清泉女子大学附属図書館便り 第 3 号 2015 . 6.15 ヴィエント Viento…スペイン語で「風」 。 新しい風をみなさまとともに感じたい。 そんな思いを込めました。 Contents ・巻頭 リレーエッセイ 姫野敦子先生(日本語日本文学科) ・2014 年度 貸出ランキング ・学生の声 鼠倶楽部 ・Ask Me!自己紹介 1 新聞小説という罠 姫野敦子 新聞の連載小説を毎日欠かさず読む人は、新聞読者の中で、どのくらいの割合なのだろうか。 わたしが、最初にはまってしまった新聞小説は、高校生の時に読んだ山田風太郎『八犬伝』である。朝日新聞 で連載されていた。切り絵風の挿絵に惹かれて、欠かさず読んでいた。単行本になって、挿絵のほとんどが掲載 されないという事実を知り、新聞を切り抜いておけばよかったと後悔したものだ。以降、挿絵がいいと思った小 説は、ページごと切り取ることにしている。家をゴミ屋敷化に導く悪い習慣である。 もともと、新聞は朝日新聞一途だったのだが、よしもとばななが連載をすると聞き、読売新聞を取り始めてし まった。小説の題名は『海のふた』という。これは土曜掲載という、新聞小説としては、少し変った連載形態で、 連載開始を知った当初は、土曜ごとに駅の売店にでも買いに行けばよいと考えていた。しかし、朝刊が回収され る以前に駅まで歩く、というような規則正しい生活は怠惰な自分には無理、と一週目に悟り、すぐさま読売新聞 へ契約のための電話をしたのだった。 『海のふた』の連載期間は 2003 年 11 月 8 日より 2004 年 5 月 1 日までで、 これもいつものよしもとばななのファンを裏切らない、しみじみとしたいい話だった。主人公が作るエスプレッ ソとかき氷がうまそうだったというのも大きい。 この『海のふた』が終わる 2004 年 5 月 1 日に読売新聞朝刊で連載が始まったのが、宮本輝の『にぎやかな天 地』だった。これを、なんとなく読み始めてしまい、読売新聞との契約を切る機会を逸してしまった。ストーリ ーは、発酵食品の本を作る話が下敷きになっており、これまた、中に紹介される食べ物が皆うまそうなのである。 これで、宮本輝にも開眼してしまった。開眼はしたのだが、彼の小説は、その後、積読が多くなっている。まず いことである。ともかく、この連載は 2005 年 7 月 15 日までつづいた。 連載が終わったのだから、すっぱり契約をやめればよかったのだが、ぐずぐずひっぱっていたら、角田光代の 『八日目の蝉』にはまってしまった。主人公の希和子の逃亡生活に一喜一憂する生活となってしまったのである。 この作品は、2005 年(平成 17 年)11 月 21 日から 2006 年(平成 18 年)7 月 24 日まで夕刊に連載されてい た。中央公論新社からの単行本発行は 2007 年 3 月である。映画やテレビドラマにもなった作品なので、あらす じはよく知られているとは思うが、簡単にいうと、不倫相手の赤ん坊を誘拐した女が、その赤ん坊をつれて逃げ、 親子のように暮らし、捕まる。後半は誘拐された女の子が成長して、不倫相手の子を身ごもり、改めて事件と向 き合うさまが描かれる、という話である。前半が小豆島の美しい色彩を感じさせる描写で終わるのと対照的に、 後半の無味乾燥な描写が、灰色のイメージを喚起して、角田光代の筆力極まれりといった感がある。連載時のク ライマックスで泣き、単行本で読んで涙ぐみ、今回文庫本で読み直して鼻がぐずぐずしてしまった。いつも泣か されてしまう小説である。 2 『八日目の蝉』のあとは、読売新聞の人生相談(これはこれで捨てがたい)にひかれて、契約を更新するうち に、宮部みゆき『三島屋変調百物語事続(みしまやへんちょうひゃくものがたりことのつづき)』が始まった。 2009 年 1 月 1 日のことである。 この小説は、「ことのつづき」とある ように、すでに発表済みの『おそろし』という 小説の続編である。 「百物語」とは、怪談 を百話語るとそこに不思議が起こるという言い 伝えである。話の枠組みとしては、三島 屋夫婦に預けられているおちかという娘が人に 言えない話を抱え込んだ客からその話を 聞いていくということになる。 2010 年の 1 月 31 日までつづいたこの連載は、四つの話が 展開された。