1 特 集 「サービスイノベーションと AI」 サービスサイエンス実践のヒント Hint of Service-science Practice 諏訪 良武 ワクコンサルティング株式会社 Yoshitake Suwa WAKU CONSULTING CORP. [email protected] http://www.waku-con.com/ Keywords: service,science,manegement,business,process,innovation,model 1. はじめに この産業の「情報化」の次に起ってきたのが、産業の 「サービス化」だ。これには、サービス産業自身の成長 と製造業のサービス化が含まれている。 製 造 業 で は ジ ャ ス ト イ ン タ イ ム 、 MRP(Material 個人所得の増加により、それまで自分で行っていた日 Requirements Planning)など、多くの科学的な取り組み 常的な仕事をお金を払って人に頼むようになったこと、 が実践され、製品の品質向上や生産性向上に大いに寄与 共働き夫婦の増加や高齢化により、生活を支援する新た している。しかし、 サービス業は相変わらず伝承と直感、 な仕事がビジネスとして出現したことなどにより、サー 気合で運用されている。本稿ではサービスを科学的に解 ビス産業が大きく成長した。それと同時に進展した製造 析し、価値ある論理を探求する可能性を探ってみる。 業のサービス化には、下記の要素が含まれる。 先進国のサービス産業は、経済の 70%を占めるまでに ①製品を顧客に提供する際に製品販売だけで収益をえる なっており、産業の「サービス化」が議論されている。 のではなく、アフターサービスのように継続的に利便性 この「サービス化」を掘り下げるため、「サービス化」の を提供し、収益をえるビジネスモデルに移行する 前に起った産業の「情報化」 の流れを振り返ってみたい。 ②製品そのものを売るだけではなく、レンタカーのよう 1.1. 産業の情報化 かつて、産業の中心は製造業であった。多くの製品が 製造され、国内や海外で販売された。例えば、新潟県燕 市では銀食器が生産され、主に海外に輸出された。 に必要なときにだけサービスを利用してもらうビジネス モデルを立ち上げる しかし、サービス業はなかなかよくならないサービス 品質や、合理的根拠のない価格設定などに悩まされてい その後、日本の工業化はさらに進み、エレクトロニク る。例えば、何回電話してもつながらないコールセンタ ス製品が大量に生産されるようになった。この頃から産 ー、専門用語を振り回すヘルプデスク、運んできた食事 業界で「情報化」が話題になった。この「情報化」には、 を正しく配膳できないレストランスタッフなど、レベル 下記の意味合いがあった。 の低いサービスが氾濫している。 ①先進的な企業が自社の情報システムを強化して、開発 また、情報化の初期と同じように、サービスはおまけ の効率化、生産の効率化、経営判断の迅速化を図った として扱われている業界もあり、サービス産業は成熟し ②製品の価値の源泉が組み込まれたマイクロコンピュー た事業になっていないのが現状だ。 タシステムに依存する割合が大きくなった 1.3. サービスサイエンスの登場 ③パソコンやゲームマシンのように製品を販売するだけ このような背景のもとに「サービスサイエンス」が登 でなく、その後にアプリケーションソフトウェアやゲー 場した。サービスの問題を科学的手法で分析し、品質や ムコンテンツなどの情報を追加販売していくビジネスモ 生産性を高めるのがサービスサイエンスだ。サービスサ デルが現れた イエンスが確立されると、その提供者、開発者は科学的 情報産業の代表的な製品である大型コンピュータで使 われるソフトウェアは、当時ハードウェアのおまけとし 根拠に基づいてサービスの改善に取り組むことができ、 大きな成果につながるはずだ。 て扱われており、情報に対価を払う風土はなかった。し サービスサイエンスはスタートしたばかりの学問で、 かし、情報処理が大学で研究され、社会に価値ある成果 まだ定説があるわけではない。そこで筆者は自然科学に を出し続けるようになると、ソフトウェアや情報コンテ ならって下記のような手順でサービスの本質に迫ろうと ンツの重要性が認識されはじめた。やがては、ソフトウ 考えている。 ェアや情報コンテンツに妥当な費用を支払うことが当た ①サービスを分類する②サービスを分解する③サービス り前になった。 をモデル化する 1.2. 産業のサービス化 2. 自然科学にならってサービスを解 2 人工知能学会誌 22 巻 6 号(2007 年) これに対して、リピート型、期待度大サービスにはエス 析する テサロンや有名進学塾があり、これらのサービスには高 い評判と大きな効果が必要であるものの、サービス料金 2.1. サービスを分類する § は少々高価でも許容される。 ビジネスの観点からすると、リピートユーザーは極め 植物を分類する 自然科学における分類の一例として、植物の分類を確 て有難いが、公衆浴場やゴミ収集のようなあたり前サー 認してみよう。まず、植物は胞子で増殖するシダ植物と ビスは、統一価格であったり、公共料金扱いになってお 種子で増殖する種子植物に分類される。そして、種子植 り、大きな利益にはつながりにくい。反対に、エステサ 物はソテツや松のような裸子植物とリンゴやミカンのよ ロンのように料金が高価でも許容されるリピートサービ うな被子植物に分類される。つまり、植物の分類軸は「胞 スは大きな利益を生んでくれるだろう。 子植物と種子植物」、「裸子植物と被子植物」、「単子葉植 物と双子葉植物」、・・・・・となる。太陽の光を獲得す るために、シダが高木へ進化し、地球の気候が厳しくな り乾燥すると、それに耐えるために高木が低木や草に進 期待度大 サービス ・引越し請負 ・信用調査 化していった。このように植物を分類していくと、それ −信頼できる −実績 −妥当な価格 ぞれの植物の特徴や進化が見えてくる。 § ・エステサロン ・有名進学塾 −効果が高い −ブランド −少々高価でもいい サービスを分類する では、自然科学にならってサービスを分類するとどう ・コインロッカー ・ビデオレンタル なるか。分類するためには分類軸が必要である。まず、 サービスを「手順型と気付き型」と「ロースキル型とハ イスキル型」 という2つの分類軸で分けてみる。すると、 あたり前 サービス 図1のように手順型・ロースキルのサービスには、設置 −安価 −すぐ使える −煩わしくない ・公衆浴場 ・ゴミ収集 −統一価格 −必ず利用 −社会インフラ 都度 リピート サービス、掃除サービス、配送サービスがあり、これら のサービスではマニュアル化、手順化、チェックリスト がサービス品質の向上に寄与することが見えてくる。こ 図 2 都度・リピート−期待度大・あたり前 れに対して、気付き型・ハイスキル型のサービスには、 コンシェルジェ、カウンセラー、コンサルタントがある。 同様に、サービスを「自分でできるサービスと自分で これらのサービスには、マニュアル化、手順化、チェッ できないサービス」、「感動サービスと実用サービス」で クリストはあまり役に立たず、共感性やビジョン共有、 分類してみる。すると、図 3 のように、自分でできる実 現場への権限委譲が効果を発揮することが分かってくる。 用サービスには、定食屋、クリーニングなどがあり、こ のようなサービスは満足は小さくてもいいが、手軽で安 価であることが要求される。