「健康フォーラム」報告 [Ⅰ]ブース - So-net

「健康フォーラム」報告
石岡市歯科医師会公衆衛生委員会
中村 恵一
平成 25 年 1 月 26 日(土)
、冬晴れの中、第 7 回健康フォーラムが開催されました。今回
のテーマは「あなたのその痛み、肥満のサインかもしれない」でした。
「健康フォーラム」とは石岡市医師会が主催し、石岡市歯科医師会、茨城県医師会、近隣
の自治体が共催して行われる、地域住民を対象とした、身近で有用な情報提供を通じ生活
習慣病予防対策を推進する事業です。
内容は2つの大きな柱からなります。
1つは、毎回テーマを決めそれに関連した講演を医師会より 1 名、歯科医師会より 1 名、
それぞれ講師の先生をお願いして行っております。もう 1 つは、講演に先立って医師会、
歯科医師会、それぞれがブースを設置して住民に対して行う「無料体験コーナー」(以下ブ
ースとします)です。それぞれが趣向を凝らして来場者に対し、健康増進への動機づけ及
び啓蒙を行うコーナーです。
「健康フォーラム」は概ね以上のような内容で、平成 18 年度から行われ今年度で第 7 回と
なりました。当初は、認知度も低く来場者も多くはありませんでしたが、回を重ねるごと
に来場者も増え、前回、今回は約 300 名の方がいらっしゃいました。まさに「継続は力な
り」です。
ここからはそれぞれの内容について少し述べさせて頂きます。但し、医師会の内容につ
きましては、紹介程度にとどめさせていただきます。
[Ⅰ]ブース
まずブースについて述べたいと思います。ブースは前述のように講習会前の時間を 1 時
間頂いて行っております。
① 医師会のブース
血糖値の測定、腹囲の測定を行い生活習慣病に対する指導、相談
② 歯科医師会のブース
医師会の御好意により部屋をひとつお借りして、歯周病チェックのための唾液潜血反
応検査と咀嚼力を診るための「咀嚼力判定ガム」を用いた検査をしております。その
他、啓蒙用DVDの上映、パネル展示、パンフレットや歯ブラシの配布、等を行いま
した。
唾液潜血反応検査はサンスターのペリオスクリーンを用いて行いました。これは、
洗口吐出液中のヘモグロビンの検出を目的とします。検出可能なヒトヘモグロビン
最少濃度は2μg/ml です。被験者に対する浸襲が非常に少なく、簡便に行えること
から歯周病のスクリーニング検査として最近ではよく行われている様です。
もう一つ咀嚼力判定ガムは、オーラルケアーのキシリトール咀嚼力判定ガムを使用
しました。ガムを 2 分間噛んでもらって色の変化を見るものです。よく噛めている
と、色が青→黄→ピンク→赤の順に変化します。義歯にもくっつきにくく義歯の方
でも検査可能です。この検査の特徴は何と言っても、色の変化ですので誰にでもわ
かりやすく、且つ、咀嚼力というものを具体的にイメージとしてとらえてもらえる
ことです。言葉で説明するよりもずっと理解していただけます。子供も楽しみなが
ら噛んでくれました。ブースの場合、検診というより、イベントの色合いが強いも
のですから、2つの検査を行い、今日はそれぞれに結果を説明しましたが茨歯会で
は 2 つの検査結果の組合せから「口腔機能健康測定」という形でのスクリーニング
もしている様ですので私たちにとっても今後の検討課題としていきたいと思ってお
ります。
今回 1 つ問題点がありました。当初、来場者を 50 名程度と考えておりましたが、実
際には 66 名の方が検査を受けられました。1 時間という枠の中では、キャパシティ
を超えておりまして、先生方は汗だくで一生懸命行って下さいました。最後数名の
方の検査が時間を過ぎてしまいました。後に講演を控えているため、苦情がでるか
とひやひやしましたが、先生方の丁寧な応対に救われ、来場者の皆さんには笑顔で
満足された様子でお帰りいただけました。それほど大盛況であったということです
が。
町田先生、高野裕行先生、冨田先生、千葉先生、岩田先生、須藤先生、佐久間先生、
萩原先生、加藤先生、掛札先生、そして、茨歯会歯科衛生士の藤田かおりさん、本
当にありがとうございました。紙面をお借りしてお礼申し上げます。
最後に私見を述べさせて頂きますが、毎回、このようなイベントを行って感じる
ことは住民の歯科に対するニーズはまだまだたくさんあるということです。普段は
歯科に対する敷居がやや高く感じている方もいらっしゃるようですが、このような
場所ではかかりつけの先生の顔を見つけたりすると笑顔で質問したり、相談したり
する姿も見受けられました。
また後半の植田先生の講演内容でも触れられていますが、日本は大変な高齢化社会
