772KB - 医療経済研究機構(IHEP)

8
5
論文
日本の
観〉瞳鷹構慧!と関する計量分析
一老人保健制度の効果に注目して菅万理*
抄 録
本稿は、グロスマンの健康資本の概念を用いて、日本の高齢者について所得、教育年数、職業階層などの社会経済的属
性が医療需要や健康需要に影響を及ぼしているか、という仮説の実証分析を行った。外来医療需要関数の推定結果から、
男女ともに、所得による医療需要の制限は観察されなかった。また、最長職による医療需要の抑制は観察されず、これよ
り推測する限り、若年時の保険の種別による医療需要の抑制は生じていなかったといえる。教育と医療需要の関係につい
ては、男性では教育年数が長いほどより外来医療を需要していたが、女性には教育の効果は見られなかった。一方、男女
とも最長職が農林漁業であった者が老健移行後により医療需要を高めており、これは自己負担額が安くなったことによる
効果、つまり価格効果が他のグループより大きかったことによるものであるといえる。社会経済的属性と健康の関係につ
いて、男性では先行研究と整合性の高い結果が得られた。前期の健康状態をコントロールしでも、所得が高いほど主観的
健康が悪いと答える確率が低く、所得が中央値以下の低所得層では健康状態が悪いと答える確率が高かった。職業階層に
よる健康水準の相違では、マニュアル職、自営業で主観的健康状態が悪かった。職業階層が、健康の減耗率の要素であると
同時に、医療保険の代理変数となっていることを考慮すると断定はできないが、この結果は、マニュアル職、自営業に従
事する者で・健康資本の減耗率が高く、健康投資の費用が高くなることに一因が求められよう。なお、教育年数による健康
への直接的効果は、男女とも観察されなかった。
キーワード:グロスマン・モデル、健康資本、社会経済的属性、医療需要、老人保健制度、健康格差
ベル、資産などによって、死亡率、擢患率、抑う
1
.I
まじめに
つ状態、飲酒・喫煙行動、主観的健康感が影響を
受けることが、欧米での研究で次々と明らかにな
所得や職業階層などの社会経済的属性注 1と健康
った(例えば K
a
p
l
a
ne
t
.a
l
.
,1
9
9
62); Kawachie
ta
l
.
,
との関係は、各国共通の重大な政策関心事である。
1
9
9
93);MarmotandW
i
l
k
i
n
s
o
n
,1
9
9
94);W
i
l
k
i
n
s
o
n
,
医療保障制度や労働衛生が整備された先進国にお
1
9
9
25) など)。
いても、社会階層による健康の格差が多く確認さ
日本ではいわゆる平等神話のもと、社会経済的
れている。 1
9
7
0年 代 に 行 わ れ た 英 国 政 府 に よ る 大
属性と健康の関係はあまり関心を集めてこなかっ
規模な調査に基づくBla
ckReportで、は、死亡率、
たが、 2
0
0
0年 代 に 入 札 所 得 格 差 が 社 会 的 な 問 題
擢患率などの健康指標が職業階層によって異なる
となり始めたことをきっかけに、公衆衛生学や社
ことが明らかにされた (
TownsendandD
a
v
i
d
s
o
n
,
会学の分野で研究が進んでいる。そのいくつかを
1
9
8
2
)九 そ の 後 、 職 業 階 層 に 加 え 、 所 得 、 教 育 レ
紹介すると、 Shibuya
,Hashimoto,and Yano
(
2
0
0
2
)6) は、国民生活基礎調査のデ}タを用いた
*東京大学社会科学研究所助教
分析から、主観的健康感が、個人の所得レベルと
8
6
医療経済研究
V
o
.
1
2
0N
o
.
22
0
0
9
強く相関することを明らかにした。 I
s
h
i
d
a(
2
0
0
4
)7)
日本の医療保険制度は周知のように 70歳を境に
は
、 20歳から 89歳を対象とした「健康と階層に関
若年医療保険と老人保健(老健)制度に大きく 2分
する全国調査」データを用い、肉体的痛み、主観
される。 70歳未満の国民は、「国民皆保険」のも
的健康感について社会経済的属性による格差を確
と、原則としてすべてが医療保険でカバ}されて
認した。また、若年者より世代内の所得格差が大
いるが、制度は被用者保険と地域保険に分断され、
きいといわれる高齢者の健康に絞った研究では、
被保険者本人・被扶養者間の自己負担率の違いに
、 3県 1
5自治体の 65歳以上の個
吉井他 (
2
0
0
5
)8)が
加え、職業や雇用主の規模などによって、保険料
人を対象とした調査から、社会経済的属牲と主観
負担、医療費の自己負担率の両面で長く格差が生
的健康感・抑うつの統計的に有意な関連を報告し
じていた。一方 70歳以上の高齢者は、老健制度の
ている。さらに、石田 (
2
0
0
6
)9) は
、 65歳以上を対
もと、若年時の保険の種別にかかわらず、月単位
象に全国規模で行われた「健康と生活に関する調
の定額一部負担金制度によって一律に受療が保障
査」を用い、肉体的だるさ、活動制限の有無、抑
9
8
7年
されてきた注5。今回使用するデータは、 1
うつ症状、主観的健康状態について、「これまで
1
9
9
3年時のものであるが、当時の制度についてま
最も長くついた仕事」を基に分類した社会階層、
とめた附表 1を見ると、健康保険組合など被用者
所得が有意な関連を持っていることを確認してい
割であった
保険の被保険者本人の自己負担率が 1
る
注20
のに対し、農林漁業者や自営業者が加入する国民
公衆衛生学や社会学を中心としたこれまでの日
健康保険では、被保険者本人の自己負担率は外
本の先行研究は、社会経済的属性と健康状態の相
来・入院共に 3割であった。また、被用者保険の
闘を捉え、杜会経済的属性によって健康格差が起
被保険者は、退職後も退職者保険が適用されるた
きる可能性を示唆したものである。しかし、健康
め、自己負担率は 2割にとどまっていた。つまり、
格差が社会経済的属性によってもたらされるかど
保険の種別によって医療サービスの実質的な価格
うかを検討し、起こりうる格差を縮小する施策を
が異なっていた。
考察するには、経済理論に基づいた計量モデルを
このような条件下で、所得・職業階層など社会
用い、社会経済的属性から健康への因果関係を解
経済的属性によって医療需要に差が生じるのか。
明することが重要である。社会経済的属性が健康
また、それぞれの社会経済的属性は老健移行とど
格差を生み出す経路として第一に検討すべきは、
のような交互作用を持つのか。老健移行以前に受
社会経済的要因によって医療需要に差が生じる場
療の抑制が観察されるグループが、老健移行後に
合であろう。若年者の 20%
弱が無保険者であると
受療をより増加させているならば、職業階層や所
いわれる米図的では、社会経済的属性による医療
得などの社会経済的属性によって若年時の医療需
需要の格差がしばしば問題となるが、皆保険によ
要に抑制が生じていた可能性が考えられる。逆に、
って全国民に平等に医療へのアクセスが保障され
若年時の医療需要が必要度に応じて適量であった
ているとの認識のもと、日本でこの問題が取り上
とすれば、老健移行後の受療の増加は価格低下に
げられることはほとんどなかった注4。しかし、わ
よるモラルハザードの存在を示唆することにもな
が国においても、加入する医療保険の種別により、
る
。
保険料、医療費 (
2
0
0
3年まで)の自己負担の相違
が存在した。
米国では、高齢者向け公的医療保険である
Medicare適格年齢になることが、若年期に無保険
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
8
7
に陥りやすい特定のグループの医療アクセスの改
老健移行の効果の違いを検証することは大変重要
善、並びに健康状態の改善に大きな効果を及ぽす
な意味を持つと思われる O 社会経済的属性と医療
という研究が多くなされている(例えば Decker
需要の関係を分析した研究では、老健移行の効果
andR
a
p
a
p
o
r
t(
2
0
0
2
)10) ; P
o
l
s
k
ye
ta
.
l(
2
0
0
6
)川;
2
0
0
7
)17)が、個
を扱ったものではないが、湯田 (
Carde
ta
.
l(
2
0
0
4
)1幻)。しかし、わが国の老健効
人属性・世帯属性や直接費用に加え、機会費用・
果の研究は今のところ高齢者全体の需要量の変化
通院時間・通院費用・待ち時間などの間接的な費
の検証に限られている。吉田・山村 (
2
0
0
3
)13) は
、
用も考慮し、高齢者の外来医療需要関数の推定を
健康保険組合のデータを用い、老健適用によって、
行っている。サンプルが高齢者以外の家族と同居
患者は通院回数で計られる医療需要を増やし、医
している持病を持つ高齢者に限られることから、
師もまた 1日あたりの点数で計られる医療サ}ピ
単純に一般化することはできないが、推定結果よ
スの供給量を増やす傾向にあると結論づけた。一
り学歴、所得、資産の外来受診回数への統計的有
方、同じく健康保険組合のデータを用い、外来受
意な効果は観察されず、通院費用、病院での待ち
診回数を被説明変数として分析した増原 (
2
0
0
4
)凶
時間、通院時間といった間接的な費用が受診回数
からは、老健適用による外来受診回数への効果は
を減少させているという結果を報告している。
10%以下の水準では統計的に有意な結果が得られ
本稿は、老健移行というイベントに注目して、
なかった。同じデータを用い、多頻度で医療サー
社会経済的属性、医療サービスの価格、およびそ
ビスを利用する個人についてエピソードデータを
の交互作用が医療・健康需要に及ぽす効果につい
作成し、老健の効果を分析した増原他 (
2
0
0
5
)
ω
て、グロスマンの健康資本の概念を用いて実証分
では、そのような個人については老健適用後、医
析する。本稿の狙いは、簡単な健康需要関数を用
療費と診療日数が増加していることが実証され
いて経済的特性によって医療需要と健康に格差が
た。しかし、増原 (
2
0
0
4
) 自身が指摘しているよ
生じているのかを実証し、政策的合意を引き出す
うに、老健適用を迎える高齢者の多くは国民健康
ことである。社会経済的な要因が健康に及ぼす効
保険に加入しており、被用者保険である健保組合
果に関しては複雑な経路が考えられるが、それぞ
に加入している高齢者は、 7
0歳を超えても就業し
れの要素を健康投資に関する費用という観点から
ている個人か健保組合本人の被扶養者である個人
単純化し、需要者サイドからどのような医療政策
に限定され、健康保険組合データより得られた結
が有効かを論じることを目的とする。
果は、老健の受診行動への限定的な効果と考えら
本稿の構成は次のようになる。次節で分析の枠
れる。国民健康保険組合加入者に関する分析では、
組みの説明を行い、第 3節でデータと記述統計量
鈴木 (
2
0
0
5
)
ω が、富山県国保連合会のレセプト
の解説を行う。第 4節で実証モデルを議論し、結
データを用いて、外来日数・ 1日当たり外来費・
果を第 5節で示す。第 6節はまとめである。
入院確率・入院日数・ 1日当たり入院費への老健
の効果を計っており、その結果、制度は、外来全
2
. 分析の枠組み
般、入院確率について正に有意な効果をもたらし
たという知見が得られている。しかし、老健が
本稿では、所得・教育水準・職業階層など社会
「高齢者の受療を平等に保障する」ことを目的とす
経済的属性によって起こりうる医療需要や健康の
るならば、社会経済的属性の異なるグループ間で
19
7
2
)18) の健康資本の概念を
格差を、 Grossman (
8
8
医療経済研究
Vo
.
1
2
0N
o
.
