まえがき

まえがき
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まえがき
光学は,光の発生・伝搬・検出に関して古くから確立された分野である.最近の 30
年間に成し遂げられた三つの重要な発展,“レーザの発明”,“低損失光ファイバの製
作”,“半導体光学素子の導入”は,光学を復活させ現代技術においてますます重要な
ものにしている.これらの発展の結果,新しい分野が出現するとともに,これらの分
野を表す新しい言葉, 電気光学(electro-optics), 光エレクトロニクス(optoelectronics),
量子エレクトロニクス(quantum electronics),量子光学(quantum optics),光波工学
(lightwave technology)が使われるようになった.これらの言葉の正確な用法について
完全な意見の一致は得られていないが,それらが意味することについての一般的な合
意はある.
光工学
一般に“電気光学”は,電気的な効果が重要な役をする光デバイス(たとえばレー
ザ,電気光学的変調器,電気光学的スイッチ)に使われている.一方で“光エレクト
ロニクス”は,性質は本質的に電子的であるが,光を取り込んでいるデバイスや装置
(例は発光ダイオード, 液晶表示装置, アレー光検出器である) におもに関連している.
“量子エレクトロニクス”の言葉は,光と物質の相互作用に原理的に頼っているデバイ
スと装置(レーザと光増幅や光波混合に用いられる非線形光学素子が例になる)に結
びつけて使われる.光の量子的特性とコヒーレンス特性の研究は,“量子光学”の範疇
にある.“光波工学”の言葉は,光通信や光信号処理で使われるデバイスと装置を表現
するのに用いられてきた.
この数年の間に,光工学またはフォトニクス(photonics)という言葉が使われるよ
うになった.この言葉はエレクトロニクス(電子工学)とのアナロジーでつくられた
もので,光学装置において半導体物質や半導体素子の役割がますます増大して熟成さ
れてきた, 光学とエレクトロニクスの間の密接な結びつきを反映している.“電子工
学(エレクトロニクス)”は真空または物質中における電荷の流れの制御を含み,“光
工学”は自由空間または物質中における光子の制御を含んでいる.この二つの分野は,
電子がしばしば光子の流れを制御し,また逆に光子が電子の流れを制御するので,明
らかに重なり合う. “光工学”の言葉はまた, 多くの光デバイスの動作の記述におい
て,光の光子的特性の重要性を浮き彫りにしている.
概
観
本書は,光工学の基礎への案内である.ここでの“光工学”の言葉は,上記の領域
ii
まえがき
すべてを包含する広い意味で用いられており,以下の内容を含んでいる.
レーザによるコヒーレントな光,および発光ダイオードのような発光光源による
インコヒーレントな光の“発生”.
自由空間おける光の“伝送”,レンズ・開口・結像系のような従来の光部品を通
しての光の“伝送”,光ファイバのような導波路における光の“伝送”.
電気的,音響的あるいは光学的に制御された素子の利用による,光の“変調”,“ス
イッチング”そして“走査”.
非線形物質中での波動の相互作用を用いた光の“増幅”と“周波数変換”.
光の“検出”.
これらの領域は,光通信,信号処理,計算,計測,表示,印刷そしてエネルギー輸送
において,ますます応用されつつある.
取り上げ方と説明の方法
光工学の基礎となるものは,いくつかの章で与えられている.それらの章は,
光に関する四つの理論:光線光学,波動光学,電磁光学,光子光学(記載順に高
度化している.)
光と物質の相互作用の理論
半導体物質とそれらの光学特性の理論
について簡潔な紹介をしている.これらの章は,他の章で扱われているレーザと発光
ダイオードによる光の“発生”,光ビーム・回折・結像・光導波路・光ファイバによる
光の“伝送”,電気光学素子・音響光学素子・非線形光学素子の使用による光の“変調”
と“スイッチング”,および光検出器による光の“検出”について記述するための基盤
材となっている.この本は,多くの応用と実際の装置の例が示されているので,理論
的な内容と実用的な内容の混合物となっている.最後の章は光ファイバ通信の学習に
あてられており,そこでは,情報伝送用のフォトニックシステムのすべての部分が何
らかの形で光の発生・伝送・変調・検出とかかわっており,きわめて内容豊富な例を
提供している.