これに対して、自分ででき ない感動サービスには、音楽会やスポーツ観戦などがあ ハイスキル ハイトレーニング ・保守サービス ・リペアサービス −仕組み化、システム化 −プロセス改善 ・設置サービス ・掃除サービス ・配送サービス ロースキル ロートレーニング −マニュアル化 −手順化、チェックリスト 手順型 ・コンシェルジェサービス ・カウンセリング ・コンサルティング −共感性 −ビジョンの共有 −現場への権限委譲 ・民宿サービス ・居酒屋サービス り、これらのサービスには大きな感動が必須だが、料金 は高価でも許容される。 感動サービス ・介護 ・ネールアート −人好きな性格 −軽妙な会話 −共感性 −小さな感動 −妥当な価格 ・音楽会 ・スポーツ観戦 ・秘境旅行 −大きな感動 −少々高価でもいい 気付き型 ・定食屋 ・クリーニング 図 1 手順・気付き−ハイスキル・ロースキル −小さな満足 −手軽 −安価 次に、サービスを「都度型とリピート型」と「期待度 大型とあたり前型」で分類してみる。すると、図 2 のよ ・各種修理 ・ピアノ調律 −安心感 −妥当な価格 実用サービス 自分でできる 自分でできない うに、あたり前・都度サービスには、コインロッカーや ビデオレンタルがあり、これらのサービスは安価で、す ぐに使えて、手続きが煩わしくないことが要求される。 図 3 自分でできる・自分でできない−感動・実用 3 解説記事のタイトルを挿入 自分でできることをサービス提供者に依頼するサービ ・人間の高度な欲求に応えるサービスは、付加価値が高い。 スは、高い料金が認めてもらえないだけでなく、顧客が サービス提供者の 競争相手 の性格を持つことにもな り、注意すべきことや配慮すべきことがいろいろある。 ・自己実現型 感動サービス 例えば、料理の上手な女房と定食屋に行く場合は、やは ・気付き型 期待度大サービス りそれなりの味のお店を選ばなければならない。ところ が、料理の苦手な女房であれば、据え膳であることだけ 理的な論理が必要なのである。 § 価値あるサービスの分類軸 ・尊敬されたい ・関心を持って欲しい 認められたい欲求 ・会員制、参加型 サービス で満足してくれる。つまり、女房との付き合い方にも合 ・創造的なことをしたい ・目標を達成したい 自己 実現の欲求 ・他人と同じようにしたい ・組織に所属したい 所属したい欲求 ・実用、自分でもできる、 あたり前、手順型、 ロースキル サービス ・安心したい ・危険を避けたい 安全の欲求 ・食べたい ・眠りたい 生きるための欲求 このような分類を詳細に突き進めると、価値あるサー ビスの分類軸が図 4 のように 10 種類見つかった。ここ から2つの分類軸を選んで自分達が提供しているサービ 図 5 サービスタイプとマズローの 5 段階の欲求 スを改めて見直してみると、新しい発見が出てくるだろ う。ぜひとも、多くの方にこの作業をやっていただき、 とか「マニュアルサービスは価値がない」 、「サービスに サービス向上・改善のヒントや努力ポイントを発見し、 は標準化はなじまない」などと主張する本が目立ってい それらを整理して集大成したいものである。 る。 そこで、サービスの分類作業の1つとして、図 6 で各 ・ 10個の価値あるサービス分類軸が見つかっている。 種のサービス用語を整理してみた。サービスの土台は標 準サービスであり、一律サービスである。標準サービス や一律サービスでも、顧客がホスピタリティをえて感動 ⑨「実用サービス」と「感動サービス」 ⑨「実用サービス」と「感動サービス」 ⑩「実用サービス」と「自己実現サービス」 ⑩「実用サービス」と「自己実現サービス」 図4 台として、初めて One to One サービスが提供できる。 一人ひとりの顧客の事前期待に応える One to One サー ビスが実現できると、高い確率で顧客にホスピタリティ を感じてもらえたり、感動してもらえる。 ・One to One サービスなど高度なサービスは、質の高い一律サービスの サービスの分類軸 土台の上に構築される。 また、この分類軸の一覧表はチェックリストにもなる。 ス 感動サービス 例えば、利益を出しやすいサービスは、気付き型、ハイ ホスピタリティ サービス スキル、期待度大、自分ではできない、顧客参加型、リ ビ ⑦「都度サービス」と「会員制サービス」 ⑦「都度サービス」と「会員制サービス」 ⑧「自分でもできるサービス」と「自分ではできないサービス」 ⑧「自分でもできるサービス」と「自分ではできないサービス」 ある。図 6 のように、標準サービスや一律サービスを土 ー ⑤「期待度大サービス」と「あたり前サービス」 ⑤「期待度大サービス」と「あたり前サービス」 ⑥「都度サービス」と「リピートサービス」 ⑥「都度サービス」と「リピートサービス」 ビスには「余計なお世話」が多いことに注意する必要が テ ィブ サ ③「個人型サービス」と「組織型サービス」 ③「個人型サービス」と「組織型サービス」 ④「お客様参加型サービス」と「お客様受身型サービス」 ④「お客様参加型サービス」と「お客様受身型サービス」 することはありえる。ただし、標準サービスや一律サー One to One サービス リエ ー ①「手順型サービス」と「気付き型サービス」 ①「手順型サービス」と「気付き型サービス」 ②「ロースキルサービス」と「ハイスキルサービス」 ②「ロースキルサービス」と「ハイスキルサービス」 ス ク ピートサービス、感動サービスということになる。 ル サ ー ビ さらに、人間の欲求の進化を説明しているマズローの 一律サービス てみた。すると、あたり前かもしれないが、人間の高度 標準サービス マ ニ ュ ア 5段階欲求説(図 5)とサービスタイプの関係を整理し ホスピタリティ サービス 感動サービス 余計なお世話 (サービス) な欲求に応えるサービスは、付加価値が高いという結果 になる。したがって、コールセンターでは、あたり前の ことを正確に対応するサービスからスタートし、高い顧 図6 サービスを分類、整理 客満足をえるためには、エージェントの共感性を高めて、 柔軟性と迅速性を発揮し、ユーザーの高度な欲求に応え サービスサイエンスのように、新しい分野の学問を研 ていかなければならない。 究する場合は、まず用語をしっかり定義することが大切 § 土台は標準・一律サービス 最近、書店にサービスに関する書籍が溢れている。 そこには筆者がちょっと気になる傾向がある。「サービ である。共通の言葉が使えると深い議論ができ、新しい スは価値がなく、ホスピタリティにこそ価値がある」 § 文化を育てることができる。 2.2. サービスを分解する 植物を分解する 4 人工知能学会誌 22 巻 6 号(2007 年) 高校の生物の時間に習った植物の知識を思い出してみ まう。気持ちよくコンサルティングしてもらい納得でき よう。植物の茎を切って断面を観察すると、水や栄養を る戦略ドキュメントができた場合は、高い評価になるだ 細胞に送る維管束組織があり、茎の中心には髄があり、 ろう。 髄や維管束組織を保護するために、表皮(樹皮)がある。 どんなにスキルが高くて素晴らしい修理ができたとし 維管束には水や養分の導通と植物に機械的強度を与える ても、その作業者の態度が悪いと低い評価しかえられな 2 つの役割がある。茎の断面を顕微鏡で観察すると細胞 い。したがって、テクニカルスキルを磨くのと同様に、 があり、役割に応じた構造を持っている。さらに細胞に ヒューマンスキルのトレーニングが大切である。 は核があり、 核を分解すると DNA にたどり着く。 