卒論留意点2014版

論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 論文を書く上での
留意点
‐2014 年度版‐
哲学・人間学コース人間学分野
1.原稿用紙の大きさや表紙など: (1)原稿用紙の大きさは、A4 版でも B5 版でもよい。ちなみに、この「マニュアル」の1
頁は A4 版大の用紙に印刷したもの。
(2)縦書き、横書きのいずれでも可。
(3)市販の原稿用紙を使用する場合は、200 字詰め、400 字詰めのいずれでも可。ワープ
ロやパソコンのワープロ・ソフトを使う場合には、多少厚めの紙を選んだほうが読みやすい。
(4)ワープロおよびパソコンのワープロ・ソフトを使用する場合、フォントの大きさは 10
ポイント以上とすること。いま、この「マニュアル」の本文で使っているのは 10 ポイント。
ちなみに、Microsoft Word の標準のフォントの大きさは、10.5 ポイント。
(5)行間は、1 字
半字分程度空けると読みやすい。
(6)各頁の上下・左右の余白を狭くしすぎないように。余白の幅は、最低で 1.5 センチ程
度までにすること。綴じる側の余白を他より少し広く取るのが良いだろう。
(7)表表紙・裏表紙にする所定の厚紙は、生協で購入すること。卒業研究論文(以下、
「卒
論」と呼ぶ)の提出期限の直前だと売り切れていることもあるようなので、早めに手に入れ
ておくこと。
(8)表紙にする所定の厚紙には、紐で綴じるために、上に穴をあけたものと左に穴をあけ
たものとがある。いずれを使用しても良いが、横書きの場合には前者を、縦書きの場合には
後者を使うのが一般的。
2.論文は、問い(=テーマ)と探求と解答(=結論)からなる。題名は、その論文のテ
ーマや規模(長さ)に適ったものである必要がある。副題を付けても良い。副題は、探求の
素材や方法などを表すことが多く、論文の題名にある種の限定を与える働きをもつと考えた
ら良い。 「原罪の罰たる死̶アウグスティヌス『自由意志論』における̶」、『中世思想研究』、24 号、中
世哲学会編、1982 年、pp. 114-123
「アウグスティヌスと創世記̶『告白』巻 12 に見る彼の創世記把握̶」、『西洋哲学史研究』、3
号、京大中世哲学研究会編、1983 年、pp. 10-14
3.論文は、
「まえがき」
「序」
「はじめに」
(preface、prologue、prolog)などの部分で始
まり、幾つかの章(chapter)に分かれ、最後に「結び」
「あとがき」
(conclusion、epilogue、
1 論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 epilog)などが置かれる。章を、更に細かく節(paragraph、section)に分けることもある。
章に題名(章題)を、節に、いわゆる「小見出し」を附して、そこで取り扱うテーマや内容
を表すこともある。章の題名を見渡して、論文の内容の骨組みが大雑把に把握できるならば
理想的。
「まえがき」「序」「はじめに」などの部分は、その論文で取り組む課題・問題(問い、テ
ーマ)を、なぜそれらを取り上げるのか、またどのような素材(文献や資料)を使い、どの
ように論じていくのかを説明するものであることが多い。
多くの場合、「結び」は、論旨および結論を確認する内容になる。
章については、「第1章」「第2章」
、あるいは「第一章」「第二章」
もあるし、ローマ数字で「I」「II」「III」
と表記すること
と表記することもある。
さらに、節に番号を付けることもある。(下記7の例を参照のこと)
4.論文にはページ番号をうち、表紙の次に「目次」(contents)を置くこと。「目次」に
は、最後にページ番号を記入すること。
ページ番号については、
「まえがき」
「序」
「はじめに」などの部分と、本論とを区別して打
つこともある。その場合、「まえがき」「序」「はじめに」などの部分では、i、ii、 iii … な
どの、ローマ数字の小文字を使い、本論の部分で 1、2、3 … を使うのが欧文の書物で一般
的な方法。
5.論文の長さは、一応の目安は、四百字詰原稿用紙で 50 枚程度。しかし、無理に長く
する必要はない。テーマを十分に論じた結果が 30 枚であれば、それはそれで良いだろう。
要するに、30 枚から 50 枚(つまり、20000 字から 12000 字)というのを、一応の目安とす
ると良い。
6.文章を書く場合の注意:
(1)句読点やハイフォン(「-」、英単語などで音節の切れ目や合成語であることなどを示す
ときに使用する。例えば、vice-president 「副大統領」)を行の頭に置くことは避け、前行の
末尾に置くこと。また、なかぐろ(・)やダッシュ(「̶」
「‐」。ボールなどの「ー」はダッ
