食育フォーラム9月号

食育実践リポート
学校全体で共通した給食指導を
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埼玉県川口市立本町小学校
教職員用に「手引き」を作る
本町小学校は25学級で、全校児童数875人、
学校で指導を統一することの大切さ
「学校あげて共通した行動をとるということ
教職員45人の大規模の学校です。昨年度は半
はとても大切なことです。本町小では手の上げ
数近くの教職員が異動し、入れ替わりました。
方や発言の仕方なども『学習のやくそく』とし
毎日の給食の時間、教室での給食指導はおも
て統一した指導を行っています。そのため学年
に学級担任が行いますが、各担任のやり方で指
全体で授業したり、学年が上がってクラス替え
導内容がクラスによって違ってしまうことがあ
があっても子どもたちは混乱せずにすみます。
ります。学年が上がり、クラスが替わったり、
給食指導は、大学の教員養成課程や採用試験で
担任外の先生が指導する場合に「いつも先生は
も勉強する機会がなく、食育が現在のように盛
こうしていた。そうは言われなかった」となれ
んになる以前は、学級独自で行われていました。
ば、子どもは混乱してしまいます。そこで栄養
ですから若い先生の給食指導では、どうしても
教諭の高田先生は、今年度から教員向けの『学
残菜のことばかりが中心になりがちで、ほかの
校給食指導の手引き』の冊子を作り、給食指導
側面にまで注意が回らないことが多いのです。
のガイドラインを作りました。
そこで給食時間にこれだけは注意して指導して
ほしいということを、栄養教諭の側で一度文書
化し、お互いに共通理解を持ち、そのうえで共
通行動のもと、子どもたちに食の指導をしてい
きたいと思いました」と高田先生はおっしゃい
ます。
文書化することで共通理解が
生まれる
「限られた時間で最大の効果を」を掲げる本
町小の食育にとって、毎日の給食時間はとても
大切な時間です。冊子を見ると「減らす場合、
半分は食べたことを確認する」「学級担任は当
日の給食を通して食の話題(放送を参考)をす
教職員に配った『学校給食指導の手引き』
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る」「三角食べを指導する」など、給食時間に
担任が指導すべき細やかな点まで書かれていま
子を作ったよ』と他校に勤務する同僚に話すと、
す。一度文章にしてみることで栄養士の側の願
『よくできたわね』と驚かれてしまうのですが、
いも整理され、担任の先生と協力して食の指導
本校のような大規模校だけでなく、やはり栄養
ができます。
「栄養教諭は 1人ですから、給食
士の側できちんと文書化して全教職員で共通理
の時間にすべてのクラスを見て回ることはでき
解を持つことは、どの学校でもとても大切だと
ません。マナーや食べ方などはくり返し行うこ
思います」と高田先生はおっしゃいます。
とが大切なので、こうして教職員で共通した行
今月は、この冊子の内容をお伝えします。
動をとることはとても大切です。『こうした冊
●給食指導について
☆給食セット…「ナフキン・はし・マスク・コップ・あげパン用ビニル袋・給食用ハンカチ」
1.配膳方法
※歯ブラシは月曜日持ってくる
おぼん
ご飯
皿
角缶
おかず
果物
おかず
カ
大食缶
汁物
カ
・牛乳とパンは机の上に直接置く。
・学級担任はおかずの残りを確認する(2∼3人分以上残っている場合、「いただきます」
をする前に全体に配る)
2.会食
・「いただきます」は児童が順番で言う。
・減らす場合半分は食べる(学級担任確認)
・栄養価を細かく計算しての量なので、なるべく食べるように促す。
・体調の悪い児童の場合は配慮する。
・始めの5分は話をしない。
・12:40に当日の献立に関する放送があるので聞かせる。
・4∼6人のグループになって食べる。
(1年生も2学期からはグループで食べる)
・学級担任は順番にグループで一緒に食べる。
(個々の食べる量を把握する)
・学級担任は当日の給食を通して食の話題(放送を参考)をする。
・食事中にふさわしい会話の指導をする。
・三角食べをくり返し指導する。(1品食べの児童が多い)
・お皿を持って食べる。(犬食いにならないように)
・ご飯とめんの日は、はしを正しく使う。
・食べる前に、左がご飯、右が汁物か確認する。
