関するDVDを視聴し,過去から現在におけ る戦争や紛争が人々にもたらす問題について考え,知識を深めた。そして班ごとにテーマを設定し, パソコンや書籍などを使って調べ学習を行った。模造紙や画用紙にわかりやすくまとめ,発表内容 を覚えて学級での発表会に臨んだ。 <生徒感想より> スターリンの独裁政治やアウシュビッツ収容所,またアンネフランクについてなど,今ではあり 得ないことが起こっていたことがわかり,命の大切さについて改めて考えることができた。みんな が自由に意見を言い,幸せに暮らせる世の中にしていかなければならないと思った。 平和祈念集会 「この8月9日が世界の人々にとって最後の被爆地になるよう,長崎市民として平和な世の中,命の大切さ について考えてほしい」という校長先生の話で始まった平和祈念集会。集会では各学年による平和学習の取組 内容と,人権平和実行委員による発表が行われた。 第1学年では,「平和さるく」の報告や原爆の被害についての発表が行われた。続いて第2学年の発表では, 特攻隊や長崎以外における戦争被害,朝鮮人・中国人の強制連行や強制労働について考察したことを伝え,戦 争の脅威や戦争がもたらす人権侵害について,他学年の生徒にじっくりと考えさせることができた。第3学年 は,劇やクイズを織り交ぜながらスターリンの個人独裁についてわかりやすく発表を行った。また,命の尊さ と重みについての発表では,模造紙にまとめた内容を自分たちの言葉で丁寧かつ堂々と伝え,最高学年として 平和を発信することができた。 人権平和実行委員は,7月から発表に向けた練習を行い,当日は松添博さんが書いた「ふりそでの少女」の朗 読と,平和に関するアンケートの結果を発表した。アンケートの質問には原爆投下日時や嘉代子桜,被爆クス ノキなど,平和学習で学んだものばかりであったが,正答率が芳しくなかったことから実行委員からは,「長 崎市民として事実を正しく知っておくことは大切である」との意見が述べられた。「平和な世の中にしていくた めに, どのようなことをしたらよいか」の質問に対しては,各学年とも共通して「思いやりの気持ちで接する」「戦 争の悲劇を語り継ぎ,未来につなげていく」といった意見が出された。 集会の最後に「空は今」を全員で合唱し,西泊中学校生徒の平和への思いを一つにするとともに,平和を守る 決意を新たにした。 ~平和祈念集会を終えて~ ・私たちの戦争に対する意識はまだ低いのかもしれない。長崎は被爆地ということもあり,今までたくさんの ことを学習したつもりだったが,今日の発表でよく理解できていないことや知らないことがまだあることが わかった。また,改めて戦争の恐ろしさや亡くなった人たちの苦しみを考えたり,自分に何ができるのかを 考える機会となった。 ・世界にはまだ核兵器を持った国がたくさんある。戦争を二度と起こさないためにも,1 人1人が平和につい て考え,核兵器廃絶に向けて取り組んでいかなければならないと思った。
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