ポスター演題

抄 録 集
ポスター演題
P-01
医療機器の洗浄
超音波洗浄装置(洗浄器またはイリゲーター)のバリデーション
Amélie RENAUD , Christine F. DENIS
CHRU LILLE, FRA
Keywords
ultrasonics, validation, qualification
緒言および目的
超音波イリゲーターは、CSSD において不可欠な装置になりつつある。現在、超音波イリゲーターには洗浄後の
熱消毒機能も備わっている。
超音波イリゲーターには遵守すべき規格が存在しないものの、われわれには履行義務がある。そのため、超音波
イリゲーターの検証手順を明記し、すべてのデータを明示することで、装置の正常運転を目指す。
対象と方法
検証手順は、据付時適格性評価(IQ)
、運転時適格性評価(OQ)
、性能適格性評価(PQ)の3つから構成されて
いる。PQ は年 1 回または工程変更の際に改変される。
超音波イリゲーターや洗浄器に関する規格が存在しないため、ウォッシャーディスインフェクター(WD)に関す
る EN ISO 15883 の基本方針に従った。
結果
IQ:あらゆる関連文書を用意し(ユーザーガイドなど)
、電源や給水の準拠といった項目を確認する。
OQ:装置が正常に動作することを確認する。プログラムをすべて調査し(継続時間、注水、排水など)
、洗浄剤の
排出量を 3 回測定する。
PQ:装置の効率を確認する。温度を測定し、キャビテーションの有無を調べ、洗浄効率を評価する。検出器を使っ
て超音波出力の推定も行う。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-02
医療機器の洗浄
管腔テストデバイスを用いた各種洗浄効果の判定
平岡康子 , 市川ゆかり
旭川赤十字病院 感染管理室
Keywords
Cleaning, Device, ATP
【目的】管腔器材は目視で洗浄効果が判定しづらく、汚染の残存をできる限り少なくすることが感染面からも重要で
ある。今回管腔器材洗浄効果を 3 種類の判定方法を用い評価し、各種洗浄効果の判定法の今後の臨床での活用につ
いて検討したので報告する。
【方法】長さ 20cm、内径 4mm、両端をステンレス(中心穴内径 2mm)器具で留めた未使用シリコンチューブを 30
本準備し、研究者の血液を各 1.0cc 注入しチューブ内 2 往復後 19 時間室温(26℃)で放置する。各 15 本を浸漬後
用手洗浄群(45℃ 30 分、両端留め具を外し1%中性酵素系洗剤での浸漬後、用手洗浄)と機械洗浄群(両端留め
具留置のまま吸引・噴射機能付き真空超音波洗浄機 SU-JET で洗浄)に区分し洗浄する。洗浄後、各群 5 本ずつ①
、② Pyromol-Test®(ニチオン社)
、③ナイスチェック ®(クリーンケミカル社)応用法によ
ATP - HP®(3M 社)
る洗浄効果の判定を行う。
【成績】浸漬洗浄群①(RLU)では最少 42、最大 91、1 本平均 61、②(μg)は全て1以下、③(μg)は最少
28.2、最大 43.6、1 本平均 33.3 であった。機械洗浄群では、①(RLU)最少 32、最大 56、1 本平均 42、②(μg)
は全て1以下、③(μg)は最少 0、最大 2.6、1 本平均 1.0 であった。
【結論】1ml 血液汚染を有する管腔器材は、機械洗浄群が浸漬後用手洗浄群よりナイスチェック ® 法で 1 本平均 32
μ g、ATP - HP® 法で 19RLU 低い値を示した。Pyromol-Test® 法では両群 1μg 以下を示した。今回、用いた洗
浄効果判定法は、ATP - HP® 法、Protect® 法は簡易で臨床現場で活用しやすく、ATP - HP® 法は残存蛋白量を
明示できないものの汚染を数値化できるメリットがある。残存蛋白値が 1μg 以下か否かで反応する Protect® 法は、
今回のナイスチェック法値と差異が認められ、さらに今後サンプル数を増やし感度を検証していく必要がある。ナ
イスチェック法はより詳細な残存蛋白量を数値化できるメリットがあるが工程が複雑で日常的に判定できない。これ
らの結果から洗浄方法や効果の判定法を臨床に合わせ選定し感染面から汚染残存をより少なくしていくことが課題
である。
抄 録 集
ポスター演題
P-03
医療機器の洗浄
院内滅菌サービス部における洗浄工程の有効性監視のための、即時判定
可能な tAK(thermostable Adenylate Kinase)インジケーターの応用
Tapasvi Modi1), Neil McLeod1), Melanie Clifford1), Lucy Bock1)
Cameron Smith2), Robert Warburton3), Paul Meighan4), Peter Wells3)
Philip Nugent1), Mark Sutton1)
Health Protection Agency, GBR1), BIOtAK Ltd, GBR2)
Salisbury NHS Foundation Trust, Salisbury District Hospital, GBR3)
Hygiena International Ltd, GBR4)
Keywords
tAK, AWD, SSD
緒言: 病院内の機器洗浄工程を監視するために利用されるインジケーターは、あいまいで感度や特異度に欠ける可
能性がある。病院用自動ウォッシャーディスインフェクター(AWD)および自動内視鏡洗浄装置(AER)の洗浄と
汚染除去の有効性を監視するために、tAK 耐熱性アデニル酸キナーゼを用いて定量化可能なインジケーターを開発
した(Hesp JR et al; 2010)
。
目的 : 院内滅菌サービス部(SSD)において AWD と AER の洗浄有効性の監視を行うために tAK インジケーター
を利用できるかどうかを評価する。
材料 : tAK インジケータの検査と計測管理、市販のインジケーターおよび実際の使用状況下での AWD と AER。
方法 : 手術用具の AWD の洗浄有効性を監視する試験を、英国およびオランダの複数の施設で実施した。汚れの付
着した機器に合わせて、
各洗浄工程にインジケーターを設置した。比較のために STF ロードチェックインジケーター
も設置した。各インジケーターに示される残留 tAK 活性を携帯型ルミノメーターで測定した。各施設で、データを
5 洗浄サイクル分収集した。内視鏡の AER の洗浄有効性を監視する予備試験が現在進行中である。
結果 : インジケータの結果から、施設を洗浄性能によって 3 グループに分類できたが、比較製品では工程間で違い
は認められなかった。評価対象の AWD 工程は、検査酵素の除去に関して試験施設全体で約 3 および 5.7log10 の範
囲にあった。
結論 : tAK インジケータは、高速、頑強かつ高感度の読み出しを可能とし、SSD マネージャーが日常的な使用状況
下で AWD サイクルの有効性を評価する際の重要な手段となりうる。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-04
医療機器の洗浄
ロボット手術装置の汚染除去の歴史
Antonisen Gitte
Herlev Hospital, DNK
Keywords
Da Vinci robotic surgery, Quality level, Cleaning instrument
1. ポスターにはデンマークのロボット手術システムの要約を示し、Herlev Hospital におけるロボット手術の詳細を
説明する。
2. Herlev Hospital において、汚染除去の歴史は 2007 年にまでさかのぼる。すなわちロボット手術システムの始ま
りである。資源消費、作業環境および特に品質レベルも対象となるが、私の考えでは、ロボット手術の際に特に
扱いにくい装置は、EndoWrist Instruments である。また、今回のポスタープレゼンテーションでも EndoWrist
Instruments に焦点を当てたい。EndoWrist Instruments の取り扱いが特に難しく、汚染除去が必要となる理由に
ついて、いくつかの例を取り上げながら説明する。
Herlev Hospital がロボット手術装置を導入した当初、この種の新しい機器を使用することが CSSD の発足にまで
つながるとは誰も予想していなかった。メーカーである Intuitive 社は、Medisafe ソニックイリゲーター PCF シス
テムを自動洗浄システムとして導入することを勧めていたが、この購入のための予算を獲得できなかった。そこで、
手動式の洗浄法および消毒法を使って CSSD を発足させた。
当時、洗浄、消毒および滅菌に関するメーカーからの勧告は非常に限られていた。Intuitive 社から初めて受け取っ
たガイドラインには洗浄方法が明記されておらず、独自に洗浄方法を開発しなければならなかった。消毒方法も当
初は手動であったが、機械的方法に移行した。これらの消毒方法はのちに Intuitive 社に承認された。
洗浄、消毒および滅菌を最大限に実施するにあたり、EndoWrist Instruments の構造と内部構造を知る必要があっ
たが、これらの情報を得るのは大変難しく、独自に構造や汚染除去の品質レベルに関する調査を進めなければなら
なかった。
3. 2007 年から 2012 年までの、Herlev Hospital およびデンマークが歩んできた道のりはとても長かった。ポスター
には、
洗浄法、
消毒法および滅菌法がどのように発展してきたのかが示されている。現在のデンマークにおけるロボッ
ト手術装置の汚染除去の水準について最後に説明されているが、この分野についてのメーカーからの情報提供が依
然として限られているため、われわれが独自に開発したものである。
抄 録 集
ポスター演題
医療機器の洗浄
P-05
手術用具の表面変化 − 体系的アプローチ
Wai Yee Wendy FONG, Yuk Sim CHAN, Shuk Woon CHAN
Yee Kwan AU Operation Theatre / Theatre Sterile Supply Unit, Hong Kong Baptist Hospital, CHN
Keywords
Instruments, Surface Changes, Decontamination
緒言 :
日常業務を通じて、あるいは経時的に手術用具は、汚れ、変色や腐食などの表面変化の影響を受けやすい。表面
変化が生じた場合、体系的なアプローチを取って、原因究明、リスク評価ならびに再発防止のために適切な対策を
講じることが望ましい。さもなければ、表面変化によって衛生リスクが高まり、手術中の患者が感染症に罹患する
危険性が増すおそれがある。
目的 :
手術用具の品質ならびに在庫状況に関する透明性の向上のために在庫分析を実施する。さらに汚染除去工程を最
適化する。
研究方法 :
著者の勤務する私立病院は、13 の手術室を備え、年間約 25,000 件の手術を行っている。2012 年 4 月、海外から
の手術用具の専門家チームが、現地で在庫分析を実施した。
結果と結論 :
手術用トレイの総数は 259 であり、
7,731の用具について検査が行われた。
関連分野は以下の通りである。一般外科、
産科、神経外科、耳鼻咽喉科、整形外科、心臓外科、泌尿器科。
手術用具の状態について、41% が良く整備されていた。10% は機械的な表面修復を必要とし、4% には修理が必
要となる機能的欠陥が認められた。残りの在庫
(45%)
に関して、
以下の理由により交換が必要とされた。くぼみ
(67%)
、
品質不良(5%)
、表面腐食(17%)
、ひび(2%)
、クロム(2%)
、最小限の材料限界の判明(4%)および摩擦による
腐食(1%)
。
本プロジェクトによって、手術用具の適切な管理と手術部位感染との関係性について、関係者の理解が深まるこ
とだろう。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-06
医療機器の洗浄
医療器具洗浄における培養細胞を用いたすすぎの評価
言上智香 1), 浦岡慎司 1), 木曽太郎 2), 山内朝夫 2), 石井里子
株式会社イヌイメデイックス 開発研究所 1), 地方独立行政法人 大阪市立工業研究所
2)
Key word
医療用洗浄剤 , すすぎ , 細胞毒性
【目的】
医療用洗浄剤は用途によって様々な種類があるが、人体への安全性に関しては詳細な検討が行われてこなかっ
た。特に使用に際して、洗浄した医療器具のすすぎの効果については調べる必要がある。
そこで今回、各医療用洗浄剤の毒性を調べるとともに、すすぎの効果を評価するため、細胞毒性試験を行った。
また、すすぎ後に使用される潤滑防錆剤についても洗浄剤と同様に細胞毒性試験を行った。 【方法と結果】
1.洗浄剤の細胞毒性はチャイニーズハムスター線維芽細胞 V79 細胞を用いて調べた。各洗浄剤 4 種類を培養
液に添加し、6 日間培養後、形成するコロニー数を測定した。その結果、洗浄剤はいずれも添加濃度が高くな
るにつれてコロニー形成数が減少する傾向が見られた。洗浄剤無添加に対してコロニー数を 50%にする洗浄剤
濃度 (IC50) を調べたところ、洗浄剤の種類により細胞毒性が異なることが分かった。
2.洗浄剤に浸漬した試験片(ポリスチレン、またはステンレス SUS304)
を滅菌水で 0 回、1 回、2 回すすぎを行っ
た。各試験片上に V79 細胞を培養し、形成するコロニー数を計測した。その結果、すすぎ回数を増やすことに
よりコロニー数が増加し、試験片上の細胞毒性が低減することが分かった。
3.潤滑防錆剤も洗浄剤と同様の方法により、IC50 を求めた。また、ステンレスの試験片 (SUS304) を浸漬し、
すすぎを行わない試験片上のコロニー数を計測したところ、潤滑防錆剤無添加と同程度であり細胞毒性は極め
て小さいことが分かった。
【結論】
これらの試験から、培養細胞を用いることによって、洗浄剤の毒性とすすぎの効果を評価することができた。
また、潤滑防錆剤についても細胞毒性を基準に、安全性を確認することができた。
抄 録 集
ポスター演題
P-07
医療機器の洗浄
業者貸出手術器械のアデノシン三燐酸測定による洗浄評価
久田友治 1), 宮城孝徳 1), 具志堅興治 1), 岡山晴香 1), 知名智子 2)
琉球大学医学部附属病院 手術部 1), 琉球大学医学部附属病院 材料部 2),
Key word
業者貸出手術器械 , アデノシン三燐酸測定 , 洗浄評価
【目的】
手術医療の実践ガイドラインでは、業者貸出手術器械(Loan Instrument:LI と略)を使う手術に際して、当該
医療施設で使用前に洗浄を行うとされている。また、手術器械の洗浄結果のモニターとして、残存蛋白質やアデノ
シン三燐酸(ATP)の測定が記載されている。当施設で LI の使用前洗浄を実施するにあたり、LI を含む手術器械
の洗浄評価を ATP 測定により行うことを本研究の目的とした。
【方法】
対象の器械は 1)使用された前施設で洗浄した後に納品された LI、2)手術部のウォッシャーディスインフェク
ター(WD)で洗浄した鋼製小物(WD と略)
、3)用手洗浄した眼科の鋼製小物(OP と略)
。滅菌蒸留水か水道水
をしみこませたルシパック PenR(キッコーマン)の綿棒で、可及的に対象器械の表面全体をふき取り、ルミテスター
PD-20R(キッコーマン)で測定した。単位は RLU(Relative Light Unit) である。
検定には Kruskal-Wallis 検定を用いた。
【結果】
LI の ATP 量は 13 ~ 1172 RLU ( 平均 320.7)、WD の ATP 量は 6 ~ 296 RLU ( 平均 36.4)、OP の ATP 量は 11
~ 245 RLU ( 平均 46.3) であり、群間に有意差を認めた(P<0.01)
。
【考察】
LI の ATP 量が高い原因として、前施設での洗浄の質および運搬中の汚染が関連すると考えられた。しかし、当
施設で使用前に洗浄すれば問題はないと考える。また、対象器械の中で LI の表面積が広いことも原因の一つと考
えられ、ATP 測定による評価法を検討する必要がある。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-08
医療機器の洗浄
歯科医療器具の洗浄効果に基づく洗浄方法について 第一報
米倉里枝 , 一之瀬くに子 , 菅野真理子 , 大山有希子 , 柏井伸子
医療法人社団成扶会馬見塚デンタルクリニック
Key word
歯科 , 洗浄 , ミラー
【目的】
歯科臨床現場では治療方法の多様化に伴い器具の取り扱いが煩雑化しており , 各々確実な器材処理が重要であ
る . そこで , 汎用する歯科用ミラーの最良の洗浄方法を模索した .