を迎え、今後、介護の質を高めるためにも訪問診療、口腔ケアというものの需要は
どんどん高まっていくと思われます。現在、石岡市歯科医師会でも訪問診療に関わ
る組織の立ち上げの準備をしております。このようなイベント等を通して、地域医
療機関と地域住民の間の橋渡しが少しでもできればと思っております。
[Ⅱ]講演
① 医師会
石岡第一病院、整形外科の土居健次先生が、「肥満・加齢と腰・膝痛」を演題とし
て御講演なさいました。詳しい内容は省略させていただきます。
② 歯科医師会
日本大学歯学部摂食機能療法学教授 植田 耕一郎先生が「おいしく、楽しく、健や
かにする”摂食機能”の実力」の演題でご講演なされましたのでご紹介させていただ
きます。
まず、植田先生の経歴からご紹介させていただきます。
植田先生は、1983 年日大歯学部卒業後、1990 年から 1999 年まで東京都リハビリセ
ンター病院に勤務され、新潟大学歯学部加齢歯科学講座助教授を経て 2004 年より日
本大学歯学部摂食機能療法学講座教授となられ現在に至っております。
講演の後、植田先生とお話しする機会がありその時お聞きした話によりますと、東
京都リハビリセンター病院が開院した時に、先生は日大から唯一の歯科医師として
派遣されたそうです。日本で最初のリハビリセンター病院ということで集められた
医科のメンバーは、東大、慶大、慈恵医大の精鋭揃いだったそうです。
毎朝、症例検討会があったそうですが、そこでは医学専門用語が飛び交い何を言っ
ているのかよくわからなくて悩んだそうです。そこで、院長に相談したところ「先
生は歯科医師なのだから、わからなくて当然でしょう。医者がわからなくては恥ず
かしいけれど歯科医師だったらわからないことはどんどん聞けばいいんじゃない
の?正直言って、僕もよくわからないところもあるのだけどね。
」と言われ、気が楽
になったそうです。それからはどんどん質問したところ、丁寧に教えてくれただけ
ではなく、逆に歯科のこともいろいろと質問されたそうです。優秀なドクターの知
識に対する貪欲さに驚いたのと、その謙虚さに感心したそうです。そしてその時の
経験は自分にとって非常に大きな財産となったと話されていました。
このような経歴をお持ちの先生ですので医科やリハビリの知識も豊富で今回の講演
の内容も医学、健康、幸福論と多岐に亘っています。
ここからは講演の内容について述べていきます。
◎摂食機能療法の説明
現在の日本は大変な高齢化社会であり、病気や事故で体に麻痺を起こすことが増え
ています。手足に麻痺が起こっている状態では、口、喉にも麻痺が及んでいます。
そして、手足にもリハビリが必要なように、口、喉にもリハビリが必要であり、そ
れを行うことが摂食機能療法の 1 つの大きな柱です。もう一つの柱は、それではそ
うならないためにはどうしたらよいか、予防も含めて健康増進というものを口から
考えていく診療科が摂食機能療法学講座であるという説明でした。そしてここから
先生の誠実なお人柄と身振り手振り、効果音まで随所に交えた巧みな話術で会場全
体が先生の講演にどんどん引き込まれていきました。例えば、摂食機能について外
国人は蕎麦をすすって食べることができないとか、餅は呑み込むタイミングがわか
らない等のお話をユーモラスに話をされ会場からは笑いがもれ、場が非常に和みま
した。
そして、インドのオオカミ少女の話を引用してやや学術的な話に触れました。幼い
頃、オオカミにさらわれオオカミに育てられた2人の少女は生肉を四つん這いで貪
るように食べ、人間が調理した食物は決して口にせず、推定年齢20歳前後で相次
いでこの世を去ったということです。そのような例から「摂食機能は本能ではなく、
獲得するものである。
」という結論を示しました。
ここで 1 枚スライドが出されます。
日本の人口
世界の総人口
1 億 2600 万人
= 1.8%
70 億人
日本人の食糧消費率
= 12.4%
日本の人口は世界人口の約 1.8%に過ぎないのに、日本人の食糧消費率は世界の
12.4%ということは、日本人は世界の平均の約 7 倍消費しているということです。
ここで植田先生が「私、こんなに食べてませんって皆さん言いますよね。そうなん
です、食べていないんです。捨てているんです」
「エー」っていう会場からの声。
「コンビニのお弁当でもなんでも、
賞味期限が 1 日でも過ぎれば捨ててしまいます。
そうやってどんどん捨てているんです」
そして次のスライドに下の文章
人類の死因の第 1 位は
「餓死」
「日本では餓死する人はまずいません。しかし、世界的に見れば餓死は日常茶飯事