22
0
0
9
用いて分析する。グロスマンモデルは、個人が健
ここで Hうは t
・1
期時点で望ましいと考える t期
康な時間んとその他の財 Z
tの消費から得られる生
の健康資本水準であり、 μは望ましい健康資本水
涯の期待効用 Uを、生涯の予算制約と時間制約の
準と実際の健康水準の隔たりの比率を表し、 Osμ=
なかで最適化する行動を示す。
1を満たす。 μ=1の場合、従来型のグロスマンモ
デルとなる。
u=U(ho,…,hT;Zo,…,ZT)
Hうは直接観察できない変数であり、次のよう
h
tと健康資本品の関係は ht
=φ(Ht
)
,ゆ
ら >0であり、
に先決変数による関数で示される注
o
Uは健康資本の増加関数である。
個人の健康資本水準は、初期賦存量 Hoからスタ
(
3
)
Hち=β X
t
l+U
t
ートし、その後は時間と医療サービスを投入する
Xt.1はt・1期に観察される健康需要に影響を及ぽ
健康投資によって増加させることができ、時点間
.
す変数の行列である。 Xt
1に含まれるのは、減耗率
の変化は次の式であらわすことができる。
に関連する変数である年齢及び職業階層注8と、所
(
1
)
Ht
-H
t
l= I
t
l一δt
_
1
H
t
l
ここで品は t期の初めの健康資本水準で、 I
t
.
lは
む1
期の総健康投資(受療を含んだすべての健康増
進行動)、ん1は時間に依存する健康資本の減耗率
(
d
e
p
r
e
c
i
a
t
i
o
nr
a
t
e
) であり Osム1S 1を満たす。
個人の最適な健康水準は、健康資本の限界便益と
健康投資の限界費用が均衡する点で決定するた
め、個人聞の限界便益と限界費用が異なることが
個人間の健康資本の水準の違いを生むと考えられ
る
注6。本稿では、社会経済的属性と健康投資の量、
及び健康資本の減耗率との関係に注目しながら、
得、教育年数、医療サービスの価格、時間制約など
健康投資に関する変数とその他の人口学的変数で
あり、 U
tは平均値 Oをとる誤差項であり、 E[X
U
t
J
t
1
=0と仮定する。
上の(1), (
2
), (
3
) 式を合わせると、健康投資
関数は次のように書き換えられる。
μ -bt
.
)Ht
.
I
t
.1=μβ Xt
.
1
+
μU
t
1
1一 (
・
・
(
4
)
また、 (
2
),(
3
) 式からは、次の健康需要関数が
導き出せる。
Ht
=μ
β Xt
.
1一
μ)Ht
.
+μU
t
1
1
一(
(
5
)
(
4
), (
5
) 式の X
i
lは共通である。さらに医療サ
健康需要関数、医療需要関数の推計を行う。
ところで、グロスマンモデルを静学的な実証分
析に用いる場合、個人が自分の健康資本水準を即
時に均衡点に調整し、 t期内で、効用を最大化する
}ビス需要関数については、
Mt
t
l+λZ
t
.
l
+
e
t
l
1=αI
(
6
)
という前提が取られる。しかし、高齢やその他の
と表される。 Z
t
.
lは総健康投資関数に含まれる
理由によって、即時の調整が不可能と考える方が
変数以外の変数の行列であり、 e
t
lは平均値 0をと
現実に即している。そこで、異時点聞の 情報を用
る誤差項である。本稿では (
5
)(
6
)の 2式の誘導型
いた健康需要の実証分析で、 Wagsta
旺(19
9
3
)19) i
J
宝
方程式の推定を個別に行い、それぞれの需要関数
用いた P
a
r
t
i
a
lAdjustmentModel (
P
AM) に基づ
を推定する。誘導型方程式の推定に当たっては、
き、次の関係を仮定した健康需要関数を考える。
E[
H
t
1
U
t
J =0、 E [Xt
.
U
t
J =0、E [
H
t
le
t
.
1
J =0、
1
d
Ht
-H
九
一 Ht
.
)
t
1= μ(H
1
(
2
)
E [Xt
e
t
1
J =0、E[
Z
t
.
l
e
t
.
1
J =0という仮定を置
1
く。しかし、 E[X
U
t
J= 0については、 Xt
.
に含ま
t
1
1
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
8
9
れる就労の有無・所得と健康状態に同時性の問題
アスがあると考えられ、結果の解釈には留意が必
があり、これについては実証モデルのセクション
要である注100
で検討する。
全国高齢者パネルには、経済的な情報が、配偶
者と合わせた年収・世帯全体の年収、持ち家の有
3圃ヂータ麗び記述統計量
無に限られ、資産についての情報がないこと、医
療保険の種別について直接聞いておらず、職業が
本稿で用いるデータは、東京大学社会科学研究
医療保険の種別の代理変数となる可能性があるな
所附属日本社会研究情報センター SSJデータ・ア
どの欠点がある。また、サンプルサイズが比較的
}カイブより利用を許可された「老研
ミシガン
小さいため、男女別かつ年齢別に集計した場合そ
大、全国高齢者パネル調査(以後全国高齢者パネ
の平均値がぱらつきやすい。しかし、居住地域、
ル)
JWave1Wave3 (1987年・ 1990年・ 1993年)
職業、加入医療保険、所得などの面で多様な社会
である。全国高齢者パネルの初回調査は、日本全
経済的パックグラウンドを持つ高齢者をプール
国から層化二段無作為抽出された 6
0歳以上の男女
し、医療サービスの受療や健康状態について分析
を対象として 1987年に行われ、その後 3-4年ご
する利点は大きい。また、このデータは全国規模
0
0
6年
とに追跡調査が実施されている。これまで 2
調査による公開パネルデータであり、政策分析に
までの 7回の調査・データ構築を完了しているが、
おいて分析の再現性を確保するという目的にも則
このうち Wave3までのデ}タが SSJデータ・ア
すると思われる。ただし、社会経済的属性による
ーカイブに寄託され利用が可能となった。調査は、
疾摘発症の確率など疫学的な分析のためには、よ
調査票を用いた訪問面接調査法で行われ、高齢者
り大きなサンプルサイズが必要で、あることもここ
の身体的・精神的健康、家族、家族以外の社会関
で明記しておきたい。
・
係、就労状況、経済状態などが同じ対象者(パネ
表 1には全サンプルと男女別の記述統計量を、
ル)に尋ねられている。初回調査ではイ 2
,
2
0
0人の
表 2にはそれぞれの変数の定義をまとめた。表 1
男女が面接調査を完了し、本稿ではこのコホート
では、サンプルの 50.7%が男性であり、 70歳以上
、Wave3で、は、病気や
を分析対象とする。 Wave2
の比率は男性で 46
.1%、女性で 4
5
.4%であることが
認知能力が低いため調査に応じられない対象者に
5
.
8
%、女性の 21
.
7%が現
示された。また、男性の 4
ついて、対象者をよく知る家族などに対して代理
在働いており、現在結婚している割合は男性で
調査を実施し、客観的な情報について調査してい
91%
、女性で 5
0
.
5
%である。これらの数値は附表 2
るが、代理調査では所得に関する情報を含まない
に示した 1
9
8
5年の『国勢調査』の数値と概ね等し
こと、健康状態の評価の主体が異なることから、
0歳以上の高齢者
く、本データは日本に居住する 6
分析対象は本人調査を完了した個人に限定した。
の代表的なサンプルといっても差支えないだろ
また、老健制度が高齢者の医療需要に及ぼす影響
う。医療需要に関しては、過去 3ヶ月間の外来受
を測定する際、終末期医療など特別な医療需要を
診回数の平均は男性が 4
.
5回、女性が 6
.
0回と女性
除いた需要を比較する必要があるため、 Wave1か
の方が多くなっている。また、少なくとも 1回以
らWave3の聞に死亡した個人をサンプルから除外
上の外来受診をした割合は、男性で 60.3%、女性
した注9。死亡による脱落者をサンプルに含まない
で 64.9%であった。主観的健康度では、男性の方
、Wave3の健康状態に上方のパイ
ことから Wave2
が女性より自己の健康を高く評価する傾向が見ら
9
0
医療経済研究
Vo
.
1
2
0N
o
.
22
0
0
9
表 1 記述並亮計量
男女
外来受診あり
外来受診回数
主観的健康悪い
男性
年齢
年齢 2乗
7
0歳以上
働いている
結婚している
成人子と同居
持ち家あり
I人当り所得(円)
0
7年教育
8
9年教育
1
0
1
1年教育
1
2年以上教育
専門管理
事務販売サービス
マニュアル
自営業
農林漁業
主婦(夫)
局血圧
心臓病
糖尿病
肝臓病
腎臓病
脳卒中
呼吸器疾患
北海道
東北
関東
北陸
東山
東海
近畿
中国
四国
北九州
南九州
市郡規模 1
市郡規模 2
市郡規模 3
市郡規模 4
市郡規模 5
市郡規模 6
市郡規模 7
1
9
9
0年観測値
1
9
9
3年観測値
観測数
Mean
0
.
6
2
5
7
5
.
2
7
0
2
0
.
12
2
2
0
.
5
0
7
1
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8
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1
2.
1
0
.
4
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7
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2
,
7
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0
,
5
3
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.
19
2
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0
.
41
7
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0
.
2
2
8
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0
.
16
0
6
0
.
14
6
5
0
.
2
6
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5
0.
19
5
2
0
.
1
1
2
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0
.
17
7
5
0.
10
2
5
0
.
2
7
1
4
0
.
13
2
0
0
.
0
5
2
6
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.
0
4
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0
.
0
2
1
2
0
.
0
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3
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0
.
0
5
3
9
0
.
0
5
8
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.
0
8
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.
2
5
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.
0
3
7
3
0
.
0
4
7
1
0
.
0
8
4
8
0
.
14
8
5
0
.
0
9
3
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.
0
3
8
1
0
.
0
8
0
9
0
.
0
7
1
9
0
.
0
9
1
9
0
.
0
4
2
8
0
.
0
4
4
8
0
.
2
1
7
2
0
.
1
1
7
0
0
.
19
2
9
0
.
2
9
3
4
0
.
3
2
0
1
0
.
3
2
6
4
S
t
d
.D
e
v
.
0
.
4
8
4
0
1
0
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6
2
8
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0
.
3
2
7
5
0
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5
0
0
0
6
.
1
8
71
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0
.
4
9
8
3
.
4
7
3
5
0
0
.
4
5
3
6
0
.
4
9
7
5
0.
38
3
2
2
,
2
5
6
,
3
2
1
0
.
3
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4
6
0
.
4
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3
3
0
.
4
2
0
0
0
.
3
6
7
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0
.
3
5
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0
.
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1
7
0
.
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0
.
3
1
6
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0
.
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0
.
3
0
3
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0
.
4
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0
.
3
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5
0
.
2
2
3
3
0
.
2
0
2
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0
.
14
4
1
0
.
1
5
0
5
0
.
2
2
5
9
0
.
2
3
5
5
0
.
2
8
1
0
.
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4
8
0
0
.
18
9
6
0
.
2
1
2
0
0
.
2
7
8
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0
.
3
5
5
6
0
.
2
9
0
6
0
.
19
1
5
0
.
2
7
2
8
0
.
2
5
8
3
0
.
2
8
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0
0
.
2
0
2
5
0
.
2
0
6
9
0
.
41
2
4
0
.
3
2
1
5
0
.
3
9
4
6
0
.
45
5
4
.
4
6
6
6
0
0
.
4
6
9
0
2
,
5
4
6
女性
男性
Mean
0
.
6
0
2
6
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5
2
1
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0
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10
3
8
S
t
d
.D
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v
.
0
.
4
8
9
5
9
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0
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0
5
1
Mean
0
.
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0
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0
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1
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S
t
d
.D
e
v
.
0
.
4
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3
1
1
.9
0
7
6
0
.
3
4
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2
6
9
.
9
4
9
2
8
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0
0
.
46
0
9
0
.
45
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0
.
9
1
0
1
0
.
4
6
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1
0
.
8
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9
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2
,
9
3
4
,
41
2
0
.
1
1
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3
0
.
4
5
7
0
0
.
19
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0
.