最近は、 § サービス品質を分解する この DNA の解明が生物科学の中心課題になっている。こ サービスが高い評価を受けるためには、サービス品質 のように、植物学では植物を分解することで本質に迫っ を向上させなければならない。サービス品質は図 8 のよ てきた。 うに 6 つの評価軸で管理していくべきである。まずは正 § 確性である。どんなサービスも正確でなければユーザー サービスをプロセスに分解する では、サービスをサービス提供プロセスに分解してみ の支持はえられない。次に迅速性が挙げられる。世の中 よう。図 7 は保守サービス会社のコールセンタープロセ のビジネススピードはどんどん速くなっており、それに スである。コールセンターの評判が良くないという問題 つれて迅速なサービスが期待されている。迅速性は時間 で悩んでいる時、プロセスに分解してみると、どのプロ という分り易い物差しで計れるため、評価に大きく関与 セスに問題があるのかが見えてくる。実際には、もっと することになる。そして安心感が大切である。このコー 詳細なプロセスに分解し問題を絞り込んでいく。スピー ルセンターに連絡すれば、何とかしてくれるという安心 ディな保守サービスを実現するため、受付からカスタマ 感、これが大切である。次に柔軟性が挙げられる。顧客 ーエンジニア(CE)のアサインまでの時間を短くしたい場 の要求は千差万別であり、それぞれの要求に応えるため 合は、各プロセスに掛かっている時間を計測すれば、効 には柔軟性が欠かせない。次は好印象。われわれはサー 率化すべきプロセスが特定できる。サービスプロセスを ビススタッフの温かみのある好印象に救われる。最後が 詳細プロセスに分解して競合企業と比較すれば、競争力 共感性。顧客が何を望んでいるかを把握するためには共 を高めるためにやるべきことが分る。 感性が欠かせない。 ・感動を呼ぶサービスを実現するには、迅速性と柔軟性と共感性を重視すべきである。 ・お客様の事前期待を把握するには、共感性の発揮が何より重要である。 ・サービスをプロセスに分解すると、どのプロセスに問題があるかが見えてくる。 ・多くの企業が「保守サービスプロセスの見える化」や「営業プロセスの見える化」に 取り組んでいる 正確性 正確性::正確なサービス、約束遵守、納期遵守、高度なシステム支援 正確なサービス、約束遵守、納期遵守、高度なシステム支援 迅速性 迅速性::リアルタイム処理、迅速なバッチ処理、迅速な非同期処理 リアルタイム処理、迅速なバッチ処理、迅速な非同期処理 ・お客様を ・お客様を 確認する 確認する ・クレームを ・クレームを 受け付ける 受け付ける ・技術相談にのる ・技術相談にのる ・簡単なトラブル ・簡単なトラブル は、電話で は、電話で 対応する 対応する ・故障を診断する ・故障を診断する ・適切なCEを ・適切なCEを アサインする アサインする 安心感 安心感::沈着、信用、余裕、高い能力、豊富な知識、妥当な価格 沈着、信用、余裕、高い能力、豊富な知識、妥当な価格 ・現場CEの進捗 ・現場CEの進捗 を管理する を管理する ・必要に応じて ・必要に応じて 現場CEを援助 現場CEを援助 する する 柔軟性 柔軟性::基礎力、応用力、権限委譲、論理の理解(サービスサイエンス) 基礎力、応用力、権限委譲、論理の理解(サービスサイエンス) 好印象 好印象::挨拶、聴き方、話し方、 挨拶、聴き方、話し方、褒め上手、容姿、制服、施設、設備 褒め上手、容姿、制服、施設、設備 共感性 共感性::感受性、傾聴力、観察力、想像力、人好き 感受性、傾聴力、観察力、想像力、人好き 保守サービスのコールセンタープロセスの例 図7 § サービス提供プロセスを分解する サービスの評価を分解する 図8 § サービス品質を分解する サービスバリューを分解する 当然のことだが、サービスの評価は、そのサービスか 図 9 にあるように、サービスバリューを高める要素は らえられる成果で決まる。例えば、短時間でパソコンを サービス品質以外にもいろいろある。筆者はときどき秘 修理してくれたとか、コンサルティングサービスの結果 境旅行と言われる所に旅することがあるが、そこで出会 で自信の持てる事業戦略が構築できたというのがこれに う素晴らしい自然と旅行スタッフのホスピタリティの組 当たる。しかし、サービスの評価はこの成果だけで決ま み合わせに感動する。 るのではなく、このサービスの提供を受ける際のプロセ スがどうだったかが大きな評価要素になる。 すでに一部のサービス提供企業が始めているワンス トップサービスは今後大きな価値を発揮するだろう。困 具体的には、修理はできたのだが、オフィス内の作業 った時ここに連絡すれば何とかしてくれるワンストップ なのに騒音がひどく、周りの人にひんしゅくをかってし サービスは、忙しく、複雑で、しばしば困ったことに遭 まった場合、このサービスの評価は低いものになってし 遇する世の中では、大きな価値を発揮するに違いない。 5 解説記事のタイトルを挿入 現地で修理している CE のヘルプデスクを担当し、 さらに 故障修理全体の進捗管理までを担当する。 ・サービス企業はサービスバリューを高めていかないと価格競争に巻き込まれる。 ・コールセンターが修理の受付だけでなく、修理完了までのすべてをマネジメントする。 サービス品質を サービス品質を 向上する 向上する ワンストップ性を ワンストップ性を 高める 高める ・コールセンターによる効率化の効果は主に下流工程で実現される。 ・OFEの事例ではコールセンターの運用コストのほぼすべてが下流工程の効率化の 効果でまかなえていた。 ホスピタリティを ホスピタリティを 高める 高める サービスバリューを サービスバリューを 高める要素 高める要素 サービスの効率を サービスの効率を 向上する 向上する 図9 One Oneto toOne One性を 性を 高める 高める サービスに何かを サービスに何かを 組み合わせる 組み合わせる 大自然や ファシリティ ・お客様を ・お客様を 確認する 確認する ・故障を受付ける ・故障を受付ける ・技術相談にのる ・技術相談にのる ・簡単な故障は ・簡単な故障は 電話で対応する 電話で対応する ・故障を診断する ・故障を診断する ・適切なCEを ・適切なCEを アサインする アサインする ○必ずつながる ○必ずつながる ○好評な対応 ○好評な対応 ○リアルタイムな修復 ○リアルタイムな修復 ○出動の大幅削減 ○出動の大幅削減 ○正確な診断 ○正確な診断 ○アサインの効率化 ○アサインの効率化 ・現場CEの進捗 ・現場CEの進捗 を管理する を管理する ・必要に応じて ・必要に応じて 現場CEを援助 現場CEを援助 ○ポカミスの削減 ○ポカミスの削減 ○作業の効率化 ○作業の効率化 サービスバリューを分解する モノの豊かさで満足した時代が終わり、人はこころの 図 10 フルフィルメント・ビジネスモデル 豊かさで満足する時代になった。この時代の要請により、 ホスピタリティサービスが重視されるようになってきて このビジネスモデルを吟味すると、コールセンターが いる。しかし、ホスピタリティサービスは難しい。女房 生み出す価値は受付けにあるのではなく、しっかりした に何を欲しいかを聞いて買ったプレゼントは単に「おつ 技術相談により CE の出動件数を軽減し、現場の CE の修 かい」の価値しかなく、女房を日々観察して欲しがって 理作業を効率化するところにあることが分る。オムロン いるものを探り出して、さりげなくプレゼントするのが フィールドエンジニアリングの事例では、このビジネス ホスピタリティである。