・お代わりは、特定の児童に偏らないように順番にする。
クラス掲示用に作られた
「給食のやくそく」
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3.片付け
・学級担任は配膳台の所に立つ。
・「ごちそうさま」をしてから食器を片付ける。
・児童が残したものを確認し、もう一度声かけして食べられるようであれば食べさせる。
・最後は時間で終わりにする。
・食器の中や牛乳パックの開き方なども確認する。
・グループで食器をまとめる。(ランチルームは食器の関係でまとめることになっているので
そのためにもグループでまとめる)
・食器は基本的にまとめて給食室に返却する。(個々では給食室に持ってこない)
・給食時間は13:10までなので、10分には教室を出られるように片付ける。
・牛乳バックの水切りかごの底は週末洗う。(水あかが付きやすいため)
・金曜日は配膳台カバーも洗う。
●給食時計
時間
12:20
準 備
12:30
配 膳
12:40
食 事
13:05
片付け
13:10
清 掃
給食当番
児 童
①手をきれいに洗う。
②給食着・ぼうし・マスクをきちん
と身につける。
③牛乳パックを用意する。
④学級担任先頭で並んで右側通行で
給食を取りに行く。
⑤サンプルを確認する。
⑥安全に教室まで運ぶ。
(大食缶は2人で持つ)
⑦安全に静かに配膳する。
⑧パンや牛乳を配る。
・窓をあけて換気する。
・グループづくりをする。
・配膳台を用意し、ふく。
・手をきれいに洗って静かにしてい
る。
・ナフキンを机の上に広げる。
・静かに配膳する。
・待っているときも静かにしている。
「いただきます」
・給食の献立説明の放送を聞く
・マナーを守って楽しく食べる
・三角食べでよくかんで残さず食べる
「ごちそうさま」
⑨食器を正しく片付ける。
⑩牛乳バックをリサイクルする。
⑪給食室に食器食缶などを運ぶ。
⑫配膳台をきれいにふいて片付ける。
⑬歯をみがく。
・食器を正しく片付ける。
・歯をみがく。
・机を直す。
(ナフキンとはしは毎日きれいに
洗う)
●食器の並べ方
デザ
ート
おかず
ごはん
ごはん献立
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牛
乳
汁物
果物
牛
乳
パン・めん
おかず
スープ
パン・めん献立
●給食衛生指導について
1.準備
・用便を済ます。
・机の上を片付ける。
・身仕度を調える。
・窓を開けて換気する。
・配膳台をきれいにふく。
・せっけんを使って手をきれいに洗う。
・当番児童は給食着と帽子とマスクを身につける。
・体調の悪い児童、手指にひどい傷のある児童が当番の場合、朝の健康観察のときにほかの
児童を当番にする。また、交替したことを健康観察簿に記録する。
・当番以外の児童はナフキンを敷いて静かに待つ。
2.配膳
・手際よく安全に配膳できるように、順序を工夫する。
・配るときは静かに行う。
・果物などの配膳用に使い捨ての手袋が出ている場合はそれを使用する。
・おたまじゃくし、しゃもじなどは食べ物に触れるところは持たない。
3.食事
・落ちた物は食べない(配膳台・机上)
・はしやスプーンを落としたときは、よく水洗いする。
・パンと牛乳もおぼんの上にのせる。
・たくさんこぼした場合は、ビニル袋に入れ床はぞうきんでふく。
・食器の上におう吐した場合は、ほかの食器と一緒にせず別にして、担任が直接調理員に渡す。
(ノロウイルスの場合は感染源になる)
4.食後
・配膳台をきれいにふき、配膳台カバーをかける。
・はしは毎日持ち帰り、きれいに洗う。
・週末や、ひどく汚れたときは給食着を持ち帰り洗濯する。
●給食当番について
1.準備
・手洗いをする。
・給食善、帽子、ゴムの伸びていないマスクをする。
・担当の児童が配膳台を準備する。
☆朝の健康観察で給食当番を替えた場合は確認する。
2.運搬
・1年……大食缶と主食(パン、めん、ご飯)は調理員が運ぶ。
それ以外(牛乳・食器・おぼん・角缶・小食缶)は給食室から運ぶ。
・2年……大食缶は調理員が運ぶ。
それ以外(牛乳・主食・食器・おぼん・角缶・小食缶)は給食室から運ぶ。
・3∼6年…すべて給食室から運ぶ。(大きな食缶は2人で運ぶ)
☆とくにご飯の日は運ぶ物が多いので、確認してがら給食室に来る。
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3.通路