2
2
3
9
0
.
2
3
7
0
0
.
2
0
1
4
0
.
2
4
6
3
0
.
1
2
3
9
0
.
1
9
1
3
0
.
0
0
0
0
0
.
2
4
3
2
0
.
10
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4
0
.
0
5
8
1
0
.
0
5
1
9
0
.
0
2
0
1
0
.
0
3
1
8
0
.
0
5
8
2
0
.
0
5
8
1
0
.
0
9
3
7
0
.
2
3
4
7
0
.
0
4
6
5
0
.
0
5
8
9
0
.
0
9
3
7
0
.
14
8
7
0
.
0
9
5
3
0
.
0
4
6
5
0
.
0
5
8
9
0
.
0
6
5
1
0
.
0
6
5
1
0
.
0
4
8
0
0
.
0
4
7
3
0
.
2
2
0
8
0
.
1
1
2
3
0
.
1
9
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0
0
.
3
1
0
6
0
.
3
2
1
5
0
.
3
3
1
5
6
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1
8
7
3
.
8
.
49
8
7
0
.
49
8
4
0
0
.
2
8
6
1
0
.
49
9
1
0
.
3
3
6
6
2
,
2
8
2
,
2
2
5
0
.
3
2
4
3
.
4
9
8
3
0
.
4
0
0
0
0
.
41
7
0
0
.
4
2
5
4
0
0
.
40
1
2
.
43
1
0
0
0
.
3
2
9
6
0
.
3
9
3
5
0
.
0
0
0
0
.
4
2
9
2
0
0
.
3
1
1
1
0
.
2
3
4
0
0
.
2
2
1
9
0
.
1
4
0
5
0
.
17
5
4
0
.
2
3
4
2
0
.
2
3
4
0
0
.
2
9
1
6
0
.
4
2
4
0
0
.
2
1
0
6
0
.
2
3
5
5
0
.
2
9
1
6
0
.
3
5
6
0
0
.
2
9
3
7
0
.
2
1
0
6
0
.
2
3
5
5
0
.
2
4
6
7
0
.
2
4
6
7
0
.
2
1
3
9
0
.
2
1
2
3
.
41
4
9
0
0
.
3
1
5
9
0
.
3
9
7
1
.
4
6
2
9
0
0
.
4
6
7
2
0
.
4
7
0
9
1
,
2
9
1
6
9
.
7
4
8
9
5
.
8
0
.
45
4
2
0
.
2
1
6
7
0
.
5
0
5
2
0
.
4
3
1
1
0
.
7
7
1
3
2
,
6
2
2
,
2
4
5
0
.
2
6
8
5
0
.
3
7
7
7
0
.
2
5
8
2
0
.
0
9
5
6
0
.
0
5
3
4
0
.
3
3
1
5
0
.
1
4
2
6
0
.
1
0
1
2
0
.
1
6
3
3
0.
20
8
0
0
.
3
0
0
4
0
.
15
6
2
0
.
0
4
7
0
0
.
0
3
3
5
0
.
0
2
2
3
0
.
0
1
4
3
0
.
0
4
9
5
0
.
0
5
9
8
0
.
0
7
8
9
0
.
2
7
1
7
0
.
0
2
7
9
0
.
0
3
5
1
0
.
0
7
5
7
0
.
1
4
8
2
0
.
0
9
0
8
0
.
0
2
9
5
0
.
10
3
6
0
.
0
7
8
9
0
.
11
9
5
0
.
0
3
7
5
0
.
0
4
2
2
0
.
2
1
3
5
0
.
12
1
9
.
18
9
6
0
0
.
2
7
5
7
0
.
3
1
8
7
0
.
3
2
1
1
.
1
6
8
6
9
.
8
0
.
4
9
8
1
0
.
41
2
2
0
.
5
0
0
2
0
.
4
9
5
4
0
.
4
2
0
2
2
,
2
1
9
,
1
5
5
0
.
4
4
3
4
0
.
4
8
5
0
0
.
4
3
7
8
0
.
2
9
4
2
0
.
2
2
4
9
0
.
4
7
0
9
0
.
3
4
9
8
0
.
3
0
1
7
0
.
3
6
9
8
0
.
4
0
6
0
0
.
4
5
8
6
0
.
3
6
3
2
0
.
2
1
1
7
0
.
17
9
9
0
.
14
7
8
0
.
1
1
8
9
0
.
2
1
7
0
0
.
2
3
7
1
0
.
2
6
9
7
0
.
4
4
5
0
0
.
16
4
7
0
.
18
4
0
0
.
2
6
4
6
0
.
3
5
5
4
0
.
2
8
7
5
0
.
16
9
2
0
.
3
0
4
8
0
.
2
6
9
7
0
.
3
2
4
5
0
.
18
9
9
0
.
2
0
1
2
0
.
41
0
0
0
.
3
2
7
3
0
.
3
9
2
2
0
.
4
4
7
0
0
.
4
6
6
2
0
.
4
6
7
1
,
12
5
5
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
9
1
表 2 変数の定義
<被説明変数>
外来受診回数
主観的健康悪い
<説明変数>
男性
年齢
年齢 2乗
7
0歳以上
働いている
結婚している
成人子と同居
持ち家あり
1人当り所得
0
・
7年教育教育
8
9年教育教育
1
0
1
1年教育教育
1
2年以上教育
専門管理
事務販売サービス
マニュアル
自営業
農林漁業
主婦(夫)
高血圧
心臓病
糖尿病
肝臓病
腎臓病
脳卒中
呼吸器疾患
北海道
東北
関東
北陸
東山
東海
近畿
中国
四国
北九州
南九州
市郡規模 1
市郡規模 2
市郡規模 3
市郡規模 4
市郡規模 5
市郡規模 6
市郡規模 7
1
9
9
0年観測値
1
9
9
3年観測値
過去 3カ月間の外来受診回数
主観的健康観が悪い =1、それ以外 =0のダミー変数
男性 =1、女性 =0のダミー変数
0歳以上司、それ以外 =0のダミ}変数
老人保健制度適格となる 7
現在収入を伴う仕事をしている =1、それ以外 =0のダミー変数
現在結婚している =1、それ以外 =0のダミ}変数
現在成人子と同居している =1
、それ以外 =0のダミー変数
持家に住んでいる =1、それ以外 =0のダミー変数
規模の経済を考慮した I人当たり年間所得=(世帯当たり収入)/ (世帯人数の 2乗根)。ただし世
帯当たり収入は範囲で示された値の中央値をとっている。
7年 =1、それ以外 =0のダミ}変数
年数が 0
9年 =1、それ以外 =0のダミー変数
年数が 8
0・
1
1年 =1、それ以外 =0のダミー変数
年数が 1
教育年数が 1
2年以上 =1、それ以外 =0のダミー変数
、それ以外 =0のダミー変数
最も長く就いた職業が専門管理職 =1
最も長く就いた職業が事務販売サービス =1、それ以外 =0のダミー変数
最も長く就いた職業がマニュアル =1、それ以外 =0のダミー変数
最も長く就いた職業が自営業 =1、それ以外 =0のダミー変数
、それ以外 =0のダミー変数
最も長く就いた職業が農林漁業 =1
最も長く就いた職業が主婦(夫) =1、それ以外 =0のダミ}変数
高血圧である =1、それ以外 =0のダミー変数
心臓病がある =1、それ以外 =0のダミー変数
糖尿病がある =1、それ以外 =0のダミ}変数
肝臓病がある =1、それ以外 =0のダミ}変数
腎臓病がある =1、それ以外 =0のダミー変数
脳卒中がおきたことがある =1、それ以外 =0のダミ}変数
呼吸器系疾患がある司、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が北海道 =1、それ以外 =0のダミー変数
、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島) =1
現在の居住地が関東(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川)=1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が北陸(新潟・富山・石川│・福井) =1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が東山(山梨・長野・岐阜) =1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が東海(静岡・愛知・三重) =1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が近畿(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山) =1、それ以外 =0のダミー変数
、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口) =1
現在の居住地が四国(徳島・香川・愛媛・高知) =1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が北九州(福岡・佐賀・長崎・大分) =1、それ以外 =0のダミー変数
現在の居住地が南九州(熊本・宮崎・鹿児島・沖縄) =1、それ以外 =0のダミー変数
3区・大阪市)
現在の居住地が政令指定都市(東京 2
現在の居住地が政令指定都市(横浜市・名古屋市・京都市・北九州市)
,
3は仙台市現在の居住地が政令指定都市(札幌市・川崎市・神戸市・広島市・福岡市、 wave2
wave3は千葉市を含む)
0万以上の市
現在の居住地が人口 2
0万以上の市
現在の居住地が人口 1
0万未満の市
現在の居住地が人口 1
現在の居住地が町村
1
9
9
0年の観測値 =1、それ以外 =0のダミー変数
1
9
9
3年の観測値 =1、それ以外 =0のダミー変数
9
2
医療経済研究
Vo
.
1
2
0N
O
.
22
0
0
9
れる。男性の 10.4%が自身を「あまり健康で、ない」
は6
.
9回、男性は 5
.
5固に増加している。もともと
か「全く健康で、ない」と評価しているのに対し、
回数の多い女性が、老人保健制度移行以後、その
女性の 14.1%がそのように評価している。附表 2
傾向をより強めるようである。老健移行前後の健
の1
9
8
6年『国民生活基礎調査』の数値と比較する
康状態の変化を見ると、男女ともに、 70歳以上で
と、全国高齢者パネルのサンプルに含まれる高齢
は70歳未満と比べ、主観的健康感が悪いと答える
者の通院率が高く、自分の健康状態をよりよく評
割合が増えている。さらに年齢ごとの外来受診回
価する傾向があるといえる。
数、主観的健康が悪い割合を男女別に図 1 1から
・
個人の経済状態は世帯当たりの所得を世帯人数
図 2-2に示した。外来受診回数についてみると、
の平方根で除した等価所得で表している。男性の
男女ともに年齢が進むに従い回数が増えていく傾
平均値は約 293万円、女性の平均値は約 262万円
向が読み取れる。しかし、 70歳前後での顕著な傾
であった。教育年数に関しては、旧制の高等小学
向の違いは女性のみに観察される。年齢別の主観
校未満に当たる教育歴 (
8年未満)を持つ者は、男
的健康状態が悪い割合を見ると、男性では 70歳前
性では 11.9%に過ぎないのに対し、女性では 26.9%
後で大幅な傾向の違いが見られないのに対し、女
に上っていた。職業階層は、石田 (
2
0
0
6
)にならい、
性の場合は、 70歳を境に上昇傾向が強まっている。
最も長くついた職業を基に専門管理、事務販売、
(
5
)式の推定で、は t期の健康状態をは期の健康
マニュアル注ヘ自営、農林漁業、と、主婦(夫)
状態で説明することから、健康状態の異時点聞の
の 6つのカテゴリーに分類した。一方、慢性疾患
移行について表 4のクロス表にまとめた。男性で
の擢患率を見ると、高血圧、心臓病では女性で高
は前期の健康状態が悪かった者の 59.2%が今期の
く、糖尿病、肝臓病、脳卒中では男性の擢患率の
健康状態が悪く、女性では前期の健康状態が悪か
ほうが高くなっている注へその他の変数として、
った者の 50.4%が今期も健康状態が悪かった。こ
1の地
居住地の地域特性をコントロールするため 1
れより、男性の方が女性に比べ悪い健康状態が固
域ダミー、医療機関へのアクセスをコントロール
定する傾向がやや強いことが示された。
する市郡規模ダミ}を考慮している。
記述統計量より、男女間で社会経済的属性に関
表 3は、老健移行前後(つまり、 70歳未満か 70
して異なる分布が示されたこと、Bl
ackReportを
歳以上か)の医療機関利用の状況を、男女別に記
はじめとする社会疫学的な先行研究の多くが男女
述したものである o この表からは、男女とも、 70
別推計を行っており、男性に用いられる社会経済
歳以上で外来受診回数が上昇していることが読み
的属性の指標が女性にも適切であるかどうかにつ
取れる。 70歳未満の平均外来受診回数は女性が
いて多くの議論がある (Rob
e
r
tandHouse
,2
0
0
0
)却)
4
.