ホスピタリティとはこれほど難 モデルを採用したことにより、年間 7 万件近くの出動軽 しいものである。 減が実現されており、顧客満足を高めると共に 10 億円以 サービスビジネスはサービスバリューを上げ続けて いかないと、泥沼の価格競争に巻き込まれてしまう。油 断大敵である。 上のコスト削減につながっている。 § 産業の情報転写モデル 藤本は製造業とサービス業を「情報転写モデル」で説 2.3. サービスをモデル化する 明している。 〔藤本 03〕つまり設計情報をプレスで鉄板 § に転写して自動車のボディを生産するのが製造業である。 自然科学や製造業のモデル化 天文学ではモデル化とシミュレーションにより、天体 そして、サービス設計情報をサービススタッフに転写し、 の軌道を正確に解明することができる。また、物理学で そのサービススタッフが価値あるサービスを提供するの はニュートンの万有引力の法則など多くの法則が発見さ がサービス業というわけである。しかし、サービスの場 れ、自然現象が解明されている。この法則は自然現象を 合、情報を転写する対象が生身の人間であるという相違 忠実に表現したモデルの一つと解釈することができる。 点があり、製造業と違って情報の転写が難しく、量産で また、自動車の開発では 3 次元 CAD を用いてディジタ きないことを示している。このことはサービス業では教 ルプロトタイピングが実用化されており、大半の設計が 育がいかに重要かを教えてくれている。 コンピュータ上のモデルで進められている。自動車の衝 このモデルはもう一つの大切なことを教えてくれる。 突実験までがディジタルプロトタイピングの世界でおこ 製造業で設計情報を作成していない企業はないと思われ なわれているのは驚きである。これにより何億円もする るが、実はサービス業では「サービス設計部」のような 試作車を作らずに実験ができるため、大幅なコストの削 サービス設計情報を作る専門部隊を持ってない企業が大 減と開発期間の短縮が実現されている。このように自然 半である。これを製造業に例えると、図面や仕様書を一 科学の世界や製造業ではモデル化が大きな成果を生んで 切書かずに次の新車は若者にヒットする車を生産して欲 いる。 しいと工場に要望しているのと同じである。筆者が保守 § サービスの経営にタッチしていたオムロンフィールドエ フルフィルメント・ビジネスモデル では、サービスのモデル化を考えてみよう。図 10 はコ ンジニアリングも 10 年前までは、サービス設計の専門 ールセンターの代表的なビジネスモデルの一つである 部門がなかった。これに疑問を感じ、すぐに「サービス 「フルフィルメント・ビジネスモデル」である。このビ 開発部」を創設したところ、サービス改革の大きな成果 ジネスモデルでは、コールセンターはトラブルを受付け につながった。このように、サービス業をモデル化する るだけでなく、顧客の技術相談に乗り、故障を診断し、 と、サービスの価値を高める議論が具体化できる。 適切なスキルのカスタマエンジニア(CE)をアサインし、 § ハイレベルサービスの実現モデル 6 人工知能学会誌 素晴らしいサービスを提供し、顧客に喜んでいただく ためには、図 11 左図のように 3 つの要素が必要である。 22 巻 6 号(2007 年) ービス企業が何をなすべきかを顧客の視点から教えてく れる。 まずは、サービスを提供するために必要な各種スキルを まず大切なメッセージはすべての努力は顧客を中心 磨き上げなければならない。コックは調理のスキルを磨 に考えるべきだということである。サービス事業には顧 き、美容師はカットやセットのスキルを磨かなければな 客の他に 3 つの検討対象が存在する。それはサービス提 らない。 供者とサービス提供システムとサービス戦略である。そ サービスは人間が提供するものだから、どうしてもミ スが付きものである。このケアレスミスをなくすために して、顧客とこの 3 つの検討対象の関係で何をなすべき かが決まる。 は、サービスの仕組みが必要である。例えば、掃除サー ビスには考え抜かれたチェックリストが有効であり、電 ・サービス事業フレームワークはサービス企業が何をなすべきかをお客様の視点 から教えてくれる。 鉄会社では指差し確認の仕組みが機能している。そして、 コールセンターサービスには研ぎ澄まされた情報システ サービス戦略 サービス戦略 ムの支援が必須である。 お客様のニーズや お客様のニーズや 問題点に適合 問題点に適合 高い顧客満足の実現モデル サービス提供プロセスの サービス提供プロセスの 見える化などが 見える化などが 戦略と適合 戦略と適合 感動サービスの実現モデル サービスの 仕組み 顧客 認知力 ユーザフレンドリーな ユーザフレンドリーな システムの提供 システムの提供 サービス提供 サービス提供 プロセス、システム プロセス、システム 高い サービス品質の正しい サービス品質の正しい 判断基準と適切な教育 判断基準と適切な教育 現場への権限委譲 現場への権限委譲 真実の瞬間に注力し、 真実の瞬間に注力し、 価値あるサービスを提供 価値あるサービスを提供 ポカミス防止などの ポカミス防止などの 価値あるプロセス 価値あるプロセス サービス提供者 サービス提供者 感動 顧客 サービス 満足 サービスの スキル お客様 お客様 サービスの マインド サービス 運営力 要望の 事前予知力 図 12 サービス事業のフレームワーク 顧客とサービス提供者を忘れる人はいない。サービス 提供システムはサービス提供プロセスとサービス提供情 報システムを意味している。サービス提供システムはユ 図 11 ハイレベルサービスの実現モデル ーザフレンドリーなシステムであるべきである。 そして、多くのサービス企業でしっかりと定義されて 3 つ目はサービスマインドである。顧客に喜んでいた ないのがサービス戦略である。このサービス戦略は顧客 だくことを喜びに感じる、顧客を感動させることに意気 のニーズに合致していなければならない。そして、サー を感じる、顧客に自分達の生活を支えていただいている ビス戦略に沿った教育をサービス提供者に実施し、サー ことを感謝するなど、サービススタッフが顧客を大切に ビス戦略に定義されたサービス品質を測定し、サービス する心を持つべきである。これら 3 つの要素が満たされ 提供者、サービス戦略自身にフィードバックしていく。 たところに初めて高い顧客満足が生まれるというわけで これらの取り組みがバランスよく行われれば、顧客満足 ある。 は高いものになるだろう。 図 11 右図はレストランの感動サービスモデルである。 § プロフィットチェーンモデル 感動サービスのベースはサービスの運営力であり、定常 会社から大切に扱われていない従業員が顧客を大切に 的に高品質なサービスを顧客に提供し続けることが必須 するはずがない。したがって、上司と部下の適切なコミ である。その上に、レストランスタッフの顧客認知力が ュニケーション、妥当な評価と報酬など、従業員が実力 必要である。リピート顧客の名前を覚えているのは当然 を発揮できる環境を整えることが大切である。これがで であり、顧客の好みや前回注文されたメニューなども覚 きると、従業員満足度は大いに向上するだろう。 えておかなければならない。さらに、その日の顧客の事 そうすると、従業員ロイヤリティが醸成され、業務改 前期待を予知すべきである。事前期待を予知するために 善が継続的に実施され、サービス品質や生産性が向上す は、さりげなく顧客を観察し、会話に注意を払い、顧客 る。