BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2012年1月号 筆者のご紹介 門倉 貴史 (かどくら たかし) BRICs経済研究所 代表 慶應義塾大学経済学部卒業後、1995年に浜銀総合研究所入社。 社団法人日本経済研究センター、東南アフリカジア研究所(シンガ ポール)出向、第一生命経済研究経済調査部主任エコノミストを経て、 2005年より現職。同志社大学大学院非常勤講師。専門はアジア やBRICs等の新興国経済のほか、多岐にわたる。 主な著書 「図説BRICs経済」(日本経済新聞社) 「『今のインド』がわかる本」(三笠書房) 「日本人が知らなかったVISTA株」(翔泳社) 「イスラム金融入門~世界マネーの新潮流」(幻冬舎新書) 「中国経済の正体」(講談社現代新書) 「世界を席巻するインドのDNA」(角川SSC新書)など多数。 投資信託は一般的に、株式、債券等様々な有価証券へ投資します。有価証券は市場環境、有価証券 の発行会社の業績、財務状況等により価格が変動するため、投資信託の基準価額も変動し、損失を 被ることがあります。また、外貨建の資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被ることがあ ります。そのため、投資信託は元本が保証されているものではありません。 ご注意していただきたい事項について • 投資信託によっては、海外の証券取引所の休業日等に、購入、換金の申込の受付を行わない場合があります。 • 投資信託によっては、クローズド期間として、原則として換金が行えない期間が設けられていることや、1回の換金 (解約)金額に制限が設けられている場合があります。 • 分配金の額は、投資信託の運用状況等により委託会社が決定するものであり、将来分配金の額が減額されることや、 分配金が支払われないことがあります。 ファンドの諸費用について 投資信託では、一般的に以下のような手数料がかかります。手数料率はファンドによって異なり、下記以外の手数料 がかかること、または、一部の手数料がかからない場合もあるため、詳細は各ファンドの販売会社へお問い合わせい ただくか、各ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 投資信託の購入時:購入時手数料(上限3.675%(税抜3.5%))、信託財産留保額 投資信託の換金時:換金(解約)手数料、信託財産留保額(上限1.0%) 投資信託の保有時:運用管理費用(信託報酬)(上限年率1.995%(税抜1.9%))、監査費用(上限年間315万円(税抜 300万円)) *費用の料率につきましては、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が設定・運用するすべての公募投資信託の うち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 運用管理費用(信託報酬)、監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に受益者の負担となります。その 他に有価証券売買時の売買委託手数料、外貨建資産の保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかか ります。また、他の投資信託へ投資する投資信託の場合には、当該投資信託において上記の費用がかかることがあり ます。また、一定の条件のもと目論見書の印刷に要する実費相当額が、信託財産中から支払われる場合があります。 金融商品取引業者等について 投資信託委託会社:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:日本証券業協会、社団法人投資信託協会、社団法人日本証券投資顧問業協会 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、 BRICs経済研究所の協力により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。ま た、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて 作成されていますが、当社およびBRICs経済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なし に変更されることがあります。また本資料に掲載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用する ファンドへの組入れを示唆するものではありません。 1 BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2012年1月号 今月のコラム 近年、中国の海外旅行者数が急増している。たとえば、中国国家旅遊局の統計データによると、2010年の海外旅行者数 は約5739万人に達し、2005年に比べて1.9倍の規模へと膨らんだ(図表1を参照)。国家旅遊局は、2011年の海外旅行者 数が総人口の5%に相当する6500万人に上ったと推定している。 中国で海外旅行者数が増えている背景のひとつには、これまでの経済発展に伴う国民の生活レベルの向上がある。中国 の1人あたりGDP(国内総生産)を見ると、2005年の1万4144元から2010年には2万9668元へと、わずか5年間で2.1倍の 規模に膨らんだ。また、通貨人民元が米ドルに対して緩やかに上昇していることも、米ドルに換算した際の購買力の向上を 通じて、海外旅行者数の増加に拍車をかけていると考えられる。 一般に、開発途上国では米ドルに換算した1人あたりGDPが3000ドルを突破すると、消費の高度化が顕著に進んで、海 外旅行を楽しむ人が増えると言われる。中国の1人あたりGDPは2008年に3000ドルを突破、2010年は4382ドルとなってお り、購買力の面で海外旅行が拡大する条件は整っている。それまで「ぜいたく」と考えられていた海外旅行が「日常」化しつ つあるのだ。 さらに、中国が2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟して以降、多くの国・地域が中国人の個人観光ビザの発給要件を 大幅に緩和しており、そうした規制緩和の進展も海外旅行者数の増加につながっている。中国の海外旅行者数が増加を続 ける中、先進諸国の観光産業は消費力のある中国人観光客の流入によって大きな恩恵を受けている。 たとえば、フランスでは近年の中国人観光客の流入で消費市場が大幅に拡大している。フランス観光開発機構によると、 2010年に中国人観光客がフランスで消費した金額は前年比60%増の89億ドルにも上る。商業施設も、中国人観光客を取り 込むために様々な工夫をしており、たとえば、パリのデパート内には中国語のフロアマップや中国語のガイドが置かれるよう になった。中国語を話せるスタッフの雇用も増やしている。 中長期の計画として観光立国を目指す日本も、中国人観光客の呼び込みに積極的な姿勢を示している。