EU 先進地域の国境を越える地域協働 -ドイツ・シュレースヴィヒと南

EU 先進地域の国境を越える地域協働
-ドイツ・シュレースヴィヒと南デンマーク地域を例に
Territorial Cooperation in EU Advanced Regions
- For Example in Schleswig (Germany) and Syddanmark(Denmark)
教授
住澤
博紀
Hiroki SUMIZAWA
1.問題の設定:地域からみる EU 統合の現在
EU 統合の象徴であった「統一通貨ユーロ」が、国際金融危機の中で、ギリシ
ャの政府債務をめぐり揺れている。この中で、「地域からみる EU 統合の現在」
という課題設定自体が、あまりにも現実にそぐわないように見えるかも知れな
い。しかし近代主権国家の原理を、EU は変えようとしているのだから、多くの
挫折と多様な道があって当然である。統一通貨もその一つであるが、地域から
の統合もまた一つの道でありうる。
ここで「地域」regionとは、EU統計にしたがい以下のように規定する。EU
統計局では、国単位のEU統計とは別に、「EU地域統計年報」を発行している。
統計上の「地域」単位として、NUTS1~3が用いられる。NUTS1とは、日本
でいうと東北や九州といった単位で、デンマークのような小さい国では国と同
じことになるが、ドイツのような人口の多い国では 16 の州に相当する。しかし
地域として重要なものは次のNUTS2 であり、人口 100~300 万人程度の伝統的
な地域である。ヨーロッパ中世の小王国や、日本でいうと廃藩置県の前の「く
に」の規模である。ドイツは 39 の地域に、デンマークは 5 つの地域になる。こ
れがEU地域統計の基準単位である 1。
EU 地域統計では、すべての地図やデータも、この区分により再構成される。
すると国単位の統計とは異なる姿が見えてくる。日本でも地域格差が大きいよ
うに、EU でも本当の問題は、地域単位の格差とその是正が課題となるのである。
これを全体として構造政策という。その中心となるのが欧州地域開発基金
ERDF である。その枠内で数多くの EU 地域政策があるが、興味深いのは、
NUTS
3という、15 万~70 万人前後の郡、あるいは郡連合や中規模都市が、国境を越
えて協同する、INTERREG A というプロジェクト・シリーズである。この場
合国境の両側を合計すると、200 万人前後の新しい地域が生まれる。これが「ユ
ーロ地域」Euroregion という構想である。この NUTS3 地域の「クロスボーダ
ー・コーぺレーション CBC」は、INTERREG1(1990~1993)、INTERREG
2A(1994~1999)、INTERREG3A(2001~2006)を経て、現在の INTERREG
1
4A(2007~2013)へと発展してきている。
EU の市場統合はできているので、経済活動に関しては国境の存在はもはや弊
害とならない。しかし「地域」が真に形成されるためには、雇用、教育、医療、
交通、福祉など生活のすべての面から一体性がなければならない。INTERREG
2~4A プロジェクトが目標としてきたのも、こうした広範な地域間協同を創
出するためであった。この意義は、EU 統合が課題とされる限りなくてはならな
いものである。そこでまず、その調査報告から始めたい。
2.2002 年~2006 年度調査「国境を越える地域経済ガバナンス」を踏まえて
筆者は、科研「国境を越える地位経済ガバナンス・EU諸国の先行例を中心と
した比較研究」(2002 年~2006 年、代表若森章孝)において、旧東ドイツ・チ
ェコ・ポーランドのユーロリージョン、
「ナイセ・ニサ・ニュイサ」の地域調査
を担当した 2。
共同研究では、INTERREGⅢA を中心に、EU 委員会、各国政府、一国内の
州・県政府や基礎自治体、それに社会経済団団体・企業・大学・市民団体など、
レベルの異なるさまざまなプレーヤーが共同でプロジェクトを遂行する、「EU
のマルチレベル・ガバナンス」を共通の研究対象としていた。調査結果は(1)
中心地域(旧 EU 諸国や北欧など)における地域経済ガバナンスと、(2)周辺
および拡大地域における越境地域間協力、という二つのタイプに分類された。
私が担当した「ナイセ・ニサ・ニュイサ」は後者に属する。(1)の中心地域で
は、バイオなど先端産業の地域集積や国境を越える共同研究も進展し、
「マルチ
レベル・ガバナンス」も一定程度、リアリティがある地域もあった。しかし(2)
の地域では、不十分な社会的インフラストラクチャー、あまりに異なる工業化
の発展段階、市民社会の未成熟さなどもあり、プロジェクトは多くあっても、
それがユーロリージョンという地域づくりと結びついていなかった。また州・
県・郡・自治体など行政中心の組織運営であった。
「新しい地域形成からの EU 統合」という視点に立つなら、以下のような課
題を導き出すことができる。
(1)マルチレベル・ガバナンスの理念と異なる実態
