EAL

インターナショナル・スクール・オブ・アムステルダム 追加言語としての英語
(EAL)
小学部のご父兄のための
ガイドライン
追加言語としての英語(EAL)
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このEALプログラムは、生徒が通常学校で行われているプログラム
や活動に早く溶け込めるよう、英語での独立心や自信を身につけさせ
ることを目的としています。
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他の生徒と同様に、EALの生徒たちも年齢相当のクラスに席を置い
ています。その上で、生徒が英語のサポートを必要としているか、ま
た必要とされている場合、そのレベルはどのレベルかといった評価を
します。
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EALプログラムはプリK以上の英語を母語としない生徒をサポート
するものです。
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この教育の初期的基本目標の一つは、話すことと書くことにおける言
語発達です。ですから、言語発達のための活動には時間がかかるわけ
です。特に年少児は、何かをしながら、またクラスでの活動に参加す
ることで多くの言葉を学びます。子供たちは 意味のあるもの、また
年齢相応の環境の中で言語を学んでいきます。
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私たちは、年少児にとっては、取り出し授業のEALのレッスンより
も自分の教室で安心していられる環境の方がより得るものが多いと信
じているのです。
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生徒たちは 彼らがある程度流暢に、また各々の教室でも協働できる
ようになるまでEALのサポートを受けます。ハイレベルのサポート
は「初期段階」レベルの生徒さんに行われます。
EALプログラムの目標
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生徒が安心していられ、自信を持っていかれるような幸せな、かつ暖
かい雰囲気を提供すること。
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豊かな環境で、また、さまざまな場面で英語を使うことにより、英語
を楽しく学び、よい結果が出せるようにすること。
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生徒の英語の発達に最適なサポートを提供できるよう、できるだけ個
人指導を行うこと。
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言語学習に必要とされる他との交流の場(言葉のやり取りの場)を提
供する。
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英語の文法や語彙に沿って、生徒に意味のある内容を、また英語の音
声のシステムを聞く機会を与えること。
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生徒が英語を理解し、流暢にまた楽しく読むことができるようにする
こと。
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クラスの担当教師がサポートしたり、国語や算数などで行われる調査
単元の活動のサポートすることで、生徒がISAのプログラムにでき
るだけ早く、スムーズに入り込めるよう手助けをすること。
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学校において良い結果を出すために必要とされるアカデミック言語が
ハイレベルに到達するのに要する時間を認識しながら、全員が生徒の
教育に関わっていくこと。
言語学習に影響を与える要因
みなさんのお子さんは英語を学ぶことをどう思っているのでしょうか。国が
変わったことに対して幸せだと思っているでしょうか。自分が話している言
葉ではない新しい学校へ転校してきたことを快く思っているでしょうか。I
SAは前の学校とはかなり違っているかもしれません。彼らが思っていた勉
強や行動の仕方が全く違うかもしれません。こうしたことはカルチャーショ
ックの結果かもしれません。
次にあげる項目は子供たちが追加言語を学ぶのに影響を与える要因です。
その子供の…
1. やる気
2. 自尊心
3. 精神状態
4. 健康状態
5. 性格
6. 学習方法
7. 第1言語
8. 持っている言語の数
9. 母語の熟練度
10.年齢
11.以前の学校教育、特に新しい学校との相違
12.適正
13.その言語との接触頻度
14.個人的興味
15.個人的態度
16.家庭における言語環境
17.学校における教育方法や学習方法
みなさんができる手助け
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できるだけ子供が 幸せで自信をもっていられるようにしてあげてく
ださい。思い出してあげてください。彼らにとって新しい国や学校に
移り、さらにそこで使われている言語が分からないといったことがど
んな大変なことかを。
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子どもに常に自分の母語で語りかけてください。また、もし、子供が
すでに母語で読んだり書いたりするのであれば、それをサポートして
あげてください。ですから、ご自宅で日本語をやめて英語だけに切り
替えるようなことはしないでください。
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英語で子供がすることに対して過大な期待をかけないでください。言
語を完全に身につけるまでに何年もかかるものです。人と話そうと自
信を持てるまでの初めの1,2か月は、多くの子供が静かです。
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教師たちと子供の言語のバックグラウンドについて情報交換をしてく