光の各種理論は,徐々にむずかしくなる順に紹介されている.したがって,光はは
じめに光線として,つぎにスカラー波動として,さらに電磁波として,そして最後に
光子として記述される.これらの記述法のそれぞれは,適用可能な領域をもっている.
私たちの取り上げ方は,現象や意図的な応用を適切に記述するもっとも簡単な理論を
もとに,議論を展開するものである.したがって,光線光学は結像系の記述ならびに
導波路や光共振器内での光の閉じ込めの記述に用いられる.スカラー波動光学は,レ
ーザの理解に不可欠な光ビームと,コヒーレント光学系やホログラフィーの説明に有
用なフーリエ光学を記述するのに使われる.電磁光学は,光の偏光および分散の基礎
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iii
と,導波される波動・ファイバ・共振器の光学理論の基礎を提供する.光子光学は,
光の発生や検出および非線形媒質中での光混合の過程を説明するため,光と物質の相
互作用を記述する役割を担っている.
想定している読者
本書「基本
光工学」は,
学部最上級あるいは大学院初年級の電気工学科や応用物理学科の学生のための
入門的教科書
自学自習のための完備した成書
企業・大学・学会が提供する継続的な職務能力開発プログラムのためのテキスト
として役立つことを目的としている.
読者は,現代物理学・電磁気学・波動関連の科目を含む,工学か応用物理学の背景
知識をもっていることが仮定されている.線形システムと初歩的な量子力学に関する
ある程度の知識は期待されるが,必ずしも必要ではない.私たちの目的は,現在興味
ある応用の理解に必要な概念を強調した,光工学への導入書を提供することである.
したがって本書は,すべての光工学の素子と装置を包含する概論書としてとらえられ
るべきでない.実際,光工学のいくつかの領域はまったく含まれていないし,また個々
の章の多くは容易に拡張することができ,特定領域の独立した専門書とすることがで
きる.
構
成
本書は,光学とファイバ光学(第 1 章~第 10 章),量子エレクトロ二クス(第 11 章
~第 14 章),光エレクトロニクス(第 15 章~第 17 章),電気光学と光波工学(第 18 章
~第 22 章)の四つの部分で構成されている.本書の形式は分野ごとに独立したもの
になっているので,要求の異なるいろいろな読者がこの本を使うことができる.また
本書は教師に,異なる科目に対する題材選択の絶好の機会を提供している.各章をで
きるだけ自己完結したものにするために,ある章の重要な内容はしばしば他の章で簡
単にまとめられている.たとえば,第 22 章(光ファイバ通信)のはじめで,前の章
で述べられた関連するファイバ,光源そして検出器についての内容が簡単に概観され
ている.このことによって,読者は種々の部品の重要性を認識したうえで,これらの
部品を利用している通信システム全体の設計と性能の議論を進めることができる.
本書を手にする読者層の数学的素養の程度が異なることを考慮し,むずかしい概念
を二段階で示すように努力した.すなわち,導入的な段階では物理的な見通しを与え
るとともに学習意欲をかきたて,つぎにより進んだ解析を示すようにした.この方法
は第 18 章(電気光学)での扱いに例示されており,そこでは題材がはじめスカラー
iv
まえがき
記号を用いて説明され,その後テンソル記号を用いてふたたび扱われている.
一般に受け入れられている表記法と記号が,問題のないかぎり用いられている.し
かし,本書の取り上げている話題が広範囲なため,いくつもの意味をもつ多くの記号
がある.記号用法を明確にするため,巻末に記号一覧表が載せられている.重要な式
は,先々での検索を簡単にするために枠で囲って強調されている.より進んだ内容の
題材を扱っている節は星印で示されており,もし望むなら省いてもよい.題材の複雑
な内容のために要約が有益と思われるところでは,章の中においてまとめが示されて
いる.
代表的な課程
本書の章は,1 学期または半学期の課程で使用するために,種々の組み合わせが考
えられる.そのような課程の代表例が以下に示されている.これらの課程のいくつか
は,部分的な連続した章として提案されている.教師と学生の特定の目的に合致する
ように,他の選択がなされてもよい.