周辺地域では、1989 年冷戦終結後の行政改革や再編が不十分なこともあり、
さまざまなレベルの行政や公社などの公共団体が、社会経済団体と並んで雑多
に参加しており、一見、
「マルチレベル・ガバナンス」が実現しているように見
える。これに対して、自治体・州(県)・政府の分権と権限配分が明確な中心地
域では、かえって行政や官庁組織が中心となって、良好なガバナンスを実現し
ている。したがって行政組織の機能と地域社会との役割分担を、地域ごとに明
確にする必要がある。
2
(2)市民団体の参加
周辺地域に属する「ナイセ・ニサ・ニュイサ」では、行政や大学など公共機
関以外の参加が少ないことは想定できるが、スウェーデン・デンマークという
中心地域を調査した篠田によると、この「エーレスンド地域」でも、市民団体
や民間組織の参加は、EUが期待したほど多くはないという。しかも運営領域だ
けではなく、個別事業でも市民や民間アクターの参加がまだ少ないという 3。こ
れをどう考えるか。
(3)問題解決をめざした国境を越える地域間協働によって、それがどこまで解
決に結びつき、それぞれの国の制度や組織が、どの程度、相互浸透することが
できたのか、それとも国境はなおも、教育、福祉、雇用、医療などの厳然たる
境界線として存在しているのか。
中国海岸部の発展や、東日本大震災後の地域復興のために設定される、さま
ざまな国内規制をなくした「経済特区」という発想が、EU の中心地域ではない
ことが、大きな特徴といえるかも知れない。イギリスなどアングロサクソン系
の自由主義では、地域再生や都市政策でこうした「再開発特区」と政策手法が
あるが、大陸系の EU 諸国では、異なる制度設計の理念と方法があるのではな
いだろうか。そこでは企業誘致のインフラ整備や減税措置はあっても、医療、
雇用保護、教育など、その地域の生活・労働をめぐる基盤となる枠組みに関し
ては、一国的な制度と規制を維持しようとする意志のほうが強いのではないだ
ろうか。 この仮説を、2011 年 3 月の北ドイツ・南デンマークの調査から、考
察してみよう。
3.EU 地域政策の新展開と現地調査研究の課題
EU の現在の財政危機の背景には、税・財政政策に関しては、主権国家原則が
維持され、さまざまな政策決定も常に首脳会議である欧州理事会での一致を必
要としていることに一因がある。もう一つの一国的制度が大きな力を持ってい
る領域は、雇用や社会保障に関連する枠組みである。
ここでは行政や市場とは区別されるさまざまな社会経済団体、つまり経営者
団体、労働組合、福祉団体、職業団体、商工会議所などの活動領域がある。過
去 200 年ほどの工業社会の発展に伴って築きあげてきた社会制度、市民社会の
諸団体や社会職能団体が力を持つ領域である。ヨーロッパの多様性の基盤とな
るそれぞれの国の社会そのものの特色といってもいいかもしれない。
環境政策と教育・研究政策に関しては興味ある位置づけがなされている。初
等教育、職業教育、大学などの高等教育は、どの国もそれぞれの特色と伝統を
もち、グローバル基準や EU の統一制度の導入が難しい領域であった。しかし
技術開発競争の激化や、グローバルな「知識経済」への転換に伴い、とりわけ
3
大学・研究機関の役割は大きくなり、研究の成果や効率性が強く求められるこ
とになった。環境政策はもともと EU を中心に形成されてきた領域であり、グ
ローバル経済の中で、京都議定書など産業と関連した環境政策を EU は世界に
アピールしてきた。
2007 年から 2013 年までの財政計画作成に際して、環境・地域・雇用・研究
開発などは、
「持続可能な成長」戦略として、また農業政策も「自然資源の活用」
戦略として再定義され、この二つで EU 財政支出の大部分を占める。つまり予
算計画書では、前者は 44.9%、後者は 42%となる。
2010 年にはリスボン戦略を発展させた新成長政策、つまり「スマートな smart」
「持続可能な sustainable」
「包摂する inclusive」成長を掲げる、ヨーロッパ 2020
年構想を決議した。地域構造政策も再編成された。数多くのプロジェクトや基
金が整理され、INTERREG プロジェクトは、財政規模としては依然として小さ
いが、EU 地域政策の重点政策として高く評価され、INTERREG4(2007~2013)
として継続された。
こうしたEU地域政策の発展を意識しつつ、2011 年 3 月、今回はEU中心地域
のひとつ、北ドイツ、シュレースヴィッヒ地域と、南デンマーク地域で調査を
行った 4。
4.2011 年、シュレースヴィヒ・南デンマークの INTERREG4A 調査から
(1)INTERREG4A 南デンマーク地域・シュレースヴィッヒ.K.E.R.N5
INTERREG4A の地域は、230 万人弱の人口で、ドイツ側とデンマーク側で
ほぼ等しい。どちらもそれぞれの国内では、人口の増加も経済活動も弱い地域
である。1970 年代には、ドイツ側のほうが経済活動が活発であったが、最近、