9回、男性が 4
.
0回であり、 70歳以上では、女性
ことから、本稿の計量分析では男女別の推計を行
表 3 老人保健制度適格前後の医療サービス利用と健康状態
男性
外来受診回数
主観的健康悪い
Numbero
fObs
7
0歳未満
Mean
S
t
d
.D
e
v
.
4
.
0
1
1
8
.
19
3
0
.
3
1
3
0.
11
0
8
5
5
女性
7
0歳 以 上
Mean
S
t
d
.D
e
v
.
1
1
.
0
5
5
5
.
4
9
2
0
.
1
2
3
0
.
3
2
8
8
6
5
7
0歳未満
Mean
S
t
d
.D
e
v
.
4
.
9
3
3
1
0
.
3
5
9
.
12
3
0
0
.
3
2
8
1
1
0
0
7
0歳以上
Mean
S
t
d
.D
e
v
.
6
.
9
0
9
1
3
.
0
2
5
0
.
1
8
4
0
.
3
8
7
1
2
6
9
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
9
3
図 1・2 年齢別平均外来受診回数(女性)
図 1・1 年齢別平均外来受診回数(男性)
8
9
8
ωE戸
回
一ト
目白﹁E
7'
6
6
4
5
4
2
60
70
65
75
60
80
図 21 年齢別主観的健康状態(悪い)の割合(男性)
75
70
65
80
Age
Age
図 2 2 年齢別主観的健康状態(悪い)の割合(女性)
・
0
.
2
0
0
.
2
5
0
.
1
5
白石田正
号0.20
庄
0
.
1
0
0
.
1
5
0
.
1
0
0
.
0
5
60
75
70
65
80
60
75
70
65
80
Age
Age
表 4 前期・今期の主観的健康状態クロス表
<女性>
<男性>
。
前賎の主観的健康悪い
前期の主観的健康悪い
O
o(度数)
(
%
)
今期の
1(度数)
主観的健康悪い
(
%
)
T
o
t
a
! (度数)
(
%
)
942
1 T
o
t
a
!
5
3
o(度数)
995
0
.
7
7 8
7
.
5
1
9
3
.
5
5 4
77
1
4
2
65
6.
4
5
5
9
.
2
3
1
2.
4
9
1
0
0
7
1
3
0
1
1
3
7
1
0
0
1
0
0
1
0
0
うことにした。
今期の
主観的健康悪い
(
%
)
1(度数)
(
%
)
T
o
t
a
! (度数)
(
%
)
1
2
0
3
I T
o
t
a
l
1
1
4
1
3
1
7
9
0
.
0
4 4
9
.
5
7
84
.
1
1
3
3
1
1
6
249
9
.
9
6 5
u
.
4
3
1
5
.
9
1
3
3
6
230
1
5
6
6
1
0
0
1
0
0
1
0
0
属性が医療需要に及ぼす効果を推定する。また、
老健制度への移行を利用して、社会経済的属性と
4
.実証モデル
医療サ}ピスの価格(自己負担率)の交互作用が
(1)外来医療需要関数
医療需要に及ぼす効果についても推定する。 (
6
)
分析の枠組みで示した (
6
)式より、社会経済的
式の被説明変数 Mt.lは、過去 3ヶ月間の外来受診
9
4
医療経済研究
Vo
J
.
2
0N
o
.
22
0
0
9
回数であり、説明変数となるのは、 (
4
)式と (
5
)
が含まれる。職業階層と 70歳以上ダミ}の交差項
式共通の Xt
.
1に含まれる変数であり、年齢、年齢 2
によって、老健移行への効果が若年時の医療保険
乗、老健制度移行を意味する 70歳以上ダミー、働
の種別が異なるグループ間で異なったかどうかを
いているダミー、結婚しているダミー、成人子と
推測することができる。なお、被説明変数が外来受
同居ダミー、専門管理を基準とした(女性につい
診回数であるため、 W
inkelmann(2004)2川こ従い
ては主婦を基準とした)最長職ダミー、 0・7年を
基準とした教育年数ダミー、持ち家ダミー、 I人
c
o
u
n
td
a
t
aの分析に適した N
e
g
a
t
i
v
eb
i
n
o
m
i
a
l
m
o
d
e
l注目を用いる。また (
6
)式では当期の医療サ
当り所得(百万円)、北海道を基準とした地域ダ
ービス需要を当期の特性で説明する(形式上は前
ミーである。
期の医療サービス需要を前期の特性で説明する)
社会経済的属性と外来医療需要の関係は次のよ
うに考えられる。医療サービスの価格を一定とす
ため、 3期すべてのデータを用い、パネル分析を
行う。
れば、所得が高いほどより多くのサービスを需要
パネル分析の際に必要となる固定効果モデル、
できるため、その効果は正である。グロスマンモ
変量効果モデルの選択に当たっては、観察されな
デルでは教育水準は健康需要関数における効率要
い個人の特性を除去し、一致推定量を求めるとい
素とみなされる。医療受療を健康投資の 1要素と
う目的からは固定効果モデルが好ましいと考えら
し、総健康投資の効率を高めるものと考えれば、
れる。しかし、社会経済的属性に注目して外来医
教育水準と医療需要の関係は正だろう。次に最長
療需要関数を推定する場合、固定効果を用いると、
職と医療サービス利用の関係は複雑である。職業
時間によって変化しない高齢者の学歴や最長職の
階層を健康ストックの減耗率に影響を及ぼす要素
効果を推定することができないという問題が生じ
と考えた場合、職業の特性によって最適な健康水
る。また、 N
e
g
a
t
i
v
eb
i
n
o
m
i
a
lm
o
d
e
lの推定では、
準を維持するために必要な医療サ}ピス量が異な
全期にわたって外来受診回数が Oであったケース
るだろう。つまり減耗率が高くなるような職業の
を推定対象から落としてしまう不都合が生じる。
場合、需要する医療サービス量が増えるだろう。
そこで、老健効果を表す 70歳以上ダミーの効果に
その一方で、、わが国の若年医療保険が職業によっ
ついては固定効果モデルを採用するが、その他の
て職域保険と地域保険に 2分され、保険の種類に
変数の効果については変量効果モデルからの結果
よって自己負担率が異なることから、職業階層は
を補完的に使用する。
若年時の医療サービスの価格の決定要素という側
面も持つ。職業階層がどちらの要素として機能し
(2) 健康需要関数
ているかは実証による判断しかできず、その結果
(
5
)式より社会経済的属性が健康水準に及ぼす
をもって職業階層が医療需要及び健康需要に及ぼ
効果を測定する。健康需要関数の推定式 (
5
)式で
す効果を再考する。
は、今期の健康水準を前期の個人特性と前期の健
(
6
)式の Zt.lは医療サービス需要の式にのみに含
康水準で説明する。被説明変数Htは「主観的健康
まれる説明変数を表すが、これには、 1人当たり所
が悪い」である。これは主観的健康度についての
得と 70歳ダミーの交差項、職業階層と 70歳以上ダ
回答のうち、「あまり健康でない j または「全く
ミーの交差項、特定疾患の有無と、医療アクセスに
健康で、ない」場合は 1
、「全く健康J
、「かなり健康j
関する要素をコントロールする市郡規模ダミー注目
「ふつう」なら Oとなる 2値変数である。説明変数
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
Xt-lは、年齢、年齢 2
乗
、
9
5
7
0歳以上ダミー、働い
「国民生活基礎調査j の個票を用いて、健康状態
ているダミー、結婚しているダミー、成人子と同
の悪化が賃金所得の低下および就業の断念に及ぼ
居ダミ}、専門管理を基準とした(女性について
す効果を検証し、さらに健康状態による所得損失
は主婦を基準とした)最長職ダミ}、 0・7年を基準
を測定している。その結果 5
5歳以上の男性では、
とした教育年数ダミ}、持ち家ダミー、 1人当り
主観的健康状態が悪くなることに伴い、 0
.54-
所得(百万円)、北海道を基準とした地域ダミー、
2
.
2
5
%の所得を損失すると推定している。
主観的健康が悪いダミーであり、これらすべてが
5
) 式では、今期の健康状態
本稿が推定する (
前期の値をとる。「主観的健康が悪い」をアウト
を説明するのが「前期の就労状態」および「前期
カムとした場合、社会経済的属性と健康状態の関
の所得Jであることから強い同時性は避けられる
係は次のように考えられる。まず所得が高いほど
と思われるが、念のために就労状態、所得につい
より多くの健康投資ができ、その結果所得の係数
て内生性の検定を行い、誘導型方程式の推定によ
の符号は負となるだろう。次に教育が高いほど効
って一致性のある結果が得られるかどうかを検討
率的な健康生産ができるためやはり係数の符号は
する。
Wooldridge (
2
0
0
3
)23) とRiversand Vuong
負となると予想できる。職業階層については既述
したように、職業を健康ストックの減耗率の影響
(
1988)24),注目に従い、回帰分析の残差を用いた内
要素と考えるか、若年期の医療サービスの自己負
生性の検定を行う。就労の有無の内生性の検定の
担額決定要素として働くかで結果が左右される。
具体的な手順は、次に示す通りである。
減耗率の影響要素として機能する場合、人的資本
①
就労の有無を被説明変数とし、 (
5
)式に含まれ
よりも健康資本を使用する職業ーマニュアル職な
る説明変数と (
5
)式に含まれず健康需要関数
どの符号が正となるだろう。職業階層が若年時の
の誤差項と相関しない外生変数で回帰する。
医療保険の種別、つまり、医療サービスの自己負
②
ここで得られた残差を (
5
) 式の説明変数に
担価格の決定要素として機能するのならば、健康
加えて P
r
o
b
i
tmodelを推定し、その残差の係
投資の費用が高い自営業や農林漁業に従事するこ
数が統計的に有意である場合品:E[X
t
]
t
1U
とが主観的健康観の悪いことに正の影響を持った、
=0を棄却する。
ろう。
被説明変数が 2値変数であることから P
r
o
b
i
t
さらに、所得の内生性についても同様の手順で
検定を行う。ここで問題となるのは①で加える外
modelを用いるが、説明変数に前期の値を用いる
生変数の選択である。調査から得られたデータの
ため 2期分のデータしか使用できない。 Panel
中から、就労の選択と相関するが健康需要関数の
p
r
o
b
i
tmodelか P
o
o
l
e
dp
r
o
b
i
tmodelの選択は検定
誤差項とは相関しない変数、あるいは所得と相関
の結果に委ねることとする。
するが健康需要関数の誤差項とは相関しない変数
ところで、健康需要関数を推定する際問題とな
を選ぶことは困難を極める。そこで、居住地域を
るのは、説明変数として含まれる就労の選択およ
もとに次のような変数を求め、それぞれの変数と
び所得と健康状態の向時性の問題である。そもそ
健康状態、就労、所得との相関を求め、条件を満
も健康と就労、健康と所得に関しては双方向の因
たす変数を外生変数として用いた。外生変数の候
果関係が考えられ、本稿とは逆の因果関係に注目
補としたのは、地域別有効求人倍率、 1人当り地
した先行研究も多い。例えば、岩本 (
2
0
0
0
)2勺ま
域内総生産、地域別第一次産業従業比率、地域別
9
6
医療経済研究
V
o
.
1
2
0N
o
.