・必ず学級担任(エプロン着用)が給食当番を連れて給食室に取りに行く。
・走らず右側通行をする。
・配膳室は混雑するので、手早く食缶を取り、右側通行で出る。
・返すときも同じ順路を通る。
4.配膳
・サンプルケースの展示食を見る。
・配膳台に並べる。
・牛乳とパンは各机の上に配る。
・配る係りを決める。
・セルフサービス方式で1人分ずつ配膳する。
・ご飯は、※印のあるカップに盛りつける。(学校で作った炊き込みご飯は別)
・配膳が終わったら、配膳台の上に食器かごなど並べ、片付けの準備をしてから給食着を脱ぐ。
5.後片付け
◎1時10分までに給食室にまとめて返す。
・食器かご……食器には残菜を残さない。
皿・カップは上向きにする。
スプーンはそろえて入れる。
おたま・パンばさみはカップの上にのせる。(給食室で所定のところに置きや
すいため)
・おぼん………はしやストローの袋などごみが挟まっていないか確認する。
・食缶…………残ったおかずはそれぞれ入っていた食缶に入れる。
ふたを取ってかごに入れてから給食委員に渡し、残りをあけたら受け取りカウ
ンターに置く。
・牛乳…………牛乳パックを開いて洗い、水切りかごを使い乾燥させる。翌日乾いた物をまと
め、給食を取りに行くとき持って行く。
飲みかけの牛乳は、大食缶に入れ、パックは開いて洗う。まったく手をつけて
ない牛乳はそのまま給食室に返却し、黄色のケースに入れる。水切りかごは金
曜日に洗う。
・ご飯…………配って残ったご飯はビニル袋にまとめる。手つかずのご飯はケースにそのまま
残し、しゃもじを入れる。炊き込みご飯(角缶に入っている場合)も残りはビ
ニル袋にまとめる。ご飯の食器はかごの中に横向きに入れる。
・パン…………残りは1つにまとめビニル袋に入れる。
・めん…………残りは絶対に黄色の箱に入れず、まとめてビニル袋に入れる。
・デザート……ふたとカップを分け、カップは重ねて入っていた食缶に入れる。
ビニルのふたは、ビニルのごみと一緒に入れる。納豆の場合は、しょうゆの袋
やふたを中に入れてカップを重ねてビニル袋にひとまとめにする。
・ごみ…………ストローの袋・ジャムの袋・パンの袋・めんの袋などは1つにまとめ、空気を
抜いて小さくして、しっかり結わえる。揚げパンのパン箱に入っている大きな
ビニルとさらしは小さくまとめ、ビニルのごみと一緒に入れる。むしパンなど
の残りは、アルミから外し食缶に入れ、アルミは3回折りビニル袋にまとめる。
給食室の黄色のごみ袋に入れる。
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・全部給食室に運ぶ。
・残った物はすべて持ち帰らない。(牛乳・パン・ジ
ャム・アーモンドフィッシュなど)
・給食時間以外に給食を食べない。
・主食の残りやごみ、アルミはくの処理など必ずクラ
スごとにまとめて給食室に持って来る。
(バラで持って来ると風の強い日は飛んでしまう)
6.給食着について
・給食着は、各クラス10枚ずつ配布する。
・不足の場合は栄養教諭まで連絡する。
・週末は必ず洗濯する。
・配膳台カバーも週末洗濯する。
・学期末には給食着一式をランチルームに集め、PTA給食部の方に補修していただき、新学
期ランチルームに取りに行く。
●食物アレルギーの個別対応について
・保護者より症状を伺い、カルテを作る。
・学校長、学級担任、養護教諭、栄養教諭、保護者で対応方法を確認し、カルテに保護者の捺印
をいただく。
・栄養教諭が毎月献立表に除去食を指示し、学級担任に前月末渡す。
・学級担任は除去食の日は確認する。
●歯ブラシについて
・月曜日に持参し、歯ブラシトレーに集めて保健室の保管庫で消毒保管する。
・金曜日に持ち帰り、家庭で歯ブラシの状況を確認し、月に1回程度で交換してもらう。
●給食中止について
・学年で中止にする場合は、前月の5日までに栄養教諭に連絡す
る。
・急に中止にする場合でも2週間前までにする。それ以降はでき
ない。遠足の予備日なども2週間間がない場合は、前もって中
止にしておく。
・個人が5日以上欠席で中止にする場合は、1週間前まで学校に
「学校給食欠席届」を提出していただけると、給食費の精算が
できる。
・転出入の場合も、栄養教諭に日にちの連絡をする。
(食数の増減は3日後から)
学校給食欠席届
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