その中でも、私の心根にぐっとき てしまったのが、第三話の「暗獣」であ る。空き家にそっと住んでいる闇の塊のような 黒い怪物「くろすけ」と心を通じ合う夫 婦の話だが、やがて、人間と触れ合うことが「く ろすけ」を弱らせると悟り、夫婦は家を 出ていく。南伸坊の挿絵が可愛らしく、これま た、私の心根にぴったりフィットであった。 さらに、1 月にこの連載がおわり、単行本化されたのが、2010 年の 7 月であった。かなり待ち遠しかった覚え がある。単行本化が遅れたのは、これが、iPad のアプリとして製作されていたためである。以下に当時の読売 新聞の記事を引用する。 宮部さん連載小説 電子書籍で発売へ 中央公論新社 中央公論新社は11日、宮部みゆきさんが本紙に連載し、同社から単行本化された長編小説「あんじゅう 三島屋変調百物語事続(ことのつづき) 」の一部を、情報端末「iPad(アイパッド)」用の電子書籍「暗 獣」として13日に発売すると発表した。 電子版は、先月刊行された単行本のうち「序 変わり百物語」と「第三話 暗獣」に、本紙連載時の南伸 坊さんの挿絵124点を組み合わせたもの。画面に指で触ったり、本体を傾けたりすると、障子が開き、作 中の人気キャラクター「くろすけ」が現れるなど挿絵が変化し、ゲーム感覚で楽しめるという。 宮部さんは「 『くろすけ』たちと遊び、どんな物語か気になったら単行本を見てやってください」とコメ ントしている。定価1000円(9月9日までは特別価格700円)。 (2010.08.12 読売新聞朝刊) なんと、くろすけの挿絵が iPad で見られるらしいのである。当時、第一世代の iPad がでていたが、私には遠い 世界の事と思っていた。新聞小説にアップルの魔法が襲いかかってきたのである。そして、私は、ボーナスをは たいて買ってしまった。さっそくダウンロードしたアプリを起動し、iPad を揺らしたり、傾けたり、クリック したりして、挿絵がどのように動くかをすべて確かめ、宮部みゆきの朗読の声に耳を傾け、かなりこの iPad ア プリを楽しんだと思う。あろうことか、出版元の中央公論新社は、『あんじゅう』のグッズ展開をしていた。私 は迷った挙句に、あんじゅう饅頭を二箱注文してしまった。中身は食べてしまったが、南伸坊の絵の貼ってある 饅頭の箱はまだ、私の研究室に鎮座している。 このように、アップルと出版社のメディアミックスにはまってしまったという恥ずべき状況の上に、この電子 ブックのアプリが動かなくなるのを恐れて、私は iPad を買い替えることが未だに出来ないのである。 3 日本語日本文学科 英語英文学科 1. 『天草版伊曽保物語(新典社注釈叢書:21)』/ 1. 『会話分析』(日英語対照研究シリーズ:2)/ 江口正弘編 泉子・K・メイナード著 2. 『現代日本の文学』/ 2. 『Peter Pan』 (洋販ラダーシリーズ)/ J.M. Barry/retold by Nina Wegner 著 現代日本の文学編集部編 3. 『This is London』(Macmillan readers:2)/ 3. 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』/ Philip Prowse 著 J. K. ローリング作/松岡佑子訳 3.『The magic barber』(Macmillan readers:1,)/ 3. 『ハリー・ポッター大事典』/ John Milne 著 寺島久美子著 5. 『江戸怪談集・上』(岩波文庫)/ 5. 『TOEIC テスト新公式問題集 Vol. 5』/ Educational Testing 高田衛編・校注 Service 著 スペイン語スペイン文学科 文化史学科 1. 『総合スペイン語コース初級』/ 1. 『仏像:日本仏像史講義』(別冊太陽)/ スペイン語教材研究会編 山本勉著 2. 『オイディプス王』(岩波文庫)/ 2. 『近現代』(世界歴史大系:イギリス史:3)/ ソポクレス著・藤沢令夫訳 村岡健次・木畑洋一編 3. 『総合スペイン語コース中級』/ 3. 『西洋絵画の主題物語カラー版.1:聖書編』/ スペイン語教材研究会編 諸川春樹監修 4. 『現代スペインの歴史』/ 3. 『西洋美術のことば案内』/ 碇順治著 高橋裕子著 5. 