22
0
0
9
拠出型国民年金受給率、地域別県内従業者割合で
めたことの表れと言えるだろう。教育年数に関し
ある。この中から、男性サンプルに関しては、就
ては、すべての要因をコントロールすると、最も
労、所得ともに地域別拠出型国民年金受給率、女
教育年数の長い者がより多く外来受診していた。
性サンプルに関しては、就労については地域別有
老健への移行を表す 70歳ダミーと、所得及び職業
効求人倍率、所得については 1人当り地域内総生
階層の交差項を取り入れたら (
3
)の結果では、 1人
産が条件を満たした。
当り所得と 1人当り所得 x70歳ダミーが有意な効
果を示したが、その符号はそれぞれ負と正であり、
5.結果
これは、老健移行後、低所得のものほどより外来
(1)社会経済的属性と外来医療需要
需要を増やすとの仮説とは逆に、高所得ほど外来
表 5は、男性を対象とした外来医療需要関数の
需要を増やすという可能性を示すものである。し
推定結果である。 5
・(
1
)と5・(
2
)はそれぞれ、慢性
かし、固定効果モデルの 5・(
4
)では、 1人当り所得
疾患と主観的健康によるコントロ}ルを行わない
ダミー、 1人当り所得 x70歳以上ダミーともに有
分析とコントロ}ルを行った分析の結果である。
意な効果は観察されなかった。これより、観察さ
慢性疾患などによるコントロールのない推定で
れない個人の特性の影響を取り除いた場合、所得
は、年齢、結婚している、教育年数が正の、現在
の医療需要への効果はなかったと言える。その他、
働いていること、成人子と同居していることが外
5・(1)から 5
(
4
)の結果で特筆すべき点は、高齢男
来医療需要に負の効果を示した。しかし、慢性疾
性の外来受診需要が、居住地域によって大きく影
患などをコントロールすると、年齢と成人子と同
響されていたことであった。医師密度の代理変数
居の効果は有意で、はなくなった。また、どちらの
である市郡規模の効果に加え、地域ダミーの多く
モデルでも所得による受診回数への影響は見られ
が統計的に有意な効果を示した。
なかったが、 5・(
2
)および固定効果モデルの 5
(
4
)
同じく外来医療需要関数の推定の女性に関する
で、持ち家があることが外来医療需要に正の効果
結果が表 6である。 6
-(
1
)では、現在結婚してい
を示した。また、 5
-(
2
)から、最長職が農林漁業
ることが正の、持ち家に住んでいることが負の効
者であることが外来医療需要に正の効果を与えて
果を示した。慢性疾患と主観的健康をコントロー
いたことが明らかになった。これは、農林漁業者
ルしたら (
2
)では、外来受診回数に対する持ち家
が若年時国民健康保険に加入し、自己負担率が3
の効果は消えたが、結婚していることの正の効果
割であったことを考慮すると予想に反する結果で
は有意性を示した。 70歳ダミーと所得、職業階層
ある。市郡規模ダミ}によって診療機関へのアク
3
)の結果では、結婚して
との交差項を入れたら (
セスをコントロールした場合は、雇用者に較べ機
いることと慢性疾患以外の個人特性は統計的有意
会費用が安い農林漁業者の方の医療需要が高くな
な効果を示さなかった。 6
-(
4
)は、個人の異質性
った、という解釈が可能だろう。さらに、 5・(
4
)
をコントロールしたうえで 70歳ダミ}の効果を確
から、最長職が農林漁業であった場合、最長職が
認するため、固定効果モデルによる推定を行った
管理専門職と比較して老健移行後、より外来医療
結果である。ここでは農林漁業と 70歳ダミ}の交
需要を増やしていたという結果を得た。これにつ
差項が正に有意な効果を示した。これは、ずっと
いては、老健移行による自己負担額の差益が大き
主婦をしていた女性に比ぺ、農林漁業を最長職と
い農林漁業者が、 70歳に達してより医療需要を高
して挙げた女性が老健移行後により外来需要を増
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
9
7
表 5 外来医療需要関数の推定(男性)
成人子と同居
事務販売サービス
マニュアル
自営業
農林漁業
8
9年教育
1
0
1
1年教育
1
2年以上教育
持ち家あり
1人当り所得(百万円)
1人当り所得 x7
0歳以上
事務販売サービス x7
0歳以上
マニュアル x7
0歳以上
自営業 x7
0歳以上
農林漁業 x7
0歳以上
H
o
:
V
a
r(
u
)=0
P
r
o
b
>
=
c
h
i
b
a
r
2
Numbero
fO
b
s
e
r
v
a
t
i
o
n
Numbero
fl
n
d
i
v
i
d
u
a
l
s
L
o
g
l
i
k
e
l
i
h
o
o
d
5-(
2
)
5-(
3
)
5-(
4
)
変量効果モデル
変量効果モデル
固定効果モデル
C
o
e
f
.
S
t
d
.E
r
r
.
.
13
7
8
0
.
2
4
8
7* 0
0
.
0
0
1
6
0
.
0
0
0
9
0
.
1
5
2
2
0
.
1
3
8
2
ー0
.
3
5
3
0*
*
*0.0919
0
.
3
9
6
6*
* 0.1660
.
0
9
2
6
0.
17
0
5* 0
0
.
1
4
2
0
0
.
1
3
7
9
0
.
1
8
1
8
0
.
1
4
1
0
0
.
2
2
7
6
0
.
1
5
9
3
0
.
2
4
5
4
0
.
1
5
5
2
0
.
1
6
9
6
0
.
1
4
5
0
.
1
6
8
5
0
.
3
0
2
6* 0
0
.
3
4
6
4*
* 0.
17
0
7
0
.
1
1
5
9
0
.
1
4
2
1
0
.
0
0
9
0
0
.
0
2
0
8
年齢
年 齢 2乗
7
0歳 以上
働いている
結婚している
両血圧
心臓病
糖尿病
肝臓病
腎臓病
脳卒中
呼吸器疾患
主観的健康悪い
1
9
9
0年観測値
1
9
9
3年 観 測 値
市 郡 規 模2
市 郡 規 模3
市 郡 規 模4
市 郡 規 模5
市 郡 規 模6
市 郡 規 模7
東北
関東
北陸
東山
東海
近畿
中国
四国
北九州
南九州
定 数項
5-(
1
)
変量効果モデル
.
0
9
0
5
0
.
15
7
1* 0
0
.
1
5
9
5
0
.
0
9
9
0
* 0.2786
0
.
6
0
8
3*
0.
14
6
9
0
.
2
6
3
0
0
.
2
5
9
2
0
.
2
0
4
1
0
.
6
2
7
2*
*
*0.2243
0
.
6
8
0
0*
*
*0.2147
* 0.2053
0
.
5
0
1
6*
0
.
41
9
7
0
.
2
6
9
7
0
.
8
0
0
0*
*
*0.2456
.
3
0
6
5
0
.
5
6
9
3* 0
0
.
7
6
6
6*
*
*0.2870
0
.
4
2
3
7
0
.
2
7
1
9
0
.
6
0
3
7*
* 0.2564
0
.
4
3
0
3
0
.
2
6
6
2
1
.0
2
5
0*
*
*0.2986
0
.
6
4
3
9*
* 0.3001
0
.
3
4
2
9
0
.
2
8
7
5
1
0
.
5
1
5
1*
* 5.0350
幽
司
0
.
0
0
0
0
1
2
3
4
5
3
2
2
8
1
4
.
2
6
8
6
注) *有意水準 10%
、**有意水準 5%
、***有意水準 1%
C
o
e
f
.
S
t
d
.E
r
r
.
0
.
2
1
6
4
0
.
13
4
6
.
0
.
0
0
1
4
0
.
0
0
0
9
0
.
1
0
1
7
0
.
13
6
4
0
.
1
8
0
6*
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0
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.
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0
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*0.0835
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*0.1111
.
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5
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*
*0.1564
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.
2
3
1
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0
.
4
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* 0.2018
.
1
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0
.
2
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0
.
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*0.1226
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.
2
2
1
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.
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0
.
2
8
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0
.
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*
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.
1
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.
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.
2
2
9
0
0
.
1
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.
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0
.
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1
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*
*0.1910
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.
6
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4
7*
*
*0.
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.
3
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2
7
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.
2
4
9
5
*
*0.2266
0
.
6
5
2
3*
* 0.2772
0
.
6
2
0
2*
キ 0
.
2
6
2
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.
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.
2
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.
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0
.
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.
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*
*0.2729
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.
7
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0
5*
0
.
6
0
1
0*
* 0.2741
0
.
2
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.
41
7
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9
.
8
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.
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.
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.
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.
1
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0
.
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.
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.
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0
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.
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.
1
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.
1
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.
1
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.
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.
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.
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* 0.
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.
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1
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*0.0960
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*0.2519
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.
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.
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*0.1907
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*0.
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*
*0.2280
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* 0.2651
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* 0.2485
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*0.2750
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1
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* 0.2757
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回
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.
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.
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* 0.2827
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3
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9
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* 0.2589
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1
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.
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.
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0
.
1
3
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7
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.
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0
.
6
1
7
7
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.
7
7
5
2
0
.
5
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0
.
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7
2
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1
.
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5
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* 0.
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3
3
1
.
14
5
4*
* 0.
4
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6
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* 0.4562
1
.0
3
8
1*
.
5
6
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8
1
.0
0
9
7* 0
1
.5
8
7
9*
*
*0.5175
.
6
6
5
4
1
.2
8
4
4* 0
1
.
7
1
6
5*
*
*0.6178
1
.
3
9
7
1*
* 0.5635
1
.
4
0
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2*
*
*0.5503
0
.
5
4
4
1
0
.
7
5
0
0
2
.
1
0
6
3*
*
*0.6371
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.
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0
2
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*
*0.7078
0
.
5
7
9
2
0
.
8
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0
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9
.
8
6
9
7
6
.
3
6
4
3
場
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7
3
4
2
1
0
0
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.
15
8
8
9
8
医療経済研究
V
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.
1
2
0N
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.
22
0
0
9
表 6 外来医療需要関数の推定(女性)
6- (
1
)
変量効果モデル
Coe
f
.
S
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d
.E
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.
年齢
年 齢 2乗
70歳以上
働いている
結婚している
成人子と同居
専門管理
事務販売サ}ビス
マニュアル
自営業
農林漁業
9年教育
8・
1
0
1
1年教育
12年以上教育
持ち家あり
1人当り所得(百万円)
1人当り所得 x70歳 以 上
専 門 管 理 x70歳以上
事務販売サービス x70歳 以 上
マニュアル x70歳 以 上
自営業 x70歳以上
農林漁業 x70歳以上
局血圧
心臓病
糖尿病
肝臓病
腎臓病
脳卒中
呼吸器疾患
主観的健康悪い
1990年観測値
1993年観測値
市郡規模 2
市郡規模 3
市 郡 規 模4
市 郡 規 模5
市郡規模6
市 郡 規 模7
東北
関東
北陸
東山
東海
近畿
中国
四国
北九州
南九州
定数項
Ho:Var(
u
)=0
Prob>=chibar2
Numbero
fObservation
Numbero
fl
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0.
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0
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3
1
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0
0
0
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1
4
5
.
7
7
7
7
注) *有意水準 1
0%
、**有意水準 5%
、***有意水準 1%
6- (
2
)
変量効果モデル
C
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S
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* 0.0857
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0
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8
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1083
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2
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1
1
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1
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5
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0
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0
.
1
4
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0
.
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2
1
9
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1
1
6
0
ー0
.
2
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.
1
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.
0
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.
1
0
1
2
0
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0
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3
3
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.
0
1
9
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.
7
2
2
7*
*
*0.0793
0
.
5
9
8
3*
*
*0.0943
0.
4
497*
*
*0.1545
.
1
7
7
8
0
.
2
9
8
8* 0
0
.
0
9
4
2
0
.
2
0
6
7
0
.
2
5
7
9
0
.
3
0
6
8
0
.
3
3
4
8*
* 0.1524
0
.
5
2
8
2*
*
*0.0986
0
.
0
9
7
3
0
.
0
8
5
8
0
.
1
1
9
6
0
.