光
学
背景知識:第 1 章(光線光学)と第 2 章(波動光学)
第 3 章(ビーム光学)
第 4 章(フーリエ光学)
第 5 章(電磁光学)
第 6 章(偏光と結晶光学)
第 7 章(導波光学)
第 10 章(統計光学)
光情報処理
背景知識:第 1 章(光線光学)と第 2 章(波動光学)
第 4 章(フーリエ光学)
第 10 章(統計光学)
第 18 章(電気光学)
第 20 章(音響光学)
第 21 章(光スイッチングと光計算)
レーザあるいは量子エレクトロニクス
背景知識:第 1 章(光線光学);第 2 章(波動光学);第 15 章(半導体中の光子,
15.1 節)
まえがき
v
第 3 章(ビーム光学)
第 9 章(共振器光学)
第 11 章(光子光学)
第 12 章(光子と原子)
第 13 章(レーザ増幅器)
第 14 章(レーザ)
第 15 章(半導体中の光子,15.2 節)
第 16 章(半導体光源,16.2 節と16.3 節)
光エレクトロニクス
背景知識:第 6 章(偏光と結晶光学)
;第 11 章(光子光学,11.1 節 A 項と 11.2 節);
第 12 章(光子と原子,12.1 節と 12.2 節)
;第 13 章(レーザ増幅器,13.1 節)
;第
14 章(レーザ,14.1 節と 14.2 節);第 15 章(半導体中の光子,15.1 節)
第 15 章(半導体中の光子,15.2 節)
第 16 章(半導体光源)
第 17 章(半導体光検出器)
第 18 章(電気光学)
第 21 章(光スイッチングと光計算,21.1 節と 21.3 節)
第 22 章(光ファイバ通信)
光エレクトロニクスおよび光通信
背景知識:第 1 章(光線光学);第 2 章(波動光学);第 15 章(半導体中の光子,
15.1 節)
第 9 章(共振器光学,9.1 節)
第 11 章(光子光学,11.1 節と 11.2 節)
第 12 章(光子と原子)
第 13 章(レーザ増幅器)
第 14 章(レーザ,14.1 節と 14.2 節)
第 15 章(半導体中の光子,15.2 節)
第 16 章(半導体光源)
第 17 章(半導体光検出器)
第 22 章(光ファイバ通信)
光波デバイス
背景知識:第 5 章(電磁光学)
;第 9 章(共振器光学,9.1 節)
;第 11 章(光子光学,
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まえがき
11.1 節 A 項と 11.2 節);第 12 章(光子と原子,12.1 節と 12.2 節);第 15 章(半
導体中の光子)
第 6 章(偏光と結晶光学)
第 7 章(導波光学)
第 8 章(ファイバ光学)
第 16 章(半導体光源)
第 17 章(半導体光検出器)
第 18 章(電気光学)
第 19 章(非線形光学)
第 20 章(音響光学)
光ファイバ通信または光波システム
背景知識:第 5 章(電磁光学);第 6 章(偏光と結晶光学);第 9 章(共振器光学,
9.1 節)
;第 11 章(光子光学,11.1 節 A 項と 11.2 節)
;第 12 章(光子と原子,12.1
節と 12.2節)
第 7 章(導波光学)
第 8 章(ファイバ光学)
第 15 章(半導体中の光子,15.2 節)
第 16 章(半導体光源)
第 17 章(半導体光検出器)
第 21 章(光スイッチングと光計算,21.1 節と 21.3 節)
第 22 章(光ファイバ通信)
問題,参考文献,付録
ひとそろいの問題が各章の終わりに与えられている.問題には,それらがあてはま
る章と節に従って番号がつけられている.非常に多くの場合,問題は本文で述べなか
った考え方や応用,式の解析的導出,重要な量の大きさを説明するよう考慮した数値
計算を扱っている.より進んだ内容の問題には,星印が付されている.また,読者が
題材をよりよく理解することができ,あるいはもっと掘り下げた題材を知ることがで
きるようにするために,多くの練習問題が各章の本文中にある.
付録には,1 次元と 2 次元のフーリエ変換,線形システム理論,偏光素子や光導波
路そして共振器で重要な線形システムのモードに関する内容がまとめられている.こ
れら付録は,本書の中の適切なところで引用されている.各章の終わりに,精選した
重要な参考書,総括論文そしていくつかの特別に重要な古典的論文を含む参考文献リ
ストが掲載されている.
