代わりの者

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代わりの者
別の取材でいま度々会う弁藩士の人
文/綿井健陽
んはジャーナリストの取材活動をこう
場合はその裏面の英文に｢アタ- ニー･
の輪の中に入ってい- ようなものだ｡
｢ジャーナリストの仕事は'常に火
表現する｡
アット･ロー｣ (
At
t
orney AtLa
w)
勇気がなければ'火の輪もくぐれない
たちと名刺を交換すると､たいていの
とその肩書きが書いてある｡｢
法定代
Lt その先にある真実もつかめない｡
真実を伝えるのが我々の仕事だ｡いか
理人｣という意味だ｡弁護士は明治時
代には｢
代言人｣と呼ばれていた｡ア
なる場所であっても､どんな取材対象
でも'ジャーナリストの仕事は常に危
フリカの紛争取材経験が長かった朝日
新聞記者の故･伊藤正孝さんは､その
っていくことはできない｡ときに'そ
険が伴う｡私たちは'直接火の中に入
で､｢
ビアフラ取材以後の十五年にわ
の火から一時的に離れることもある｡
著書｢
ビアフラ飢餓で亡んだ国｣の中
たってやったことは､手紙の代筆みた
ではない｡だがジャーナリストは'あ
らゆる方法を尽-して真実をつかもう
ジャーナリストは危険を競っているの
いを本人の代わりに伝えるという点で
とする｡私たちは誰のために働いてい
いなことではなかったかと思う｣と述
は'ジャーナリストや弁護士もその立
るのか｡それは真実のためです｣
懐している｡事件の当事者の主張や思
場はどこか似ているのかもしれない｡
同支局は2004年当時から､総勢 60
アラビ-ヤ｣テレビのバグダッド支局｡
(
アラブ首長国連邦)の衛星放送｢
アル･
彼らの名前を見ればわかるが'ほとん
れている (
助手･
アシスタントを含む)
0
ク国内では 55人の報道関係者が殺害さ
の調べでは'今年 (
10月末時点)イラ
フランスの団体｢国境なき記者団｣
人のスタッフのうちほとんどはイラ文
どが地元のイラク人記者･カメラマン
イラク取材で私が度々訪れたUAE
人だった｡イラク械争開戦以来､米軍
現場で続ける｡同局のイラク人女性リ
な危険状況の中へいまもイラク報道を
武装組織からの両方から狙われる複雑
タッフら7人が死亡している｡米軍と
を筆頭に' アルジェリア60人'ロシア
年 10月 18日現在 )
O イラクの120人
07
関わる行為で死亡しているという (
世界で661人の報道関係者が取材に
の調べでは､92年以降この15年の間に､
の銃撃や砲撃で記者 6人が殺害され
I_
.たちだ｡一万㌧米国に本部を置-団体
た｡ほかにも爆弾テロで支局の警備ス tIrcpl｣(
ジャーナリスト保護委員会)
ポーター' ハディール･アルルバイさ
い｡ジャーナリストはその取材内容に
であって､軍･兵士は1割にも満たな
容疑者は半数が政治組織･政府関係者
るケースは2割以下だ｡殺人の場合の
占め､戦闘などに巻き込まれて死亡す
人と続-｡そのうち殺人は7割以上を
47人' コロンビア40人' フィリピン32
かもしれない｡代理人の眼やロをふさ
でジャーナリストが狙われるのは当然
録･告発する｡したがって'ある意味
トたちは映像･写真･活字を通じて記
者たちの代理人として､ジャーナリス
事実を直接訴えることができない当事
拘束･拷問･処刑･死刑-･
｡それらの
げば当事者のことも誰も知ることはで
｢
報道の自由｣｢
言論の自由｣という
きないからだ｡
言葉は､報道関係者や言論活動を行う
されるケースが最も多い｡そして死亡
した人たちの85パーセントは地元の記
対する報復･政治的理由で狙われ'殺
者･カメラマンたちであって､外国人
い｡むしろ報道や言論で訴える手段を
もたない人たちのために保障された権
人たちのためだけにある権利ではな
利であるからこそ'何よりも重要だと
ジャーナリストの割合は15パーセント
るのは'地元のジャーナリストたちだ
危険な状況二止場で現場取材をしてい
私は思う｡ジャーナリストは彼らの代
だった｡これらの数字を見ても'最も
ということがわかる｡
ラによって記録されていた｡彼のカメ
ストーリーで彼らを｢
英雄｣として記
も取 - 上げる｡だが'｢追悼･伝説｣
も'彼らの死を日本のメディアは今で
理人･代言者に過ぎない｡ベトナム戦
ラを狙った抹殺だったが､地元の｢
誰
憶する前に'もっと記憶しておかなけ
｢
誰も行かない所に誰かが行かなけ
か｣代わりのカメラがそれを告発し
やカメラマンたちの扱いを振-返って
た｡しかし'ビルマでこれまで軍事独
ればならない当事者たちがいる｡それ
争で亡-なった日本人ジャーナリスト
裁政権から殺された多数の住民･少数
を伝える｢
代わ- の者｣たち'ジャー
ればならない｣と生前言っていた長井
民族の死者たちは訴える代わりの手段
ナリストがいま世界中で標的にされ'
健司さんの死は､別の｢
誰か｣のカメ
を何ももたない｡陛界各地での多- の
殺されている｡
わたい･たけはる
1971年大阪府出身｡ヒデオジャーナリスト｡9
年からアジアプレス･インターナシ mナルに所属｡
これまでにスリランカ民族紛争､スーダン飢餓､東
ティモール独立紛争､米国のアフガ一
一
スタン攻撃､
イラク戦争などを取材した.03年度｢
ポJ ノ･
上田記
念国際記毒｣
特別賞oドキ
ンタリー映画｢
リト
ルバーズイラク戦火の家族たち｣
は
蛸影･
監督｡
ュ
メ
ジャーナリストの死の背後には'彼ら
が伝えようとした一人ひとりの人間た
ちの死が累々と横たわっていることを
まず知らなければならない｡
｢
国家による暴力行為｣はいつでも､
どこの国でも最も隠される｡空爆･虐
殺･暗殺･掃討･弾圧･脅迫･逮捕･
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AN 2007/
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