です。
」
「日本は気候にも自然にもそして食べ物にも恵まれ、治安も世界最高水準です。
日本人は世界水準からするとユートピア(理想郷)に暮らしています。
」
私はこの話を聞いて、足るを知るという言葉が頭に浮かびました。
もちろん個々にはいろいろな点で恵まれない方もいらっしゃるとは思いますが、日
本人全体としてみれば非常に恵まれた環境にあります。作家の曽野綾子さんが最近
の著書の中で言っておられますが、
「一生食べ物に困らず、雨をよける家があること
だけでも世界的にみれば相当恵まれている」そうです。世界水準から幸福とは何か
もう一度考えていく必要があるのではないでしょうか。
本題に戻ります。右半身麻痺の方が車椅子に乗っているスライドがでました。見
るからに右半身が不自由そうです。そして、この次のスライドでこの方の口腔内の
スライドがでました。口の中は食渣でいっぱいです。特に右側がひどい状態です。
会場からは「うわー」という声、そして、先生のお話が続きます。
手や足に麻痺がある方ですが、手や足だけではありません。口の中にも麻痺がある
ためこの様な状態でも何も感じないのです。また、きれいにすることもできないの
です。
今度はその方の 3 ヶ月後のスライド、ランパントカリエス状態、そして、6 か月後の
スライドは、残根状態になっています。
会場の皆さんは、衝撃を受けます。
麻痺があることに加えて、自浄作用も働かないことで、口の中は短期間で壊滅的な
状態になりました。さらに、汚れた口腔内状態のまま呼吸をしていれば細菌が肺に
吸い込まれ誤嚥性肺炎を起こすことになります。また、要介護高齢者の死亡原因の
33%が肺炎であり、また、ある施設入所者の調査では口腔ケアを行った群と、行
わなかった群では肺炎の罹患率が二分の一であったという結果を示し、いかに口腔
ケアが重要であるかということを示しました。
◎健康増進
21 世紀熟年者施策
(予防給付・地域支援事業)
1. 運動器の機能向上支援
2. 栄養改善
3. 口腔機能の向上支援
平成 18 年から介護保険の中に、
予防給付という新しいサービスができあがりました。
地域支援事業という施策も平成 18 年から始まりました。その時にでた 3 本柱が上記
の1、2、3です。この3つをきちんと行っていれば寝たきりにはならないのです。
車椅子の人が寝たきりにならない、杖歩行の人が寝たきりにならない、健康な人が
1年でも1カ月でもその状態を維持することができる、そのための3本柱ですが、
今日はこの中の3、口腔機能の向上支援 を話の中身とさせていただきます。
上記の話題とは少し離れますが、まずは近代西洋医学についてです。近代西洋医学
は救命治療、感染症、急性疾患に対する医学として発達してきた医学です。
症状は既に生体の自然治癒力が破綻した状態であり、この状態では手術、注射、投
薬が非常に有効です。しかし反面、西洋医学は病気とは言えない症状、いわゆる「未
病」の状態に対しては対応が難しいです。例えば「肩が凝る、頭痛がする、熱がで
る、食欲がない、体がだるい、便秘、下痢、口が渇く」
この様な症状は即病気とは言えないものが多くあります。これを植田先生は「体の
声」と呼び、
「体に無理がきている証拠で、体が自分に発しているシグナル」と捉え
ます。
「体の声」言いかえれば病気になりかかった時、余分な働きを低下させて病気にな
らないよう集中するためのシグナルということです。
これを西洋医学的対応した場合、医療制度の問題、あるいは「2 時間待って 3 分間診
療」という時間をかけてゆっくり診察をすることができない現実、また画一的なガ
イドライン、マニュアルに沿った検査値重視の診断等の為にどうしても検査の正常
値から外れたものは病気と診断そして投薬となりやすい傾向にあります。
また薬の副作用に対してまた投薬という様にどんどん薬が増えてしまう結果になり
ます。
そこで前述したようなありふれた症状(頭痛、発熱、下痢、肩凝り等)=病気、検
査値の異常=病気とすぐに考え薬に頼るのではなく自分の体の声を良く聞いて、自
分の判断というものにもう少し自信を持って病気か未病かを判断してほしいという
ことです。
ここで 2 人の人物が登場します。
1 人はイギリスのダイアナ妃、もう 1 人は乙武洋匡さんです。
ダイアナ妃はご存じのように絶世の美女、そして王太子妃と非常に恵まれた境遇に
ありました。しかし、非業の死を遂げました。心理カウンセラーにあてた手紙にこ
ういう一節があるということです。
Until very recently, we took our bodies for granted.