【実験方法】
歯科用ミラー(ヒューフレディ社製)50 本使用後 30 分間(以下 A 群とする)および 60 分間(以下 B 群とす
る)放置後、ルミテスターPD -20 とルシパック Pen(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)で洗浄前後の
ATP,AMP ふき取り検査をした .
1)器械洗浄
ウォッシャーディスインフェクター(以下 WD)
(ゲティンゲ・ディスインフェクション社製)にて , 洗浄(6 分)
すすぎ(5 分)熱水消毒(1 分)乾燥(20 分)のプログラム , Dr2000,WD-E(バーニシャイン社製)で洗浄した .
2)超音波洗浄
ダイレクション・ソニックストレス超音波洗浄器 EXV-03(ビィ・ソニック社製)および濃度 0.01%の S クリーン
EM(クリーンケミカル社製)で 10 分間洗浄した .
3)浸漬洗浄
濃度 0.5%の上記洗剤で 15 分間浸漬後 , 流水ですすいだ .
【結果】
B 群に比べ WD, 超音波洗浄器で洗浄した A 群は ATP,AMP の残量が低かった .WD(平均値 25.10 標準偏差
18.12)超音波洗浄器(平均値 20.66 標準偏差 12.54)反対に浸漬洗浄した B 群は 30 分 ,60 分放置したもの共に
ATP,AMP の残量が高かった .
30 分放置(平均 137.22 標準偏差 262.60)60 分放置(平均値 114.68 標準偏差 223.95)
【考察】
実験より以下の点が考えられる .
WD では水流による物理的洗浄効果が得られ , 超音波洗浄器はキャビテーションによる物理的洗浄効果を得られ
るため , WD と超音波洗浄器でほぼ同様の洗浄結果であり結果にバラつきが少なかったと思われる .
【結論】
日常業務においては浸漬後ブラッシングを行うが作業者によりバラつきが生じる可能性があり , 今回は浸漬のみを
行った . 用手洗浄より超音波洗浄および WD による器械洗浄の方が有利な結果であったが、放置時間には両者間に
差が見られず , この点については今後も検討が必要である .
抄 録 集
ポスター演題
P-09
医療機器の洗浄
樹脂でコーティングした RFID タグ洗浄後の残留たんぱく試験
吉川武樹 1), 木村映善 1), 小林慎治 2), 小松弘英 3), 石原 謙 1)
愛媛大学大学院医学系研究科医療情報学分野 1), 愛媛大学医学部附属病院第一内科 2)
KRD コーポレーション株式会社 3)
Key word
RFID タグ , 手術器械 , ATP 法
【Introduction】
近年医療事故、中でも手術時の事故が社会問題となっている。手術時の事故にも複数の種類があるが、手術器械
やガーゼの体内遺残事故は特に問題となっている。その防止のため、手術時に用いるメスやハサミ等の鋼製小物の
個別管理が必要であるが、従来のバーコードや RFID タグは洗浄滅菌での汚損破損のため用いることができなかっ
た。近年、セラミックコーティングすることで耐熱性・耐薬品性・耐衝撃性を獲得し、洗浄滅菌に耐えうる Radio
Frequency Identification(RFID) タグが開発された。その際、開発されたタグはかぎ爪用の部品で固定され、その部
品を溶接することで鋼製小物に固定されていた。しかし、その方法では隙間ができてしまい、汚染がおきるリスク
が指摘されていた。本研究では、その隙間を樹脂で埋めることで、タグ部分への血液等の侵入の防止を目指した。
【Method】
手術で用いる鋼製小物を、実験用ヒツジ血液で汚染した。その後、ウォッシャーディスインフェクターにより洗
浄を行い、ATP 活性の蛍光度を計測する定量的手法 (ATP 法 ) により残存たんぱくの評価を行った。
【Result and discussion】
ATP 法による評価を行い、
タグ周囲とボックスロック部で結果の比較を行った結果、
有意な差が見られた。よって、
RFID タグを取り付けたことは、コンタミネーションが発生する第一要因とはなり難いことが示唆された。
樹脂が加わることで、表面のすきまが減り、汚染の侵入を防ぎ、より効率よく洗浄が行えると考えられる。また、樹
脂により衝撃の吸収が行われ、耐衝撃性があがり、より安全に使用することができると考えれられる。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-10
医療機器の洗浄
洗浄ガイドラインに基づいた RFID タグ付き手術器械の洗浄評価
山下和彦 1), 楠田佳緒 2), 徳田洋子 3), 田中聖人 3), 清水応健 4), 神田良平 5)
田中慎一 6), 本田 宏 7), 小美野 勝 7), 岩上優美 1), 太田裕治 2), 大久保 憲 1)
東京医療保健大学 1), お茶の水大学 2), 京都第二赤十字病院 3)
株式会社イヌイメデイックス 4), 株式会社乾商事 5), 聖マリアンナ医科大学 6)
済生会栗橋病院 7)
Keywords
RFID tag, surgical instrument, cleaning evaluation
医療機関における院内感染の対策が求められ、特に手術部位感染(SSI)に関して注目が集められている。WHO
の報告によれば、
78 万件 / 年の SSI が発生し、
危険因子として手術器械の不完全な洗浄・滅菌が挙げられる。そこで、
日本やドイツの洗浄評価ガイドラインでは、洗浄後に手術器械の残留タンパク質の許容量は 200 μ g/ 本と設定され
ており、推奨量は、100 μ g/ 本とされている。
本研究は、手術器械の個品識別とトレーサビリティを実現するために、RFID タグを開発し、手術器械に取り付
け、臨床評価試験を実施してきた。しかし、RFID タグの取り付け部に血液等が付着し、十分な洗浄が行われないと、
新たな SSI の発生源となる可能性を否定できない。そこで本報告では、上記の洗浄評価ガイドラインに基づき洗浄
評価試験を行った。強固に血液が固着した手術器械を作成し、ウォッシャーディスインフェクタ(WD)を使用し、
洗浄評価試験を行った。
その結果、RFID タグが付いたすべての手術器械について、残留タンパク質量が 100 μ g の推奨許容量未満であっ
た。WD を正しく使用することで、十分な洗浄効果が期待できることが明らかになった。
以上より、RFID タグ付き手術器械を用いることで、手術器械の個品識別とトレーサビリティが実現でき、なおか
つ 2 次感染の危険性は従来使用される手術器械と同等であることが示された。
抄 録 集
ポスター演題
P-11
医療機器の洗浄
脱気水を使用した新しい超音波洗浄付ウォッシャーディスインフェクター
の有効性
島崎 豊
愛知県厚生連 海南病院
Key word
ウォッシャーディスインフェクター , 脱気水 , 超音波洗浄
【はじめに】
我が国では、単槽型の超音波洗浄付ウォッシャーディスインフェクター(以下、WD)を使用する施設が増加している。
今回、超音波洗浄に市水と脱気水を使用した WD の洗浄評価を行い脱気水の有効性について検証した。
【方法】
1.洗浄機と洗浄剤
H・K・プランニング社製 WD(1200W・40khz の超音波発信機を装備)の超音波洗浄に市水を使用する HKN-S(以
下、A)と脱気水生成装置を接続し超音波洗浄に脱気水を使用する HKN-V(以下、B)について、純正のアルカリ洗剤
を使用して評価した。
2.デバイスと洗浄評価方法
1)人血を用いた汚染デバイス 5 本
清浄な止血鉗子のボックスロック部へ人血 1mL を滴下し 5 回開閉を行い室温にて 20 時間放置した汚染デバイスを洗
浄して、ナイスチェック法にて残存タンパク質量を測定し比較した。
2)洗浄評価判定ガイドラインに準拠したチャレンジテストデバイス 5 本
洗浄後の器材を1)と同様に測定した。
3)洗浄評価インジケータ 7 種類
各種のインジケータをバスケットへ設置し洗浄後のインジケータを目視判定した。
【結果】
1)残留タンパク質量(平均μ g)
A:上段(シャワーのみ)22.05、下段(シャワー+市水の超音波洗浄)23.08
B:上段(シャワーのみ)21.54、下段(シャワー+脱気水の超音波洗浄)11.28
2)残留タンパク質量(平均μ g)
A:上段(シャワーのみ)20.7、下段(シャワー+市水の超音波洗浄)2.4
B:上段(シャワーのみ)11.3、下段(シャワー+脱気水の超音波洗浄)1.5
3)
市水では TOSI-GOLDに残存を認めたが、
脱気水による超音波洗浄ではすべてのインジケータに残存を認めなかった。
【結語】
洗浄後のデバイスの残留タンパク質量は 100 μ g を下回る良好な結果であったが、脱気水による超音波洗浄が最も良
好な結果となった。
WD における超音波洗浄は、脱気水を使用した方法が洗浄効果を向上させるひとつの手段であることが本検証から明
らかとなった。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-12
医療機器の洗浄
男性用尿器の洗浄方法の検討~ ATP 法による洗浄評価~
小澤賀子 , 高坂久美子
名古屋第一赤十字病院
Key word
フラッシャーディスインフェクター,尿器,ATP 法
【はじめに】
近年、
薬剤耐性菌による感染症が大きな問題となっている。
当院においても薬剤耐性菌分離頻度は増加傾向にある。
薬剤耐性菌は医療従事者や医療器具を介して院内感染を起こす可能性がある。特に、男性尿器は尿道口が直接接触
するため交差感染のリスクが高い医療器具である。当院は尿器の洗浄をフラッシャーディスインフェクター(FD)
と一部病棟では用手洗浄を行っている。今回、交差感染のリスクが高い尿器が、患者間で適切に洗浄されているの
かアデノシン三リン酸(ATP)法を用いて洗浄評価を行い、適切な洗浄方法を検討したので報告する。
【方法】
調査対象は用手洗浄後の男性用尿器 10 個 、FD(従来法)洗浄後の男性用尿器 20 個 、FD(専用ラック使用)
洗浄後の男性用尿器 17 個 とした。各尿器の受尿口より 10cm 間の尿器内腔を綿棒で拭き取り、ATP 測定器(キッ
コーマン社製ルミテスター PD-10N )を用いて清浄度の評価をした。
【結果】
洗浄後尿器内腔の ATP 中央値は用手洗浄 123.5RLU、FD(従来法)洗浄 2991.5RLU、FD( 専用ラック使用)洗
1352RLU であった。FD 洗浄は従来法と専用ラック使用法では有意差は得られなかった(Mann-Whitney 検定p=
0.259)
が減少傾向を示した。
【考察・結語】
用手洗浄はブラシによる摩擦で物理的に汚染を除去できるため、効果的に尿器の洗浄ができた。しかし、洗浄工
程が作業者間で異なる可能性があるため、常に均一な洗浄が期待できる機械(FD)洗浄が推奨されている。FD は
洗浄剤の化学的作用と、シャワーリング効果の物理的作用で汚染を除去している。FD 洗浄後尿器の清浄度が低い
原因は、尿器の不適切な積載方法であった。洗浄ノズルと洗浄対象物との位置関係がずれてしまうと洗浄剤やシャ
ワーリング効果が得られず洗浄エラーにつながる。FD で尿器を洗浄する場合は、尿器専用ラックの使用が効果的
である。
抄 録 集
ポスター演題
P-13
医療機器の洗浄
標準化された汚染モデルによる多施設間での洗浄性評価結果について
藤田 敏 , 原田陽滋 , 栗木恭治
クリーンケミカル株式会社
Key word
標準汚染モデル , 洗浄評価 , 多施設間試験
【背景と目的】
2007 年に日本医療機器学会の「洗浄評価判定の指針を調査・作成するための検討 WG」から、洗浄後の残留タ
ンパク質量の許容値および限度値が示され、また 2010 年 12 月には「医療現場における滅菌保証のガイドライン
2010」が発刊され、その中には疑似汚染物を用いた洗浄効果試験について具体的な例が示されたことから、ウォッ
シャーディスインフェクタなどの洗浄装置の洗浄効果について関心が高まりつつある。
我々は 2008 年から羊血液を止血鉗子に塗布した汚染モデルを使用し、2012 年 7 月までに 89 施設で洗浄試験を
実施してきた。今回その得られた 300 工程以上の試験結果についてまとめたので報告する。
【試験方法】
汚染モデルは、決められた一頭の羊から採血した血液を止血鉗子のボックスロック部に 50 μ l 塗布し、25℃・
75%RH 環境下で 24 時間置き、固定具にセットしたものを真空包装し、試験日に合わせて各施設へ送付した。施設
では、汚染モデルを袋から取り出し、そのまま洗浄装置で洗浄を行った。洗浄乾燥後、汚染モデルを返却用ビニー
ル袋に入れ、洗浄工程や洗浄装置について記載した記録用紙とともに回収した。回収した器材から残留タンパク質
を抽出し、オルトフタルアルデヒド法を用いて定量を行った。
【結果】
試験を実施した施設は病院のほかに滅菌代行業者および装置メーカーを含み、合計 89 施設で試験を行った。実
施した試験の総工程数は 354 工程であり、その内単槽型 WD が 316 工程、多槽型 WD が 38 工程であった。使用し