そして、それが顧客満足の向上につながり、カスタ に関心を寄せなければならない。そして、レストランが マロイヤリティを醸成し、リピート発注が増えて売上の その時の顧客の期待に応えられると感動サービスになる。 増加につながる。その結果収益が向上するというわけで § ある。そして、その収益で実力が発揮できる環境にさら サービス事業のフレームワーク 製造業文化で育ってきたわれわれは、サービス事業を に投資していくというサービスのプロフィットチェーン 営む場合に何に注力し、何を努力すべきかがよく分かっ ができあがる。そして、このループがうまく回っていく ていない。図 12 のサービス事業のフレームワークは、サ と、顧客満足度は上がっていき、利益も増えていくとい 7 解説記事のタイトルを挿入 図 14 のようにサービスには 4 つの大きな特徴がある。 うことになる。 サービスには形がないため、顧客にサービス商品のよさ ・お客様満足度の大きさは従業員満足度の 大きさに比例する。 を分かってもらうことが難しいという特徴がある。目に ・カスタマロイヤリティの強さは従業員ロイヤリティの強さに比例する。 見える素晴らしい商品を持っていても営業は難しい。つ ・利益はカスタマロイヤリティが生み出す。 まり、目に見えないサービス商品を売り込むのは、それ サービスの品質と生 産性の向上 以上に難しい。 お客様がサービスに 高い価値を感じる お客様満足の向上 これを解決するために、サービス先進企業では、サー ビスのよさを顧客に類推してもらえるように、ビジュア 従業員ロイヤリティの醸成 カスタマロイヤリティの醸成 従業員満足度の向上 リピート発注 売上げの増加 ルな情報システムを構築するなどの工夫がされている。 保守サービス会社がコールセンターにお金をかけて、素 晴らしい環境を整えるのはこの事例である。 収益の向上 実力が発揮できる環境 必要な投資 ・サービスは、活動そのものなので、工場で量産し、在庫を持つことができない。 スタート ・当然、出荷検査をすることもできない。 ・つまり、ハードウェア商品と比較すると、均一なサービス品質を保つことが非常に難しい。 図 13 プロフィットチェーンモデル ・サービス品質は、従業員の各種スキルとモラールによって決まるため、継続的な教育や やる気が出るような評価制度の工夫が必要である。 素晴らしいサービス会社を作るために大切なことは、 サービスは在庫できない このプロフィットチェーンをスパイラルアップし続ける ことである。 〔Heskett 97,島田 97〕 § サ サ サ サ サ サービスは出荷検査できない サ サービスモデルのシミュレーション サ 出口らは「人間、組織、社会などの様々な主体を自律 的な意思決定主体(エージェント)として据え、エージ サ サ サ サ サ サ サ サ サ サ サ ェントベースのモデルを構築し、それをシミュレーショ ンし、社会現象やサービスを解明する取り組み」が始め ている。〔出口 07〕まだサービス企業が新しいサービス 図 15 サービスは在庫も出荷検査もできない を手軽にシミュレーションするところまでは行ってない が、サービスモデルのシミュレーションはサービスサイ エンスの有力な取り組みになりそうである。 また、サービスは生産と消費が同時なため、サービス を工場で量産することができない。顧客も将来のために また、米国のリンデンラボ社が運営する仮想世界であ サービスを買い置くことができない。また、このサービ る Second Life(セカンドライフ)のような取り組みは スのリアルタイム性はサービスのやり直しがきかないと サービスシミュレーションのインフラとして価値あるも いう傾向にもつながっている。 のになっていくのではと期待される。 つまり、「サービスは生産と消費が同時」 が均一で高い このように「サービスのモデル化」はこれまで発散し 品質のサービスを安定して提供することの難しさにつな がちであったサービスの議論を価値あるものにしてくれ がっている。また、この同時性があるため、顧客にサー るだろう。 ビスを提供する場所と時間がきわめて重要になり「全国 2.3. サービスの特徴を把握する どこでも、24 時間 365 日」が魅力となる。 また、サービスは顧客の個別の要求に応えなければな ・サービスは形がないため、使ってもらう前にお客様にサービスのよさを訴求するのが難しい。 ・生産と消費が同時なので、やり直しがきかない。モノのように取り替えることも難しい。 ・サービスはハードウェア製品と比較すると、お客様毎にご要求が異なることが多い。 ・お客様がサービスに参加されるケースが多いため、お客様の役割を考えるべきである。 らない。誰一人同じ髪型をしている人はいないことがこ れを表している。 さらに、サービスは顧客と共同生産することが多いこ とがハードウェア製品との大きな違いである。例えば、 保守サービスでは顧客が機器に表示されているエラーコ ードや故障前の兆候を保守会社に連絡すると、1回の訪 サービスには形がない サービスには形がない 見えない サービスは生産と消費が同時 サービスは生産と消費が同時 在庫できない 提供する時間 と場所が重要 問修理で直る確率が大幅に上る。 サービスはお客様との共同生産 サービスはお客様との共同生産 お客様の役割 サービスは個別化 サービスは個別化 3. サービスを定義する お客様合わせ これまでに多くの人々がサービスを定義してきた。し 図 14 サービスの 4 つの特徴 かし、これまで誰もがなるほどと思える定義はないとい 8 人工知能学会誌 えるだろう。経済学では「財貨とサービス」を単純に区 図 17 22 巻 6 号(2007 年) 事前期待の構成要素 分けして議論されてきた。しかし、サービスの形態が多 様化し、この単純な定義では納得できる議論ができなく なっている。このような背景のもと、納得できる「サー § 事前期待の構成要素 また、発揮された機能がサービスであるかどうかは、 ビスの定義」がサービスサイエンスの大きな課題の一つ ユーザーの事前期待に適合するかどうかで決まるため、 になっている。2007 年 1 月に行われた情報処理学会の ユーザーの事前期待が極めて重要な要素となる。本稿で 「ソフトウェアジャパン 2007」でサービスサイエンスを はこのユーザーの事前期待を徹底的に掘り下げてみたい。 テーマにした講演とパネルディスカッションが行われた。 事前期待は図 17 のように「事前期待の内容」と「事 筆者は講演とパネルディスカッションに参加させてもら 前期待の持ち方」と「ユーザーの特性」から構成される。 った。このパネルディスカッションで吉田はサービスの これらの多くの要素が渾然一体となり一人ひとりのユー 定義に言及した。〔吉田 07〕 「サービスの本質は機能であ ザーの事前期待が構成される。このことからサービスス るが、すべての機能ではなくユーザーの期待に応えるも タッフやサービス企業がユーザーの事前期待を正しく把 のでなければならない。」この発言を筆者なりにまとめた 握することがいかに難しいことかが分る。では、事前期 のが図 16 のサービスの定義である。この定義はこれか 待の構成要素を一つずつ分析してみよう。 ら多くの方と議論を深めていきたい。 § 事前期待の内容 まず「事前期待の内容」は期待する「サービスメニュ ー」と「サービス品質」により構成される。以前から筆 人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの 人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの 者は主要なサービスメニューをリストアップする作業に 事前期待 に適合するものを「サービス」という。 