2016年7月発行(No,42

ヤングアダルト
Y A (中高生)のためのおすすめ本
NO.42 2016年 7月号
相模原市立図書館発行
電話:042-754-3604
物語 J913/ア
『 絵本「旅猫リポート」 』
有川 浩/著
村上 勉/画
文藝春秋
物語の主人公はナナという猫。ナナは5年前から飼い主である
サトルと暮らしています。そして今、サトルとナナは最後の旅に
出ます。それは、ナナの新しい飼い主を探す旅。そのわけは……。
新しい飼い主を探すために、友人たちを訪ねるサトルとナナ。
行く先々で懐かしい思い出がよみがえります。つらいこと、思い
通りにいかないこと、いろいろありましたが、信頼できる友人た
ちとの思い出です。
猫目線で語られる旅のリポートなのですが、ナナのサトルに対
する愛情に心打たれ、また、サトルの人に対する思いやりと優し
さが心にしみます。そして、キュンと切なくなるのです。
思いがけない結末に、物語のすべてを納得し、涙してしまうこ
とでしょう。でもなぜか、悲壮感ばかりでなく、優しさと温かさ
につつまれた一冊です。
物語 J918/YA
あくたがわ
芥川
『 ようこそ、冒険の国へ !(読書がたのしくなる・ニッポンの文学) 』
りゅうのすけ
うんの
じゅうざ
おしかわ
龍之介・海野 十三・押川
しゅんろう
こ さ か い
ふぼく
春 浪 ・小酒井 不木/作
くもん出版
この本には、少年たちが冒険に出かける物語が4編載っていま
す。50年以上前に書かれていますが、漢字には全てふりがなが
ふってあり、難しい語句には解説がついていて、とても読みやす
い本です。
「恐竜艇の冒険」は、退屈な夏休みに熱帯地方の多島海に冒険
に出かけた少年2人の物語です。2人が思いついたのは、恐竜艇
を作り近くを通る汽船を脅かしてニュースにしようという考えで
す。さて、成功するでしょうか?
「頭蓋骨の秘密」では、山の中で骸骨が発見され、少年科学探
偵が、骸骨に肉づけをして、犯人を捜します。天才少年の頭のよ
さには驚かされます。
他の二つの物語もとてもワクワクします。
この本を読んで50年前にタイムトリップして、少年たちと一
緒にワクワクゾクゾクの冒険に出かけてみませんか?
物語 J933/ド
『 わたしの心のなか 』
シャロン・M・ドレイパー/作
ま
横山 和江/訳
鈴木出版
ひ
メロディはもうすぐ11歳になる脳性麻痺のある女の子です。
話すことはできません。でもメロディの心の中にはたくさんの言
あふ
葉や知性が溢れています。それを周囲に理解されず、落ち込むこ
ともありますが、両親や隣人のヴァイオレットの助けもあり、普
通の小学校に通うことができました。
ある日、メロディにとって待ち望んだメディ・トーカー(会話
ができる音声装置)で意思が伝えられるようになります。しかし、
メロディに他の子と同じように考えていることがあることを知ら
なかったクラスメイトには、なかなかわかってもらえず、相変わ
らずひどい扱いをされます。それでもメロディにウィズ・キッズ・
クイズ大会に出場するチャンスが巡ってきました!そこでもたく
さんの試練がありますが、どんな時でもメロディは逃げずに立ち
向かいます。
いらだ
誰もが経験する疎外感や思い通りにいかない苛立ちなど、リア
ルな10代の女の子の気持ちに共感し、メロディを支える家族や
隣人の言葉にもたくさんのことを気づかされる1冊です。
物語 J933/マ
『 コービーの海 』
ベン・マイケルセン/作
だいた
あ
か
こ
代田 亜香子/訳
鈴木出版
コービーは事故で片足を失い義足をつけていますが、海が大好き!