ていた洗浄剤の種類は全工程中の約 7 割がアルカリ洗浄剤を使用しており、
次いで中性酵素洗浄剤が多いことが判っ
た。また、全工程の残留タンパク質量の平均値は 240 μ g/ 本であり、中央値は 193 μ g/ 本であった。残留タンパ
ク質量が 200 μ g/ 本以下の工程は全体の 52% を占めていることが判った。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-14
医療機器の洗浄
予備洗浄スプレー噴霧までの時間の違いによる洗浄効果の検証
千葉志保 , 薄衣敬子 , 齋藤淳智
岩手県立江刺病院 手術室
Key word
予備洗浄スプレー , ATP, さび
【背景及び目的】
A 病院では、1 次洗浄を廃止し、使用後の鋼製小物はコンテナに収容し平日は 1 日 1 回、週末は 3 日置いて回収
している。
しかしこの処理方法では、汚れが乾燥し固着することが予測された。そこで、汚れの乾燥防止のため、各部署に
予備洗浄スプレーを配置し、使用後の鋼製小物に噴霧するように依頼した。その後、予備洗浄スプレーを噴霧する
までの時間について調査したところ、平均で 30 分、最長で 120 分であった。その結果をふまえ、予備洗浄スプレー
を噴霧するまでの時間の違いによる洗浄効果を検証したので報告する。
【研究方法】
鉗子に模擬血液 2ml を前面に塗布し、開閉動作を5回実施する。それらをコントロール群・ABC 群4グループに
分け、それぞれに処理直後・30 分後・60 分後・120 分後に予備洗浄スプレーを噴霧する。これらをⅠ・Ⅱのコンテ
ナに分け、Ⅰは 24 時間後Ⅱは 72 時間後に WD にて洗浄した。洗浄後、鉗子のラチェット部・ボックスロック部を
ATP ふき取り検査を実施し 100URL 以下であれば洗浄良好とした。
【結果】
実験群A・Bの洗浄後の ATP 拭き取り検査の値は、24 時間及び 72 時間放置後の洗浄において、すべて推奨基
準値の 100RLU 以下であった。また、72 時間放置した実験群 B 及び C のボックスロック部から錆が認められた。
【考察】
120 分経過後でも予備洗浄スプレーを使用すれば鋼製小物の清浄度は推奨基準値内であり、噴霧までの時間の違
いによる洗浄効果に大きく影響しないといえる。一方で 60 分・120 分後に予備洗浄スプレーした場合は、コンテナ
で密閉された状態であっても、72 時間経過すると錆が発生した。これは洗浄効果のみならず、鋼製小物の劣化を予
防するためにも、予備洗浄スプレーを速やかに噴霧することが重要であることを示しており、どのようにしたら速や
かに噴霧できるかを各部署と連携し、実施可能な体制を整えると共に、滅菌物を取扱う職員に対しての教育方法に
ついても検討する必要がある。
抄 録 集
ポスター演題
医療機器の滅菌
P-15
オートクレーブに使用される化学的インジケーターの読取とその解釈
Roniel Garcia
ESTERILETO, BRA
Keywords
CHEMICAL INDICATORS, AUTOCLAVADOS, monitoring
緒言
外科手術が発展し、院内感染の懸念が高まるにつれて、医療用材料および院内歯科用材料の滅菌が必要な工程と
なってきたと同時に正確性も求められるようになり、新しいタイプのオートクレーブも利用されるようになってきた。
滅菌工程の効率および安全性向上のためにはモニタリングが必要であり、そのために開発されたのが化学的インジ
ケーターである。管理スタッフは限られているため、滅菌業務にあたる従業員は、該当する化学的インジケーター
を読み取り、解釈することが必要である。
目的
蒸気オートクレーブによる滅菌工程の監視に使用される化学的インジケーターの読み取りと解釈に関して、手術
室で作業する准看護師および技術者の知識を評価する。
材料と方法
Grande Vitoria の大都市圏にある 2 病院の外科センターに勤務する従業員 64 名と面談を行った。以下のデータは、
本アンケートに利用することを目的として収集されたものである。
結果
従業員の経験年数および教育レベルは、分析や比較の、信頼できる基準にはならなかった。しかし、特定の訓練
を受けた従業員は、化学的インジケーターの読取や解釈についてよく理解していることが示された。多くの科学的
インジケーターが実用に適さないにもかかわらず利用されており、実用に適さない科学的インジケーターの誤使用
の割合について課題が残る。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
医療機器の滅菌
P-16
血行動態検査用カテーテルの再生処理方法の検証のためのプロトコール
Roniel Garcia
ESTERILETO, BRA
Keywords
VALIDATION, REPROCESSING, hemodynamic catheter
緒言
ANVISA RDC から法令 156、2006、2605 および RE 2606 に定められた規格を満たすことを目的とし、当該工
程の有効性を確保するために血行動態検査用カテーテルの再生処理に関するプロトコールとして、RE 2006 を実
施した。
目的
洗浄後、エチレンオキサイド滅菌される血行動態検査用カテーテルの洗浄と滅菌に関するすべての工程を検証
する。
材料と方法
4 回再生使用した約 100 のサンプルを検査した。試験内容は以下の通り。微生物学的検査、生化学的検査(糖、
炭水化物、タンパクおよびヘモグロビン)およびクロマトグラフィー(ETO)
。
結果および結論
臨床検査結果に、血行動態検査用カテーテルの 4 回目の再利用に禁忌を示すような変化は認められなかった。
部門の看護師と連携して担当心臓病専門医が評価し、カテーテルの物理的な完全性や利用可能性が許す限り、
カテーテルを最大 4 回まで再生処理すべきであると判断される。
トレーサビリティーの全過程を正確に文書化しなければならない。
抄 録 集
ポスター演題
P-17
医療機器の滅菌
医療機器の材質による細胞毒性に対する各種滅菌法の影響
Rafael Querioz Souza, Kazuko Uchikawa Graziano
Tamiko Ichikawa Ikeda, Claudia Regina Goncalves
Aurea Silveira Cruz, Camila Quartim Bruna
Universidade de São Paulo (USP), BRA
Keywords
Nursing. Sterilization. Biocompatible Materials
医療施設の日常業務において、使い捨て機器の再滅菌による細胞毒性はそれほど重要な問題ではない。本プレゼ
ンテーションでは、文献を統合的に精査し、さまざまな方法(蒸気、乾熱、エチレンオキサイド、ガンマ線、プラズマ、
電子ビーム、Noxilizer™、グルタルアルデヒド、低温蒸気およびホルムアルデヒド)を用いて滅菌後に合成装置よ
り生じる in vitro の細胞毒性の検討を行った 7 つの実験的研究について分析を行った。その結果、滅菌後の細胞毒
性の変化には統計学的有意性が認められないが、滅菌方法や装置によって、細胞毒性が強くなることが判明した。
使い捨て機器を分析した文献は 1 つしかなかったが、現実的には、引用されているすべての滅菌方法は原料の細胞
毒性に影響を及ぼす可能性があり、このことがより安全で適切な滅菌方法を判断する基準の一つになると考えられ
る。原料の温度感度のみをもって滅菌方法を選択することは、リスクを伴う手順となるおそれがある。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
医療機器の滅菌
P-18
EN867-5 準拠蒸気浸透性試験結果
鴻巣浩司
株式会社名優
Keywords
1)EN867-5, 2)hollow devices, 3)steam penetration test
MIS(低侵襲手術)症例数の増加、および内腔や空洞のある複雑な器材の滅菌が困難であることが認識されるに
つれて、より多くの病院で EN867-5 に準拠したホロー型蒸気浸透性試験器具が使用されるようになってきた。これ
までに医療施設を対象とした試験を行ってきたが、試験結果がさまざまな条件に左右され、条件と結果の関連は必
ずしも一義的なものではないことが判明している。
主に使用しているのはホロー型試験器具 10 台である。チューブの末端に化学的インジケータ(以下、CI)カプセ
ルが取り付けられており、どのチューブも蒸気が浸透しにくい構造になっている。被滅菌物と一緒にこれらのチュー
ブを滅菌し、クラス 5 の CI と生物学的インジケータを参考試験に使用した。
結果は概ね合格であったが、不合格であったオートクレーブであっても、再設定およびメンテナンス後に改善
が認められたケースがある。その他のインジケータに関しては、ホロー型試験器具と同じ結果が得られない場合
があった。
これらの試験結果より、全体としてホロー型試験セットはさまざまな滅菌要因の影響を受けやすいことが示され
た。また、同じ設定条件下であっても常に同じ試験結果が得られるとは限らず、滅菌サイクルに応じて微妙な差異
が認められた。これらの違いは中央材料室の職員でも時として見落としてしまい、
他の試験器具が検知しないような、
滅菌条件の相違よって起きることが考えられる。
抄 録 集
ポスター演題
医療機器の滅菌
P-19
高圧蒸気滅菌における空気除去・蒸気浸透の検知力検証
坂田真裕
株式会社名優
Key word
ホロー型 PCD, 空気除去・蒸気浸透 , 管腔器材
【目的】
低侵襲手術の増加とともに増える管腔(ホロー)器材、
その内部レベルで滅菌確認をする滅菌インジケータのホロー
型 PCD と滅菌包装内インジケータとの検知力比較により、高圧蒸気滅菌における空気除去・蒸気浸透状態の検知
に関するホロー型 PCD の有効性を検証する。
【方法】
滅菌器の空気除去・蒸気浸透力を変化させ人為的な滅菌不良状態を再現、その際のホロー型 PCD の結果と滅菌
包装内に置かれた滅菌インジケータの結果について比較した。
【成績】
空気除去・蒸気浸透工程を通常設定のパルス 3 回のところ、鉗子などの器材を想定したパルス 2 回や、通常では
行わないパルス 1 回に変更した場合、135℃ 8 分間の滅菌でも 121℃ 20 分間の滅菌でも、どちらもホロー型 PCD は
不合格を示したが、滅菌バッグ内の CI は 1 重包装でも 2 重包装でも合格を示した。なお、パルスの種類として大
気圧以下のみのパルスの場合でも、大気圧以下と大気圧以上とを組み合わせたパルスの場合でも、同様の結果となっ
た。また、パルスの回数は固定したまま、空気除去・蒸気浸透工程における真空到達度を変化させた場合、真空到
達度を弱めていくとホロー型 PCD が先に不合格を示した。
【結論】
空気除去・蒸気浸透力を弱めていくと、その変化をホロー型 PCD が先に検知することを確認した。そのことは、
ホロー器材の内部が空気除去・蒸気浸透力に不具合が生じた場合に影響を受けやすいことを示すとともに、そのよ
うな状態になった場合の滅菌不良の可能性を発見するためにホロー型 PCD が有用であることを示す結果となった。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
医療機器の滅菌
P-20
高圧蒸気滅菌業務の効率化を目指して
山根貫志
株式会社名優
Keywords
Steam Sterilization, Steam Penetration, PCD
【目的】
蒸気滅菌を実現するには、
高温(121℃、
15 分間または 134℃、
4 分間)で製品を飽和蒸気に当てなければならない。
国内で使用されている滅菌器の性能にばらつきがある中で、業務を合理化する方法を示すことが本試験の目的で
ある。
【方法】
滅菌の実態調査を行った。長さや直径の異なる 10 本のチューブからなる検査キットを使って、52 の病院で 98
台の滅菌器を対象として蒸気浸透性試験を実施した。良好な蒸気滅菌を示した滅菌器について、PCD の使用を推
奨したが、性能は EN867-5 の規定に従った。
【結果】
調査の結果、最長設定は 134℃、25 分間、最短設定は 134℃、3 分間であった。良好な蒸気浸透性を示した滅菌
器の割合は 91.5% であった。PCD は、設定条件を問わず、蒸気浸透性が適切であるかどうかを常に示していた。
【結論】
EN867-5 に規定された PCD は、蒸気浸透性が最適であるかどうかを分析することができる。ほとんどの滅菌器
の運転時間は、PCD を用いて蒸気浸透性を確保することで 134℃のときに 4 分間にまで短縮可能であることが示
唆された。
抄 録 集
ポスター演題
P-21
医療機器の滅菌
蒸気浸透性試験の必要性
森 正史
公立大学法人福島県立医科大学
Key word
蒸気浸透性 , PCD, 滅菌保証
今日の医療に使用される各々の医療器材の再処理の滅菌には高圧蒸気滅菌法が第一選択として選択され、ほとん