まえがき
謝
vii
辞
私たちは,この本の各所を読み貴重な助言を与えていただいた多くの同僚,ゴビン
ド P. アグラワル(Govind P. Agrawal)氏,デイビッド H. オーストン(David H. Auston)
氏,ラシード・アッザム(Rasheed Azzam)氏,ニコライ G. バソフ(Nikolai G. Basov)
氏,フランコ・セリーナ(Franco Cerrina)氏,エマニュエル・デサビア(Emmanuel
Desurvire)氏,ポール・ディアメント(Paul Diament)氏,エリック・フォッサム(Eric
Fossum)氏,ロバート J. キース(Robert J. Keyes)氏,ロバート H. キングストン(Robert
H. Kingston)氏,ロドニー・ロードン(Rodney Loudon)氏,レオナルド・マンデル(Leonard
Mandel)氏,レオン・マクコーハン(Leon McCaughan)氏,リチャード M. オズグッ
ド(Richard M. Osgood)氏,ジャン・ペリナ(Jan Peřina)氏,ロバート H. レディカ
ー(Robert H. Rediker)氏,アーサー L. ショーロウ(Arthur L. Schawlow)氏,S. R. セ
シャドゥリ(S. R. Seshadri)氏,ヘンリー・シュタルク(Henry Stark)氏,フェレル G.
ストレムラー(Ferrel G. Stremler)氏,ジョン A. タタロニス(John A. Tataronis)氏,
チャールズ H. タウンズ(Charles H. Townes)氏,パトリック R. トゥリシッタ(Patrick
R. Trischitta)氏,ウェン I. ワン(Wen I. Wang)氏,そしてエドワード S. ヤン(Edward
S. Yang)氏に感謝する.
特に私たちは,ジョン・ウィナリー(John Whinnery)氏とエミール・ウォルフ(Emil
Wolf)氏には,説明の仕方を大きく改善することになった多くの助言を与えていただ
き,たいへんありがたく思っている.
数人の同僚はこの本の下書きの一部を授業で使い,そして非常に貴重な意見を私た
ちに還元してくれた.これらの人々とは,ジョンズ・ホプキンス大学(現在サウス・
カロライナ大学)のエータン・ブアコフ(Etan Bourkoff)氏,コロラド大学のマーク O.
フリーマン(Mark O. Freeman)氏,イリノイ大学のジョージ C. パーペン(George C.
Papen)氏そしてプリンストン大学のポール R. プルークナル(Paul R. Prucnal)氏で
ある.
私たちの多くの現在の学生やかつての学生たちは,何年にもわたっていろいろな方
法でこの本の内容に寄与してくれた.彼ら,すなわちゲタノ・アイエロ(Gaetano L.
Aiello),モハマッド・アシ(Mohamad Asi),リチャード・カンポス(Richard Campos),
バディ・クリスチョノ(Buddy Christyono),アンドルー H. コーズ(Andrew H. Cordes),
アンドルー・デイビッド(Andrew David),エルネスト・フォンテンラ(Ernesto Fontenla),
エバン・ゴールドスタイン(Evan Goldstein),マシュー E. ハンセン(Matthew E.
Hansen),ディーン U. ヘケル(Dean U. Hekel),コナー・ヘネガン(Conor Heneghan),
アダム・ハイマン(Adam Heyman),ブラッドリー M. ジョスト(Bradley M. Jost),
デイビッド A. ランドグラフ(David A. Landgraf),カングァ・ルー(Kanghua Lu),
ベン・ナサンソン(Ben Nathanson),ウィンスロー L. サージーント(Winslow L.
viii
まえがき
Sargeant),マイケル T. シュミット(Michael T. Schmidt),ロール E. セクィーラ(Raul
E. Sequeira),デイビッド・スモール(David Small),クレイジン・ソンワタナ(Kraisin
Songwatana),ニコラ S. スボティック(Nikola S. Subotic),ジェフリー A. トービン
(Jeffrey A. Tobin),エミリー M. トゥルー(Emily M. True)の諸君に深甚の謝意を表
したい.また私たちは,授業中に居眠りをせずに,内容を理解しようと努力すること
で幾多の誤りを発見してくれた,ここに名前をあげていない多数の学生にも感謝する.
とりわけ私たちは,この本の完成にいたる種々の段階でその準備に個人的に関与し
てくれた学生である,ニラジュ・アグラワル(Niraj Agrawal),スザンヌ・キールソン
(Suzanne Keilson),トッド・ラーチュク(Todd Larchuk),グイファン・リー(Guifang
Li),フィリップ・タム(Philip Tham)の多くの貢献と助けに感謝する.