なぜなら、義足なしでもクラスメイトの目を気にせずに自由に動ける
からです。ある日、サンゴ礁の中で網に絡まり苦しんでいるクジラを
発見したコービー。網を切ってやり、しばらく見守っていると、なん
とクジラは赤ちゃんを産んだのです。
赤ちゃんクジラと母親クジラから好かれ信頼されるコービー。これ
をきっかけにコービーは勇気を得て、前向きに強くなっていきます。
海と青い空を感じる物語です。
物語 J933/リ
『 大地のランナー
自由へのマラソン 』
ジェイムズ・リオーダン/作
原田 勝/訳
鈴木出版
南アフリカで実際に政府主導で行われていた人種差別政策“アパル
トヘイト”。黒人は、肌の色が違うだけで非人道的な扱いをうけまし
た。そんな時代を生きたのが主人公のサム。走ることが何よりも好き
で速いのが自慢でした。両親を殺され兄弟とも離ればなれになりなが
らも、親類のおじさんの家で暮らし始めたサムは、オリンピックやマ
ラソンについて知りました。そして、サムの挑戦が始まったのです。
怒りや憎しみ、人としての尊厳、こうした思いを抱きながら武力で
はなく走ることで戦い続けたサム。その原動力となったのは、「自分
が世界一になり、非人道的な扱いをしてきた人たちに勝つことで、世
の中は変わる。すべては、自由のために」という強い思いでした。実
在の南アフリカ共和国のオリンピック金メダリストをモデルにした
物語です。
絵本 E
『 六にんの男たち
なぜ戦争をするのか? 』
デイビット=マッキ-/作
中村 浩三/訳
偕成社
安住の地を見つけた6人の男たち。金持ちになると、それを守ろ
うと兵隊をやとい、次は近くの農場をのっとりました。そして、彼
らの行動はどんどんエスカレートしていきます。やがて……。
モノトーンの絵と、淡々と語られるおはなしを通して、
“どうして
人は争うのか”、ということを表現している絵本です。いいことでは
ない、してはいけない、ということは分かっていてもなくならない
さが
戦争。そこにあるのは、
“欲”という、人の性でした。
物語 J953/ド
『 みどりのゆび
。
新版 』
モーリス・ドリュオン/作
つぐお
安東 次男/訳
裕福な家に生まれ、両親に愛されて育ちとても純粋な心を持っている
少年チト。チトには不思議な力がありました。それは、さわるだけで花
や木など植物を芽吹かせる“みどりのゆび”を持っていることです。あ
る時、お父さんの会社が兵器を作っていることを知ったチトはショック
を受けました。そして、行動したのです!
純粋でまっすぐなチトは、常に正しいことは何か、自分が何をすべき
かを考え行動しています。成長と共に忘れてしまう、人として大切なこ
とを考えさせてくれる本です。
岩波書店
物語 J929/フ
『 友だちになれたら、きっと。イスラエルとパレスチナの少女の文通 』
ガリト・フィンク/作
メルヴェト・アクラム・シャーバーン/作
リツァ・ブダリカ/編
いぶき
けい/訳
鈴木出版
イスラエルの少女ガリトはユダヤ人、パレスチナの少女メルヴェトは
アラブ人です。2人は、1988 年8月、12歳のときに、ベルギー人
のリツァを介して文通をはじめます。
2人が暮らす地域では、ユダヤ人とアラブ人が同じ土地を「我らの土
地」だと主張し、紛争を繰り返していました。それでも少女たちは、
お互いを知りたいと思い、文通を続けたのです。のちに文通の記録を、
この本にまとめたリツァも、「ふたつの世界の対話は必ずできるはず
だ」と考えています。
しかし、そんな文通も、1989 年秋からぱったりととだえます。そ
の頃、2人が暮らす地域で起きていた紛争は、戦争(湾岸戦争)へと
発展していたのです。
この戦争が終結すると2人は、リツァを介して文通を再開します。し
かしこのとき、ガリトはメルヴェトに宛てた手紙に「もうこの先も友
だちにはなれないと思う」と書いたのです。文通をはじめた頃のよう
に、2人が歩みよる気持ちになれる日は、再び訪れるのでしょうか?
物語 J943/シ
『 ふたりきりの戦争 』
ひろすけ
ヘルマン・シュルツ/作
徳間書店
渡辺 広佐/訳
第二次世界大戦末期、ドイツ人の少女エンヒェン。彼女の戦
争に行った兄が行方不明になるところから物語は始まります。
彼女の周りをとりまいていた世界がめちゃくちゃになり、一人
あず
ぼっちになったエンヒェンは農家に預けられます。
そこには「ほんものの戦争」はなく、エンヒェンは平和な生
せんりょうち
つ
活に馴染んでいきます。また、占領地ロシアから連れてこられ
た外国人労働者の少年セルゲイもいました。
れんこう
ある日、セルゲイが連行されると知ったエンヒェンは、ほと
か
んど言葉を交わしたことのない彼と一緒に逃げ出します。
くうふく
おび
きょくげんじょうたい
寒さ、空腹、怯え、不安の続く 極 限 状 態 のなかで2人が見
たものは、欲望がむきだしになっていく人間の姿でした。
エンヒェンは、ナチスにさえ反抗しなければ守られる立場の
ドイツ人。なぜ、セルゲイと逃げ出したのでしょうか?