『Preparación al diploma de español』/ 5. 『平安朝の父と子』(中公新書)/ Mónica García-Viño Sánchez 服藤早苗著 4 地球市民学科 購入希望 1. 『社会教育・生涯学習』/ ・ 『異彩の江戸美術・仮想の楽園』 宮崎冴子著 静岡県立美術館編集 2. 『観光コースでないフィリピン』/ ・ 『江戸の動物画:近世美術と文化の考古学』 大野俊著 今橋理子著 3. 『21 世紀の生涯学習 新訂』/ ・ 『ベトナム中国関係史』 宮崎冴子著 河原正博[ほか]著 4. 『虹の少年たち』/ ・ 『閔妃は誰に殺されたのか』 アンドレア・ヒラタ著 崔文衡著 5. 『本当の戦争の話をしよう』(文春文庫)/ ・『湯屋の皇后:中世の性と聖なるもの』 ティム・オブライ著 阿部泰郎著 ・ 『生と死の図像学』 林雅彦編 小説 和書 1. 『オーデュボンの祈り』(新潮文庫) / 1. 総合スペイン語コース 初級/ 伊坂幸太郎著 スペイン語教材研究会編 2. 『桐島、部活やめるってよ』(集英社文庫)/ 2. 社会教育・生涯学習/宮崎冴子著 3. 21 世紀の生涯学習 新訂/宮崎冴子著 朝井リョウ著 2. 『勝手にふるえてろ』(文春文庫)/綿矢りさ著 2. 『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)/ 洋書 乾くるみ著 5.『図書館戦争』(角川文庫) /有川浩著 1.『Beauty and the beast』 5.『阪急電車』(幻冬舎文庫)/有川浩著 (洋販ラダーシリーズ)/ 5.『ハリー・ポッターと賢者の石 1-I retold by Xanthe Smith-Serafin (ハリー・ポッター文庫:1-2)/ J.K.ローリング作 2.『Peter Pan (洋販ラダーシリーズ)』/ 8.『ハリー・ポッターと炎のゴブレット 4-I』 J.M. Barry/retold by Nina Wegner (ハリー・ポッター文庫:7-9)/ J.K.ローリング作 3.『The magic barber』(Macmillan readers:1)/ 8.『グラスホッパー』(角川文庫)/伊坂幸太郎著 John Milne 10.『ソフィーの世界』/ ヨースタイン・ゴルデル著 5 読書会鼠倶楽部へようこそ! 読書会鼠倶楽部は、毎月課題図書を 1 作品決め、事前にそれを 読んだうえで読書会を開いています。 話し合うのは、課題図書を読んだ感想や、そこから発展した話 題などです。読書が負担にならないように、扱う作品は短編・ 中編を基本としています。 この読書会には、会員以外の方もご自由にお越しください! 2015/3/18 宮尾登美子「連」読書 毎月 1 回(主に月初めの)火曜日の昼休み 活動日 現在の参加者 会 顧問の和田桂子先生ほか、先生数名 日/西文、文化史の学生 6 名 (計 9 名ほど) 「鼠倶楽部」の名前の由来 本好きの人を指す「本の虫」という言い方がありますよね? スペイン語 でそれに当たる言い回しは ratón de biblioteca 直訳すると「図書館のねずみ」 。 読書会を創設した西文の学生が、ここから命名しました。 2014/11/1、2 清泉祭 2014 年の清泉祭では本の紹介、展示を行い BookCafe も開きました。来場者には本とともに手づくり クッキーやフルーツサンド、紅茶を楽しんでいただきました。 感想例 2015/3/18 宮尾登美子「連」(真珠に魅せられ、真珠を数珠つなぎする職業に一生を捧げた女性の物語) 【学生】「真珠を身に付ける女性のかげに、それを作るだけで身に付けられない女性がいることがわかる」「卒業、 就職を控えた私には、のめり込める職業をもつ彼女は幸せだと思える」 【先生方】 「職人世界の美意識を感じる」 「語り手→主人公→真珠、この一方通行の愛情はどこからきているのか」 「語 り手の独白形式に、太宰治『駆込み訴え』を思い出す」 「『非情』がひとつのテーマではないか」 ★今までの課題図書★ 2015/5/12 現在、全 24 作品 いしいしんじ「トリツカレ男」 、ジュンパ・ラヒリ「停電の 夜に」、川上弘美「センセイの鞄」、内田百閒「サラサーテの盤」、小川洋子「薬指の標本」、朝井リョウ「桐島、 