章のはじめに用いた写真を集める過程において,多数の同僚,すなわち E. スコッ
ト・バー(E. Scott Barr)氏,ニコラース・ブレムベルゲン(Nicolaas Bloembergen)氏,
マーティン・キャレイ(Martin Carey)氏,マージョリー・グラハム(Marjorie Graham)
氏,マーガレット・ハリソン(Margaret Harrison)氏,アン・コットナー(Ann Kottner)
氏,G. トーマス・ホームズ(G. Thomas Holmes)氏,ジョン・ハワード(John Howard)
氏,セオドール H. メイマン(Theodore H. Maiman)氏,エドワード・パリク(Edward
Palik)氏,マーティン・パーカー(Martin Parker)氏,アレクサンドル M. プロホロ
フ(Aleksandr M. Prokhorov)氏,ジェイラス・クィン(Jarus Quinn)氏,レズリー M.
リッチモンド(Lesley M. Richmond)氏,クラウディア・シューラー(Claudia Schüler)
氏,パトリック R. トゥリシッタ氏,J. マイケル・ヴォーン(J. Michael Vaughan)氏,
エミール・ウォルフ氏から私たちに示された援助に対して謝意を表したい.つぎの各
機関・各氏からは,括弧内の人物の写真を特別に貸し出していただいた.アメリカ物
理学協会のノーベル賞受賞者資料を収集しているメガーズ展示室 [ガボール(Gabor),
タウンズ,バソフ,プロホロフ,W. L. ブラッグ(W. L. Bragg)],アメリカ物理学協
会のニールス・ボーア図書館 [レーリー(Rayleigh),フラウンホーファー(Fraunhofer),
マクスウェル(Maxwell),プランク(Planck),ボーア(Bohr),第 12 章のアインシュ
タイン(Einstein),W. H. ブラッグ(W. H. Bragg)],パリ科学アカデミー公文書館[フ
ァブリ(Fabry)],宇宙物理学会誌[ペロー(Perot)],AT&Tベル研究所[ショックレ
ー(Shockley),ブラタン(Brattain),バーディーン(Bardeen)],ベットマン公文書館
[ヤング(Young),ガウス(Gauss),チンダル(Tyndall)],国立パリ図書館[フェル
マー(Fermat),フーリエ(Fourier),ポアソン(Poisson)],バーンディ図書館[ニュ
ートン(Newton),ホイヘンス(Huygens)],ドイツ博物館[ヘルツ(Hertz)],チュー
リッヒ工科大学図書館[第 11 章のアインシュタイン],ブルース・フリッツ(Bruce
Fritz)氏[サレー(Saleh)],ハーバード大学[ブレムベルゲン],ハイデルベルグ大
学[ポッケルス(Pockels)],グラスゴー大学ケルビン博物館[カー(Kerr)],セオド
まえがき
ix
ール H. メイマン氏[メイマン],プリンストン大学[フォン・ノイマン(von Neumann)],
スミソニアン研究所[フレネル(Fresnel)],スタンフォード大学[ショーロウ],エミ
ール・ウォルフ氏[ボルン(Born),ウォルフ].またコーニング社にはこころよく第
8 章のはじめに用いた写真を提供していただいた.ジェネラル・エレクトリック社に
は登録商標である社章を第 16 章のはじめで使用するのを許可していただき,同社に
感謝したい.第 16 章のはじめでの IBM の社章は,IBM の特別許可を得て使用してい
る.第 16 章のはじめのもっとも右にあるシンボルマークは,マサチューセッツ工科
大学リンカーン研究所の厚意で提供された.AT&T ベル研究所には,親切にも第 22 章
のはじめにある図の使用を私たちに許可していただいた.
アメリカ科学財団,通信研究センター,およびコロンビア放射線研究所を通じた電
子工学研究計画統合サービスによって私たちに与えられた終始変わらぬご支援に深甚
の謝意を表する.
そして最後に,私たちの編集者であるジョージ・テレッキ(George Telecki)氏とベ
ア・シューベ(Bea Shube)氏の本書の製作過程における指示と示唆に対して,心から
の感謝を捧げたい.