0
9
6
9
0
.
2
6
8
0
0
.
2
4
2
8
0
.
0
5
9
4
0
.
2
1
8
4
0
.
2
1
0
8
0
.
1
5
1
5
0
.
0
2
9
1
0
.
1
5
6
1
4
413*
*
*0.1649
0.
0
.
2
0
6
4
0
.
1
5
7
4
0
.
1
1
8
2
0
.
2
1
5
5
0
.
1
9
0
4
0
.
2
3
1
3
0
.
0
4
5
1
0
.
3
0
2
5
0
.
0
3
9
2
0
.
2
8
3
5
0
.
0
5
8
4
02290
0
.
1
5
2
0
0
.
2
0
1
5
0
.
2
1
0
6
0
.
3
1
9
4
0
.
7
5
8
8*
* 0.3463
*
*0.2045
0
.
5
7
8
6*
0
.
1
5
0
4
0
.
2
2
5
7
1
.
0932
4
.
6
8
7
5
0
.
0
0
0
0
1183
604
2
9
1
9
.
8
2
0
5
6-(
3
)
変量効果モデル
C
o
e
f
.
S
t
d
.E
r
r
.
0
.
0
3
0
6
0
.
1
2
9
5
0
.
0
0
0
2
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0
0
0
9
0
.
3
3
0
0
0
.
2
0
9
8
0
.
0
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2
5
0
.
1
0
2
3
0
.
2
0
5
2*
* 0.0860
0
.
1
1
4
3
0
.
0
8
5
2
0
.
0
5
7
9
02918
0
.
0
6
8
7
0
.
1
5
3
6
0
.
2
0
9
7
0
.
1
7
9
0
0
.
2
8
7
6
0
.
2
2
0
8
0
.
1
3
7
9
0
.
2
0
2
5
0
.
0
3
2
8
0
.
1
0
0
6
0
.
0
3
5
9
0
.
1
1
6
8
0
.
2
4
0
8
0
.
1
5
8
8
0
.
0
8
9
7
0
.
1
0
1
9
0
.
0
0
7
3
0
.
0
2
4
3
0
.
0
3
0
6
0
.
0
3
5
2
0
.
0
7
7
6
0
.
3
7
6
6
ー
02385
0
.
2
0
4
5
0
.
0
4
5
1
0
.
2
5
8
6
0
.
1
0
4
8
0
.
2
8
4
4
0
.
1
0
4
1
0
.
2
4
9
5
*
*0.0796
0
.
7
2
5
6*
0
.
6
0
0
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.
0
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5
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.
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.
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0
7
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2
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5
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0
.
3
0
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5
0
.
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8
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* 0.1525
0
.
5
2
9
6*
*
*0.0994
0β862
0
.
0
9
4
3
0
.
1
3
2
8
0
.
0
9
7
7
0
.
2
5
3
3
0
.
2
4
4
4
0
.
0
5
1
5
0
.
2
2
0
9
0
.
2
0
5
7
0
.
1
5
3
3
0
.
0
0
2
1
0
.
1
5
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* 0.
1676
0.
0
.
1
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0
.
1
5
9
6
0
.
1
2
0
7
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.
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1
5
6
0
.
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1
2
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.
1
9
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.
0
7
1
1
0
.
3
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2
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0
6
5
5
0
.
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0
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.
2
2
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0
.
1
5
6
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0
.
2
0
1
2
0
.
3
1
4
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0
.
2
1
1
3
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.
7
5
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0*
キ 0
.
3
4
6
5
0
.
5
5
3
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*
*0.2054
0
.
1
5
4
8
0
.
2
2
6
2
0
.
2
4
5
1
4
.
7
1
7
6
6-(
4
)
固定効果モデル
C
o
e
f
.
S
t
d
.E
r
r
.
。
.
1846
0
.
0
0
1
3
0
.
1
2
9
9
0
.
0
1
4
0
0
.
1
0
2
7
司
0
.
0
9
3
1
1812
0.
0
.
0
0
1
3
0
.
2
8
0
8
1558
0.
1616
0.
0.
1544
町
旬
胆
1880
0
.
0
5
2
8
0.
0
.
0
1
1
7
0
.
0
3
9
5
0
.
0
5
7
5
0
.
0
5
2
3
0
.
2
5
1
8
0.
4
202
0
.
2
7
4
9
02889
0
.
1
2
7
4
0
.
3
4
8
1
0
.
3
4
9
2
0
.
0
3
1
7
0
.
6
9
0
8ネ* 0
.
3
1
9
4
0
.
6
4
3
4*
*
*0.
1253
* 0.1358
0
.
3
4
1
0*
0
.
3
8
4
5
0
.
2
4
8
8
0
.
2
3
8
0
0
.
2
3
8
9
0
.
0
3
6
1
0
.
2
6
3
8
0
.
1
6
1
0
0.
4
400
0
.
0
7
3
3
0
.
2
0
9
3
0
.
3
4
2
3*
* 0.1369
0
.
1094
1064
0.
0
.
1
5
1
6
0.
1462
0
.
9
9
4
8
0
.
9
8
1
2
0.
4168
4
735
0.
0
.
0
9
3
4
0
.
3
2
9
0
0
.
3
7
3
0
0
.
3
4
6
4
0
.
1
3
0
1
0
.
3
9
3
4
0
.
0
1
7
8
0
.
3
7
2
8
0
.
8
6
7
6
0
.
8
4
6
3
ー0
.
9
7
6
2
0
.
7
7
1
6
1
.6244
0
.
9
9
6
0
司
1
.2716
0
.
9
8
9
0
1
.
6985*
* 0.
8510
0
.
7
7
5
9
1
.
1378
0
.
7
6
9
8
1
.
2601
.
9152 8
9
7
.
2
5
8
5
11
司
1
.
0665
0
.
7
7
0
8
.
8
1
8
1
1
.5331* 0
7
.
2
2
2
5
6
.
6
8
5
2
同
0
.
0
0
0
0
807
329
1
0
3
3
.
0
4
1
5
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
99
やすことを意味する。主婦が被扶養者として医療
なかった。そのため、 (
5
)式について E[X
t
J= 0
t
1U
保険に加入していた場合の外来受診の自己負担率
が満たされると判断した。
は、国民健康保険の自己負担率と同じ 3割である
さらに、 r
P
a
n
e
lp
r
o
b
i
tmodelとP
o
o
l
e
dp
r
o
b
i
t
ことから、若年時の自己負担率の違いというより
modelが同じである Jとする仮説は L
i
k
e
l
i
h
o
o
d
むしろ、機会費用が影響していたと考えられるだ
r
a
t
i
ot
e
s
t の結果、男女ともすべてのモデルで棄
ろう。つまり機会費用が高かった就労者が、老健
却されなかったため、 (
5
)式の推定は、個人を
移行後の総費用が安くなることによって、より外
c
l
u
s
t
e
rの単位とした r
o
b
u
s
ts
t
a
n
d
a
r
de
r
r
o
rを用い
来需要を増やしたと説明できるだろう。なお、 6
・
たP
o
o
l
e
dp
r
o
b
i
tmodelによった。
(1)から 6・(
4
)を通して、 1人当り所得は外来需要
に統計的有意な効果を示さなかった。
男性の健康需要関数の推定結果を表 7に示し
た。個人の所得を表す変数として 7
-(1)では 1人当
なお、データには Wave1から Wave3までの期
(
2
)は1人当たり所得が中央値以下
たり所得を、 7
間を通して 7
0歳を超えた個人のみならず、期間を
を低所得とするカテゴリー変数を用いているが、
通して常に 7
0歳未満であった個人、および期間を
7
・(1)では 5%
水準、 7
(
2
)では 10%
水準で、いずれ
0歳以上であった個人も含まれる。老
通して常に 7
も所得の係数が有意となった。示された限界効果
健移行の効果を厳密に推定するためには、鈴木
0
0万円増えると「健康状
から、 1年間の所得が 1
(
2
0
0
5
) が行っているように、対象期間内に 7
0歳
態が悪い j確率は1.1%減少し、「低所得」層に含
を超えた個人のみを分析対象とすることが望まし
.
2
%
増加することが明ら
まれる場合、その確率が 3
い。しかし、対象をそのような個人に限定した場
かになった。もともと男性の中の「健康状態が悪
合、固定効果モデルでは、男性の観測数が 3
0
0、
い」割合が約 1
0%であることから、限界効果の絶
9
0になるなど、サンプルサイズ
女性の観測数が 2
対値は大きくはないが、所得が健康状態に及ぼす
が著しく低下した。参考のためこの限定サンプル
効果が統計的に有意であることが確認された。
ですべてのモデルについて分析を行ったが、すべ
なお附表 3・1に示したフルサンプルの推定結果で
ての個人を含んだサンプルによる分析結果と同様
は、所得 1
0
0万円の増加について健康状態が悪い
の結果を得たため、表 5、表 6では、より大きな
5%の減少、低所得である場合健康状態が
確率は1.
サンプルからの結果を採用している。
.
4
%の上昇と、限界効果がやや大きく
悪い確率は 3
なっている。外来受診回数に正の効果を示した教
(2) 社会経済的属性と健康需要
育年数は、健康状態には有意な効果を示さなかっ
まず、健康状態と就労、健康状態と所得の内生
た。職業階層については、 7・
(
1
)
、 7・(
2
) ともにマ
性の検定を行ったところ、男性サンプルに関して、
ニュアル職と自営業が、健康状態が悪いことに正
「就労が外生変数である」という仮説検定の p
-値
の効果を示した。自営業の健康状態が悪いことに
は0
.
1
1
4
、「所得が外生変数である」という仮説検
ついて、若年時の医療保険の影響も考えられるが、
定の p
値は 0
.
15
6で、どちらの仮説も 10%
水準で棄
(
6
)式の推定では、自営業であることは医療需要
却されなかった。女性サンプルに関しては、「就
の抑制に影響していなかったので、この場合の健
労が外生変数である」という仮説検定の p
-値は
康への影響は、仕事の種類による減耗率への影響
0
.
7
3
6、「所得が外生変数である」という仮説検定
を通してのものという解釈ができるだろう。
のp・値は 0
.
8
7
8で、やはりいずれも仮説を棄却しな
表 8は、女性の健康需要関数の推定結果である
1
0
0
医療経済研究
Vo
.
1
2
0N
o
.
22
0
0
9
表 7 健康需要関数の推定(男性)
7- (
1
)
主観的健康観悪い(I
a
g
1
)
年齢(IagI
)
年齢 2乗(I
agI
)
70歳以上(I
agI
)
働いている(IagI
)
結婚している(Iag1)
成人子と同居(IagI
)
持ち家あり(IagI
)
I人当り所得(百万円) (
I
agI
)
低所得(IagI
)
8・9年教育(I
agI
)
1
0
1
1年教育(I
a
g
1
)
12年以上教育(I
agI
)
事務販売サーピス(IagI
)
マニュアル(Iag1)
自営業(I
agI
)
農林漁業(I
a
g
1
)
東北(IagI
)
関東 (
l
a
gI
)
北陸(I
agI
)
東山(IagI
)
東海(Iag1)
近畿(IagI
)
中国ClagI
)
四国(I
agI
)
北九州(I
agI
)
荷九州(I
agI
)
Numbero
fObservation
PseudoR
'
L
o
g
l
i
k
e
l
i
h
o
o
d
dF/dx
0
.
4
7
6
1*
*
ネ
0
.
0
4
1
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0
.
0
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0
3
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0
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1
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*
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.
0
1
3
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1
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.
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1
0
7
0
.
0
3
0
4
0
.
0
1
1
4*
*
0
.
0
2
4
1
0
.
0
2
3
9
0
.
0
2
9
1
0
.
0
2
3
7
0
.
0
7
2
1*
*
0
.
0
7
0
7*
0
.
0
0
0
4
0
.
0
0
9
2
ー0
.