どの医療施設に保有されている状況である。しかしながら、その滅菌装置は施設毎に確実に管理され日常の滅菌保
証を達成できているかを考えると疑問が伺える。今回は施設毎の蒸気滅菌の蒸気浸透性結果と最近国内発売された
高圧蒸気とホルムアルデヒドのハイブリッド滅菌器の浸透性試験も実施したので併せて報告する。蒸気浸透性評価
を行うにあたり、gke 製の HelixPCD(PTFE 製、直径 2mm ~ 5mm、長さ 1500mm ~ 4500mm 管でデッドエンド
構造、終端部にインジケーターを設置)を使用した。評価は PCD を 1. ステンレス製バスケットに並べた状態での
評価、2. ラッピング評価、3. パッキング評価、4. 滅菌コンテナ評価を4種類の高圧蒸気滅菌器で通常使用条件(A
装置 134 度 8 分、B装置 135 度 20 分、C装置 134 度 4 分、D装置 134 度 4 分、3 回の真空引き条件)で実施した。
結果として、A、B、C、D装置共に 1、2 の評価では問題なし、3 の評価では若干の差が装置間と PCD 間で現れた。
4 の評価では著しく装置間、PCD 間での差が表れた。今回は通常の滅菌作業を想定した試験である。滅菌する管腔
器材はパッキングする方法、セット化によりラッピングや滅菌コンテナを使用して運用している。確実な滅菌には確
実な洗浄が要求されているが、それ以上に滅菌浸透性が悪ければ前者の行為は無駄となる。
使用している滅菌装置の性能を知る為にも今回のような蒸気浸透性試験が必要と考える。その結果を基準にして、
施設毎で条件を設定して、器材に適した確実な滅菌を達成するのが我々に課せられた使命ではないだろうか…
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-22
医療機器の滅菌
滅菌物積載の有無による AAMI 基準と EN 基準の PCD 結果への
影響について
仲田勝樹 1), 長友知則 2)
愛知県厚生農業協同組合連合会 江南厚生病院 中央手術課 1)
愛知県厚生農業協同組合連合会 江南厚生病院 中央滅菌課 2)
Key word
PCD, 高圧蒸気滅菌器 , AAMI
【はじめに】
滅菌の質を保証するためには、無菌性保証水準を達成したことを証明しなければならない。そのため、物理的お
よび微生物学的な方法を用い、日常的なモニタリングが必要である。近年は、EN 基準のホロータイプ PCD を毎日、
または毎回の滅菌時に使用し、滅菌を確認する施設が増えてきている。今回、この EN 基準のホロータイプ PCD と
AAMI 基準の PCD について、積載の有無による影響を検証した。その結果を報告する。
【検証目的と方法】
AAMI 基準と EN 基準の PCD を用い、高圧蒸気滅菌器の積載の有無による滅菌への影響を検証した。
【結果および考察】
積載有りについて、135℃、パルス 2 回では、BI は 1 分で陰性、AAMI 基準と EN 基準の PCD の CI はともに 4
分で完全変色した。135℃、パルス 3 回では、BI は 1 分で陰性、AAMI 基準と EN 基準の PCD の CI はともに 3 分
で完全変色した。積載なしについて、135℃、パルス 2 回では、BI は 2 分で陰性、AAMI 基準の PCD の CI は 5 分
で完全変色、EN 基準の PCD の CI は全て変色不良であった。135℃、パルス 3 回では、BI は 1 分で陰性、AAMI
基準と EN 基準の PCD の CI はともに 5 分で完全変色した。積載の有無により、滅菌性の異なることが分かった。
積載無しの状態と比較し、積載有りの状態の方がチャンバー内の残存空気量が少なくなり、結果として空気除去が
容易な条件になったのかもしれない。AAMI 基準と EN 基準の PCD では、積載無しのパルス 2 回でのみ結果に違
いがあった。これは、EN 基準の PCD が AAMI 基準の PCD と比較し、空気除去や蒸気の浸透性に対してより高い
負荷を有していることを示していると考えられる。
【おわりに】
今回、PCD の検証を様々な条件で実施し、EN 基準の PCD は AAMI 基準の PCD よりも空気除去や蒸気の浸透
性に対し負荷が高いことが分かった。滅菌器への積載量との関係については、今後さらに検証をする必要性がある。
抄 録 集
ポスター演題
P-23
低温滅菌
根本原因解析により、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌工程における
不完全な滅菌イベントを予防する
Ying Ching Huang
Central Service Department of Nursing, the Far Eastern Memorial Hospital, TWN
Keywords
Root Cause Analysis, Incomplete sterilized, Hydrogen peroxide plasma sterilization
緒言
中央材料部は、汚染除去、検査、滅菌および管理など高度に中央集権化された部門である。無防備で、不完全な
滅菌は、感染率を高め、患者の安全を脅かす。
目的
本プロジェクトの目的は、熱と水分を効率的に供給して過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌工程(HPPSP)を成功
に導くことである。
方法
2009 年 9 月に私立の医療センターの中央材料部で発生した HPPSP に関する不完全な滅菌イベントを解決するた
めの根本原因解析(RCA)を行った。手順は以下の通り。全従業員と面談を行い、スケジュール表を作成し、ロジッ
クツリー(why tree)を用いて分析を行った。原因として挙げられたのは、標準作業手順書の不備、母国語で書か
れた HPPSP の手順書が無いこと、不完全な滅菌に対する対応方法の基準がないことであった。最も実行可能で、
利用しやすく、効果的な戦略についてマトリックス分析し、バリア分析で信頼性を向上させた。標準作業手順書お
よび母語による手順書の作成、注意喚起のための残存量の記録、該当する教育訓練の実施を行った。
結果
1) 2010 年 1 月から 2011 年 12 月までに不完全な滅菌イベントは発生しなかった。
2) 中央材料部と手術室のスタッフ全員が、HPPSP 用のインジケーターについて正確に説明することできた。
3) 6 時間の HPPSP 訓練コースの出席率は 84% であった。
結論
感染予防管理は、患者の安全性を確保する上で重要である。HPPSP 標準作業手順書の作成、使いやすいインター
フェースの設定、教育訓練によって、不完全な滅菌イベントの発生率を低下することができた。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-24
低温滅菌
プリオン病対策導入に向けた過酸化水素低温プラズマ滅菌器稼働の
検討
長瀬 仁 1), 小林朝実 2)
小牧市民病院 感染対策室 1), 小牧市民病院 手術室 2)
Key word
過酸化水素低温プラズマ滅菌 , プリオン病対策 , 滅菌業務
【諸言】
2008 年に厚生労働省よりプリオン病感染予防ガイドライン要約が策定されているが、当院では未だ対策の実践に
は至っていない。ヒト乾燥硬膜の移植に関する問題や致死率 100%という点でもいち早く対策を講じる必要がある。
低温滅菌におけるプリオン病(CJD)対策実施に向け、実際の過酸化水素低温プラズマ滅菌器の稼働状況より検討
を行った。
【対象】
1)器機:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 過酸化水素低温プラズマ滅菌システム ステラッド 100S(100S)
2)期間:2011 年 1 月~ 12 月までの 12 カ月間
【結果・考察】
稼働実績は稼働回数 1,816 回(ショートサイクル 1,679 回、ロングサイクル 137 回)で稼働時間 90,441 分であった。
100S で CJD 対策(ロングサイクル 2 回)を実施すると稼働回数は 2,078 回となり稼働時間 114,817 分となる。稼働
時間は 24,376 分延長するためスタッフへの負担は増大し、その分の人件費もかかる。また、CJD リスク手術に使用
した全ての器材に CJD 対策を施すとすると、現場の負担は計り知れない。また、様々な滅菌物から CJD 対策の必
要な器材を分類し滅菌するにも人的ミスを招きかねない上、すべての器材に CJD 対策を施すにも 100S ではかなり
の時間を要してしまう為、器材の追加購入も必要となる。そこで、2011 年の稼働実績をステラッド 100NX(100NX)
のサイクルに置き換えてみた。稼働回数 1,816 回のうちスタンダードサイクル 1,065 回、
エクスプレスサイクル 220 回、
DUO サイクル 531 回に置き換えることができ、稼働時間 87,383 分となる。稼働時間は 27,434 分の削減ができ、ま
た器材の振り分け等も不要になる為、スタッフへの負担軽減と人件費の削減に繋がる。
【結語】
現状で CJD 対策を施すと時間的・経済的な負担がかかるが、100NX を導入した場合、経済的なメリットとして、
当院試算で年間 3,000 万円のコスト削減が可能と見込める。
抄 録 集
ポスター演題
P-25
低温滅菌
過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌一本化による安全性の確保と
コスト削減
小美野 勝
埼玉県済生会栗橋病院
Key word
過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌,コスト削減,業務改善
【諸言】
当院では、院内の滅菌業務を過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌(以下,プラズマ滅菌)に一本化し、安全性の確
保とコスト削減を実現した。これまでの経緯を報告する。
【施設概要】
病床数 329 床、18 科ある診療科のうち外科・脳外科・泌尿器科・耳鼻科・眼科が手術を実施している。年間手
術件数は約 1,400 件、
中央材料室(以下,
中材)は手術室スタッフ 23 名が兼任で中材業務を行っている。中材設備は、
2006 年 6 月時点で高圧蒸気滅菌器(以下,AC)2 台、酸化エチレンガス滅菌器(以下,EOG)1 台、ウォッシャー
ステリライザー 1 台、ウォッシャーディスインフェクター 1 台だった。
【導入の経緯】
AC2 台と EOG は使用年数が 10 年を超えており更新が必要な状況であった。安全で確実な業務を行うための中
材の将来像として「院内滅菌物のプラズマ滅菌一本化」と「手術器材セットの外注滅菌(以下,院外委託)
」を打
ち出し、滅菌業務の見直しに着手した。
【導入の実際】
院内の滅菌物をプラズマ滅菌に一本化するにあたり、以下の 3 点について業務内容を変更した。1. 院内滅菌物の
プラズマ滅菌対応化。素材の変更が可能なものはプラズマ滅菌対応の製品へ変更し、過酸化水素を吸着する素材の
ものは全て滅菌済み製品に変更した。2. 院内滅菌物の削減。① SUDs の積極的な採用とリユースの原則禁止②スポ
ルディングの分類に沿った器材処理への変更③滅菌期限の延長を行った。3. 院外委託業務の確立。
【導入の成果】
業務内容の変更により様々なメリットがあった。①コスト削減(滅菌済み製品導入、スポルディングの分類によ
る処理方法の変更)②業務量の削減③安全で確実な滅菌物の提供(SUDs のリユース廃止、
ホルマリン消毒器の廃止)
④ CJD 二次感染予防ガイドラインの遵守である。
【まとめ】
今回、院内滅菌業務を見直してプラズマ滅菌に一本化したことで、業務効率だけでなく安全面、コスト面におい
ても効果的な業務改善を行うことができた。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-26
プリオンの不活化
CJD プリオン対策における当院の取り組み
~マニュアルを活用した効果的な洗浄・滅菌方法の検討~
小美野 勝
埼玉県済生会栗橋病院
Key word
過酸化水素低温プラズマ滅菌,ATP,Creuztfeldt Jakob Disease
【諸言】
2008 年 9 月に「プリオン病感染予防ガイドライン(2008 年度版)
」が策定されたが、すべての器材に対しガイド
ラインに沿って処理を行うことは非常に困難である。今回、
過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌器
(以下,
ステラッド R)
と残存アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate,ATP)測定法(以下,ルミテスター R)による ATP 拭き取
り検査を導入することで、効果的な洗浄・滅菌方法を模索・検討したので報告する。