シュではなく、いわゆる「音引き」である)なども、行の頭に置かないのが原則。
(2)一続きの文の中に「」で引用文を入れる場合、
「」の最後には、句点を打たないで、地
の文に続けるのが原則である。なお、一般に法律の文章だと句点を打つ。
しかし、自己の弱さ・罪深さを深く実感する、例えばパウロのいう「わたしは自分の望む善は行
わず、望まない悪を行っている」
(ローマの信徒への手紙、七章十九節)という自覚をもつ人にとっ
て、問題なのは「罪を犯すわたし」にほかならず、その「わたし」が実際には「光」「神」であり、
罪を犯すのは「わたし」ではなく、「わたし」を閉じ込めている肉体なのだと説明されたとしても、
果たして心底から納得できるものかどうか。
(3)独立した引用文を「」に入れる場合、おしまいの」の前で句点を打つのが原則である。
もっとも、この原則も最近はかなり崩れており、句点なしに、 」で終わる場合も多い。
信条とは、たとえば、以下のようなものである。
「私たちは信じる、万物の創造主、すべての世々
の王、不死にして不可視の、全能の父なる神を。また私たちは信じる、その子、私たちの主イエス・
2 論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 キリストを。彼は聖霊により処女マリアより生まれ、ポンティオ・ピラトのもとに十字架につけら
れ。死して葬られ、三日目に死者たちの中からよみがえり。天に昇り、父なる神の右に座し生者と
死者を裁くためにそこから来たるであろう。また私は信じる、聖霊、罪のゆるし、肉の復活、聖な
るカトリック教会に従っての永遠の生命を。」(アウグスティヌス『説教二一五』Sermo 215 に基づ
いて再現されたヒッポのカトリック教会で用いられていた「信条」)
(4)例えば、
「人々」という表記をしようとして「々」が行の頭に来る場合(つまり前行末
が「人」)には、「々」と表記すること避け「人」と表記する。
(5)書名や雑誌名は『』で、論文の名前は「」で表記するのが原則。
『』は、欧文ではイタ
リック体に当たる。(8を参照)
、、
(6)或ることばや文章を強調したい場合には、傍点やアンダーラインを使うとよい。
(7)引用文に傍点や下線などを使用する場合、その引用文の著者が施したものと特に区別
する ために、「傍点(下線)は論者/筆者による。」というように附記する場合もある。「論
者」「筆者」は、その論文の著者(つまり、あなた)をさす。
、、、、、、、、、、、、、
例1:究極者は一切有るところの神々の根源で有りつつ、それ自身いかなる神でもない。言いか
えれば神々の根源は決して神として有るものにはならないところのもの、すなわち神聖なる「無」
である(傍点は著者、下線は論者による)。
、、、、、、、、、、、、、
例2:究極者は一切有るところの神々の根源で有りつつ、それ自身いかなる神でもない。言いか
えれば神々の根源は決して神として有るものにはならないところのもの、すなわち神聖なる「無」
である。(傍点は著者、下線は筆者による。)
(8)漢文・古文を引用する場合、旧字体、仮名遣い等を便宜上書き改めることもできる。
その際は、
「引用の際、表記は適宜改めた」と、適切な箇所に一言附記しておけばよい。漢文
の場合、原漢文を書き下したものを使用することがあるが、それも引用の初出の際に 「原漢
文を参照しつつ、書き下した」「本文は漢文であるが、テキスト所収の書き 下し文を使用し
た」等と附記しておくとよい。
公なる者は私の反なり。衆の同じく共にする所、これを公と謂う。己の独り専らにする所、これ
を私と謂う。1)
『弁名』上、公・正・直、1、
「日本思想大系」第 36 巻『荻生徂徠』
(岩波書店、1973)所収。引用の際は、
1)
原漢文を参照しつつ、書き下した。また、適宜、表記を改めた。
上例のように注に記してもよいし、引用文に続けて括弧書きしてもよい。
(9)和文のなかに欧文や欧語を入れる場合には、前後にアルファベットで1字分(「半角」
と呼ぶ)のスペースを空けると読みやすい。ちなみに、漢字や仮名1字分が「全角」。
(10)何よりも、正確で、筋の通った文章を書くことを心掛けてもらいたい。そのためには、
十分に準備して書き始め、書きながら、さらに繰り返し手を入れて直していくことが大切だ
ろう。その際、自分の書いた文章を自分で音読してみると良い。音読によって、表現のまず
さや過不足が聴覚的に確かめられる。また、読点の打ち方はかなり難しいが、原則として読
点の位置は、息を入れる場所であり、音読することで、読点の位置の適不適が、かなりの程
3 論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 度まで確認できる。
以上は、いわば「こつ」のようなもの。その上で次の点に注意すると良いだろう。
読点は、説明しようとしている論理(筋道)が、それを付加することで、より正確に、つ