ださい。自宅では何語で話しているのか、こどもの母語の語彙や文法、
発音などはどうかといったことを知るのは大変役に立ちます。
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学校について子どもと話し合ってください。そうすることで、母語に
よる学校での語彙が増えていきます。これは子供が2カ国語を結びつ
ける助けになります。
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母語で頻繁に本を読んでください。子供といっしょに読んでも、彼ら
が読んでいるのを聞いあげるのもいいです。また、その本や物語につ
いて話し合うというのもいいでしょう。
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子供がISAで英語を読む学習を始めたら、毎日子供が読むのを聞い
てあげてください。そして、母語で子供と、その本や物語について話
しあったり、子供が分からないところを説明してあげてください。
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もし、子供が母語すでに読んだり書いたりできるのであれば、自宅の
それを伸ばしてあげてください。そうしないと、年少児に関しては、
母語の前に英語で読み書きを習ってしまうまで、それを待っていなけ
ればならなくなります。子供は一度ひとつの言語で読むことを習って
しまえば、あとは同じ要領でほかの言語を読んだり書いたりするのが
簡単になります。
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もし、子供が既に母語で読んだり書いたりするのであれば、授業中に
使えるよう2カ国語(日英・英日)の辞書を与えてください。
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母語で、学級連絡や宿題について話し合い、授業の準備を手伝ってあ
げてください。次の新しい単元が分かったら、母語で、その単元は何
について書いてあるのか、またすでに習ったこととの関連はどうなの
かを話してください。
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英語を使う練習を助けるために、追加情報源を探してあげてください。
たとえば、ISAの図書館から物語のテープを借りる。その国の英語
の部門がある図書館のメンバーになって、英語で子供が楽しめる質の
いい映画やアニメ、テレビ番組などを探すといったことです。特に高
学年の子供は英語の字幕のついた映画を見ようとします。これは、も
し子供が視覚的学習をするタイプの子供であれば、時に有効です。
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子供の成績を褒めてあげてください。みなさんが子供の成長や、子供
が新しい言語に挑戦していることを誇りに思ってくれていると感じる
こと、また、皆さんが、どのくらいむずかしくて、つかれることなの
かを分かってくれていると思えることが、子どもにとって大切なこと
なのです。
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皆さんの友達や家族に、新しい言葉で何か言ったりやらせたりしない
でください。子供は自分に焦点を当てられたり、英語で何か言ってみ
てというようなことを聞かれるのを大変恥ずかしがります。
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子供は言語を理解しようと集中しつづけなければなりません。そうい
った学校生活をこなせるエネルギーを維持するために、十分な睡眠時
間をとらせてください。
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放課後の活動などで 忙しくなりすぎることのないようにしてくださ
い。それよりも、他の子どもと「お遊びの日」を作ってあげてくださ
い。もし、その友達がほかの母語を話すならば、英語が子供たちの共
通語となり、お互いにそれを媒体に意志の疎通を図っていることに、
皆さんも気がつくと思います。また、子供たちは母語にリラックスす
ることも必要です。ですから、同じ言語の子との「お遊びの日」もい
いのです。
母語
ISAでは 全ての子どもにとって、各々の家庭で使われている母語を継続
的に発達させていくことが大切であると考えています。英語で、あるいは他
の言語で教育を受けながら、母語も勉強を続けている子どもたちに関する研
究では、実際以下のようなことが明らかになっています。
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学業成績がよい
英語の上達が早い
自尊心が高い
真のバイリンガルになる
自分たちの文化に対する誇りを維持する
子どもと母語で話し続けることは大切です。また、皆さんは自分の言語で文
学を読んでその技術を伸ばしてあげることもできますし、母語で読んだり書
いたりすることへのやる気を起こさせることもできます。また、子どもたち
は学校に母語の本を持ってきて「読書」の時間にそれを読んでもいいのです。
教育カリキュラムの中で母語を伸ばそうとするならば、母語教育クラスに参
加することでも可能になります。
ですから、小学部のランゲージ・アカデミーには、たくさんの母語教育クラ
スがあり、ISAでは放課後、毎週1回1時間行っています。その言語を母
語としている教師が小さいグループで教えています。これは両親が授業を払
います。また、その授業料はクラスの人数によって違います。
もし、母語教育についてお知りになりたければ、小学部の母語コーディネー
ターにご連絡ください。
ビギナーEAL生徒に影響を及ぼしているもの
子供はおのおの個人的で、英語を学ぶという挑戦に対しても異なった反応を
示します。それは、同じ家族の兄弟や姉妹でも違った行動を示すことがあり
ます。ある子供たちは、欲求不満が募りやすかったり、ある子供たちは怒り
やすかったりします。また、他の子どもたちは本当に静かであったり、はに
かみ屋であったりします。
次の事項は、追加言語を習い始めたそういった子供たちに影響を及ぼしてい
ると考えられるものです。
1.
2.
3.