10 年間では逆転して、2007 年には、南デンマークの失業率は約 4%、それに対
してきたシュレースヴィヒでは約 10%となっている。このため、ドイツの優れ
た労働力がデンマークで必要とされているという、他のドイツの州では見られ
ない労働力の移動が課題となっている。デンマーク側地域は、南デンマーク地
域(府)であり、共同管理局はバイル市にある地域府の庁舎内に設置されてい
る。
デンマークは 2007 年の行政改革で、全国を 5 つの地域に再編・統合した。こ
の地域は 4 つの県、78 の自治体を再編し、バイル市(Vejle)と 22 自治体から
なる。地域人口 120 万、職員 25000 人、予算は 203 億DKK(約 2740 億円)
である。デンマークの地域府は主として、健康・医療を担当し、地域参事会を
もつが徴税権はなく、歳入は国と自治体から配分される。4 つの主要管轄:①保
健・医療(25 億DKK、18 か所に 4 つの病院を含む医療施設)、②児童・成人
障害者や青少年矯正施設などの社会施設(35)、③精神障害者施設(犯罪者への
4
強制措置入院、認知症もふくむ)、④地域開発(国土計画、地域産業・雇用政策、
青少年・成人教育施設やプランの調整、土地利用と環境、土壌汚染、地域交通
の計画と財政支援)など。
Fig1. Regional Map: INTERREG4A Syddanmark-Schleswig.K.E.R.N
デンマーク地域府は、一般的には保健・医療などの施設サービスに特化し
ていると紹介されるが、政府の関連省庁と協同して、ここにあるように地域開
発の現地事務所も担当する。大学などの高等教育は政府の管轄であり、生活・
育児・雇用に密着した公共サービスは基礎自治体の管轄である。地域府は産業
界、大学などの教育機関などと協働して地域の課題を解決する。こうした組織
として、公式なものは「成長フォーラム」(地域参事会の代表、自治体の参事、
産業界、職業・高等教育施設の代表者)、
「折衝委員会」
(地域参事会議長と自治
体市長)などが挙げられる。
ドイツ側は、行政組織ではなく、シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州北
部のフレンスブルク市、北フリースランド郡、シュレースヴィッヒ・フレンス
ブルク郡の 3 つの自治体が三分の1ずつ出資した有限会社、「開発社 北部
EA Nord」
(2006 年設立)が担い手である。ドイツでは外局、公社や独立行政
5
法人ではなく、有限会社という形態が好まれる。これに州都キールをふくむ隣
接する4つの都市と地域の社会経済団体(キール商工会議所、経営者連盟中部
ホルシュタイン、経営者連盟キール、ドイツ労働総同盟キール支部)が設立し
た公共性をもつ登録法人、「テクノ地域 K.E.R.N.」、が、もう一つの受け皿の組
織となっている。
これを見てもわかるように、「社会的市場経済」を制度的枠組みとするドイ
ツは、行政、経営者団体、労働組合、行政の外郭団体や開発公社、企業などが
複雑に入り混じった組織となっている。その具体例のために、ここでは EA
Nord を取り上げる。
EA Nord は 3 つの事業を持っている。その第1は、「将来プログラム 経
済」であり、これはシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の科学・経済・交通
省が管轄する、「将来プログラム 経済」プロジェクトの北部地域事務所とな
っている。このプロジェクト自体、州政府が EU の地域開発基金、連邦政府と
州政府の財政基金などを使い、2007 年度からの地域経済開発を進めるために設
置した機関である。第 2 は INTERREG4A のドイツ側事務局である。第 3 は、
「成長センター:ドイツ―デンマーク地域の成果」プロジェクトである。
EA Nord の事務所が置かれている「テクノセンター」施設は非常に興味深
いものである。フレンスブルク市の工業団地にあり、1996 年 4 月に WiREG「経
済促進・地域開発有限会社」が設立され、フレンスブルク市が 39%の出資、以
下、シュレースヴィッヒ・フレンスブルク郡 17.5%、北海・東海貯蓄金庫(14%)、
19 のこの地域の都市や自治体 25,5%、その他 4%。地域の経済発展のために
企業を支援する組織であり、この中には、中小企業への技術教授やセミナーを
開催する 1987 年に設立された「技術センター」がある。EA NORD もこのセ
ンターの中に、事務所を持つ。この「技術センター」のパートナーとして、フ
レンスブルク商工会議所、シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン投資銀行、シ
ュレースヴィッヒ・フレンスブルク郡協同組合銀行、EA NORD,フレン
スブルク高等専門学校、フレンスブルク大学、フレンスブルク手工業会議所、
州政府、シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン経済開発・技術移転有限会社(W