0
3
8
5
ー0
.
0
0
0
3
0
.
0
4
0
5
*
0
.
0
6
2
5*
0
.
0
4
0
9
0
.
0
0
1
1
0
.
0
1
2
6
ー0
.
0
2
9
9
0
.
0
3
9
3
873
0
.
2
8
2
6
2
1
6
.
9
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1
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.
0
2
5
2
注) *有意水準 10%
、**有意水準 5%
、***有意水準 1%
が、男性とは異なり所得は主観的健康状態に統計
となった。
的有意な効果を示さなかったが、持ち家にすんで
いることは、 10%
水準で有意に健康状態が悪い確
6.まとめ
率を下げていた。 8
-(
2
)からは、 1人当り所得が低
所得に分類される場合の方が、「健康状態が悪い」
本稿は、グロスマンの健康資本の概念を用いて、
確率を 4.5%下げるという、仮説とは反対の結果を
日本の高齢者について所得、教育年数、職業階層
得た。教育年数も女性の健康状態に効果を与えて
などの社会経済的属性が医療需要や健康需要に影
いなかったが、最長職が事務販売サービスの場合、
響を及ぼしているか、という仮説の実証分析を行
就労経験のない女性に比べ「健康状態が悪い」確
った。
率が 5%低かった。 Robertand House (2000) に
医療需要関数の分析結果から、男女ともに、所
あるように、男性に有効な社会経済的属性を表す
得による外来医療需要の抑制は観察されなかっ
指標が女性に適切かどうかという疑問が残る結果
た。日本の医療保険制度では、 7
0歳未満の若年層
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
1
0
1
表 8 健康需要関数の推定(女性)
8-(
2
)
8-(
l
)
主観的健康観悪い(lag
l
)
年齢 (
l
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1
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2年以上教育(la
専門管理(la
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1
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事務販売サービス(la
g
1
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1
)
自営業 (
l
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1
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農林漁業(Ia
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1
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東北(l
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1
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関東(l
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北陸(l
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)
東山(l
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1
)
東海(l
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近畿(l
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中国(lag
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0
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0
.
0
7
6
5
注) *有意水準 10%、**有意水準 5%、***有意水準 1%
では、職業や雇用形態によって保険の種別、ひい
は健康の減耗率の要素であると同時に、医療保険
ては保険料と自己負担率が異なることから、職業
の代理変数となっている点である。医療保険に関
階層による外来医療需要の相違を分析したが、結
する明示的な情報があるデータの使用が可能にな
果を見る限り、保険の種別による医療需要の格差
れば、職業階層が持つ 2つの要素それぞれの医療
は存在しなかったといえる。最長職が農林漁業で
需要への効果を識別することが今後の課題であ
あった男性が老健移行後により医療需要を高めて
る。男 性について行った推定では、医師密度の代
いたことは、自己負担額が安くなったことによる
理変数として使用した市郡規模、および地域特性
効果、つまり価格効果が他のグル}プより大きか
が外来受診に大きく影響していた。本稿の主旨と
ったことによる説明が可能である。しかし、結果
は異なるが、居住地域による医療需要の格差は今
の解釈で注意すべきは、本稿で用いたデータには
後の分析の大きなテーマとなろう。
医療保険に関する直接的な情報がなく、職業階層
d
女性について行った分析からは、所得、教育年
1
0
2
医療経済研究
V
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0
9
数は、外来医療需要に影響を持たないことが明ら
られよう。教育年数の健康状態への直接的な効果
かになった。その一方で、現在の婚姻状態が外来
が観察されなかったことは、外来受診以外の健康
受診回数に大きく影響していたことは、婚姻状態
投資の量が、教育年数よりもむしろ所得の影響を
が女性の社会経済的な状況を代理している可能性
多く受けていたことが原因ではないかと考えられ
も高く、等価所得のみならず、婚姻状態の経済的
る。低所得、マニュアル職、自営業の男性の健康
な側面を考慮した分析が今後の課題として考えら
水準が低いことは、健康投資モデルによってうま
れる。固定効果モデルの結果から、最長職が農林
く説明できる。彼らの健康水準を引き上げるため
漁業である女性が老健移行後に外来受診回数を増
には、総健康投資の費用を下げることが必要とな
加させていたことが明らかになったが、これは、
ろう。本稿の分析対象は個人であり、得られた結
健康投資における機会費用の影響を示唆するもの
果から社会全体の厚生を議論することはできない
と解釈できるだろう。医療サービスの価格(自己
が、医療需要や健康の格差について需要者サイド
負担率)が同じ場合は、機会費用の高い就労者が
からの政策提言を述べるのであれば、社会経済的
受療を控えると考えられる。また、女性が家庭内
属性によって健康投資の費用が高くなるグループ
労働に加え職業を持つ場合は、男性よりも時間的
に対し、機会費用をも含めた総健康投資(健康増
制約が強くなると考えられる。現在の若年医療保
進行動)の費用を相対的に安くすることが有効な
険では自己負担率が一律 3割に統ーされたが、こ
施策の一つであろう。
のような場合就労する女性と専業主婦の間で医療
本稿では、使用可能なデ}タが 1
9
8
7年から 1
9
9
3
サービス需要に相違が生じる可能性が考えられ
年に限られることから当時の老健の効果を分析し
る。本多・大日 (
2
0
0
3
)お)が指摘しているように、
た。当時、 70歳以上の高齢者の医療給付は原則 1
0
名目の自己負担率を統一することが医療サーピス
割であり、患者は月当たりの僅かな一部負担を支
に関する費用の公平化と必ずしも結びつかないこ
払うにとどまっていた。しかし、 2
0
0
8年9月現在、
とについての議論が必要であろう。
70歳から 74歳の前期高齢者の自己負担率は 2割と
PAMを用い、前期の健康状態を今期の健康状
なっている。さらに、低所得によって保険料の支
態の説明変数の 1っとしたが、社会経済的属性と
払い能力がないことで、無保険に陥った場合、医療
健康状態の関係について男性では先行研究と整合
サービス受診の費用は膨大となる。今後の分析で
性の高い結果が得られた。つまり、前期の健康状
は、所得階層によって医療需要に差が生じている
態をコントロールしでも、所得が高いほど主観的
かどうかがより大きな焦点となると考えられる。
健康が悪いと答える確率が低く、所得が中央値以
各種調査などで、「経済的な理由で必要があるに
下の低所得層では健康状態が悪いと答える確率が
も関わらず受診しなかったか」と高齢者に直接問
高かった。職業階層による健康水準の相違では、
うことも求められよう。本研究のデータからは、
マニュアル職、自営業で主観的健康状態が悪かっ
所得による医療需要の格差が観察されなかったに
た。先にも述べたように職業階層が若年時の医療
も関わらず、所得による健康格差が確認された。
保険の代理変数となっている可能性が高く、解釈
今後医療需要に格差が生じれば、健康の格差はこ
に留意が必要であるが、この結果は、マニュアル
れ以上に拡大する可能性がある。その検証は今後
職、自営業に従事する者で健康資本の減耗率が高
の最も重要な課題である。
く、健康投資の費用が高くなることに一因が求め
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
謝辞
本稿の分析に当たり、東京大学社会科学L研究所附属
1
0
3
ョン指標を用いて医療需要の公平性を測っている。
5 老人保健制度は 1973年、老人福祉法に基づき
日本社会研究情報センター SSJデータアーカイブから
「老人医療費支給制度」が設立され、 7
0歳以上の老
「老研一ミシガン大全国高齢者パネル調査 Wave
,
l
人医療費が無料となったことに始まる。この制度
Wave2,Wave3J (東京都老人総合研究所、ミシガン
大学)の個票データのご提供を頂いた。また、本稿は、
減少に伴う低収入のリスクと、有病率の上昇・疾
文部科学省科学研究費補助金(基盤研究 B、1
9
3
3
0
0
6
2
)
病の重症化というリスクを同時に抱える高齢者が、
は、当時、年金制度が未整備のなか、労働所得の
の助成を受けた。記して感謝の意を表したい。本稿は、
費用を理由に受療を敬遠することなく、健康の保
2
0
0
7年 7月の医療経済学会第 2回研究大会報告論文を
持を図れるよう保障することを目的とした。 1
9
8
3
加筆・修正したものである。討論者の増原宏明先生
年、制度は「老人保健法」に再編成されたが、そ
(国立長寿医療センター研究所)からは大変有益なコ
こでも、高齢者の受診は大幅な負担軽減によって
メントをいただいた。 C
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a(大阪大学)、
平等に確保され、 2
002年度に定率自己負担制度が
C
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.McKenzie (慶麿義塾大学)、梶谷真也(明星
大学)、鹿野繁樹(大阪府立大学)、暮石渉(立命館大
導入されるまでは、月単位の定額一部負担金制度
学)、坂田圭(立命館大学)、関田静香(日本学術振興
6 ここでいう「費用」とは資本の使用者費用のこと
が維持されてきた。
会)、玉田桂子(福岡大学)、吉田恵子(桃山学院大学〉、
を指す。つまり、 t期の健康資本の費用 =t期の健康
若林緑(大阪府立大学)の諸先生からは貴重なコメン
資本の使用×健康投資の価格である。資本の使用
トや手法に関するご指導をいただいた。また、匿名の
は年齢と使用の集中度に依存し、健康投資の価格
差読者および編集委員からは大変詳細かっ建設的なコ
には当然機会費用も含まれる (MuurinenandLe
Grand,1
9
8
5
)国)。
メントをいただいた。ここに厚くお礼を申し上げたい。
当然のことながら、本稿の内容に関する一切の誤りは
筆者の責に帰するものである。
7 Wagstaff (
19
9
3
) のモデルでは H九=sX
t+Utと
して t
期の特性で Hちを説明するが、本稿で、は S
a
l
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2
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2
)叫の例にならい、先決変数である Xt.1を用い
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1 欧米を中心とする先行研究では S
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s (SES:社会経済的地位)という用語が共通
る
。
8 職業を減耗率に影響する要素と見る根拠について
MuurinenandLeGrand (
19
8
5
) は次のように論じ
して用いられているが、「地位」が身分や立場を指
ている。個人は健康資本、人的資本(教育)、金銭
す用語であるため、本稿では「社会経済的属性」
的な資本の 3つの資本を持っており、人的資本が低
という用語に統ーして用いる。
2 近藤 (
2
0
0
5
)制は、 1
5自治体の高齢者約 3
.
2万人
所得を得る。健康資本の集中的な利用は高い減耗
を対象に行った調査から、所得や教育年数の違い
率に結びつき、結果として健康資本の費用を引き
が抑うつ、転倒、閉じこもりなどの要介護因子に
上げる。また CaseandDeaton (
2
0
0
3
)3)) は、マニ
い場合などは健康資本を集中的に使用することで
関連していることを確認し、日本を「健康格差社
ュアル職の健康資本の減耗率が高いことを実証分
会」と称している。
析で確認している。
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4歳ま
9 使用可能なデータが wave3までに限られている
での人口中、 1
9
.