疲労―新しい言語で一日中集中しているのは大変なことです。
カルチャーショックーいろいろな理由によります。
自分で理解できていたのに、現在は自分自身で理解できないという
欲求不満。
4. こういった新しい、異なった状況に置いた両親に対する憤り。ある
子供はどうして自分の国を出なければならないのか、どうしてまた
他の学校や国に変わらなければならないのか理解できないのです。
5. 以前は何でもうまくできていた子供が、現在、授業で理解するのに
苦しんでいる場合。
6. 両親の期待_ある両親は、自分たちの子供に対して、英語が早くで
きるようになるだろうという期待をかけているかもしれません。
7. 自分の文化で行われていた学習習慣が異なるー子供は異なった教授
方法や学習方法に慣れていたかもしれません。たとえば、機械的な
手順での学習方法や、伝統的なオーディオ・リンガルなど。
8. 自宅での言語強化の欠乏
9. 社会の中での言語強化の欠乏
10.異なった言語環境に置かれて学習困難に移転あるいは強調された場
合
2・3言語を持っている子供へのサポート
ある子供は同時に1言語以上の会話を習うことが可能です。子どもにとっ
て通常同時期に2言語語あるいは3言語語を習うということは問題があり
ません。実際、研究では2言語・3言語を習っている子供はそれらが知性
へ有効に働いているといわれています。
インターナショナル・スクールでは、大半の子供がバイリンガルあるいは マルチリンガルになることができます。ですから、ISAは複数の言語を学
ぶことを奨励し、また同時に他の言語の母語に対して尊重しています。
よくあるQ&A Q:両親の母語が異なったり、両親の言語が子供がいる社会と異っているよ
うな家庭の場合、子供は生まれた時からそれらに触れておくべきなのでし
ょうか、あるいは、他の言語に触れさせる前にまずは1つの言語を定着さ
せておくべきなのでしょうか。 A:子供は 生まれた時から2言語で育てることができます。また、一つ
の言語は安定するまで他の言語を待つ必要はありません。 Q:同時期の2言語習得は小さな子どもにとって精神的負担を与えるのでは
ないでしょうか。 A:いいえ。小さな子供にとって同時期に2言語を習得するというのには確
かにある程度精神的な努力を要しますが、それは問題ありません。 Q:バイリンガルになるための努力は その子供の知的発達を遅らせること
にはなりませんか。 A:いいえ。実際、研究結果でも2言語使用は知性に有効であるとのべてい
ます。 Q:2言語を話すことを要求されることで、小さな子どもがどもったり自分
の言いたいことがうまく話せなくなることはありませんか。 A:2言語使用が、どもりや流暢に話せないことの原因だという根拠はあり
ません。 Q:1つの言語が他の言語に及ぼす影響とはどんなものでしょうか。また、
子供は2言語を別々に保持することができるのでしょうか。 A:子供は2言語を別々に保持することは可能ですし、また言語同士は確か
に、語彙や言語の構造などにおいて影響し合っていますが、言語は影響を
受けているというよりも、むしろより強い言語が 他の言語に影響を与え
ていると言えます。その子供の言語認識が発達するとこれらの影響は消え
てしまいます。 Q:学校が始まり、学校の友達に適合しようと願うあまり、家の言語を否定
するようにはなりませんか。 A:インターナショナル・スクールでは、相対的にバイリンガルの児童が主
流です。以下のようなことが行われている限りたいてい問題ありません。 1)子供の言語が学校で尊重されている場合や学校は2言語使用に対して
好意的な態度を示している場合。 2)両親が子供に対して、常に母語で話しかけて、英語に切り替えていな
い場合。 参考文献:『バイリンガル児:両親へのガイダンス』(ジョージ・サンダ
ース著) その他の参考図書 もっとお知りたいときは高等部の図書館で以下の本をお借りください。 『バイリンガルの経験』-両親のための本(エヴェリーン・デ・ヨング
著)(PAR 404 DE) 『バイリンガル家族』-両親のためのハンドブック(エディス・ハーディ
ンーエッシュ&フィリップ・リレイ著)(PAR 404.2 HAR) 『2言語使用に関する両親と教師のガイド』(コリン・ベーカー著)
(PROF 306.446 BAK) 『マルチリンガル児の育成』(トレーシー・トクハマーエスピソーナ著) (PAR 401.9 TOK) 『第3文化児童の経験』-世界中で育った子供たち(デヴィッド・ポーロ
ック&ルース・ヴァン・レイケン著)(PAR 303.3 POL) 日本語で読める バイリンガル・第2言語習得の参考図書・および研究
会 参考図書 1.『第2言語習得の基礎』(ロッド・エリス著、牧野高吉訳) (Understanding Second Language Acquisition-Rod Ellis) 2.『第2言語習得序説』(ロッド・エリス著、金子朝子訳) (The study Of Second Language Acquisition-Rod Ellis) 3.『第2言語習得への招待』(ダイアン・ラールセンーフリーマン&マイ ケル H. ロング著、牧野高吉・その他訳) (An Introduction To Second Language Acquisition Research― Diane Larsen-Freeman & Michael H. Long) 4.『子供は言語をどう獲得するのか』(スーザン・H・フォスター・コーヘ ン著、今井邦彦訳) (An Introduction To Child Language Development-Susan Foster- Cohen) 5.『バイリンガル教育と第2言語習得』(コリン・ベーカー著、岡秀夫訳) (Foundation Of Bilingual Education and Bilingualism-Colin baker) 6.『言語を生み出す本能』(スティーブン・ピンカー著、椋田直子訳) (The Language Creates Instinct-Steve Pinker) 7.『バイリンガルの世界』―その問題点と実態(山本雅子著) 8.『バイリンガルはどのようにして言語を習得するのか』(山本雅子著) 9.『バイリンガル教育の方法』―12歳までに親と教師ができること(中島 和子著) 10.『第2言語習得研究』(迫田久美子著) 11.『言語の脳科学』(酒井邦嘉著) 12. 『ことばの獲得』(桐谷茂著) 参考研究会 1.母語・バイリンガル・継承語研究会 2.第2言語習得研究会 注)佐々木倫子、サピア、ウォール、クミン、チョムスキーなども「検索」
してみてください。