【施設概要】
当院は病床数 329 床で、年間手術件数は約 1,400 件。総手術件数のうち 30% を占める脳外科と眼科の手術は、す
べてハイリスク手技と位置付けて処理している。
【導入の経緯】
真鍮やアルミニウム製品などアルカリ洗浄に適さない器材では、ガイドラインに準拠した処理ができないものが
ある。当院では、アルカリ性洗浄剤による WD 洗浄を第一優先とした CJD 対策マニュアルを作成し、ハイリスク器
材の処理を行った。
【導入の実際】
マニュアルでは、器材を処理別に 3 つのゾーンに分類した。ガイドラインに準拠した器材はブルーゾーンに分類
した。イエローゾーンに分類される器材はガイドラインに準拠しないが、先行研究の結果を参考にしてステラッド
RNX? アドバンスドサイクルで滅菌を行っている。ガイドラインに準拠せず効果的な処理が明確でないレッドゾーン
の器材は、ルミテスター R による ATP 拭き取り検査を行い、清浄度が得られた器材のみステラッド R100S ロング
サイクル 2 サイクルまたは高圧蒸気滅菌器で滅菌を行っている。清浄度を統一することで一定の滅菌効果が得られ
るものと考える。
【結語】
今回当院独自のマニュアルを作成し運用に至ったが、いまだガイドラインに準拠していない器材があるのも現状
であり、多くの施設で対応できるガイドラインの改訂が望まれる。しかし今回、明確な洗浄評価とステラッド R 滅
菌の組み合わせを行ったことで、適切な器材の処理につながり、患者の安全につながる対策ができたと考える。
抄 録 集
ポスター演題
P-27
機器・設備のバリデーション
手術用具積載時のトレイの材質による効果の比較
You Yong, Du Juan
The Second Affiliated Hospital of Anhui Medical University, CHN
Keywords
Instrument Trays, Application, Effect comparison
目的:本稿では、安全な積載に関して各種の材料で作られた器材用トレイの適用効果の比較と医療用不織布の滅菌
バリアに焦点を当てている。
方法:異なる材料で作られた器材用トレイの安全性、利便性および費用を比較する。
結果:比較および検討の結果、ポリプロピレン製の器材用トレイが、硬性手術用内視鏡その他壊れやすい手術セッ
ト等、あらゆる種類の手術用具を安全に積載できるだけでなく、用具の有効期間内の滅菌バリアの完全性を確実に
保証できることが分かった。
結論
ステンレス製トレイよりも安価で、使いやすく、信頼性の高いポリプロピレン製の器材用トレイは、不織布の滅菌
バリアに対する輸送時、保管時および工程処理時の損傷防止も可能とする。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
医療機器・器具のトレーサビリティ
P-28
医療機器のトレーサビリティーシステム、MEDICO HOSPITAL
− CATALYST
Roniel Garcia
ESTERILETO, BRA
Keywords
TRACEABILITY, surgical procedures, sterilization
緒言
外科手術手技が進歩し、医療関連感染の懸念が高まるにつれて、洗浄法および滅菌法の研究が進められ、絶えず
改良が加えられている。回数管理のため、洗浄工程や滅菌工程の対象となる物品を、歯科医が英数コードを用いて
特定する必要性が生じてきた。そうすることで、これらの品目を安全かつ効果的に網羅することが可能となる。
目的
医療機関にとって、使い易く、低価格である英数コードによる再生処理トレーサビリティシステムを提供する。
材料と方法
医療機関の頭文字と品目固有の番号からなる連続番号が振られた英数字 ID を付した約 500 品目を対象に検査を
実施した。検査期間は 6 ヶ月。
結果
品目を効率的に検査することができた。非毒性のペイントペンを使用したが、工程中に塗料が剥げ落ちることは
なかった。10 回再生処理を行い、使用した全製品に関するあらゆる情報を表に記録した。そして、日付、場所、再
生処理回数、品目が使用された患者の診療録番号を記載した表の作成も行った。
抄 録 集
ポスター演題
医療機器・器具のトレーサビリティ
P-29
インプラント手術用手術器材の電子プラットフォームの作成:フランスの例
Voahangy Rasamijao, Amelie Leclere, Brigitte Moranne
Jean-Marc Dauchot, Dominique Mery
Centre Hospitalier Intercommunal Andre Gregoire, FRA
Keywords
electronic platform, quality, traceability
緒言 :
外科手術手技の進化により、
インプラント手術用の手術器材(ancillaries)に対する外科医の要望が増してきている。メー
カーやディーラーは、貸出器材または在庫の形でこれらの機材を提供している。したがって、すべての滅菌施設には、管
理や監督の面から同類の問題が浮上している。すなわち、複雑な処理、配達の遅延、検査および組立工程に関する書類
の不足等である。
また、これらの装置にコンピュータ化されたトラッキングシステムを適用することは、困難である。
方法 :
2009 年、Montreuil Hospital の主導のもと、フランスの滅菌管理ソフトウェア関係者、整形外科関連業界および院内薬
剤師が一堂に会し、作業部会が結成された。
多分野にわたる会議の中で、プロジェクトの枠組みとして、電子プラットフォームの作成が決定された。
プラットフォームから、
各手術器材に関して、
器材のリスト、
操作説明書および関連ビデオのダウンロードが可能となった。
ソフトウェア出版社および滅菌部門長が決められ、器材供給元は、実験のために 20 種の手術器材を提供した。
結果 :
病院の回収率は 87% で、すべてのデータが含まれていた。業界のデータベースとプラットフォームとのデータ交換がコ
ンピュータ化された場合、この回収率は 100% にまで上昇する。
考察 :
インプラント手術用手術器材データに関する滅菌ソフトウェアを統合することで、
(貸出器材か否かを問わず)あらゆる
器材のトレーサビリティーを同レベルに維持することが可能となる。これによって、業界、外科医、滅菌部門、学会の期
待に添うことができる。
結果から、作業部会としては、国家的な単一プラットフォームの確立を望んでいる。
このプラットフォームの独自性は、普遍的な適応性を持つことにある。
結論 :
プラットフォームの最終版は、2012 年の秋から利用可能である。
現在、このプラットフォームをヨーロッパ全土に拡大する計画が進行中である。また、北米の担当者からの問い合わせも
受けている。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
医療機器・器具のトレーサビリティ
P-30
蒸気滅菌が可能な改良型 RFID を使用した手術用コンテナの
トレーサビリティ管理
中井 毅
市立伊丹病院
Keywords
traceability, RFID, container
データマトリックスによる二次元シンボルを手術用コンテナのネーム板表面に印字して、整形外科手術におけ
る手術器械のトレーサビリティ管理を開始したところである。読み取り方法としては、コンテナに表示されている
UDI(固有機器識別)形式の二次元シンボルを携帯端末機で読み取る方法である。しかし、二次元シンボルの代わ
りに RFID を使用すれば、この UDI の読み取りが自動的に行えることが可能になる。そこで、ウオッシャーディス
インフェクターでの洗浄(90℃、10 分間)および高圧蒸気滅菌(134℃、8 分間)での使用サイクルに十分安定し
て絶えうる RFID の開発を行った。使用した RFID の周波数は 865 ~ 956 MHz帯であり、この RFID をシリコン
樹脂と ABS 合成樹脂で完全に包埋した。これまでにこの RFID に対して洗浄・滅菌サイクルを 275 回施行したが、
200 個の RFIDは全て問題なく読み取りが可能であった。
この新しい RFIDは手術部における手術用コンテナのトレー
サビリティ管理システムにとって非常に有用になると考えている。
抄 録 集
ポスター演題
P-31
業者貸出し器具の管理
『業者貸出器械の管理』使用前洗浄の必要性
倉掛圭一郎 1), 真島博樹 1), 三角朝子 1), 中川朋子 2)
九州エア・ウォーター株式会社 滅菌事業部 1), 福岡大学病院 看護部 2)
Key word
業者貸出器械、使用前、使用後
現在の手術において、医療関連業者から借り入れる器械(貸出手術器械)
:Loan Instrument(以下 LI)は、必
要不可欠な器械となってきている。
2008 年 9 月に日本手術医学会が発行した『手術医療の実践ガイドライン』において、各医療施設へ納品された
LI は使用前に、手順書に従って洗浄および滅菌を行う必要性があるとされている。しかし、2009 年に岡崎氏・小林
氏によって実施された LI の処理・取扱に関する実態調査の報告からみると、約 6 割近くの施設が、LI の使用前洗
浄が実施出来ていない状況である。
A大学病院においては、平成 23 年 4 月に院内滅菌委託業務が導入されたと同時に、LI の使用前の洗浄を、定例
手術時は洗浄を行い、緊急時はアルコール清拭の対応をしている。
今回、期間を設け、関連業者から搬入された LI の洗浄前と洗浄後の清浄度の調査を行ったところ、使用前洗浄
の効果及び使用前洗浄実施の必要性を明確にすることが出来た。
適切な方法で洗浄・消毒・滅菌処理された器械を提供することは、滅菌業務を専門職としている者として、重要
な責務のひとつである。
今後、今回の調査結果を基に、現状と今後の LI の処理及び取扱方法について検証すると共に、処理時間が確保
でき、使用前または使用後の洗浄が適切に実施できるよう、医療施設と医療関連業者と協力し、滅菌委託業者として、
よりクオリティの高い滅菌・供給に努めていきたい。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-32
業者貸出し器具の管理
安全管理のための手術用貸出器械の取り扱い
~滅菌前洗浄実施の確立~
奥村恵美子 1), 山口ひとみ 2), 橋本さゆり 2), 伊藤志穂 2)
市立四日市病院 看護部 1), 中央手術部
2)
Key word
安全管理 , 手術用貸出器械 , 滅菌前洗浄
【はじめに】
手術医療ガイドラインでは、手術用貸出器械を滅菌前に洗浄することが推奨されている。しかし今までは、滅菌
前に洗浄する人的余裕がない、貸出業者により洗浄されて届けられている、洗浄する時間的な余裕がないなどの理
由から手術用貸出器械の洗浄をせず滅菌をしていた。借り物の手術器械の使用にあたっては、患者の安全、病院職
員の安全、取り扱い業者の安全を図っていかなければならず、必ず汚染除去のために洗浄をおこなわなければなら
ないと言われており、患者や医療者の安全確保のためにも必ず汚染除去のための洗浄を実施する必要がある。今回、
手術用貸出器械業者及び中央材料室委託業者の協力を得て手術用貸出器械の取り扱いを見直し、全ての手術用貸
出器械について、滅菌前の洗浄をおこなうことが実現できたので報告する。
【方法】
従来の方法では、手術室看護師が受け入れ定数確認から滅菌包装をおこなっていた。手術用貸出器械の滅菌前の
洗浄の重要性について手術室スタッフへ説明をおこなった。また手術用貸出器械業者の協力を得て、受け入れ定数
確認をおこなったあと、滅菌前の洗浄をウォッシャーディスインフェクターにておこない乾燥後滅菌包装、滅菌をお
こなう方法へ変更した。
【結果】
全ての手術用貸出器械について滅菌前の洗浄をおこなうことが実現した。
【考察】
滅菌前の洗浄をおこなうことは、予定手術に間に合うように滅菌前の洗浄を考慮し病院に手術用器械を搬送しな
ければならない。また手術に関わる職員、業者の協力を得ることで、業務を分担することができた。そして手術用
貸出器械を滅菌前に洗浄することは、手術室器械の品質管理と安全管理に繋がったと考える。
【結論】
病院職員、委託業者の協力により手術用器械を滅菌前に洗浄することが実現できた。
抄 録 集
ポスター演題
P-33
材料部職員の教育とトレーニング
国際的な病院認定および中央材料部(CSSD)の教育と訓練が果たす
役割に関するケーススタディ
Zuber Mujeeb Shaikh1), Gazala Khan2), Towyan Al Soleiman1)
Dr. Sulaiman Al-Habib Medical Group, SAU1)
Sancheti Institute for Orthopaedics and Rehabilitation, SAU2)
Keywords
Accreditation, Hospital, Education and Training.