私たちは、自分の体を授かりものと見なしていた。
Now, something we can and should perfect.
もっと完璧に近づけられる、近づけるべきものと見なしている。
もっと美しくなりたい、もっとスリムになりたいとどこまでも完璧を追求していま
した。
一方、乙武さんは先天性四肢切断、見た目は障害者です。しかし、非常に明るく意
欲的に仕事をされており、とても障害者とは思えません。
2 人を比較してどう思いますか。幸福とは心の捉え方によって大きく変わってくるも
のではないでしょうか。皆さん、どうお考えですか。
健康とは病気がないことではない。
「快適で愉快な時間を積み重ねていくことが大事であり、病気や障害があっても、
たとえ不治の病であっても、人は健康に暮らすことができる」と植田先生は定義さ
れています。
会場からは「確かにね」
「そうだよね」という頷きがあちらこちらから起こっていま
した。
確かに検査値に囚われ、それを正常値にすることに汲々とし、大事なことを見失っ
ていることがなかったでしょうか。検査値だけでなく、食品の賞味期限なども 1 日
でも過ぎれば捨ててしまい、ちょっと舐めてみるとか匂いを嗅いでみるとか、そう
いうことで判断するということはほとんど行われなくなってしまいました。あまり
にも完璧を追求しすぎることによる弊害ではないでしょうか。私は、ある化学者が
言っていた「リスクというのはそれを 0 に近づけようとすればするほど他のリスク
が増大する」この言葉を思い出しました。例えば、非常に清潔すぎる生活をおくる
と免疫力が低下して、逆に感染に対して弱くなってしまうとか、水道水の大腸菌を
ゼロに近づけようとして塩素を大量に使用すると、トリファロメタンなど発がん性
物質の入った水道水を飲むことになってしまうといったことがあります。
100%求めることが必ずしも健康にプラスではない、むしろマイナスになること
があります。どこに折り合いをつけるかということがその人の健康観、人生観であ
ると思います。もちろん前述したように急性の疾患や外傷等においては早期発見、
早期治療が非常に有効であることは否定するものではありません。
次に、上記のような弊害を除くための「健康であるための自己発見法について」と
いう題で東洋医学的な手法を紹介していますので、箇条書きにしてみます。
1.呼吸法
丹田呼吸法(へその下の丹田に息を吸い込んでいく)
パニックになっているときは胸式呼吸になっている
1)数見法
2)幻視法
3)幻想法
4)聴見法
そして咀嚼嚥下においては胸筋・腹筋が大切
これを簡単に鍛える方法として
腹臥位呼吸法
うつぶせに寝て(顔を正面で 3 分間、右を向いて 3 分間、左を向いて 3 分間)
これだけでよい。
2. 甩手(しゅわいしょう)
肩凝り、腰痛、高血圧、不眠、イライラに効果
1)前後の甩手
両足を肩幅に開き自然に立って両手を前後に振る。体の重心は前後に移動する。
2)ひねりの甩手
意識を丹田に集中して手はでんでん太鼓の鈴のように慣性で振る。
3. 叩打法
(適応)冷え性、頭痛、緊張感の解消、肩凝り、高血圧、不眠症、イライラ
方法 ツボを叩いて気・血をめぐらせる
手のひらをスプーン状にして経路に沿ってツボに向かって叩く
4. 口腔機能トレーニングのポイント
口の体操を毎日行いましょう
頬を膨らます
舌を突き出す
舌を左右に動かす
唇をとんがらせる
日常の口腔清掃ともに以下のことを行う
・ブクブクうがい(リンシング)
頬と唇の体操
・ガラガラうがい(ガーリング)
咽の体操
咽の筋力の増強
・頭部挙上訓練
仰向けで頭だけをあげてつま先を見る(10 秒間)
以上のような方法を行ってなるべく薬に頼らないで健康を増進していただきたいと思
います。
◎しかしながら「期せずして障害を持ってしまったら」
特に摂食嚥下障害(摂食機能障害)になってしまったら、理学療法として当然リハ
ビリを行います。摂食嚥下リハビリテーションの実際について項目だけ下記に記し
ます。
口唇ストレッチ
頬ストレッチ
振動刺激訓練
そして大切なことは口の機能と全身の機能の密接な関係にあって、全身の機能を上
げていけば口の機能も上がっていくということで、逆にいえば全身の機能が上がら
なければ口の機能も上がらないということです。
そして先生の講演もまとめにはいっていきます。
ピンピンコロリですか?