1991 年 4 月 3 日
ウィスコンシン州マディソン
バハア E. A. サレー(BAHAA E. A. SALEH)
ニューヨーク州ニューヨーク
マルビン・カール・タイヒ(MALVIN CARL TEICH)
x
まえがき
訳者まえがき
xi
訳者まえがき
光学における種々の概念と解析方法が近代物理学の一大基礎になっていることや,
通信・計測・情報処理をはじめとするあらゆる工学分野で,光学が不可欠な存在にな
っていることは周知の事実である.しかしわが国では,充実した光学教育課程をもつ
大学は一部に限られ,多くの大学院生・研究者・技術者が必要にかられて独学してい
ることも事実である.そのための日本語で書かれた光学や応用光学の書物はたくさん
あり,すぐれたものも少なくない.しかし,真に感服する素晴らしい書物は,残念な
がら欧米で出版されたものにしか見いだせない.これは,理工学分野における教科書
や専門書の執筆に対する評価の違いが原因で,欧米では教育貢献として高く評価され
るのに対し,わが国では余技の産物程度にしか評価されないためである.
ところで,そのような欧米の素晴らしい光学書の翻訳書があれば,光学の習得に取
り組むわが国の人びとの学習が大きく加速されることはまちがいない.そこで,訳者
らは先に E.ヘクト(Hecht)教授の“OPTICS(第 4 版)”を翻訳し出版した(丸善株式会
社).これは豊富な図や写真とていねいな記述を特徴とする良書で,翻訳書は幸いにも
好評を得ている.ただ,光物理学に主点がおかれているため,工学への展開を重視し
た翻訳書の必要性も感じていた.そして,Wiley 社の純物理学・応用物理学シリーズ
の一巻である,B.E.A.サレー(Saleh)教授と M.C.タイヒ(Teich)教授の“Fundamentals of
Photonics”をなんら迷うことなく取り上げ,「基本 光工学」の書名で発行のはこびと
なった.
この原著は 1991 年に初版がだされて以来,一度も改訂されていない.しかし,内
容はいまも現代性を失っておらず,しかも誤記・誤植が少なく完成度の高いことに驚
かされる.さらに,説明や記述が簡潔かつ明晰で,感心するだけでなく美しささえ感
じてしまう.これは,原著まえがきからわかるように,多数の錚錚たる研究者の助力
があったことに負うところが大きいと思われる.まさに,アメリカの光学界あるいは
物理学界の総力を結集したと表現しても過言ではないだろう.しかし,このような成
功は,もちろん著者らの資質と努力のたまものである.
なお,訳者の一人(朝倉)が,45 の国または地域と国際的な 4 団体を会員とする,
光学分野における唯一の世界規模学術団体である国際光学委員会の会長を 1996 年か
ら 3 年間務めたとき,サレー教授が副会長として支えてくれた.たいへん有能な研究
者で,タイヒ教授ともども著したのであれば,この原著が明快な内容であるのは当然
であると納得したことを覚えている.
原著は光学の基礎を要領よくまとめた章,ファイバ光学,量子エレクトロニクス,
光エレクトロニクス,電気光学,光波工学に関する章の全 22 章と付録で構成され,
xii
訳者まえがき
光工学のほぼ全分野を網羅している.おそらく,はじめて研究に従事する大学院生や
実践の場にいる研究者と技術者には,本書がすべての要求を満たす力強い援軍になる
はずである.また,学部最上級あるいは大学院における講義の教科書としても最適で
ある.ただし,それには誤訳のないことと自然な日本語になっていることが必要であ
る.十分な注意をはらって翻訳作業を進めたが,不備な点に気づかれた読者にはどし
どし指摘していただき,改良してゆきたいと思う.
最後に,このような大部の翻訳書の発行を快諾していただいた森北出版株式会社に
篤くお礼を申しあげたい.さらに,編集と製作において訳者らの希望を最大限に聞き
入れていただいた利根川和男氏には,深甚の謝意を表したい.