TSH)、フレンスブルク労働局などがある。
こうした組織が、州政府や自治体行政と共に Interreg4A の申請者やそのパー
トナーになる。したがって Intereg4A のそれぞれのプロジェクトの関係者は、
市民団体や福祉団体も多いが、中心となる組織はほとんどが地域公共体、ある
いは行政が関係している組織となる。
シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州は、人口 283 万人、失業率 7.5%(2010
年)で、旧西ドイツ州では一人当たり BDP が最も低く、ここ数年の経済成長も
同じく最低位に属する。したがって EU のさまざまな構造基金を獲得できる立
6
場にあり、前述したEUの地域開発欧州基金の助成以外にも、広域な北海、バ
ルト海開発プロジェクトのも参加しており、EU 社会基金、農業基金の支援を受
けるプロジェクトも持つ。したがって、こうしたEU資金を受けるプロジェク
トや組織が重ならないように、いくつもの組織を使い分けることになる。
このような州政府の視点から INTERREGⅣを見ると、それは国境を越える地
域間協力のプロジェクトというより、州経済省の地域開発プロジェクトの戦略
に、多様な EU 資金を組み込む一つの手段ということになる。
(2)INTERREG4A 組織構造とプログラム
マルチレベル・ガバナンスの視点からは、図2の「プログラム実行構造」の
「インターレッグ委員会」が中心となる。つまりプログラムの実行を監査する
「管理委員会」と、申請されたプログラムを承認する「運営委員会」が、一つ
にまとめられているからである。この構成員は、①EU 構造資金と共に資金を拠
出している地域公共団体・組織(上記自治体とその出資する機関)の代表者、
②それ以外のパートナーの代表者(労働界、経済界、大学、環境団体、男女同
権担当者、南デンマーク地域の自治体、デンマーク人少数派)、③中央政府と州
政府の代表、④EU 委員会の代表である。
しかしこの構造図から明らかなように、ここでは両地域の行政組織、および
その出資した機関の専門職の職員が、実質的にプログラムを管理、運営してい
る。それが中央にある、
「共同管理局バイル市」、
「共同事務局フレンスブルク市」、
「共同財務局バイル市」の3機関である。
この構造図のもう一つの特色は、プログラムの中心となる実行団体は、自治
体や公共機関、あるいは公法に準じる団体が大部分である。例として、自治体、
郡や地域府、貯蓄金庫や公法に規定される財団など公共機関、市内や住民地区
の地区団体、商工会議所、大学や研究機関などである。もちろんプログラムに
よっては民間企業や市民団体も入るが、それらは「中心的団体」ではなく、プ
ロジェクト遂行のパートナーである。
しかしこの構造図から明らかなように、ここでは両地域の行政組織、および
その出資した機関の専門職の職員が、実質的にプログラムを管理、運営してい
る。それが中央にある、
「共同管理局バイル市」、
「共同事務局フレンスブルク市」、
「共同財務局バイル市」の3機関である。
この構造図のもう一つの特色は、プログラムの中心となる実行団体は、自治
体や公共機関、あるいは公法に準じる団体が大部分である。例として、自治体、
郡や地域府、貯蓄金庫や公法に規定される財団など公共機関、市内や住民地区
の地区団体、商工会議所、大学や研究機関などである。もちろんプログラムに
よっては民間企業や市民団体も入るが、それらは「中心的団体」ではなく、プ
ロジェクト遂行のパートナーである。
7
8
それでは次に図3のプログラムを説明したい。3つの重点課題が設定され、
地域経済の強化が 50%、あと2つがそれぞれ 25%ずつとなっている。このプロ
グラムの資金は、EU 地域開発基金が 2007 年~2013 年まで、毎年、578 万ユー
ロから 693 万ユーロまで、合計 4431 万ユーロが支給される。これはそれぞれの
重点項目のプログラムの 65%を満たし、残りの資金は、それぞれの国や州政府
の資金(合計 2140 万ユーロ)と民間資金(合計 320 万ユーロ)となり、7 年間
の総額は、6891 万 5069 ユーロとなる。
Fig.3 Strategy, Priority and Actionfields for INTEREGⅣA
(Syddanmark-Schleswig-K.E.R.N.2007-2013)
上位戦略
EU戦略
ヨーテボリ
リスボン
INTEREGⅣAプログ
ラム戦略
地域戦略
自治体戦略
行動領域
1.1企業設立と経済協力に
よる成長
地域資源や多様性を
活用した成長センター
INTERREG
プログラム
国家戦略
重点課題
グローバルな発展
の、活力ある参加者
1.知識に基盤を置く
地域経済の強化と安
定化 50%
2.地域の人的、社会
的インフラの整備と開
発 25%
地域の魅力を引き上
げる
国境を越える協働の
強化
1.2新技術の投入と開発
1.3研究と教育による発展
1.4観光や体験サービス業
による発展