教育と訓練は、品質改善と患者の安全確保における成功の鍵となる。国際的な病院認定は、現在の医療市場で病
院の品質の象徴となっている。ジョイントコミッション・インターナショナル(JCI)認定のような認定機関は、医
療の品質、工程、成果という 3 本柱に基づいて、認定を希望する医療機関の評価を行っている。サウジアラビア王
国の民間医療施設の CSSD では、資格要件を満たしたスタッフのニーズが非常に高い。教育と訓練部門によって、
各病院につき 40 の分科会に分かれて 10 のテーマで訓練が行われたが、JCI 認定の準備期間中、CSSD スタッフの
出席率は 100%であった。
目的:
本ケーススタディの目的は、
教育と訓練が、
JCI 認定の準備期間中に 2 つの病院で JCI 認定に関与する CSSD スタッ
フに与える影響を検討することである。
研究方法:
本ケーススタディは、サウジアラビアの 2 つの異なる地理的位置にある三次医療を担う 2 つの民間病院を対象と
している。教育と訓練部門の記録から一次データを、国内および海外で公表された研究論文やジャーナルから二次
データを収集した。
結果:
調査対象の両病院は、CSSD に関する JCI 認定基準を完全に満たしていた。
結論:
調査対象の病院はどちらも、すべての病院スタッフの尽力とチームワークのおかげで、わずか 6 カ月の準備期間
で JCI 認定を授与されたが、特に CSSD に関する JCI 基準に完全に準拠した品質改善と教育と訓練部門のスタッフ
によるところが大きかった。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
材料部職員の教育とトレーニング
P-34
再生処理施設の査察 − 2003 年からの経験
Thomas W. Fengler
Surgical Instruments´Work Group - Cleanical Investigation & Application, DEU
Keywords
medical devices, reprocessing, inspection, technology
医療機器の再生処理は法律に基づいて実施されるが、勧告を精査し、手法を把握し、一般的な方法で実施する必
要がある。したがって、日常の業務管理が不可欠となる。
2003 年以降、国家によって実施された査察例を紹介する。検査前、査察中、欠陥の指摘後のいずれも、査察担当
者が正確かつ感情を交えずに伝えることが推奨される。すべての欠陥に対して解決策がすぐに見つかるとは限らな
いため、改善・変更の優先順位を明確にすることが重要である。品質管理の一環として短くても正確な文書を作成
しておくことは、第三者による査察を問題なく管理する上で主要な前提条件となる。CSSD サポート例から、文書の
不備や品質管理の不徹底が主な苦情の原因であることが分かっているが、たとえば、標準業務手順書(SOP)
、再
生処理装置の代わりとして用手作業が中心的な古い施設、汚染された場所と清浄かつ滅菌された作業エリアとが混
在していることなどがあげられる。常に評価を受けるわけではないが、このように、査察を実施することで再生処
理に関して投資と改善が得られる可能性がある。
抄 録 集
ポスター演題
P-35
材料部職員の教育とトレーニング
中央材料部およびその機材の人間工学的分析
Izabel Kazue D. C. Iamaguti, Giovana Araujo Moriya, Alexandre Lemo,
Paula Marina Bertho HUTTER
Hospital Israelita Albert Einstein, BRA
Keywords
sterilization center, Ergonomic analysis, occupational health
材料滅菌部門(CME)の品質と生産性の向上について関心が高まる中、さまざまな職業病の発生率が異常に上昇
しており、労働衛生に対する関心が近年、高まっている。本稿は、ブラジル、サンパウロにある大規模私立病院の
同部門において、骨格筋の疾患が原因で高まっている従業員の欠勤率を低下させることを目的として、同部門のニー
ズに応じる形で執筆されたものである。本稿では、職場環境を変えて、従業員に快適でよりよい姿勢での作業を可
能とするよう、生産的な活動に伴う人間工学的リスクの評価を行った。
研究方法として、すべての業務(洗浄、準備、滅菌、保管)の観察を行い、従業員が通常行う動作と普段の姿勢
を説明するにアンケート調査を実施し、専門業務の実施のための多くの作業に関係する人間工学的リスクを検出し
た。誤った動作と姿勢ならびに不適当な備品の使用がもたらす結果に関する報告書を作成し、文献に基づいて考察
を加えた。
データを分析した結果、現在の状況に関する診断が下され、職場における職業病予防のための改善策、備品の正
しい配置例、従業員の姿勢等をまとめた報告書が提出された。これらの措置によって、同部門の生産性の向上なら
びに常習的欠勤の減少が期待でき、それによる人間的な介護や熟練した看護が望まれる。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-36
材料部職員の教育とトレーニング
過酸化水素ガス滅菌用ケミカルインジケータ (e-CARD) を用いた
現場教育について
立道幸子 , 小林マキ子
特定医療法人 三栄会 ツカザキ病院
Key word
現場教育,ケミカルインジケータ,過酸化水素ガス ( プラズマ ) 滅菌
【はじめに】
当院はスタッフに対して過酸化水素の吸着特性、包装や積載方法に注意して滅菌を行う。しかし、既存の過酸化
水素ガス ( プラズマ ) 滅菌用ケミカルインジケータ (CI) は、僅かな残留ガスに反応する為、業務の適格性を検証す
る指標にはならない。今回、過酸化水素低温ガス ( プラズマ ) 滅菌用 CI(e-CARD エルクコーポレーション社製 以下
CI-e) を現場の滅菌業務の改善のために試験活用したので報告する。
【試験方法】
ステラッド R100S (J & J 社製 ) で下記の通り滅菌し、挿入した CI-e の変色確認と色彩色差計 (CR-241 コニカミノ
ルタ社製 ) による色差測定を行う。変色の程度と色差から、包装や積載方法を変更した。
・滅菌バッグ包装した PP トレー;穴の有無について
・包装の滅菌バッグサイズ;大小ついて
・滅菌コースの選択;ショートコースとロングコースについて
【結果】
・PP トレーは、
「穴有」の方が CI-e の変色が良かった。
・滅菌バッグのサイズは、大の方が CI-e の変色が良かった。
・ショートコースの CI-e は変色にばらつきがあり、ロングコースは均一変色となった。
・各方法にて生物学的インジケータを 58℃ 24 時間後後判定は陰性であった。
・過酸化水素を使用する滅菌法は、穴有トレーの使用や滅菌バックにゆとりを持たせる等、ガスの浸透性・吸着性
を考慮した工夫が重要である。また、ショートコースは積載量や材質によって過酸化水素の拡散ムラを起こす為、
ロングコースの使用が望ましい。
【考察】
当初は CI-e 推奨指示色に達せず、現場で戸惑いの声もあったが「適正変色した時に達成感がある」との意見も出
るようになった。
CI-e の活用は滅菌包装や積載方法が学べ、現場スタッフの指導に有用である。またその変色達成は、各人のモチ
ベーションを上げ、創意工夫を生み、さらなる滅菌業務の改善という相乗効果が期待できる。
抄 録 集
ポスター演題
P-37
材料部職員の教育とトレーニング
気付きを促す、血液感染防護の簡易講習
小高剛至
東京医科大学 八王子医療センター
Key word
血液感染 , 簡易講習 , 成人学習
【要旨】
感染防護策の実行率向上による患者安全を目指した、感染防護簡易講習を報告する。
【はじめに】
患者の血液感染事故を防ぐ為には、適切な感染防護策が必要である。しかし、標準予防策が十分に行われていない
のが現実である。
当院では、
感染防護講習は一方的な講義が多く見られた。受講目的も、
責任を追及されない為の内向きなものであった。
報告する講習会は、患者安全の為である事を強調した上で、短時間の簡易講習とする事で受講の敷居を低くし、受講
者の興味を得られる様に成人学習理論を応用し、感染防護策の実行率向上を目指した。
【内容】
受講者は採血室の従事者。
対象病原体は HBV・HCV などの血液感染性ウイルス。
事前に自己学習用資料を配布。
講習時間は約 15 分間。
実際の採血室で、実際の業務をイメージ出来る様に行った。
American Heart Association-Hearsaver Bloodborne Pathogens(AHA 血液感染性病原体コース)等を参考に標
準予防策を扱い、効果的な成人学習とする為に J.M. ケラーの ARCS 動機づけモデル等を応用し、受講者の気付きと行
動変容を促した。
【評価方法】
意識と行動の変容について、受講者が自己評価。
【結果】
標準予防策の理解を得た他に、具体的な業務に関しても、採血台の消毒にアルコールは不適切な事や毎回消毒する
必要性等の気付きを得られた。
【考察】
講習後も適切な感染防護策が行われない事例が認められる。
態度の学習(行動の選択)も含めて、講習会をさらに改善する必要がある。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
材料部におけるリスクマネジメント
P-38
課題に立ち向かうこと
Suzanne Zayas-Buil
Repatriation General Hospital Daw Park, Southern Adelaide Local Health Network, AUS
Keywords
hazards, reduce, tools
職場は日々課題に直面しており、程度差はあるものの、業務の障害となっている。課題にどう対処するかはわれ
われ次第であるが、実際に取り組んだり、対処を望んだりしているうちに解決することもあるであろう。課題は、装
置や人員配置など財政的な面から見て、さまざまな形態を取る。すべての課題に対処する時間が十分に取れないよ
うに思われるため、やるべき事の優先順位を決めなければならない。滅菌部門でリスクを管理し、行動によっては
誰かの人生を変えてしまうような傷害を未然に防ぐことができるということを認識することは、極めて重要である。
常に危険が存在するため、影響を軽減するために対策を講じる必要がある。必ずしも危険を完全に取り除くことは
できないが、投資を行い、リスクを管理する必要がある。
ジョン・F・ケネディーは、
「行動計画にはリスクとコストが存在するが、何もしないことが生みだす長期にわた
るリスクや損失には遠く及ばない」と言った。
経験を共有することで、多くの場合、違う視点から物事を見られるようになり、自分たちでは気付くことができな
かった何かを認識できるようになる。部門の支援につながる多数のツールが存在し、リスクマネジメント部門と協力
することで、大きな成果をあげることができる。リスクマネジメントに投資を増やせば、周囲に影響を与えるような
変化がもたらされるであろう。
抄 録 集
ポスター演題
材料部におけるリスクマネジメント
P-39
環境衛生リスクアセスメントは、中央滅菌サービス部(CSSD)の運営
に関する改善計画を立てる際の手段となる
Nashat A. Nafouri1), Abdulhakeem O. Al Thaqafi2)
King Abdulaziz Medical City - WR, SAU1), King Abdulaziz Medical City - Jeddah, SAU2)
Keywords
Risk Assessment, CSSD Environmental Health, CSSD Design
緒言: CSSD は重要な部門であり、再使用可能な医療機器による感染伝播の予防を支援する部門である。
目的と研究方法: リスクアセスメントを実施し、国際的ベンチマークを比較することを目的とした。これまでに積み
重ねられた環境に関する学際的な会合、作業負荷の統計データおよび利害関係者のブレインストーミングを通じて、
データを収集した。根本原因解析と PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルにより、データを分析した。
結果: 平均的に 1 日あたり 32 件の外科手術が実施されている。将来、心臓血管外科と泌尿器科の手術が行われる
場合、この割合は 34% 上昇する。CSSD では、この上昇がオートクレーブ 3 台から 5 台、洗浄機 2 台から 3 台およ
びカート用洗浄機 1 台に相当すると予想されている。利害関係者のブレインストーミングによって、
スペースディフェ
ンスステートメントが作成された。625m2 近くを占めた CSSD は、725 m2 に拡大されたが、推定ベンチマークとさ
れる 1,100m2 と比べるとそれほど余裕はない。この差はリスクになり得ると判断されたが、隣接する倉庫も CSSD
の一部とみなされた。会合では、改善が必要な分野として、換気、温度、湿度、圧力勾配、環境表面、音響、交通量、
薬品貯蔵、労働衛生および安全性に関する問題が確認された。
結論: 創設から 30 年を過ぎた古い CSSD を改善するには、
要求を満たし、
より新しい技術プラットフォームを活用し、
既存のレイアウトを近代化する必要があることが明らかになった。一方向の作業フローに必要な要件に焦点が当て
られた。リスクアセスメントのマトリックスは大変便利な品質ツールである。日常的な手順を踏むことでスペースの
合理化が達成された。さらなる検討が必要とされているが、解決策としてモジュールの拡張が約束されている。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-40
材料部におけるリスクマネジメント
ガスプラズマ滅菌器周囲の過酸化水素濃度
齋藤祐平 , 村越 智 , 小松孝美 , 深柄和彦 , 上寺祐之 , 安原 洋
東京大学医学部附属病院手術部
Keywords
