フランス調査

フランス調査
~マルセイユ港の警備と博物館展示~
松 尾
晋 一
Ⅰ.行程
っているのか確認することである。前者については、
2009 年 2 月 26 日(木)~3 月 3 日(火)
他国の警備体制を知ることにより、長崎について見
落とした点に気づくことがあるのではないかという
2 月 26 日
問題意識による。 共通点と相違点を見いだし、研
長崎―福岡空港 7:10 発―成田空港 8:55 着
究に活かした。博物館の展示に関しては、西洋と
11:55 発―パリ空港 15:20 着
東洋で史・資料についての意識が異なる。この点
は当然のことであるということを前提にしたうえで、
2 月 27 日
パリ・リヨン駅―マルセイユ―パリ・リヨン駅
どういった手法を用い展示しているのか検証し、画
一的な日本の展示の可能性を探りたいと考えた。
地中海考古学博物館、海洋博物館、マルセイユ
歴史博物館
Ⅲ.マルセイユの警備
地中海に面したフランス第 2 の都市、マルセイユ。
2 月 28 日
訪れた日は、天候も良く、汗ばむ陽気であった。地
パリ
中海性気候ということもあり、暖かかく、町には活
海洋博物館、アンヴァリッド(軍事博物館・立体
気があり、多くの観光客でにぎわっていた。
地図博物館)、オルセー美術館
3月1日
パリ、ベルサイユ
ヴェルサイユ宮殿、ルーブル美術館
3月2日
フランス国立公文書館
パリ、シャルル・ドゴール空港 18:30 発
3月3日
成田空港 13:10 着 成田空港 18:30―福岡空
写真は、旧港という地区だが、港の入り口はせまく、
現在は港のなかに多数のヨットが停泊していた。
港 20:40 長崎着
サン・ジャン要塞とサン・ニコラ要塞
Ⅱ.目的
マルセイユの旧港は、広さは違うものの長崎と地
フランス調査の目的は、2 つある。そのひとつは、
形的に類似している。港の入口は狭いが港内はあ
長崎港の警備と比較できる地理的条件を持つフラ
る程度の空間をもち、港の一方に都市が形成され
ンス・マルセイユの状況を確認すること、もうひとつ
ている(マルセイユの場合は、西側)。都市防衛の
は、フランスの博物館などが、どういった展示を行
ために港口両側に要塞が建設されており、長崎の
場合、太田尾、魚見台場といったところであろうか。
日本の場合と異なり、かなり頑丈な要塞が築かれ
ており、想定される武力がこのようなものを考案し
たであろうことが理解できたとともに、その構造から
日本とは異なり、港内へ敵船を入れないことを目的
とした造りであることが容易に想像できた(防衛シス
テムの相違)。長崎の場合、19 世紀初頭(文化期)
まで船を港内に入れ、港口を封鎖して警備すると
いう方法をとっていたことを踏まえると、異国船来
航への認識が大きく異なることが改めてわかった。
地中海考古博物館は、正面を向かって右手の 1
対岸のサン・ジャン要塞
サン・ジャン要塞とサン・ニコラ要塞
階から 3 階のフロアーだった。
もともと慈善院であったので、部屋を区切る壁を取
り除き、細長い空間となっていた。窓などは全くなく、
Ⅳ.フランスの博物館
自然光が入らないようにしてあった。各入口にはボ
-1.マルセイユ
ランティアの方と思われる方が、チケットのチェック
ヴィエンユ・シャリテは、バロック様式の建造物であ
をされていたが、それ以上のサービスはされていな
ったが、17 世紀当時は、移民救済のための慈善
かった。展示物は、系統立てて展示されていたが、
院であった。写真からもわかるように、博物館とは
キャプションなどは全てフランス語であり、外国から
思えない外観をしており、外部に看板がないことも
の観光客にとっては不親切な印象を持つように感
あって非常に見つけにくかった。敷地の中央には、
じた。展示物からは、地中海を介してありとあらゆる
ドームがあり、その周囲に三階建ての建造物が建
文化がマルセイユに入ってきたことが分かり、港町
っている。
としての長い歴史の一端を理解することができた。
海洋博物館
マルセイユ歴史博物館 ショッピングセンターのな
かに歴史博物館があることに驚かされた。フランス
語が分からなかったということもあるが、こちらも場
所がすぐにはわからなかった。屋外には、地中海
遺跡もあり、博物館の敷地としては広く感じた。展
示はマルセイユの通史展示であったが、体験型の
展示もあり、家族ずれで訪れていた来館者も楽し
んでいる様子であった。規格ものの展示ケースは
なく、オリジナルのガラスケース展示が多かった印
象を持つ。これは利点もあるが、統一感が無く、視
点が上下に動くので、見学していて疲労感を覚え
た。ここもミュージアムレストラン・ショップなどの施
設はなかった。書籍だけ、チケットカウンターのとこ
ろで販売されていた(フランス語のみ)。
サント・シャペル 13 世紀に着工されたゴシック様式の
礼拝堂。一面のステンドグラスを見たときにその技術の
高さと芸術性に見入ってしまった。
コンシェルジュリー
もともとコンシェルジュがいた場
所であるが、革命後の牢獄としての役割をもったところ
で、マリーアントワネットが最期を過ごした独房も残さ
れている。
写真は、その独房で椅子に腰かけているのがマリーア
ントワネット。
ノートルダム大聖堂 14 世紀に完成したこの大聖堂で、
ナポレオンはフランス革命後に皇帝としての戴冠式を
ここで挙行した。
写真は、大聖堂の前の敷石に刻まれていた文字。
ジョイヨー宮 1937 年、パリ万国博覧会開催のために
建設されたもの。ガイドブックにあった詩人ヴァレリー
の「作品との出会いを価値あるものにするのは、見学
する人の意識次第」を確認したのち、建物にある海洋
博物館の見学を行った。
アンヴァリッド
軍事博物館
立体地図博物館