1.5健康産業による発展
2.1人的資源の開発
2.2持続可能な自然と環境
の開発
2.3持続可能なエネルギー
2.4交通と供給システム
2.5持続可能な住地域の開発
と地域への愛着
3.日常生活の中での
協働と国境地域の機
能的な統合 25%
3.1文化・言語・相互理解
3.2労働市場・越境通勤者・
学校の協働
3.3公共輸送と移動性
3.4行政や官庁の協働
出所:EU文書(申請許可文書) 34頁
このプログラムの多くは現在も進行中で、評価を下すことはまだ難しい。しか
し過去の成功した例を一つ挙げておく。それは越境通勤者の問題である。
国境地域では相互に越境通勤者がいる。しかし現在では(2004 年段階)デン
マークのほうが給与は高いので、ドイツからデンマークに通勤する人(住所は
ドイツで職場はデンマーク)が、差し引きで約 3,000 人近い。そのうち、1049
人の男性と 833 人の女性は、月収が 6,700 ユーロ以上である。越境通勤者は平
均で 1 年半、この状態を継続させる。デンマーク側にとっては、優秀な人材が
ドイツから供給されることになる。このため相互の便宜のために、国境地点で
9
のドイツからの越境通勤者やその労働条件に関する情報を提供する、越境通勤
者センターが必要となり、EU 資金で試験的に始め、現在では定着している。
(3)行政担当者とのヒアリング調査から(関連する部分、機関のみ訳出)
現地調査では、想定した以上に、ドイツとデンマークの制度上の違いが大き
いことがわかった。以下は、そのヒアリングの調査機関と担当者の肩書である。
①フレンスブルク市(ドイツ):副市長、企画局・ドイツ・デンマーク協力 担
当職員、同 社会福祉担当職員
②デンマーク側 Interreg 4A 共同管理局:南デンマーク地域府 担当職員 (バ
イル共同管理局) 、同 事務職員
A.フレンスブルク副市長、企画局担当者へのヒアリング調査(2011.3.9)
副市長:社会制度に関しては、相互の制度の調和は非常に困難。国境を越えて
通勤する労働者の場合に、さまざまな問題が生じる。まず労働市場に関してい
えば、両国の発展はこれまで一致することはなく、常に違いがあった。最近で
は、ドイツからデンマークの方向に労働力は流れ、企業はドイツの方(シュレ
ースビッヒ・ホルシュタイン)が人件費は安いから、デンマーク企業はドイツ
に来る。つまり人件費コスト(社会保障負担もふくめて)が大きな要因に。E
Uの国境通過の手続きの簡略化、調整、などにより国境を越える労働市場がう
まれ、さらには越境通勤者が増えている。越境通勤者センターを国境地域に設
置することにより、医療保険や雇用保険の制度の違いを助言している。このセ
ンターはインターレグ3Aの支援でできたが、現在は自前の財政で運営してい
る。
住沢:私たちはデンマークでは解雇が容易なことは、失業給付の額や期間がす
ぐれていること、職業教育の機会も提供されることなど、ドイツよりも雇用者
にやさしい制度があることを知っている。その関連で、EUは社会的ヨーロッ
パを唱え、しかも地域政策で、国境を越える協働プロジェクトを推進している。
もし例えばデンマークと隣接するこの地域で、こうした 2 地域間協働としてモ
デル地域をつくり、より優れた社会制度を国境を越えて導入するモデルをつく
ればいいと思うのだが、そうして事例は聞かない、どうしてなのか。
副市長:その理由は、地域はこうした社会制度に関する権限はなく、それは連
邦法で、すべての領域に妥当する法律として存在し、地域は、その法律を施行
するだけである。
住沢:経済特区のような地域限定特例の設置はないのか
副市長:そういうものはない。常に全ドイツに妥当する。このことはデンマー
クにも妥当すると思う。ドイツの地図を見れば、ポーランド、北欧、ベネルク
ス、フランスなど多くの国と隣接しており、国境地域が隣接する国と特別の社
10
会制度を導入するなら、中央政府はこの全体をもはや制御できなくなる。とり
わけドイツ政府は、生活基盤保障において、いかなる地域においても同じ水準
を保障することを強調する。
ドイツは、社会保障に関しては、立法もその財政的措置も、連邦政府の権限で
あり、自治体が追加的な給付やサービスを行うこともありうるが、基本的な生
活保障に関して、そうしたことは考えられない。自治体は個別の事務を遂行す
るだけであり、金銭の給付を行うが、それは自治体のカネではなく政府のカネ
である。したがって市民はどこにおいても同じ請求権を持ち、自治体がそれぞ
れの地域の特性により、それを変えることは考えられないし、できない。
職業教育に関して、ドイツはいわゆるデュアルシステムであり、学校での理
論的・技術的な習得と、現場での実践的な習得を経て資格試験がある。デンマ
ークは、他の国同様に、学校での習得にある。私たちはドイツのこのシステム
を維持したいと思う。しかし自治体はこの資格に関して管轄ではない。この資
格の問題、つまり海外での資格をドイツがどのように評価するかは、常に論争
点。たとえば、外国の小企業がドイツで営業したい場合、この資格の問題が生