Hydrogen peroxide, Hydrogen peroxide sterilizer, Environmental concentration
過酸化水素(HP)ガスプラズマ滅菌は広く普及している。米国食品医薬品局によると、HP 滅菌機に関していく
つかの故障や障害が報告されているが、障害と滅菌器周辺の環境中の HP 濃度との関係はいまのところ明らかにさ
れていない。本検討の目的は、滅菌工程中の HP 滅菌器周辺の HP ガス濃度を評価することとした。
6 台の HP 滅菌器(SterradR 100/200、1 モデルにつき 3 台の滅菌器、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)
の周囲で、HP 濃度を測定した。2 台の HP ガス検知器(Pac III®、ドレーゲル・セイフティージャパン)をチャンバー
の扉前と滅菌器の上部に置いた。ロングサイクルでの運転中、30 秒ごとにデータを収集した。各滅菌器に対してそ
れぞれ 3 回の測定をおこなった。
6 台中 1 台の滅菌器
(SterradR 200)
の周囲で HP ガスを検知したが、
無菌性保証は得られていた。HP ガスの濃度は、
チャンバーの扉前では平均 0.098ppm、最大 1.7ppm であり、滅菌器上部では平均 0.17ppm、最大 2.3ppm であった。
滅菌中に 2 つのピークが認められ、
滅菌サイクルが
「プラズマ工程」
にあるときに内圧が低下することに対応していた。
米国労働安全衛生局の許容暴露レベルに照らし合わせると、HP ガスの漏出はあまり重大ではなかったが、正規
代理店の定期点検を実施していても HP 滅菌器の故障が発生しうることが本検討によって示された。病院内の滅菌
部門における環境中 HP 濃度の定期的モニタリングの必要性が示唆された。
抄 録 集
ポスター演題
P-41
環境表面の消毒
蒸気化過酸化水素による環境表面汚染除去
Marek Kuzma1), Jaroslav Cerveny1), Kamila Syslova2), Libor Panek3)
Petr Kacer2)
Institute of Microbiology, CZE1),
Department of Organic Technology, ICT Prague, CZE2), BLOCK a.s., CZE3)
Keywords
vapor phase hydrogen peroxide, VPHP, decontamination of chemicals, decontamination of drugs
蒸気化過酸化水素(VPHP)は、きわめて進歩した技術である。化学兵器や生物活性化合物の汚染除去に VPHP
を利用することに関心が高まっているが、化学物質に対する VPHP の影響についての情報は限られている。化学兵
器および / または生物兵器を使ったテロリストによる攻撃の危険性を背景に、襲撃場所の汚染除去方法を含めた適
切な危機管理計画を作成する必要性が急務である。化学薬品の被害にあった広範な場所を汚染除去することは、主
として複雑な形状を持った表面が大きいため、非常に困難である。したがって、唯一の方法は、ガスおよび / また
は蒸気を利用する方法である。
本研究は、VPHP による化学薬品や医薬品の汚染除去を対象とするものである。一連のベンザルデヒド誘導体に
ついて、さまざまな官能基が分解過程と分解物に与える影響について検討を行った。また、アルカロイドや医薬品
などのさまざまな生物活性化合物の汚染除去に VPHP を使用した。GC/MS、LC/MS および NMR を用いて汚染除
去工程を進め、動態学の情報を得るだけでなく、汚染除去産物の構造も解明した。構造が汚染除去過程と生成物に
かなりの影響を与えていることが示された。脂肪族窒素は、汚染除去において非常に積極的な役割を果たしている。
このことは、最初の不安定中間体である N- オキシドの形成からも説明できるし、麦角アルカロイドの汚染除去結果
にもよく一致している。
謝辞:本研究はチェコ共和国の技術庁の支援を受けた。助成番号:TA02011185
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
材料部における新しい技術
P-42
ATP 検知システムによる腹腔鏡手術器具の洗浄モニタリング
Jagrosse M David, Bommarito Marco, Stahl Julie, Morse Dan
3M, USA
Keywords
ATP, Luminometer, David Jagrosse
目的:汚染除去工程中および洗浄工程中に腹腔鏡手術器具の清浄度をモニタリングするため、ATP(アデノシン三
リン酸)による器具表面と内腔抽出水の分析が応用可能かどうかを実証することが本稿の目的である。
方法:ATP による器具表面と水の分析法を用いて、CSS の手術用トレイに載せられた腹腔鏡手術器具の検査を実
施した。発光量(RLU)の単位で、生物発光現象を測定できるルミノメーターを用いて ATP 量を求めた。超音波
洗浄後および WD 洗浄後に手術用具のサンプルを採取した。データを分析し、合格、警戒および不合格の処理限
界を定めた。
結果:超音波洗浄と WD 洗浄について処理限界を定めてから、23 セットの腹腔鏡手術器具を評価した。ATP
表面検査の場合、平均値および合格、警戒と不合格の範囲は、それぞれ 209、<3,640、3,640 ~ 15,200 および
>15200RLUs(超音波洗浄)
、ならびに 31、<180、180 ~ 430 および >430RLUs(WD 洗浄)であった。ATP 抽出
水検査の場合、それぞれ 396、<6,340、63,40 ~ 25,350 および >25,350RLUs(超音波洗浄)
、ならびに 90、<810、
810 ~ 2,410 および >2,410RLUs(WD 洗浄)であった。
結論:この方法を用いた品質管理は、実現性が高いと思われる。
試験によって以下のことが認められた。
1)この客観的方法によって、合格・警戒・不合格の基準が定められ、継続的に腹腔鏡手術器具の清浄度をモニタ
リングすることが可能となった。
2)抽出水と用具表面の ATP 検査を組み合わせることで、腹腔鏡手術器具の外側と内側の内腔表面の汚染除去を
定量化することができた。
3)ATP 測定法を訓練手段に用いることで、瞬時性を活用して超音波処理と WD 洗浄の技術と工程に関するフィー
ドバックをすぐに出せるようになった。
4)内腔表面の ATP 汚染レベルは、WD 洗浄を実施した後も外側表面よりかなり高かった。
抄 録 集
ポスター演題
P-43
その他
中央材料部(CSSD)と利用者の間の取り決め
Birte I Oskarsson
Skåne University Hospital / WFHSS / Swedish Institute of Standardisation, SWE
Keywords
contract, responsibilities, duties
CSSD 内の物品の流れを把握するには、病院全体の業務水準を理解しなければならない。取り決めの証しとなる業
務に関する合意を結んでおくべきである。
合意書の中で、資源とサービス水準を決定する必要がある。どのようなサービスを提供するつもりなのか。どのよ
うな業務を提供しようと考えているのか。
その他に以下のようなことを合意しておく必要がある。
・稼働時間
・手術件数
・プログラムの立案方法
・緊急手術
・払い出し停止
そのプロセスで、CSSD と手術室の双方は、責任と義務を理解する必要がある。日常業務について、邪魔し合うの
ではなく、お互いに補い合わなければならない。
部屋数や他の部屋の手術時間などの手術室からの申し出は、CSSD に通知しなければならない。このことは年間を
通じて決めることができるので、CSSD の部長または課長として、忙し時期が来ても十分なスタッフを用意しておくこ
とができる。
さらに、価格、フォローアップ、補足、調整およびもちろん合意時期についても明言する必要がある。
少なくとも以下の構成要素を含むこと。
・定義
・組織
・業務に関する合意
・品質と患者の安全性
・環境
・スタッフ
・能力開発 / 教育
・エリア
・ウォッシャーディスインフェクターおよび滅菌器
・滅菌器材の取り扱い
・メーカーからの滅菌器材
・補足と調整
・限界
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
その他
P-44
国家規格の制定と推奨事例
Joy Mary Markey
Irish Decontamination Institute / National Decontamination Programme Lead, HSE, IRL
Keywords
Development Decontamination National Standards
本プレゼンテーションは、国家的な汚染除去規格の制定および汚染除去規格の制定工程の作成に必要な手順を概
説している。規格を達成できるものにしつつ、成功事例をも導き出すための課題と解決策について説明する。
多くの国は、医療において品質と安全性を向上させる必要性を認識している。また、規格を設定して準拠状況を
監視することが、医療における品質と安全性の向上を促す手段であることは国際的にも認知されている。規格によっ
て、一般大衆、医療提供者および専門家の思いを一致させることができ、また医療における利害関係者が、規格や
ガイダンス情報など国内や海外の成功事例を取り入れることで、改善のイニチアチブを継続的に取ることができる
ようになる。規格はまた、最新の、有効な、かつ一貫した医療の推進にもつながる。また、医療従事者向けの規格は、
業務の計画や管理、改善評価および品質と安全性におけるギャップや悪化の特定と処置のための根拠にもなる。
国家規格を定めるとき、高品質で安全な医療の未来像について確認することが重要である。規格を制定して、業
務計画を立て、業務の信頼性を高め、矛盾や工程システムの変動を最小限に抑え、事態が悪化する可能性を最小限
にとどめるべきである。再使用可能な侵襲性医療機器の汚染除去に関する国家規格の制定によって、医療機器の汚
染除去と再加工のあらゆる側面から、医療サービス執行規格や国際規格を達成するのに必要とされる重要な規格と
推奨事例が提供されることを目指す。
抄 録 集
ポスター演題
P-45
その他
イラン北東部の病院における、経腸栄養法が院内肺炎の発生に及ぼす
影響に関する調査
Elnaz Harifi, Faraneh Oraei Abbassian, Saeed Amel Jamedar
Kiarash Ghazvini
Medical Microbiology Dep., Medical University of Mashhad / Ghaem Hospital, IRN
Keywords
nasocomial, enternal feeding, nasogasteric tube
緒言 :
肺炎、特に院内感染は、ICU の入院患者に最もよくみられる合併症のひとつであり、上部消化管にコロニーを形
成する細菌を吸引することで生じる。
目的 :
Mashhad Ghaem Hospital で、経腸栄養法が院内肺炎の発生に及ぼす影響を明らかにするため、本試験を行った。
方法 :
2010 年 4 月から 12 月までの間に経鼻栄養チューブより栄養補給を行った ICU 入院患者 61 名を対象とした。
感染を調べるため、4 段階に分けて試料を採取した。
ステージ 1: 調理室での栄養剤の調製時。
ステージ 2: 提供後
ステージ 3: 患者への投与時
ステージ 4: 栄養チューブに 2 時間液体を入れたままにした後。
それぞれ、コロニーを計数し、微生物を同定した。
その間、ICU で患者を観察した。
結果 :
61 例中 31 例で院内肺炎が認められた。
そのうち、83% (51 例 ) が経腸栄養を、93% (57 例 ) が気管挿管を受けており、1% が糖尿病に罹患していた。
同定された微生物は、緑膿菌 (23 例 ) 、アシネトバクター属 (16 例 ) および肺炎桿菌 (12 例 ) であった。
結論 :
経腸栄養法が院内肺炎の発生に及ぼす影響について、さらなる研究が望まれ、予防法の確立も必要とされる。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-46
その他
家庭用電気刺激装置の性能評価に関する、国際的に調和のとれた医療機
器のガイドライン策定の研究
San Kim, Jae-Won Lee, Moo-Young Jang, Ji-Hun Cha, Tae-Hee Kwon,
Eun-Jung Cho, Shin-Jung Kang, Hyeon-Joo Oh
NIFDS, Pharmaceutical and Medical Devices Research Department, Fusion Technology
Medical Devices Team, KOR
Keywords
Electric stimulator, guideline, medical device
家庭用電気刺激装置は、人体に直接接触した電極から筋肉や神経に直接的に電気刺激を与えることを目的とした
個人用医療機器である。強度、周波数、波長などのいくつかのパラメータを組み合わせることで、さまざまなレベ
ルの電気刺激が発生する。個人用電気刺激装置は、リハビリテーション、疼痛緩和、筋肉の調整などの目的で広く
使用されている。操作原理は全く同じであるにもかかわらず、使用目的に応じて異なる要求事項が安全性と有効性
の評価に適用されている。したがって、性能評価に関する国際的に調和のとれた手順を確立する必要がある。
本研究では、現地企業による技術レベルと品質管理能力の向上に役立てるため、個人用電気刺激装置の安全性と
有効性の評価に関する国際的に調和のとれた手順を作成した。
IEC(国際電気標準会議)によって発行された IEC 60601-2-10 は、電気刺激装置に関するもっとも代表的な規格