2005年7月
北の大地にて
訳者しるす
目
目
次
xiii
次
第1章
光線光学 .................................................................................... 1
1.1
光線光学の前提条件 .......................................................................................... 4
簡単な光学素子 ................................................................................................. 7
1.2
1.3
1.4
屈折率分布がある場合の光学 ........................................................................ 19
マトリックス光学 ........................................................................................... 27
参考文献 ........................................................................................................... 39
問 題 ............................................................................................................... 41
第2章
波動光学 .................................................................................. 43
2.1
波動光学の前提条件 ........................................................................................ 45
単色波 ............................................................................................................... 46
2.2
2.4
波動光学と光線光学の関係 ............................................................................ 55
簡単な光学素子 ............................................................................................... 56
2.5
干
*2.3
2.6
渉 ............................................................................................................... 66
多色光 ............................................................................................................... 76
参考文献 ........................................................................................................... 82
問 題 ............................................................................................................... 82
第3章
ビーム光学 .............................................................................. 84
3.1
ガウスビーム ................................................................................................... 85
光学素子の透過 ............................................................................................... 97
3.2
3.3
*3.4
エルミート-ガウスビーム ............................................................................ 106
ラゲール-ガウスビームとベッセルビーム ................................................. 110
参考文献 ......................................................................................................... 112
問 題 ............................................................................................................. 113
第4章
フーリエ光学 ..........................................................................115
4.1
自由空間における光伝搬 .............................................................................. 118
光フーリエ変換 ............................................................................................. 129
4.2
4.4
光の回折 ......................................................................................................... 135
像形成 ............................................................................................................. 144
4.5
ホログラフィー ............................................................................................. 153
4.3
xiv
目
次
参考文献 ......................................................................................................... 162
問 題 ............................................................................................................. 163
第5章
電磁光学 ................................................................................ 167
5.1
光の電磁気学 ................................................................................................. 169
誘電媒質 ......................................................................................................... 172
5.2
5.3
5.4
5.5
5.6
単色電磁波 ..................................................................................................... 178
基本的な電磁波 ............................................................................................. 180
吸収と分散 ..................................................................................................... 186
分散媒質中のパルス伝搬 .............................................................................. 194
参考文献 ......................................................................................................... 203
問 題 ............................................................................................................. 204
第6章
6.1
6.2
6.3
6.4
6.5
6.6
偏光と結晶光学 ..................................................................... 206
光 ............................................................................................................. 208
反射と屈折 ..................................................................................................... 217
偏
異方性媒質の光学 ......................................................................................... 224
光学活性とファラデー効果 .......................................................................... 239
液晶の光学 ..................................................................................................... 243
偏光素子 ......................................................................................................... 247
参考文献 ......................................................................................................... 252
問 題 ............................................................................................................. 253
第7章
導波光学 ................................................................................ 255
7.1
平面鏡型導波路 ............................................................................................. 257
平面型誘電体導波路 ...................................................................................... 266
7.2
7.3
7.4
2 次元導波路 .................................................................................................. 277
導波路における光結合 .................................................................................. 281
参考文献 ......................................................................................................... 289
問 題 ............................................................................................................. 290
第8章
ファイバ光学 ......................................................................... 292
8.1
8.2
屈折率階段型ファイバ .................................................................................. 294
屈折率分布型ファイバ .................................................................................. 309
8.3
損失と分散 ..................................................................................................... 319
目
次
xv
参考文献 ......................................................................................................... 330
問 題 ............................................................................................................. 331
第9章
共振器光学 ............................................................................ 334
9.1
平面鏡共振器 ................................................................................................. 336
球面鏡共振器 ................................................................................................. 352
9.2
参考文献 ......................................................................................................... 366
問 題 ............................................................................................................. 366
第 10 章
統計光学 .............................................................................. 369
10.1 ランダムな光の統計的性質 .......................................................................... 371
10.2 部分的コヒーレント光の干渉 ...................................................................... 388
*10.3 光学系における部分的コヒーレント光の伝搬 ........................................... 396
10.4 部分偏光 ......................................................................................................... 407
参考文献 ......................................................................................................... 411
問 題 ............................................................................................................. 412
第 11 章
光子光学 .............................................................................. 415
子 ............................................................................................................. 417
11.2 光子流 ............................................................................................................. 430
*11.3 光の量子状態 ................................................................................................. 445
11.1 光
参考文献 ......................................................................................................... 451
問 題 ............................................................................................................. 453
第 12 章
光子と原子 .......................................................................... 458
12.1 原子,分子,固体 ......................................................................................... 459
12.2 光子と原子の相互作用 .................................................................................. 470
12.3 熱的光 ............................................................................................................. 488
12.4 ルミネセンス光 ............................................................................................. 492
参考文献 ......................................................................................................... 496
問 題 ............................................................................................................. 497
記
号-第 1 巻- ..................................................................................... 499
索
引 ..................................................................................................... 507