じる。つまりドイツは第二の資格試験、マイスター制度があり、これは自立し
た経営者としての習得・資格もふくんでいる。この資格なしには、ドイツでさ
まざまなサービス部門の小企業の営業は不可能であり、EUレベルで常に問題
となる。その場合、全面的な拒否ではなく、どの程度の資格水準で、ドイツで
の営業を承認するかという問題となる。
ドイツは、商工会議所や手工業会議所があり、すべての事業体はここに登録
することを義務付けられている。そこで職業教育に関して、試験を行い、資格
を出す。これはすべてのドイツで妥当することである。この組織は連邦組織で
あり、地域の自立した組織ではない。
住沢:社会保障、育児、職業教育領域での外国モデルの導入、あるいは統一化
は困難で有ることはわかったが、少なくとも何らかのこうした方向への接点は
ないのか。
担当者:もちろん情報交換や見学はしている。とりわけ介護や育児に関して、
スカンジナビア・モデルを見習うべきという意見も強く、こうしたさまざまな
制度や施設やサービスの在り方を、ドイツでも行おうとするものもある。しか
し財政的な負担の問題であまり実現できない。個別の事例の導入ということは
あるが、制度そのものの転換ということはありえない。
住沢:日本では、高齢者介護や病院建設で、自治体ではできないので共同事業
で行う場合がある。隣接する地域では、こうした介護施設や病院経営で、国境
を越えて共同経営することは可能ではないのだろうか。
副市長:この地域は農村地域で病院建設は大きな負担であった。そこでデンマ
11
ーク・ドイツの共同経営の病院を、国境近くに建てようというプロジェクトが
あった。しかし具体化するにつれ、制度中の違いが大きな阻害要因となってい
ることが分かってきた。
ドイツの医療は民間部門として、社会保険を拠出し、保険団体が、医療機関
の仕事に対して支払うというシステム。医療機関で働く大部分の人は民間人で
ある。これに対して、デンマークの医療は公共サービスであり、政府の監督の
もと地域が行い、職員はほとんどが公務員。
ただしコーぺレ―ションはあり、たとえば救急事業。ドイツでは救急車は、
どの地域でも12分以内に駆けつけることができるという決まりがある。この
費用は、税金ではなく医療保険が支払う。ドイツの救急車がデンマークの病院
に感所を運ぶ場合もある。救助ヘリ子ブターは農村地域では必要だが、維持コ
ストが高い。この場合、ドイツのものがデンマークで活動することもある。
病院に関していえば、ドイツは保険制度で、プロテスタント系病院、カソリッ
ク系病院など、キリスト教団のものがある。一方デンマークは自治体の治療セ
ンターに行き、治療をうける。したがって保険証はない。こうした場合、病院
間での契約のもとづいて、国境を越えて治療を受ける場合もある。
緊急医療に関しては、EUではどの国でも治療を受けることができるという
規定がある。しかし一般治療においてはない。しかしたとえばがん治療に関し
て、ドイツは高度な設備があり、デンマークの地域の医療機関ではこうした設
備を買えない場合、あらかじめ病院間(ドイツは民間病院、デンマークは自治
体)で契約をして、その治療価格を設定し、ドイツに来たデンマーク人の治療
を、デンマークンの医療役所が支払うことができる。ドイツでは病院は州政府
ではなく民間なので、政府の政策とはならない。
住沢:自治体がデンマーク側の自治体と、何らかの公法的な性格のある協定を
結ぶことは難しいのか
副市長:もちろん自治体間の多くの協定は存在している。ドイツの自治体の仕
事は二つあり、一つは、連邦政府、州政府に彼らの管轄の職務の遂行を委託さ
れ、それを行政として行う場合。しかしそれぞれの管轄は明確にされている。
それぞれの自治体は自治体会議という利益団体を構成し、この立場から政府に
要請することができるだけ。
もう一つは本来の自治体行政の課題であり、地域の人々の生活基盤の保障。
このことに関しては、自治体と地方議会が独自に決定できる。また自治体や都
市がデンマークと、この領域で独自に契約を結ぶことも可能。たとえば救急車
のように、この市とデンマークの自治体が協定を結び、デンマーク側あの活動
もできるようにする。しかし多くの社会的領域は連邦法において規定されてお
り、自治体の権限ではない。
12
住沢:しかしグレーゾーンはないのか。例えば法律的に何の規定もない空白領
域とか。
担当者:ドイツではそうした空白領域は存在せず、すべて法で決められている。
もしそうした憲法上の空白領域があれば、それを決定できるのは主権者である
州政府。
副市長:EUではいろいろな調和の試みがあるが、長期間かけてできてきた制
度を一元化することはむつかし。社会福祉制度もみても、デンマークはすべて
税で賄っており、ぜいたく品には高い課税をしている。これに対してドイツは
多くは保険原理であり、医療保険、雇用保険など税ではない。したがってこう
した税制、つまりは社会保険、医療・年金などをヨーロッパレベルで統一して
いくことは困難であり、何世代もかかって、一つずつやっていく仕事である。
B.