うば
しこう
くる
人々の日常生活を突然奪い、正常な思考さえ狂わせてしまう戦争が、日本から遠い国
でも実際に起こっていたことを知ってほしい一冊です。
小説 F/ナ
しちり
『 総理にされた男 』
中山 七里/著
NHK出版
しんさく
主人公は内閣総理大臣に容姿も声もそっくりな男、慎策。彼は総
理のものまねをして舞台の前説をつとめる売れない役者です。テレ
ビに映る総理を観察し、話し方や仕草も本物に似せる努力をしてい
ます。ところがある日突然、慎策は屈強な男2人に無理やり車に乗
せられます。その先で待っていたのはなんと!内閣官房長官。彼は
慎策に、「病気で伏せている総理の替え玉になってほしい」と頼み
ます。さあ、総理としての慎策の日々が始まります。
政治の世界では、議員の失言、対立する経済政策、官僚との確執、
復興予算の流用など、問題は山積み。若く純粋な慎策は大胆な方法
でこれらの問題に挑みます。
ありえない! 絶対フィクションだし! と思いながらも爽快な
気分になりますよ。
知識 J54
『 ご当地電力はじめました! 』
高橋 真樹/著
岩波書店
けいき
5年前の東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故を契機
に、わたしたちの生活がエネルギー依存していることを実感した
人もいるのではないでしょうか?
この本では、エネルギーを大きな電力会社に頼るのではなく、
自分たちで作ろう!と考え、実践している地域の取り組みを紹介
しています。
相模原市の藤野では「藤野電力」
(地域住民のサークルのような
グループ)が小規模な太陽光充電ステーションを手作りし、コン
セントと共に設置し、誰でも使えるようにしています。小田原市
では「ほうとくエネルギー」が川の流れを電気に変える小水力発
電を行っています。北海道には市民風車“はまかぜちゃん”があ
ります。
また、エネルギーを創るよりも簡単なのが省エネです。巻末に
は今すぐできる「エネルギーを賢く使うため、あなたにできるこ
と15」がのっています。参考にして、自分の生活を見直し、未
来のためにできることを考えてみてはいかがでしょう。
物語 J913/ク
『 ともだちは海のにおい 』
工藤
直子/作
長 新太/画
理論社
体操とお茶が好きないるかと、本とビールが好きなくじら。いる
かとくじらは仲が良く、一緒にいると幸せです。ゆったりと穏やか
に、いるかとくじらの時間が流れます。
ほっこりあったかく、クスッと笑ってしまう、そんな本です。
知識 J489
『 クジラの超能力
みなぐち
水口 博也/著
見てわかるクジラ百科 』
河合 晴義/画
講談社
ほ乳類でありながら海で暮らすクジラにはどんな秘密があるの
でしょう。この本ではクジラの生態や種類、歯やヒゲ板の大きさ
と形などが豊富な写真とイラストで紹介されています。暗闇で獲
物をみつける方法や、深海にもぐれる秘密もわかりますよ。
文庫 BF/ツ
『 凍りのくじら 』
み づき
辻村 深月/著
講談社
り ほ こ
主人公の理帆子は、友だちと一緒にいても孤独を感じている高
校2年生。ある日、彼女の前に現れた青年あきら。彼は理帆子に、
写真のモデルになってほしいと頼みます。
ドラえもんを愛する理帆子の周りで起こる、少し不思議な物語。
くじらの沈む海の色やドラえもんの秘密道具が、ストーリーに深
みを与えてくれます。
第 62 回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書
“課題図書”とは、青少年読書感想文全国コンクールの主催者が指定した本のことです。毎年、
本の専門家の先生によって、新しく出版されたたくさんの本の中から、年齢に合わせて、多く
の感動を得られたり、新たな知識を得られたりする本が選ばれているそうです(青少年読書感
ホームページ
想文全国コンクール H P より)。ぜひ、本選びの参考にしてみてください。
あけぼの
物語 J913/イ
『 ABC! 曙 第二中学校放送部 』
物語 J933/ル
『 白いイルカの浜辺 』
さ
ジル・ルイス/作
知識 J36
『 生きる
りゅうれんじん
劉 連 仁の物語 』
『 タスキメシ 』
知識 J28
『 ハーレムの闘う本屋
さくま ゆみこ/訳
評論社
谷口 広樹/絵
童心社
森越 智子/作
みお
額賀 澪/著
小学館
ルイス・ミショーの生涯 』
ヴォーンダ・ミショー・ネルソン/著
物語 J936/レ/YA
こ
講談社
ぬ かが
小説 F/ヌ
く
市川 朔久子/著
R・グレゴリー・クリスティ/イラスト
原田 勝/訳
あすなろ書房
古草 秀子/訳
河出書房新社
『 シンドラーに救われた少年 』
レオン・レイソン/著