まり誤解される可能性がより少なく表現できるようになる場合に使用する。
読点はまた、
(例えば修飾語と被修飾語の関係が分かり難いといった)表現の曖昧な点や不
明確な点が、それを付加することによって避けることができる箇所に使用する。
*句読点には、
「。」
「、」と「.」
「,」の2種類がある。前者は邦文、後者は欧文で使われるの
が一般的だが、邦文でも横書きの場合に後者を使う例も多い。いずれにしても、両者が混在
しないのが望ましい。邦文の中に欧文の書名や引用が混じる場合には、通常その部分だけ「.」
「,」を使用する。なお、欧文の場合、ピリオド(.)やコンマ(,)、コロン(:)やセミコロ
ン(;)の後は、半角分のスペースを空けるとすっきりする。
7.自分が書いた文章でないものを引用する場合には、どこからどこまでが引用した文章
か、読む人にはっきりと分かるように記入し、それが誰の、何という本(論文)の、何ペー
ジあるいは何章(何節)からの引用か、かならず附記すること。
何かの本や論文に基づいたり、参考にしたりして書いている場合にも、依拠している本や
論文を(たとえそれが自分の書いたものであっても)、上記の「引用」の場合と同じように、
附記しておく必要がある。附記の方法も「引用」の場合と同様である。
さらに、原文をそのまま引用するのではなく、要約して紹介することもある。
そのまま引用する場合でも要約して引用する場合でも、そこで使用されている重要な概念
や前後の文脈を説明して、読む者が引用文を正確に理解できるように配慮する必要があるこ
とが多い
(1)読む人に分かるようにする方法としては、自分が書いている文章(「地の文」という)
に括弧(原則として一重の括弧、つまり「」)を使って挿入する(上記6の(2)(3)の例
を参照のこと)か、あるいは、地の文と区別して書く(下例を参照のこと)か、の二つの方
法がある。
(2)引用箇所の附記の仕方には、引用文に直接、丸括弧()や山がた〈〉、亀甲〔〕などの
括弧を使って書き込む場合(上記6の(2)
(3)の例を参照のこと)と、注に書き込む場合
(下例を参照のこと)とがある。
(3)書物や論文の表記方法に関しては、8を参考にすること。
1 内村鑑三(1861‐1930)の単行本出版のはじめで、実質的な処女作1)である『基督信徒のなぐ
さめ』2) は、1893 年(明治 26 年)2月に警醒社から出版されている。その第四章「事業に失敗せ
し時」に次のような一節がある。
義人は信仰に依て生くべし、兵器軍艦増加せし故に成功せりと信ずる政治家、教場美麗にして生
徒多きが故に成功せりと信ずる教育家、壮宏なる教会の建築竣て成功せりと信ずる牧師、帳面上洗
礼を受けしものの増加せしを以て伝道事業の成功せしと信ずる宣教師──これらはみな肉眼を以
て歩むものにして信仰に依て生くるものにあらざるなり、玩弄物を玩ぶ小児なり、木石を拝する偶
像信者なり、黄土の堆積を楽む守銭奴なり、しかして基督信者にはあらざるなり、聖アウガスチン
いわく「大人の遊戯これを事業という」と、ああ余も余の事業を見ること小児の玩弄物を見るがご
とくなりし、余はここにおいて始めて基督の野の試の注解を得たり、3)
4 論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 ここで問題にしたいのは、聖アウガスチン、すなわちアウグスティヌス(354‐430)のことばと
して引かれている、「大人の遊戯これを事業という」である。「大人」には初版以来「たいじん」と
いう読み仮名がふられている由。
_________
1)
鈴木範久、『内村鑑三』、岩波新書、1984、64 頁。また、「内村鑑三全集」第2巻、岩波書店、1980 年、483
頁。なお、本全集については、本稿では以後、「岩波版全集」と略称することにする。
2)
岩波文庫版(1939 初版、1976 改版とあるが、本稿では原則として後者を使用する)の題名に従う。初版本に
おいて、表紙には「基督信徒のなくさめ」と、本文冒頭には「基督信徒の慰」と、題名が表記されているという。
また、表紙で「なぐさめ」と表記されている版もあるらしいが、表紙では一貫して平仮名書きということである。
このあたりのことについて、「岩波版全集」第2巻の「解題」の 483 頁以下を参照のこと。
3)
岩波文庫版、63 頁。
〔上の例示のうち、はじめに「1」とあるのは、節の番号を示している。〕
8.「注」は、一括して論文の末尾に付けたり、各章末に付けたり、ページごとに脚注と
して付けたりする。ふつうフォントの大きさは、本文のフォントの大きさよりも1ポイント
程度小さくする。
「注」に記すべきことは、本文では説明しにくいことの説明や、本文で説明を省略して述
べたことの説明や、本文で触れたことがらの典拠や、読者に参照してもらいたい文献の紹介
などである。
特に典拠や文献を示す場合に注意しなければならないのは、書名、著者名等の表記法であ