デンマーク、南デンマーク地域府(2011.3.10)バイル市
担当者:デンマーク側では、ドイツ、あるいはシュレースビッヒ州との協働で
一つの戦略があり、ドイツ側もある。経済的な協力とか職業教育や労働市場を
めぐる問題とか。社会領域では、主要に専門職の育成がそれにあたる。また文
化的領域もそれにあたる。今、文化的な共同地域をつくろうという動きある。
現在はこの文化的な領域の協働が中心である。
住沢:デンマークは今までの話を聞き柔軟な対応という印象を持つが、ドイツ
側では、こうした場合、行政や法律や連邦・州の管轄問題を考える、つまり今
ある制度や構造に拘束されている気がするが。こうしたタテ割権限のなかで自
治体の役割は限られる。しかしデンマークは2007年に大きな自治体再編や
改革を行い、制度に関して柔軟である気がするが。
担当者:ここは南デンマークという自治体よりは大きな単位なので、もちろん
権限もそれに応じて自治体よりは大きい。しかしデンマークも当然ながら、政
府の管轄や指令は有る。現在、政府はとりわけ教育、専門教育の領域でのドイ
ツとの協働に関心がある。例えば、ドイツとデンマークで共同で大学をつくり、
卒業生はどちらでも同じ資格として承認され、働けるようなシステム作りだ。
住沢:それは常に政府から来るのか。例えば、この地域の行政が、ドイツ側と
協定して、何かの資格を承認するとか、共同で高等教育を行うとか、できるの
だろうか。
担当者:そういうことは、もちろん政府の管轄であり、この広域行政ができる
ことは、政府に働きかけ、提案することだけである。共同で大学を設置する件
では、政府の省庁と、この地域の担当者が同席する、あるいは政府にいろいろ
働きかけるなどである。さらに介護の資格者育成に関してもこうした企画をも
っている。
13
住沢:職業資格に関しては、ドイツでは商工会議所や手工業会議所が資格を発
行しており、これは地域組織ではなく全国組織であるという指摘がドイツ側で
は聞いたが。
担当者:それは事実であり、資格の承認の問題は確かに困難な問題。また同時
にデンマーク政府に対しても、ドイツのディプロームやほかの修了証書で、デ
ンマークでの求職者をもっと簡単に承認できるようにするとか、働きかけてい
る。
住沢;ほかに始められているものは
担当者:知識集積地域というプロジェクトや、大学の博士号を、ドイツでもデ
ンマークでも両方で承認できるようにするとか。しかしこれも政府との交渉思
考であり、最終的に承認されるかどうかはまだ未定。まだプランの段階
住沢:プロジェクトの申請で、企業だけではなく、社会団体、福祉団体や労働
組合や市民組織などもあるか
担当者:文化活動ではあるが、社会領域ではそうした市民団体はない。医療関
係では、病院や医療機関で協定を結び協働することはあるが、社会領域では想
像できない。文化領域だと私は思う。
担当者2:ドイツはデンマークと違って、民間の医療機関が多い。そうした機
関がデンマークにきてさまざまな協定を試みることはあるかもしれないが、市
民活動は想定できない。
住沢:それでは環境団体はどうか、例えば国境に風力発電のプロジェクトをつ
くり、両側の市民団体がそれを支援するとか
担当者:確かに洋上に風力発電をつくるプロジェクトは有るが、そうしたもの
は、行政が支援しており、市民団体のプロジェクトではない。さらには大学が
中心、洋上風力発電センターがある。しかし申請するのは市民団体ではなく、
大学かこうした公共機関である。
住沢:確かにデンマークは公共サービスですべてがカバーされている
担当者:例えば北海では、特別の自然保護地域があり、多くの環境団体が活動
している。これらは国境を越えて協力している。しかし環境保護を担っている
のは行政である。もちろん申請する団体にNPOのような非営利団体があるか
もしれないが、行政が提起するものも多く、さらにはNPOも市民団体という
よりは半分公共団体の可能性もある。ドイツの社団法人に似ているような団体
は、もちろんデンマークでも環境保護、動物保護など多くある。最終的にプロ
ジェクトの遂行や財政支出に責任を持つのは行政である。
5.中間のまとめと次の課題
ドイツは、考えた以上に行政・法律的な枠組みが明確であり、とりわけ州政
14
府と自治体の権限や管轄の区別は明確であり、自治体首長はこの枠内で行動し、
日本のような独自政策の発想はない。また経済特区などの制度も考えもなく、
この意味では、社会保険、自己負担、民間や企業および社会団体の要素が多い
ドイツと(社会的法治国家)、すべてが公共サービスの北欧糸デンマークとの
違いは大きい。たとえば病院の共同運営にしても、ドイツは開業医の医者がい
るが、デンマークはこうした発想はない。また商工会議所などの資格審査も、
各地域ではなく連邦レベルでの会議所の規則があり、地域での独自な対応は難
しい。いずれにしても日本の中央省庁の官支配と外郭団体の問題は、ドイツで
は州政府や自治体と外郭団体、民間組織との複雑な融合に見られ、これが「社
会的市場経済」のもと、独自の制度を形成している。
デンマークでは、2007 年の自治体再編に見られるように、柔軟な発想があり、
地域は主として、医療・保健、地域計画、技術研究などコミューンができない
領域を扱う。これに対して、コミューンは、育児、介護など直接の日常生活で
の公共サービスの提供。しかし公共サービスの意識と制度、管轄が明確なので、
たとえば日本のように高齢者介護の NPO を作るという発想がないのは驚きで
ある。Intereg4でも、こうした市民社会の団体が関与するのは、文化・ 教育
の交流の領域に限定され、社会や環境においても、市民団体は、行政のパート
ナーというポジションになる。おそらく高福祉高負担で、税支出に関しては厳
格な責任者意識を持つデンマークの自治体では、税がかかわるプロジェクトで
は、管理・監督するのは行政であるという意識が徹底しているのであろう。
このようにドイツ・デンマークの国境間協働は、それぞれの地域の制度を前
提とした上での問題解決に限定され、新しい「ユーロ地域」を形成しようと意
図するものではなかった。また近代市民社会の発展と合理的な行政組織の整備
が進み、この制度間の交換や変更は難しい。
とはいえ現在のEU金融危機や、さらなる財政・社会統合を展望するとき、現