事前期待に適合するものを「サービス」という。 要なサービスメニューをリストアップしてみた。すると、 取り組んできた。このたび約 450 種のサービス事業の主 図 18 のようにたった 22 種類のサービスメニューで事足 りることが判明した。この作業の精度や網羅性には検討 注記 注記・人は、サービススタッフやサービス組織を意味する。 ・人は、サービススタッフやサービス組織を意味する。 ・構造物とは製品(自動車)、設備(コインランドリー)、システム、仕組みを意味する。 ・構造物とは製品(自動車)、設備(コインランドリー)、システム、仕組みを意味する。 ・ユーザーが期待してない機能の発揮は、迷惑行為や余計なお世話、無意味行為 ・ユーザーが期待してない機能の発揮は、迷惑行為や余計なお世話、無意味行為 となりサービスではない。 となりサービスではない。 の余地はあるが、この種類の少なさには驚かされた。こ のサービスメニューは「モノ提供サービス」、「快適提供 サービス」、「情報提供サービス」の 3 種に分類できる。 この 22 種類の標準プロセスが定義できると価値あるサ *このサービスの定義では製品や設備に内包されているサービスとヒューマンサービスを 同じ土俵で議論できる。 図 16 ービスマニュアルになりそうである。 サービスの定義 ・約450種のサービス業を解析してみると、22個のサービスメニューで構成されている ことが分った。 このサービスの定義ではヒューマンサービスと製品 1.ユーザーに食事や飲み物を提供する。 12.ユーザーに楽しんでもらう。 や設備やシステムなどが提供するサービスを一つの土俵 2.ユーザーにモノを届ける。 13.ユーザーの仲間の利益を守る。 で議論できる。したがって、現実世界の複雑なサービス 3.ユーザーの商品選択をサポートする。 14.ユーザーの研究活動をサポートする。 4.ユーザーにモノを貸し出す。 15.ユーザーのプライドを満足させる。 を対象に価値ある議論が展開できそうである。例えば、 5.ユーザーに宿泊や作業場所を提供する。 16.ユーザーの要求を手配する。 コールセンターではエージェントやスーパーバイザーだ 6.ユーザーのゴミを処分する。 17.ユーザーに価値ある情報を提供する。 けでなく、デジタル交換機やコール管理システムなどが 7.ユーザーの健康を守る。 18.ユーザーが分からないことを教える。 8.ユーザーに安心を提供する。 19.ユーザーに何かを紹介する。 9.ユーザーの移動をサポートする。 20.ユーザーがいろいろなことを相談する。 10.ユーザーのモノを預かる。 21.ユーザーの人生をガイドする。 11.ユーザーの所有物を修理する。 22.ユーザーの自己実現をサポートする。 提供するサービスをトータルで議論できる。 ・事前期待は事前期待の内容と事前期待の持ち方、ユーザーの特性から成り立っている。 サービスメニュー 図 18 様々なサービスと事前期待 事前期待の内容 サービス品質 静的共通的な事前期待 静的個別的な事前期待 事前期待 事前期待の持ち方 動的な事前期待 潜在的な事前期待 ユーザーの属性 ユーザーの特性 ユーザーの関わり方 筆者はこれまで「サービス品質」を正確性、迅速性、 柔軟性、共感性、安心感、好印象で定義してきた。 「サー ビスの評価を分解する」で説明したようにサービス品質 にはサービス成果品質とサービスプロセス品質の 2 つが ある。これを意識してサービス品質を絵にすると図 19 のようになる。 正確性は主にサービス成果品質に貢献し、 好印象はサービスプロセス品質に貢献する。その他のサ ービス品質要素はサービス成果品質とサービスプロセス 9 解説記事のタイトルを挿入 品質の両方に貢献する。ハイレベルサービスには共感性 ただし、「このサービスは無料に違いない」といった と柔軟性が重要である。とくに、共感性は顧客の事前期 間違った事前期待もある。軽率に間違った事前期待に応 待を感じ取るアンテナであり、これを磨かずしてハイレ えてしまうと職務違反行為になったり、その顧客を特別 ベルサービスは実現できるわけがない。 扱いしたことにより、他の顧客に差別された印象を与え ることもあるので注意が必要である。この場合は、ユー ・感動を呼ぶサービスを実現するには、迅速性と柔軟性と共感性を重視すべきである。 ・お客様の事前期待を把握するには、共感性の発揮が何より重要である。 成果 品質 ザーの期待に応えるのではなく、ユーザーを啓蒙して間 違った事前期待を正さなければならない(図 20) 。 ・事前期待の持ち方は5つのタイプに整理することができる。 正確性 正確性::正確なサービス、約束遵守、納期遵守、システム支援 正確なサービス、約束遵守、納期遵守、システム支援 迅速性 迅速性::リアルタイム処理、迅速なバッチ処理・非同期処理 リアルタイム処理、迅速なバッチ処理・非同期処理 ①共通的な事前期待 柔軟性 柔軟性::基礎力、応用力、権限委譲、論理理解(サービスサイエンス) 基礎力、応用力、権限委譲、論理理解(サービスサイエンス) ・顧客カードで蓄積できる 共感性 共感性::感受性、傾聴力、観察力、想像力、人好き、褒め上手 感受性、傾聴力、観察力、想像力、人好き、褒め上手 ・お客様個人の好みに合っている ・お客様の属性を配慮している ③動的な事前期待 好印象 好印象::挨拶、聴き方、話し方、容姿、制服、施設、設備 挨拶、聴き方、話し方、容姿、制服、施設、設備 ・観察と会話から感じ取る ④潜在的な事前期待 ・お客様を好きになる 図 19 サービス品質と事前期待 ⑤間違った事前期待 ・お客様を啓蒙する § ②個別的な事前期待 事前期待 安心感 安心感::沈着、信用、余裕、高い能力、豊富な知識、妥当な価格 沈着、信用、余裕、高い能力、豊富な知識、妥当な価格 プロセス 品質 ・清潔な環境であって欲しい ・丁寧に扱って欲しい 静的な事前期待 ・今のどが渇いているのでビールを飲みたい ・今日の会合はビジネスなので放っておいて欲しい ・旅館で子供についての悩みを聴いてもらえた ・飲み屋で仕事のヒントがもらえた ・先入観で誤解していた ・事前に得ていた情報が間違っていた 事前期待の持ち方 次に「事前期待の持ち方」は静的な事前期待と動的な 事前期待に分類される。そして、静的な事前期待は共通 図 20 事前期待の持ち方 的な事前期待と個別的な事前期待に分類される。ホテル に宿泊する際に「清潔な環境であってほしい」というの § ユーザーの特性 は共通的な事前期待であり「私の枕は厚めのそば殻枕が 事前期待に影響を与えるユーザーの属性がいろいろと いい」というのは、個別的事前期待である。どちらにし 考えられる。ユーザーが「身に危険を感じている」のか ても、静的な事前期待は顧客カードで管理することがで 「安全に懸念がない」、「グルメ」なのか「食に興味がな きる。高級ホテルに二度目に泊まった際に、自分好みの い」のかなど図 21 のような属性が考えられる。この一 枕がセットしてあり感動したという話はこの事例である。 覧表は事例であり、網羅性は高くない。例えば、「身に危 これに対して、レストランではいつもワインを注文す 険を感じている」ならば少々料金が高くても屈強のガー るのだが、今日はあまりに暑かったので生ビールを飲み ドマンサービスを期待し「安全に懸念がない」ならそん たいと思うのは動的事前期待である。この動的事前期待 なことにお金を掛けたいとは思わない。