部活やめるってよ」、小山薫堂「恋する日本語」、岡本かの子「鮨」、上橋菜穂子「狐笛のかなた」、堀辰雄「風立 ちぬ」桐野夏生「ハピネス」 、田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」、梨木香歩「西の魔女が死んだ」 、村上春樹「沈黙」、 乾くるみ「イニシエーション・ラブ」 、森鴎外「蛇」、夏目漱石「夢十夜」、リチャード・バック/五木寛之創訳「か もめのジョナサン」 、マルグリット・ユルスナール「源氏の君の最後の恋」 、坂口安吾「桜の森の満開の下」 、谷崎 潤一郎「小さな王国」 、宮尾登美子「連」 、W・F・ハーヴィー/金原瑞人訳「八月の暑さのなかで」 、遠藤周作「札 の辻」 6 Ask Me! 自己紹介♥ ①内田久美子 ①名前 ①黒田詩帆 ②学科学年 ③専攻 ④一言 ①河村理澄 ②言語文化専攻1年 ②思想文化専攻1年 ②英語英文学科4年 ③日本語学 ③西洋美術史 ③翻訳 ④黄色いエプロンが目印! ④本がみつからない時には、 ④大学図書館の蔵書が存分に使え お気軽に声をおかけ下さい。 ①佐藤由美子 いつでも声をかけて下さい。 るのは今だけです!皆さん目一杯 一緒に探しましょう。 図書館を利用して下さい! ①藤島弘子 ①儘田美穂 ②英語英文学科4年 ②英語英文学科4年 ②英語英文学科4年 ③英語教育学 ③英米児童文学 ③英米児童文学 ④みなさんの力になれるよう、 ④いつでも質問を受け付けますので ④見かけたら声をかけて下さい♡ 一生懸命頑張ります! ぜひ気軽に声をかけて下さい! ①関根悠 ①阿久津真希 いつでも相談乗ります* ①萩原明世 ②日本語日本文学科3年 ②スペイン語スペイン文学科3年 ②スペイン語スペイン文学科3年 ③日本語学 ③スペイン語学 ③スペイン語圏文化 ④皆さんに図書館は素敵な場所だ、と ④困った事があったら気軽に声を ④困った事があったら何でも聞いて 思ってもらえるよう、精一杯努めます。 ①岩崎愛未 かけて下さい。宜しくお願いします。 ①大石亜弥 下さい。宜しくお願いします。 ①望月悠加 ②文化史学科3年 ②文化史学科3年 ②文化史学科3年 ③宗教史学 ③宗教史 ③西洋美術 ④新参者ですが、学生の皆さんの ④もし、分からないことがあったら、 ④みなさんが声をかけやすい雰囲気 サポートに努めていきたいと思います。 声をかけてください。 を出します!声をかけてください! 1年間、宜しくお願いします* 7 Ask me! 前期シフト シフト 時間 A B C D 11:30~13: 13:10~14: 14:50~16: 16:30~18: 10 50 30 00 E 18:00~ 18:30 月 儘田 関根 関根 岩崎 岩崎 火 河村 黒田 大石 藤島 藤島 水 内田 岩崎 阿久津 阿久津 阿久津 木 佐藤 萩原 望月 大石 大石 佐藤 岩崎 岩崎 萩原 日本語日本文学科 英語英文学科 西語西文学科 文化史学科 思想文化専攻 図書館でお困りのことがありましたら、気軽に Ask me! に声をかけて 下さいね。黄色いエプロンが目印です!! 〈図書館からのお知らせ〉 図書館 1 階の PC で 『日本女性史研究文献目録:1868-2002』/女性史総合研究会編/東京大学出版会 が利用できるようになりました。 利用を希望される方は図書館カウンターまで! 内容紹介↓↓ 『日本女性史研究文献目録』既刊 4 冊のデータに、2002 年までに刊行・発表された文献リストを追加。 計約 24000 件の文献をデジタルデータとして提供する。文献の任意の語からの検索も容易にした。 近現代、20 世紀の女性史研究の全体像を俯瞰し、その展開と未来を見通す手がかりに。 (東京大学出版会 HP より http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-026251-4.html) 次号予告:2015 年 11 月刊行予定 清泉女子大学附属図書館便り Viento No. 3 2015 年 6 月 15 日発行 編集:赤崎英子・岡瑤子・松谷有美子 発行:清泉女子大学附属図書館 8
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