死の直前までピンピンしていてコロリと死ぬこと、これが理想でしょうか?人生 90
年の時代、そんな死に方はありますか?
植田先生が診てらした患者さんで 2 年ほど介護を受けて亡くなった方の奥様が後に
先生に話しに来たそうです。
「主人が亡くなるまでの 2 年間、私達夫婦にとって 1 番充実した 2 年間でした。主
人が元気だった頃は忙しくて家に寄りつかなかったんですけど、病気になってから
は家に居ていろいろな話ができて、夫婦の時間を取り戻しました。」
そして
「主人と同じお墓に入りたいです」と話されたそうです。
会場ではハンカチで目頭を押さえる姿も見られました。ピンピンコロリではこのよ
うな時間は持てません。ピンピンゴロリであってほしい。別の方のお話ですが、半
年間父親を介護して看取った息子さんも、介護をした期間があったので、最後に少
しは親孝行ができたかなという話をしていたそうです。介護は辛い、苦しいばかり
ではありません。大切な、そして有意義な時間でもあり得るわけです。このように
介護によって介護する側と介護される側が心の交流によってお互いを認める状態を
「介護感の醸成」と名付けました。良い言葉だと私は思います。
ピンピンコロリは一見家族に迷惑がかからなくて良いように思われますが、残され
た家族にとっては喪失感や悔いが残ることもあるでしょう。もちろん、すべての例
がそうだとは言い切れませんが、ピンピンゴロリも人生の最後の形として有意義な
ものであると思います。
最後に、ある方を紹介しています。
それは、最後の吉原の芸者
100 歳万歳!
みな子姐さん
「今この時が一番幸せ
明日はもっと幸せになるし
明後日はもっともっと幸せになる
お師匠さんが羨ましいって言われてます。
元気でいてくださいって言うから
私も死んじゃいられない」
今一番気にしていることはなんですか?と聞いたところ、
「美人薄命っていうでしょう
それが心配ね」
会場からは爆笑。
この方はもうお亡くなりになっているそうですが、お酒も飲むし煙草も吸う、血圧
も高かったそうです。でも「薬?お酒が薬です」と煙に巻いていたそうです。
「この方に降圧剤飲みなさいって、それバカですよね」と植田先生。
確かに、現在は健康ブームです。「健康のためなら死んでもいい」という冗談がある
くらい、何々健康法とかサプリは何がいいとかという話題がよく聞こえてきます。
もちろん、その人に合った健康法で健康を増進できればそれはそれで素晴らしいと
思います。しかし、ともすると完璧を求めすぎ、検査値に一喜一憂したり癌などの
病気を恐れすぎたり、病気にならないことに汲々としていてはそのこと自体がスト
レスとなり何のための健康か分からなくなってしまいます。長寿の方はみな子姐さ
んのように楽観的な方が多い気がします。前述したように、幸福も健康も捉え方ひ
とつで大きく変わってくるのではないでしょうか。
「最後に食事がおいしくて楽しい、幸せになるのは簡単、当たり前のことを一つ一
つありがたいと思えれば充分幸せです。健康も幸せもその積み重ねですね。
」と植田
先生は締めました。
会場は拍手が鳴りやまず、いつまでもいつまでも湧いていました。
後に医師会事務局にも「素晴らしい講演でした」という電話も入ったそうです。
私も今日の植田先生の御講演は「目からうろこが落ちる」思いでした。「摂食機能」
の話がもちろん中心ではありましたが、それに留まらず、健康とは、幸せとは、人
生とは・・・・
いろいろと投げかけていただきました。繰り返しになりますが、日本は大変恵まれ
ている国で、世界水準からいえばユートピアである、そのことをよく自覚しなけれ
ばいけません。
健康とは病気がないことではない、病気があっても障害があっても、快適で愉快な
時間を積み重ねていくことが大事であります。そして人生は・・・介護感の醸成ま
で高められれば本当に最高ではないでしょうか。
植田先生、本当にありがとうございました。
最後に、私の文章、報告文という形はだらだらとしたまとまりの無いものになって
しまいましたことを深くお詫び申し上げます。
尚、石岡市歯科医師会の高野裕行先生がこの講演をビデオ撮影し、DVD を作製して
下さいました。大変素晴らしい出来です。私の手元にありますので、ご希望の方は
ご連絡ください。