なお、ユーザー は顧客カードで管理することができない。共感性を発揮 が所属する文化や風土もユーザー属性の一つと言えるだ して顧客を観察し、顧客の会話に注意して動的な事前期 ろう。 待を把握しなければならない。 最近のコールセンタシステムには、受付担当エージェ ・下記はユーザーの属性の事例である。ただし、網羅性は高くない。 ントが感じた顧客の状況(怒っておられる、困っておら ・ユーザーの所属する文化や風土もこの中に含まれる。 れるなど)をエスカレーション対応エージェントに伝え 1.ユーザーは金持ちである。 11.ユーザーはグルメである。 2.ユーザーは貧乏である。 12.ユーザーは食べることに興味がない。 取った顧客の動的な事前期待を伝達する価値ある仕組み 3.ユーザーはケチである。 13.ユーザーはサービスが嫌いである。 である。 4.ユーザーは金払いがよい。 14.ユーザーはサービス好きである。 5.ユーザーは疲れ切っている。 15.ユーザーは人嫌いである。 6.ユーザーはとても元気である。 16.ユーザーは人好きである。 時に感動することがある。筆者が銀座の本屋で高杉良の 7.ユーザーは身に危険を感じている。 17.ユーザーは信心深くない。 ハードカバーを 2 冊レジに持っていったときのことであ 8.ユーザーは安全に懸念がない。 18.ユーザーは信心深い。 9.ユーザーは親切が好きである。 19.ユーザーは関西人である。 10.ユーザーは親切が嫌いである。 20.ユーザーは関東人である。 る機能が付いているものがある。これは受付担当が感じ また、まったく期待していなかったサービスを受けた る。この店の奥様らしい方がレジにおられ、2 冊の本を 受け取ったとたんに「こちらは文庫本が出ています。い かがされますか」と言われ、1 冊を文庫本に代えてもら ったことがある。このことで、筆者はこの本屋のファン 図 21 ユーザーの属性 になってしまった。これは、潜在的な事前期待に応えて もらったと解釈するのが論理的である。 さらに、ユーザーの属性と少し違う要素である「ユー 10 人工知能学会誌 22 巻 6 号(2007 年) ザーのサービスへの関わり方」が事前期待に影響を与え る。「自分ができることをやってもらう」 場合はサービス 成果品質の評価が厳しくなる傾向が強く「自分ができな サービスサイエンスの実践 4. いことをやってもらう」場合はサービス成果品質の評価 が穏やかになる傾向がある。同じように「料金を払って § 顧客満足向上を実践する やってもらう」場合はサービス成果品質の評価が厳しく 顧客にはサービスに期待する期待値があり、それに対 なる傾向が強く、「料金を払わないでやってもらう」場合 して実績の評価が大きいと満足して「リピート顧客化」 はサービス成果品質の評価が穏やかになる傾向がある。 する。反対に事前期待が大きくて実績評価が低いと「何 だもう使うまい」となる。そして、事前期待と実績評価 がほぼイコールの場合は「印象が薄い」サービスになる。 ・下記はユーザーの属性とはいえない。 例えば、友人に「あの映画はものすごく面白いぞ」と ・ユーザーのサービスへの関わり方が事前期待に大きな影響を与える。 いわれると期待値が膨れ上がってしまい、よくできた映 1.ユーザーができないことを代行してもらう。 スキルがない、資格がない 2.ユーザーができることを代行してもらう。 時間がない、やりたくない 3.ユーザーがお金を払ってやってもらう。 それなりに期待する ぶしに入った B 級アクション映画が予想外に面白く感じ 4.ユーザーがお金を払わないでやってもらう。 感謝する、大きな期待を持たない ることがある。 これらの事実は上記の説明で理解できる。 5.ユーザーが頼んだことをやってもらう。 それなりに期待する 6.ユーザーが頼まないのにやってもらう。 感動サービス、余計なお世話 7.ユーザーが感謝の念を持って依頼する。 ・・・・・ が、じつは CS は事前期待と実績評価の相対関係で決ま 8.ユーザーが感謝の念を持たずに依頼する。 ・・・・・ る。筆者はサービス提供者が顧客の事前期待をいかに正 9.ユーザーが見ているところでやってもらう。 ・・・・・ 10.ユーザーが見てないところでやってもらう。 ・・・・・ 確に把握できるかが CS 向上の KFS(成功の鍵)だと考 画なのにあまり満足できないことがある。また、時間つ 日頃、われわれは実績評価ばかりを重視しがちである えている。 サービス業を営む会社にとって、CS 向上は経営その 図 22 ものである。図 24 にある「人による CS 向上」は永続的 サービスへの関わり方 なテーマとして努力しなければならないが、これは一流 § 企業では当たり前の取り組みであり、差別化要素にはな 事前期待の持ち方と様々なサービス サービス事業者はサービススタッフや製品、設備、シ らなくなってきている。 ステム、仕組みを駆使してユーザーに機能を提供する。 そして、その機能がユーザーの共通的な事前期待に適合 人によるCSの向上 仕組みによるCSの向上 すると、あたり前サービスやマニュアルサービスとなる。 さらに、その機能が個別的事前期待に適合すると、価値 あるサービスや One to One サービスになり、動的な事 ・技術スキルアップ ・24時間365日 前期待や潜在的事前期待に適合するとホスピタリティサ ・接客スキルアップ ・先進のコールセンタ ービスや感動サービスとなる。 ・サービス精神 ・Webによる進捗公開 ・高いモラール ・動くマニュアル ・業務ルールの遵守 ・緊急ロジステック ・どの事前期待に応えるかでサービスの価値が決まる。 <事業者> 人(スタッフ)、組織 <構造物> 製品(自動車) 設備(コインランドリー) システム、仕組み <機能> <ユーザー> <事前期待の持ち方> 静的共通的な 事前期待 静的個別的な 事前期待 動的な 事前期待 ・教育する ・人を運ぶ あたり前サービス ・人によるCSはアナログの差、仕組みによるCSはデジタルの差 マニュアルサービス 価値あるサービス One to Oneサービス 素晴らしいサービス 図 24 仕組みによる CS 向上 ホスピタリティサービス 潜在的な 事前期待 感動サービス 間違った 事前期待 職務違反行為 無意味行為 事前期待に適合してない 無意味行為 余計なお世話 迷惑行為 ・服を洗う OFE は「仕組みによる CS 向上」が大切なことに気づ き、24 時間 365 日の現地出動サービスなどの取り組み に力を入れてきた。「仕組みによる CS 向上」は企業にそ の仕組みがあるかどうかがイチゼロなので、顧客から極 めて分りやすい。OFE がサードパーティメンテナンス事 図 23 事前期待の持ち方と様々なサービス 業を伸ばしてこられたのは「仕組みによる CS 向上」が 競争力を上げてくれたからである。「人による CS 向上」 間違った事前期待に応えると職務違反行為になってし まうケースもある。そして、発揮した機能が事前期待に 適合しない場合は、余計なお世話行為や迷惑行為となる。 は負けないための施策であり、「仕組みによる CS 向上」 は勝つための施策といえるだろう。 「仕組みによる CS」は構造物やシステム、仕組みが 11 解説記事のタイトルを挿入 サービス機能を発揮する事例になっており、本稿のサー できないため、どうしても「そば屋の出前」のようなマ ビスの定義の妥当性を示している。 ネジメントになる日がある。こんな時に進捗を公開する § と、まだ CE がアサインできてないことが顧客に見えて 事前期待をマネジメントする ディズニーランドでは常に長蛇の列ができるが、待ち しまい困るという意見があった。