状維持という選択肢はありえないだろう 6。今回の科研調査もまだ始まったばか
りであり、州政府、デンマーク中央政府、民間組織、自治体の現場(育児、病
院)、商工会議所など、もっと多くの地域越境プレーヤーを調査する必要がある
だろう。
(この論文は、科研費、基盤研究(B) 研究課題番号 22402024、研究課題
名:EU 経済統合と社会経済イノベーション (研究代表者 八木紀一郎 摂南
大学経済学部教授)の助成を受けておこなったものである。)
1
Europäische
Kommission
Eurostat :
Eurostat
Jahrbuch
der
Regionen
2010 、 255 頁以下
2
この共同研究の成果は、若森章孝・八木紀一郎・清水耕一・長尾伸一編著『EU 経済統合の地
15
域的次元』(ミネルヴァ書房 2007 年)にまとめられている。住沢担当の章は、「旧東独・ポ
ーランド・チェコ 3 ヶ国地域のユーロリージョン」234-255 頁
3
篠田武司:「スウェーデン・デンマーク間の国家を越える地域開発」、若森他編著、43 頁
4
科研「EU 経済統合と社会経済イノベーション、リスボン戦略と地域開発」
(基盤研究 B 海
外調査、2010~2013、代表
八木紀一郎)の担当地域である。
5
以下の説明は、共同事務局が EU 委員会に提出し、承認された申請書を印刷した
CC1:2007CB163PO056, INTERREG 4A Operationelles Programm für
Syddanmark-Schleswig-K.E.R.N 2007-2013 や、その他の資料、パンフレットによる。
6
福祉制度、環境政策に関して、デンマークは日本ではブームといえるほど脚光を浴びており、
ここ数年、数多くの書物が出されている。しかし 2008 年リーマンショック以後、デンマーク
も失業が増加し、多くの問題を抱える。鈴木優美
『デンマークの光と影
福祉社会とネ
オリベラリズム』リベルタ出版 2010 の論点を参照。2011 年秋の選挙で再び社会民主党政権
が生まれたので。これからの動向に注目すべきである。
論文概要(英文)
EU は「持続可能な成長」というコンセプトで、環境・雇用・地域開発政策により、社会統
合を進めている。しかし雇用・地域経済・社会保障制度等の領域は、多くの利害関係者お
り、独自の制度や法制をもち、調和はむつかしい。EU 地域政策の一つに、地域間協力
INTERREG プロジェクトがある。そこで国境地域の自治体レベルでの共同の地域形成、新
しいユーロ地域が形成されるなら、
「地域からの EU 統合」という、異なるこる道筋も見え
てくる。これをドイツ・シュレースウィヒ・南デンマーク地域の INTERREGⅣA プロジェ
クトの現地調査により、
(1)国境越える共同事業の組織構造、
(2)個別のプロジェクトの 3
つの重点(知識経済の強化、地域の社会的インフラの整備、日常生活の中での協働)
(3)
そのパートナーとなる機関や団体を明らかにする。
EU promote the social integration through environment-, employment- and regional
structure policies with the concept of ‘sustainable development’. But there are a
wide range of stakeholders in the area of social protect, regional economy and welfare
system. The harmonization of
such social institutions organized by national
legislation and historic context is very difficult. One of the EU regional policies is
INTERREG4A project. If it is possible, to create the new ‘Euro Region” through the
territorial cooperation ,man could have a new view for the ‘ EU integration owning to
regional integration’ This empirical research aims at the analysis of the operation
programs of the INTERREG 4 A in the region of Syddanmerk-Schleswig. K.E.R.N with
three viewpoint : (1) the organizational structure of cross border cooperation (2) three
16
priorities of programs( the strong knowledge based economy,
development of regional
social infrastructure, and cross border cooperation in daily life),and (3) leading
organization and his network of partner.
Key word: EU 欧州連合、INTEEREG4A インターレッグ4A,
リージョン territorial cooperation 地域協力
Euroregion ユーロ
Schleswig シュレースヴィヒ地方
以下は図表
Fig1. Regional Map: INTERREG4A Syddanmark-Schleswig.K.E.R.N
Fig2 Structure 0f Program Operation(Syddanmark-Schleswig-K.E.R.N)
Fig.3
Strategy, Priority and Actionfields
for
(Syddanmark-Schleswig-K.E.R.N.2007-2013)
17
INTEREG4A