2009年7月に は、年収25万元程度以上を条件に、中国人向け個人観光ビザの発給を開始した。2010年7月には、経済力の要件を「年収 25万元程度以上」から「年収10万元程度以上」へと緩和した。こうした規制緩和の効果によって、2010年の中国人の訪日観 光客数は約141万人と、前年に比べて40%も増加したのである(図表2を参照)。 しかしながら、2011年3月の福島第一原発事故後は放射能への不安などから日本を訪れる中国人観光客はめっきり減っ てしまった。厳しい状況を打開するため、政府は2011年9月から、中国人向け個人観光ビザの発給要件を追加緩和すること を決定した。具体的には、官公庁や大企業の管理職を指す「一定の職業上の地位」の要件を撤廃するとともに、滞在期間を これまでの15日間から30日間へと延長した。 円高が急速に進んでいることもあって(円高になると外国人観光客とっては日本での消費が不利になる)、追加の規制緩 和が短期的にどの程度の効果を発揮するかは不透明だが、中長期的な視点でみれば、ビザ発給要件の緩和などの規制緩 和が中国人観光客の来日の増加につながることは間違いないだろう。 図表1 中国の海外旅行者数 図表2 中国人の訪日観光客数 (百万人) (千万人) 7 1.6 6 1.4 5 1.2 1.0 4 0.8 3 0.6 2 0.4 1 0.2 0 05 2 06 07 08 09 10 11 (年) (出所)中国国家旅遊局資料よりBRICs経済研究所作成 (注)2011年は国家旅遊局の推定 0.0 03 04 05 06 07 08 09 10 (年) (出所)日本政府観光局資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、 BRICs経済研究所の協力により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的とした ものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。 本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経済研究所がその情報の正確 性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲 載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを 示唆するものではありません。 BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2012年1月号 今月のコラム ロシアは、世界の中でもタバコの消費量が多い「喫煙大国」のひとつとして知られている。たとえば、米国対がん協会の 「タバコアトラス」の統計データによると、タバコの消費量(2007年)が世界で最も多いのは、中国で年間2兆1628億本に上 る。第2位が米国の3570億本、そして第3位がロシアで年間3314億4000万本となっている(図表を参照)。ロシアの消費量 は第4位の日本(年間2585億本)に比べると約1.3倍の規模だ。しかも、先進国では喫煙率が低下傾向にあるのだが、ロシ アでは喫煙者の数が増加傾向にあり、過去5年間に女性と若者の喫煙者は3倍に増えたという。 ロシアで、タバコ消費量が多くなっている理由のひとつにタバコの値段が安いということがある。有名な国産ブランドの場 合、1箱の販売価格は20ルーブル(約49.6円、1ルーブル=2.48円で計算)程度に過ぎない。外国の銘柄も40ルーブル(約 99.2円)から80ルーブル(約198.4円)で購入できる。 タバコの値段がこれだけ安くなっているのは、ロシア政府が「タバコ税」を低く抑えてきたためだ。過去、一般物価は大きく 上昇しているが、タバコの値段はほとんど変化していない。値段が安いのでタバコは入手しやすく、ロシア人男性の65%、 ロシア人女性の30%が喫煙するともいわれている。 これまでロシア政府は国民の喫煙の習慣を容認してきたが、近年では喫煙による健康被害を危惧するようになっており、 2000年代後半からは、タバコに対する規制強化に乗り出すようになった。このような規制強化の流れに沿って、将来的には 「タバコ税」が大幅に引き上げられ、それに伴いタバコの値段も高くなる公算が大きい。 まず、ロシアは2008年にWHO(世界保健機関)の「タバコ規制枠組み条約」に加盟した。これによって、タバコの広告は 禁止され、タバコの箱の表面の30%以上に健康被害に関する警告を載せることが義務づけられることになった。さらにロシ ア政府は、2012年から2015年までの期間、「タバコ税」を段階的に引き上げることも検討している。現在の「タバコ税」は1 箱あたり5ルーブル(12.4円)だが、計画では2015年の段階で10倍の50ルーブル(124円)まで引き上げる。 「タバコ税」の引き上げの目的は、タバコを購入しづらくすることで、国民の健康被害をできるだけ小さくするというものだ。 ロシア政府は、毎年40万人から50万人の国民がタバコ関連の病気で亡くなっていると推定しており、タバコの値段が上が れば、タバコの消費量が減って、健康被害が抑制されるとみている。政府は「タバコ税」の引き上げで国民の喫煙率を現在 の39%から10~15%に引き下げられるとしている。 「タバコ税」を引き上げる理由はそれだけではない。もうひとつ政府の税収を増やすという隠れた狙いもある。最近の原油 高によって2011年のロシアの財政収支は大幅に改善しているが、それでもGDP(国内総生産)比で1%程度の赤字になる 見込みである。政府は、酒税や「タバコ税」を引き上げることで、安定した税収を確保し、早期の財政黒字化につなげたい考 えだ。 ただし、こうした規制強化が、ロシアの喫煙率の低下やタバコ税収の増加につながるかは不透明である。というのも、急 激に規制を強化すると、タバコの密造や密売市場が膨らむ可能性があるからだ。すでに「タバコ税」の大幅な引き上げを実 施したロシア周辺のブルガリアやルーマニアでは、タバコの密売市場が広がるようになっている。 (千億本) 25 図表 タバコの年間消費量が多い国(ベスト5) (2007年) 20 15 10 5 0 中国 米国 ロシア 日本 インドネシア (出所)米国「タバコアトラス」資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により 作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会 社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経 済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲載 されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。 3
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