しかし、業務改革の成 時間を表示することと少しずつ前進させることで顧客の 果で進捗管理がかなり正確にできるようになったので、 不満を解消している。確かに、あの表示がなくじっと同 思い切って図 26 のように進捗情報を公開した。結果的 じ場所にいるのでは、とてもあのような長い時間を待つ には顧客に大好評である。 約束どおりに OFE の CE が動いているかどうかを顧 ことはできないと思う。ディズニーランドは「待ち時間 の表示と少しずつ前進させる」というシンプルな組立で、 客にオープンにすると、社内に約束を守らなくてはいけ 極めて巧妙に顧客の事前期待をマネジメントしている。 ないとの引き締め効果がでてくる。この進捗の公開によ り督促苦情はほとんどなくなってしまった。 § ・テーマパークなどでは、行列しているときに待ち時間を表示し、少しずつ前進させることで、 事前期待をマネジメントし、お客様のイライラを抑制している。 ・OFEがやっている保守サービスの進捗情報の公開も同じ効用があると考えられる。 地図情報による現場の見える化 OFE では日本全国の CE の作業状況を地図情報の上で リアルタイムに管理している。図 27 の画面はコールセ ンターの画面である。青いマークの CE は 30 分以内に、 90分 60分 30分 黄色いマークは 30 分から 60 分以内に作業が終わる。こ のマークをクリックすると、CE が何の作業をしている のかが確認でき、発信ボタンをクリックするとコールセ ンターのヘッドセットと現場の CE の携帯がつながる。 OFE の見学者はこの画面を見ると感動される。保守サ ービス会社はある期間お付き合いしないと、いい会社か 悪い会社かが分からない。しかし、この画面を見ていた だくと商談が一気に進む。これはサービスプロセスがき 図 25 仕組みによる CS 向上 わめて高い評価を受けたということである。これが「サ ービスの見える化」の効用である。 少し変だと思うのだが、自分の後ろに列が長く延びてい ・出動しているCEの場所とステータスがリアルタイムに確認できる。 くと嬉しい気分になるのが不思議である。 保守サービスも予定時間を連絡することで、顧客のイ ライラを軽減している。また、到着予定時間に遅れる場 合でも、事前に連絡すると、ほとんどの顧客はクレーム になることなく待っていただける。これも事前期待のマ ネジメントである。顧客の事前期待は青天井に上がって いく性格を持っており、事前期待のマネジメントはサー ビスビジネスの必須のマネジメントである。 オムロン § 保守サービスの進捗情報の公開 図 27 地図による現場の見える化 Web 上の動くマニュアル § 図 28 の動くマニュアルはガイド通りにマウスを操作 すると、あたかも実機を扱っている感覚で操作すること ができる。分厚いマニュアルは読む気がしないが、この マニュアルならゲーム感覚で勉強できる。 このマニュアルはコールセンターに問い合わせのあっ たトラブルで、技術的なアドバイスだけで対応できた事 例の上位 30 位のコンテンツから成り立っている。した 図 26 保守サービスの進捗の見える化 保守サービス会社はピーク負荷に合わせた人員配置は がって、情報量は少ないがよく遭遇するトラブルはほぼ 網羅されている。 12 人工知能学会誌 22 巻 6 号(2007 年) グラム」を探求していく。これからは、「設計科学」のウ ・動くマニュアルで顧客の教育や、簡単な修理などをサポートする。 エートが大きくなっていくと考えられている。 サービスサイエンスは、設計科学の一つとして大いに 発展が期待できる。サービスの問題を科学的手法で分析 し、品質や生産性を高めるのがサービスサイエンスであ る。サービスサイエンスが確立されると、その提供者、 開発者は科学的根拠に基づき、納得してサービスの改善 に取り組むことができ、大きな成果につながるであろう。 知識、知恵、プロセスを重視する AI とサービスサイ エンスは相性がいい。コラボレーションして大きな成果 を出したいものである。 ◇ 参考文献 ◇ 図 28 Web 上の動くマニュアル [日高 06]日高一義:サービスサイエンスの出現、第 54 § 回人工知能セミナー、人工知能学会(2006) スキルを競い従業員満足(ES)を高める 神戸製鋼の技能オリンピックを参考に OFE で技能オ [藤本 03]藤本 隆宏:能力構築競争-日本の自動車産業は リンピックを始めた。全国を 6 つのブロックに分けて予 なぜ強いのか、pp.27-35,中央公論新社(2003) 選会をやり、決勝戦をやっている。最近はテクニカルス [新川 06]新川義弘:愛されるサービス、かんき出版(2006) キルだけでなく、どちらかというとヒューマンスキルに [Albrecht81,和田 03] Karl Albrecht and Ron Zemke: 力点を置いて技能を審査している。競技を見学している Service America!(1981),和田正春訳:サービス・マネジ と、感動して涙がにじむほど、エクセレントな作業振り メント,ダイヤモンド社 (2003) の CE が何人もいる。次に OFE が目指すべきものは、 [Heskett 97, 島田 97]Heskett, J. L., Sasser, W. E. & 「これだ!」と感じた。まだ言葉がこなれてないが、「保 守サービスをエクセレントに演じる」ことが顧客の信頼 Schlesinger, A.:The Service Profit Chain, The Free Press (1997), 島田陽介訳:カスタマー・ロイヤルティの 感、安心感につながることを実感した。普段、CE は上 経営,pp.83-88,日本経済新聞社 (1997) 司や同僚に自分の仕事振りを見てもらうことがなく、達 [出口 06]出口弘:サービス・コンテンツ領域での社会・ 成感を持ちにくい。この日の競技者は本当に楽しそうで 経済・組織のシステム科学の新しい展開,第 54 回人工 「CS の前提は ES」を実感するイベントである。 知能セミナー,人工知能学会 (2006) [吉田 07]吉田民人,公文俊平,間瀬俊明,諏訪良武:パ ・毎年のテクニカルチャレンジカップでヒューマンスキルとテクニカルスキルを競いESを高める。 ネル討論「サービスサイエンスへの期待」 ,ソフトウェア ジャパン 2007,情報処理学会 (2007) メカトロ競技 IT競技 ロボット競技 著 者 紹 介 PC競技 図 29 5. 電子回路競技 ベストプラクティス発表大会 スキルを競い ES を高める おわりに 科学には、物理学のような「認識科学」と工学や法学 のような「設計科学」がある。「認識科学」は、万有引力 の法則のように「世の中にある法則」を探求してきた。 それに対して、 「設計科学」は、「世の中にあるべきプロ 諏訪 良武(非会員) オムロン㈱の IT 推進本部長としてグローバル情報システムを 企画推進、オムロンフィールドエンジニアリング㈱の常務取 締役として保守サービス会社の企業改革に取り組む。OA 協 会から IT 総合賞、コンタクトセンタアワードのマネジメ ント部門金賞を受賞。現在は、ワクコンサルティング㈱の常 務執行役員エグゼクティブコンサルタントとしてサービス改革 や顧客満足度向上、製造業のサービス化などに取り組んで いる。国際大学グローバルコミュニケーションセンター上席客 員研究員。
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