る。必ずしも統一様式があるわけではなく、多様であるが、少なくとも一つの論文、一つの
書物の中では統一されていなければならない。標準的なものを以下に挙げる(下例を参照の
こと)。読点の或るものは、適宜、省略しても良い。また、出版年は、出版社に続けて()で
記入しても良いだろう。
文庫や新書の場合には、出版社の代わりに、○○文庫、△△新書としても良い。例えば、
『内村鑑三』、岩波新書、1984 年、64 頁、あるいは、
『内村鑑三』、岩波新書(1984)64 頁、
というように。
単行本:著者・編者、(翻訳者)、『書名』、(「叢書名」)、出版社、出版年、ページ
雑誌論文:著者、「論文題名」、『雑誌名』、巻(号)、出版母体、出版年、ページ
(ページに関しては、
「頁」としたり、
「p.」
(小文字)としたりする。p. 12 から p. 17 とい
う場合には、pp. 12-17 と表記する。巻や号についても、欧文の vol. (= volume) や num. (=
number ) を使ったり、lib. (= liber) や bk. = book ) を使って、vol. 1 とか、bks. 1-3 とか
と表記することもある。)なおピリオドやコンマのあとは、半角分スペースを空ける。
*なお、数字やアルファベットには、
「4」と「4」、
「A」
「a」と「A」
「a」のように、全
角と半角の2種類の大きさのフォントがある。一つの論文の中に両者が混在しないことが望
ましい。
山田晶、『トマス・アクィナスのキリスト論』、創文社、1999 年、10 ページ。
Garry Wills, St. Augustine, Weidenfeld & Nicolson, 1999, p. 23.
5 論文を書く上での留意点‐哲学・人間学コース、人間学分野 松﨑一平、「原罪の罰たる死 アウグスティヌス『自由意志論』に於ける 」、『中世思想研究』、第
24 号、中世哲学会編、1982 年、114 123 ページ。
James Wetzel, The Question of Consuetudo Carnalis in Confessions 7.17.23, Augustinian
Studies, vol. 31, num. 2, A publication of Villanova University, 2000. pp.165-171.
(欧文の場合、別な言語が混じると、他が通常のローマン体であれば、それを斜体=イタリック体で
表記し、他がイタリック体であれば、ローマン体で表記して、言語の違いを表すことが多い。上の
Consuetudo Carnalis は、英文の中にラテン語が混じっている例である。Confessions は、書名ゆえ
のイタリック体。 )
(1)同一の論文や書物を繰り返し挙げる場合、2度目以降は、例えば、
「同書」とか、
「同」
と、同じ箇所であれば、
「同箇所」とかと、略記すると良い。欧文の場合、次のようなことば
を使うし、和文でも、これらを使う人は多い。
ibid. あるいは ib. = ibidem:同書、同章、同節
op. cit. = opere citato:上掲書、同書
loc. cit. = loco citato:上記引用箇所
(人によって、はじめを大文字で Ibid. と書いたり、イタリック体にしなかったりする。)
(2)読む人に何らかの文献を参照させたい場合にも、次のことばを使う。
cf. = confer:
を参照せよ、
を見よ
(人によって、はじめを大文字で Cf. と書いたり、イタリック体にしなかったりする。)
9.論文の最後に、論文を書くために利用した文献のリストを付ける。文献を表記する場
合には、8に倣うこと。
10.いずれにせよ、自分が書こうとしているのと類似したテーマを扱っている論文で、定
評のあるものやきちんと書かれているものを探して、それの様式を模倣するというのが、様
式の上で整った論文を書くための一番の早道かもしれない。
11.卒論のファイルを、卒論提出後、卒業するまでの間に、フラッシュ・メモリーなどで、
人間学分野の教員に提出してください。電子データとして保存しておきます。場合によって
は、後輩のためにつかわせてください。e メイルの添付ファイルで送っていただいても結構
です。Microsoft Word や一太郎などのソフトを使って書く人は、そのままの(Word なら
Word の)ファイルを、テキスト・ファイルで保存したものと一緒に提出してください。こ
れはお願いです。
e メイルのアドレスは、松﨑に関しては [email protected]
*この「論文を書くための留意点」は、毎年改訂していくつもりです。「論文を書くための留意点」
に関して疑問点や要望がある場合には、是非、知らせて下さい。
12/12/2014
[以上:松﨑一平]
6