である。さらに、この装置については、日本工業規格(JIS)と英国規格・欧州規格(BS EN)も存在している。また、
IEC 規格に基づいて、KS(韓国産業規格)C IEC 60601-2-10「低周波治療器」も定められている。
前記の規格および電源式筋刺激装置 510(k) に関する米国食品医薬品局のガイダンス文書を比較分析し、性能評価
のパラメータと方法を特定した。
電気刺激装置の使用目的に見合った性能評価方法を確立するために、さまざまな規格とガイダンス文書を調査、
分析した。結果的に、リハビリテーションや疼痛緩和など異なる使用目的に適した検査方法を特定し、使用目的に
合わせた検査項目や仕様を得ることができた。
抄 録 集
ポスター演題
P-47
その他
使用後の血管造影用カテーテル内の微生物負荷と残留物の分析
SILMA CUNHA RIBEIRO1), CAMILA QUARTIM BRUNA2)
FLAVIA MORAIS PINTO2), RAFAEL QUEIROZ SOUZA2)
KAZUKO UCHIKAWA GRAZIANO2)
Universidade de São Paulo (USP) / Universidade Federal de Minas Gerais (UFMG), BRA1)
Universidade de São Paulo (USP) . Escola de Enfermagem-Eeusp, BRA2)
Keywords
catheters, bacterial load, organic wastes, nursing, infection control
血管造影用カテーテルは、価格が高いために、ブラジルあるいは世界各国でもっとも再利用されている機器の一
つとみなさている。再利用には洗浄が重要とされ、消毒や滅菌を確実に行われなければならない。国の法律要件を
考慮すれば、洗浄、特に複雑な構造を持つ装置を洗浄する際に生じる問題の特定のために試験を行うことが重要で
ある。本実験の目的は、日常使用後に血管造影用カテーテルから生じる微生物負荷と有機残留物を明らかにするこ
とである。
洗浄前、微生物の有無について 49 本のカテーテルを検査し、有機残留物とエンドトキシンについては、間接試験
を実施した。サンプル内の陽性培養物の発生頻度は 8.2%(4/49)であった。有機残留物の平均値は、ヘモグロビン
で 146.3µ/unit、タンパクで 628.5µ/unit、炭水化物で 7µ/unit およびエンドトキシンで 38.0UE/unit であった。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-48
その他
消毒剤処置による医療器材表面の変化と細菌定着性に関する検討
黒田 聡 , 菅原俊継 , 有澤準二 , 木村主幸
北海道工業大学医療工学部医療福祉工学科
Keywords
bacterial,colonization, equipment, materials
医療機器の表面材料に清拭消毒処理を施した。清拭消毒として、78% エタノール溶液で 18 週間処理したところ、
材料の表面が著しく収縮し、不透明になった。アクリル板とエタノール処理の組み合わせにおいて、もっとも顕著
な変化が認められた。そこで、著者らは、清拭消毒処理による変化の有無を問わず、アクリル板表面での表皮ブド
ウ球菌のコロニー形成能を検査する実験を行った。清拭消毒処理を施さずに対象細菌を表面に接種したとき、約
85% の細菌を表面から回収したが、原料に清拭消毒処理を施した場合、表面から回収できた細菌は 10 から 15% の
みであった。これらの結果から、日常的なメンテナンス手順によって生じる医療機器表面の品質変化の原因により、
医療機器での交差感染を引き起こす細菌の保持能力に変化が生じるからであることが示唆された。
抄 録 集
ポスター演題
その他
P-49
日本の在宅看護における滅菌方法の課題
關戸啓子
神戸大学大学院保健学研究科
Keywords
issue, sterilization, home
【緒言】医療従事者は、在宅看護の分野で適切な滅菌方法を選択しなければならない問題に絶えず直面している。
【目的】本研究の目的は、文献調査を通して日本における在宅看護での滅菌方法に関する問題を明らかにすることで
ある。
【方法】
「滅菌」と「在宅看護」というキーワードを使い、医学中央雑誌(ver.5)で検索した。2003 年から 2012 年
に公表された文献を検索した。2012 年 7 月に検索を行った。文献を処理する際、著作権を侵害しないように最大限
配慮した。
【結果】医学中央雑誌の検索により、91 の文献を抽出した。本調査の目的に一致しない文献を除外したところ、62
の文献が調査対象として絞られた。在宅看護での滅菌方法に関する研究の多くが 2004 年に公表されていたが、調
査期間中、常に研究成果が発表されており、この研究テーマが継続的に検討されていることがわかった。62 部中 27
の文献は、感染予防に関する研究であった。検索した文献の研究内容は、近年の吸引カテーテルの滅菌方法に焦点
を当てたものが多かった。
【結論】感染予防は過去の問題と考えていたが、各滅菌方法を調べることで、依然として現在の問題であることが判
明した。特に、吸引カテーテルの滅菌が争点となっていた。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-50
その他
看護業務としての滅菌物管理の日本における現状と課題
關戸啓子
神戸大学大学院保健学研究科
Keywords
management, sterilization, nursing
【緒言】日本では、看護師が滅菌物を管理することが多い。
【目的】本研究の目的は、文献調査を通して看護業務における滅菌物管理の現状と問題点を明らかにすることである。
【方法】
「滅菌」
、
「看護」および「業務」というキーワードを使い、医学中央雑誌(ver.5)で検索した。2003 年から
2012 年に公表された文献を検索した。2012 年 8 月に検索を行った。文献を処理する際、著作権を侵害しないよう
に最大限配慮した。
【結果】医学中央雑誌の検索により、167 の文献を抽出した。本調査の目的に一致しない文献を除外したところ、72
の文書が調査対象として絞られた。研究成果を時系列で示すと、以下の通りになった。2003 年に 7 文献、2004 年
に 8 文献、2005 年に 10 文献、2006 年に 3 文献、2007 年に 9 文献、2008 年に 5 文献、2009 年に 11 文献、2010 年
に 9 文献、2011 年に 9 文献および 2012 年に 1 文献。72 部中 38 の文書は、中央材料室での滅菌物管理についての
文献であった。業務改善を目的とする研究が多かった。
【結論】中央材料室における滅菌物管理に関する論文が数多く公表されているが、そこでは品質管理が深刻な問題
になっている。看護においては、滅菌物の効率的な管理が課題であることが明らかになった。
抄 録 集
ポスター演題
P-51
その他
院内洗浄滅菌業務の受託事業者と感染管理認定看護師との連携の
現状と課題
山脇範子 1), 妹尾千賀子 2), 土江和枝 3), 角 紀子 3), 米田桂子 4), 石原由美 1)
山浦直人 1), 佐々木喜美枝 1), 武田美和子 1), 杉谷 孝 1)
小西医療器株式会社1), 島根県立中央病院2), 松江赤十字病院3), 松江市立病院4)
Key word
アウトソーシング , 院内洗浄滅菌業務 , 感染管理認定看護師
【はじめに】
院内滅菌供給部門を外部委託とする病院が多くなってきた。受託事業者は専門的な感染対策の知識に基づく対応
を求められることが多く、当該病院の感染管理認定看護師(以後 CNIC)との連携が不可欠と考えた。この度、その
実践の成果と課題を報告する。
【業務】
470 ~ 679 床の病院における器材及び内視鏡の再処理業務等の運営
【期間】
2010 年 5 月~ 2012 年 7 月
【CNIC と連携した実践の成果】
器材の消毒薬のレベルを低水準からから中水準或いは熱水消毒へ
泌尿器科内視鏡の安全な保管・搬送
CJD プリオンリスク器材の滅菌条件
高いアルコール環境濃度の改善
消毒滅菌業務の省エネ 10%及びコスト効果
病院機能評価の受審
看護師及び薬学部実習生の教育
感染対策チーム(以後 ICT)のメンバー活動
院内ラウンド
針刺し予防策を病院規定に則る 各種滅菌法による滅菌物の安全保管期間を統一
【考察】
業務改善の提案について、関連部署の理解が得られスムーズに導入できるようになった。
さらに病院及び CNIC は事業者に対して、
「委託業者をアウトソーシングとして捉えるのではなく、
コソーシング(共
同業務者)として互いに協力し、より良い医療の提供を行うことは病院の使命である」と、また「病院と委託業者は
Win-Win の関係を目標にしており、プロとして遠慮なく提案して下さい。何かあればすぐ私に連絡下さい」と、高い
専門性及び自律性のある企業姿勢を求めている。
私共は病院の信頼に感謝し、期待に副えるよう襟を正している。新人及び月次研修だけでなく、各施設における受
託業務の課題及びヒヤリハット情報等を協議し、相互評価するなどの問題解決型定例会を重ねている。
【課題】
CNIC、ICT の指導又は連携により、
「ICT ラウンドを受ける」
、
「針刺し事故防止を目的に、洗浄後に器材をカウン
トする」等を実現する。
第13回滅菌供給業務世界会議
ポスター演題
P-52
その他
環境クリーナーを用いた清浄化の評価
久保木修
株式会社エフエスユニマネジメント
Key word
環境清浄 , 化学的作用 , 物理的作用
【はじめに】
環境表面に付着する汚染物は血液等の蛋白質汚染など様々な汚れが存在する。新鮮な汚染物であれば容易に除去
できるが、固化した汚染物を除去するためには物理的作用に加えて洗浄剤の化学的作用が必須となる。ステンレス
板に疑似汚染血液を塗布し、固化した汚染物を除去するための効果的な手法を検証する。
【方法】
1. テストピース
ステンレス板に疑似汚染血液
(ヘパリン処理全羊血と 1%硫酸プロタミンを 10:1 で混合したもの)
15 μ L を塗布し、
室温で 1 時間乾燥させた。以下の条件で汚染物を清拭した。
2. 清浄化の条件
1)クロスはマイクロファイバークロス(クロス A)
、
不織布クロス(クロス B)
、
ガーゼ(クロス C)
、
不織布ガーゼ(ク
ロス D)の 4 種類使用した。
2)クロスへの加重は 500g と 250g の 2 種類とし、洗浄剤を 3ml 含浸し 3 往復清拭した。洗浄剤はルノンクリア 2%
希釈液とブランクとして精製水を使用した。
3. 清拭後の評価
1)目視で汚染の状態を確認した。
2)CBB 法で抽出し残留蛋白質を数値化した。
【結果】
加重 500g で洗浄剤を含浸した状態では、クロス A(平均 :19 μ g)
、B(14 μ g)
、C(33 μ g)
、D(32 μ g)であっ
た。ブランクの状態では、A(33 μ g)
、B(34 μ g)
、C(54 μ g)
、D(70 μ g)であった。一方、250g で洗浄剤
を含浸した状態では、A(179 μ g)
、B(83 μ g)
、C(196 μ g)
、D(151 μ g)であった。ブランクでは、A(206
μ g)
、B(95 μ g)
、C(240 μ g)
、D(248 μ g)であった。加重 500g では、強い物理的作用が加わるためクロス
による差異が僅かであったが、加重 250g の場合、クロスのよる効果の違いが顕著であった。
【考察】
固化した汚染物は洗浄剤を推奨濃度に設定しても物理的作用を加えなければ効果的に洗浄することができない。
適切に加重があれば精製水でも汚染は除去できる。しかし医療現場では様々な汚染物が存在するため標準的に洗浄
剤を使用し除去することが必要と考える。
抄 録 集
ポスター演題
P-53
その他
滅菌バッグの国際標準化機構(International Organization for
Standardization;ISO)規格取得状況
大石貴幸 1), 三好ゆう子 2)
大崎市民病院 1), 株式会社ニチオン 2)
Key word
ISO, 滅菌バッグ , 準拠
【目的】
国際標準化機構(International Organization for Standardization;ISO)11607-1/2 は、滅菌される医療機器の
包装に関する唯一の国際規格で、日本では、T0841-1/2 として、技術的内容及び対応国際規格の構成を変更するこ
となく日本工業規格(JIS)化され、ヨーロッパでは EN868-1 がこれと同等となる。国内で流通している滅菌バッグ
の ISO もしくは JIS、EN 規格の準拠状況を調査した報告はないため、製品カタログとホームページを検索し、国内
で市販されている蒸気、エチレンオキサイドガス、過酸化水素、ホルマリン用の滅菌バッグ、13 社 15 製品につい
ての ISO、EN、JIS の準拠状態を比較した。
【方法】
国内で流通している滅菌バッグの ISO、EN、JIS 取得状況を調査した。今回の調査では、主に滅菌バッグの形状
(フィルムの強度など)を中心とした比較であり、ISO が要求する品質的な内容(バリア性、安定性、空気透過性など)
は含まれていない。
【結果】
ISO 適合と明記していたのは、2 社 3 製品で、EN と JIS 準拠はそれぞれ 1 社 1 製品であり、残る 9 社 10 製品は
明示されていなかった。
【考察】
滅菌バッグは、封入された医療機器が滅菌後使用されるまでの間、無菌性を保持する手段として、非常に重要な
アイテムといえる。ところが、今回の調査から、ISO や EN、JIS の準拠状況を明確にしていない市販品が多いこと
が明らかとなった。その要因としては、法的拘束力がない、
「医療施設における滅菌保証」等、ガイドラインにおいて、
滅菌バッグそのものに関する言及がない、などが考えられる。滅菌保証をより確実にするため、滅菌バッグの形状
を各種規格に準拠することは、基本的な遵守事項であり、各メーカーには、積極的な準拠状況の情報開示が求めら
れる。