5
%が無保険であると報告している。
4 遠藤・駒村 (
1
9
9
9
)28) は、公的医療保険の、所得
ことから wave4までの期間に死亡した個人を特定
することができないが、本人の入院などによって
格差による医療需要の不平等の改善の程度を実証
代理調査が行われることを考慮すると、「本人調査」
分析した先駆的な研究であり、そこでは、医療ア
を完了した個人を取り出すことでその目的に沿う
クセスの改善効果を「公的医療保険の所得再分配
ことができたと考える。
1
0 健康需要関数の推定に関しては、フルサンプルに
効果」という視点で、捉え、高齢者ほど公的医療保
険による改善効果が大きくなることが示されてい
る。また本多・大日 (
2
0
0
3
) はコンセントレーシ
よる結果を附表として提示した。
1
1 各種製造・建設・工事作業者および採掘作業者が
1
0
4
医療経済研究
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0
0
9
「マニュアル」に含まれている。
1
2 社会経済的属性による慢性疾患の擢患率の違いに
ついて、石田 (
2
0
0
6
) と同様の分析を試みたが、
絶対的な擢患率が低い上に、サンプルサイズが小
さいことから、統計的に意味のある結果を得るこ
とができなかった。そこで慢性疾患の有無は、医
療サ}ピス需要を分析する際のコントロール変数
とするにとどめた。
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1
3 医療需要に影響を及ぼす要素として「医療機関へ
8
) 吉井清子,他.日本の高齢者一介護予防に向けた
の物理的なアクセス Jが考えられる。この要素の
社会疫学的大規模調査.高齢者の心身健康の社会経
代理変数として『医師・歯科医師・薬剤師調査』
済格差と地域格差の実態.公衆衛生 2
0
0
5
;6
9
:1
4
5
・
から居住地域ごとの医師密度一具体的には人口 1
0
万人当り医師数を求め説明変数として推定式に組
1
4
8
9
) 石田
浩.第 5章健康と格差一少子高齢化の背後
み入れたが、居住地の区分が東北・関東などと広
にあるもの.白波瀬佐和子編.変化する社会の不平
域であるため実質的なアクセスをうまく代理せず
等.東京大学出版会. 2
0
0
6
:1
3
7
1
6
3
「医師密度」はどのモデルにおいても統計的に有意
な効果を示さなかった。そこで居住地区の市郡規
模を医療機関へのアクセスの代理変数として用い
た
。
1
4 分析には STATA9のコマンド xtnbregを用い
た
。
1
5 R
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1
9
8
8
) では回帰分析の残差
を用いた内生性の検定の P
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している。
参考文献
1
) Townsend
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ーピスの需要および供給.筑波大学社会工学系デイ
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.
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4
) 増原宏明.老人保健制度と外来受診一組合健康保
険レセプトデータによる c
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)
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5
) 増原宏明,熊本尚雄,細谷圭.第 1章 自 己 負
担率の変化と患者の受診行動.田近栄治・佐藤主光
編.医療と介護の世代間格差.東洋経済新報社.
2
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1
1
6
) 鈴 木 亘 . 第 2章老人医療の価格弾力性の計測
と最適自己負担率一国保レセプトデータを用いた検
証田近栄治・佐藤主光編.医療と介護の世代間格
差.東洋経済新報社. 2
0
0
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5
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1
7
) 湯田道生.高齢者の外来医療需要における総価格
弾力性の計測.日本経済研究 2
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) 岩本康志.健康と所得.国立社会保障・人口問題
研究所編.家族・世帯の変容と生活保障機能.東京
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大学出版会. 2
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)本多智佳,大日康史.健康の公平性.大日康史編.
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2
8
6
健康経済学.東洋経済新報社. 2
0
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6
) 近藤克則.健康格差社会.医学書院. 2
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附表 1 医療保険制度 (1989年 12月時点)
対象被保険者
健康
保険
政府管掌
健康保険
主として中小企業
組合管掌
健康保険
主として大企業の
船員保険
共済組合
国民健康保険
老人保健
の被用者
被用者
船員
国家公務員・
地方公務員等
保険者
加入者数
(万人)
国
3,
466
本人
健康保険組合
国
共済組合
農林漁業者・
自営業者等
市町村又は
組合
被用者保険の
退職者
市町村
7
0歳以上の者
6
5歳以上で寝たき
り等の状態にある
者
医療給付
医療給付率。
3
.
109
9割
家族
入院 8割
外来 7割
4
7
1
.209
7割
4,
4
6
1
高額療養費
自己負担額が月
5万 7千 円 ( 低
所得者 3万 I千 8
百円)を超えた
場合は、超過分
を保険より払い
戻す 2
)
本人 8割
家 族 入 院 8割
外来 7割
(実施主体)
市町村長
1
0割
一部負担 3)
924
外来月 8
00円
00円(低所得者について
入院 1日4
0
0円)
は2ヶ月を限度として 1日3
よーー
出所:厚生白書平成元年版
1
) 医療給付率とは、保険者より給付される医療費の割合で、自己負担率は (
1
0割一医療給付率)となることに注意さ
れたい。
2
)1
9
9
1年5月より、自己負担額上限が 6万円(低所得者は 3万 3千 6百円)と改定された。
3
)1
9
9
2年1月より、外来 1月 900円、入院 18600円(低所得者については据え置き)に改定された。
附表 2 大規模調査のサンプル分布
全体
6
0歳以上
1
9
8
5年
国勢調査
1
9
8
6年
国民生活基礎調査
男性比率
7
0歳以上
働いている
0
.
41
8
0.
4
6
3
0
.
3
3
1
結婚している
男性
女性
0.
4
44
0.
494
0
.
8
5
2
0
.
47
7
0
.
2
1
5
0.
45
9
全体
持家あり
6
5歳以上
7
0歳以上
通院あり
通院あり
0
.
5
4
2
0
.
5
7
7
0
.
5
8
6
0
.
6
1
4
6
5歳以上
7
0歳以上
主観的健康悪い
主観的健康悪い
0
.
2
3
2
0
.
2
5
5
0
.
2
6
0
0
.
2
8
1
0
.
7
0
5
日本の高齢者の健康格差に関する計量分析
附表 3-1 健康需要関数の推定(男性フルサンプル)
AP3 1
主 観 的 健 康 観 悪 い ( Iag1)
年 齢 ( Jag1)
年 齢 2乗 ( lag1)
70歳 以 上 ( lag1
)
信bい て い る ( l
ag1
)
結 婚 し て い る ( Jag1)
成人子と同居(J
ag1)
持ち家あり (
l
(
a
百
gl
万
)
円) (
Jag1)
1人 当 り 所 得
低 所 得 ( Jag1
)
l
a
(
g
1
a
I
g
)
I
8
9年 教 育 (
10-11年 教 育
)
)
12年 以 上 教 育 ( Iag1
事務販売サ
ピス(l
ag1)
マニュアル (
]
a
g
1
)
自 営 業 ( Jag1
)
農林漁業(I
ag1)
東北(J
ag1)
関東(J
agI
)
北 陸 ( JagI
)
東 山 ( JagI
)
東 海 ( Jag1)
近畿 (
l
a
g
1
)
中国(I
ag1)
四国(J
ag1)
ヰ
じ
:
f
L
ナl
i(
Iag1)
南 九 州 ( Jag1
)
NumberofObs
PseudoR'
Log-likelihood
dF/dx
4
263*
*
*
0.
0.0153
0.0001
0.0341
0.0030
0.0416
0.0198
ー0
.0190
0
.
0
1
5
0キ**
国
0.0125
0.0087
ー0
.0205
ー0
.0003
0.0602*
*
0.0439
0
.
0
0
3
1
ー0
.0397
ー0
.0521
ー0
.0227
0.0578*
0.0763*
*
*
ー0
.0612*
*
0
.
0
4
6
5
0.0017
0
.
0
5
4
1*
0
.
0
4
3
1
1095
0.2397
-301
.8228
ー
同
AP3 1
(
1
)
Robust
Std.Err.
0.0504
0.0258
0.0002
0.0338
0.0172
0.0216
0.0174
0.0264
0.0052
dF/dx
4371 *
*
*
0.
ー0
.0146
0.0001
0.0338
ー0
.0029
0.0407
0.0195
0
.
0
2
2
3
0.0225
0.0290
0.0255
0.0276
0.0322
0.0376
0.0288
0.0283
0.0274
0.0387
0.0213
0.0169
0.0230
0.0251
0.0430
0.0224
0.0258
0.0345*端
0.0152
0.0053
0
.
0
2
4
0
0.0059
0.0672*
*
0.0500
0.0002
0
.
0
3
8
9
0
.
0
5
3
0
0
.
0
2
1
7
0
.
0
5
7
2*
0
.
0
7
8
0*
*
*
0
.
0
6
0
9*
0
.
0
4
5
4
0.0069
ー0
.0547
ー0
.0395
1095
0.2347
303.8051
ー
自
(
2
)
Robust
Std.Err.
0.0506
0266
0.
0.0002
0.0345
0.0176
0.0229
0.0177
0.0272
0.0180
0.0230
0.0289
0.0257
0.0290
0.0329
0.0385
0.0299
0.0298
0.0279
0.0402
0.0229
0.0174
0.0239
0.0265
0.0461
0.0237
0.0287
注) *有意水準 10%、**有意水準 5%
、***有意水準 1%
附表 3
-2 健康需要関数の推定(女性フルサンプル)
主観的健康観悪い (
l
a
g
1
)
年齢(I
agI
)
年 齢 2乗 ( lag1)
70
歳以上(Iる
(
g
l
a
I
(
g
)
l
a
I)
働
い
ている a
結婚してい
g1
)
成 人 子 と 同 居 ( Jag
1
)
持 ち 家 あ り ( Jag1)
1人 当 り 所 得 ( 百 万 円 )(
l
a
gI
)
低 所 得 ( Iag1
)
8-9年 教 育 ( Iag1)
10-11年 教 育 ( JagI
)
)
12年 以 上 教 育 (]ag1
専 門 管 理 サ(
1
ー
ag
ビ
1
)
ス
事務販売
(
Iag1)
マ ニ ュ ア ル ( Iag1)
自 営 業 ( Jag1)
農林漁業(I
agI
)
東北 (
l
a
g
I
1
)
)
関東(I
ag
北 陸 ( JagI
)
東 山 ( IagI
)
東海(J
agI
)
近畿(J
agI
)
中国(J
ag1)
四国 (
l
a
(
g
l
a
I
)
;
lt:
f
L
ナ
I
i(
Iag
I
)
南 九 州 ( Iagl
)
NumberofObs
PseudoR'
Log-likelihood
AP3-1ー(I)
Robust
dF/dx
Std.Err
0.3734*
*
* 0.0458
0.0043
0.0322
0.0000
0.0002
0
.
0
1
7
5
0.0384
0
.
0
2
1
7
0.0234
ー0
.0264
0.0215
ー0
.0217
0.0208
ー0
.0574キ*
0.0293
0.0061
0.0040
AP3-1ー (
2
)
Robust
dF/dx
S
t
d
.Err.
*
* 0.0459
0.3746*
0.0039
0.0323
0.0000
0.0002
0
.
0
1
5
3
0.0385
ー0
.0242
0.0230
ー0
.0209
0.0216
ー0
.0225
0.0207
ー0
.0568*キ
0.0292
0.0354事
0
.
0
1
2
1
0
.
0
1
3
8
ー0
.0423
0.0276
ー0
.0432
0
.
0
3
2
1
0
.
0
2
0
9
ー0
.0069
0.0552
0
.
0
1
2
3
0.0017
0
.
0
3
4
8
0
.
0
1
5
9
0.0102
0.0073
ー0
.0108
0.0001
0.0941
1043
0.1634
-348.7531
司
0.0102
ー0
.0108
ー0
.0395
ー0
.0285
ー0
.0429
0
.
0
3
3
5
0
.
0
1
9
9
0
.
0
0
8
5
0.0616
ー0
.0092
0.0019
0
.
0
2
9
7
0
.
0
1
4
5
0.0114
0.0115
0.0111
0.0046
0.0937
1043
0.1618
-349
.
4
208
同
旬
注) *有意水準 10%、**有意水準 5%、***有意水準 1%
0.0260
0.0274
0.0341
0.0428
0.0252
0.0290
0.0336
0.0318
0.0681
0.0459
0.0703
0.0589
0.0527
0.0528
0.0582
0.0694
0.0527
0.0762
0.0209
0.0257
0.0271
0.0327
0.0427
0.0251
0.0291
0.0334
0.0319
0.0651
0.0448
0.0697
0.0552
0.0519
0.0518
0.0561
0.0687
0.0502
0.0757
107
1
0
8
医療経済研究
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1
2
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0
0
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