老健施設「しんあい」のヒートポンプ給湯設備

―― 実 施 例 ――
老健施設「しんあい」のヒートポンプ給湯設備
清水建設㈱ 広島支店 設備部 沢
田
安
■キーワード/ヒートポンプ・給湯・老人保健施設
1.はじめに
2.建物概要
広島市郊外の閑静な地・沼田町伴に,昨年誕生した老
建物名称 老人保健施設 しんあい
人保健施設「しんあい」
。この施設は,病状が安定してい
所 在 地 広島市安佐南区沼田町伴7941番1
て入院治療の必要はないけれど,医学的な管理のもとで
建 築 主 医療法人 信愛会
リハビリや介護,看護が必要というお年寄りの方が,家
建築用途 老人保健施設
庭生活の向上をめざすためのケア施設として建設された。
敷地面積 2,073.05㎡
サービスの内容としては,最新の設備や医療機器を使
建築面積 1,103.21㎡
い,専門のスタッフがきめ細かな日常生活訓練,機能回
延床面積 4,450.78㎡
復訓練などを行っている。サービスの種類は,入所サー
構造規模 RC造 地上5階・塔屋1階
ビス・ショートステイ
(短期入所サービス)
・デイケア
(通
工 期 平成8年10月∼9年10月
所サービス)
の各サービスを行っている。
設計監理 ㈱山田 保 建築設計事務所
今回は,本施設に設けた業務用蓄熱調整契約による一
施 工 清水建設㈱広島支店
般給湯・浴槽給湯設備の概要を説明する。
写真−1に建物外観を示す。
写真−1 建物外観
ヒートポンプとその応用 1998.17.No.46
― 46 ―
弘
―― 実 施 例 ――
3.給湯・浴槽設備の主要機器
庇
庇
根
屋
EV 室
械
機
3−1 給湯設備
根
屋
〈PH階平面図〉
空気熱源ヒートポンプ給湯器
〈屋根伏図〉
ハト小屋
空調機置場
給湯能力
物干場
排気塔
植込
DN
ベンチ
機械置場
ル
ー
ホ
室
濯
洗
吹抜
ハ
EV
込
チ
植
チ ベン
貯湯槽
30k
1次側温水循環ポンプ
3台
260r/min×0.75kW
8,000
4,000
ベン
屋
小
ト
植込
給湯加圧ポンプ
2,000
ール
広場
旗ポ
65kW
プ
ー
ロ
ス
3台
2台
50r/min×0.75kW
〈屋上 物干〉
3−2 循環ろ過装置
屋 上
浴用水活性化ろ過装置
室
療養
室
4人
リ
ネ
ン 男子便所1 女子便所1
女子便所2 庫
ス
車イ 3
便所
倉庫
2 男子便所2
418
療養室
4人室
療養室
4人室
療養室
4人室
療養室
4人室
療養室
4人室
407
408
410
411
412
車イス
便所2
室
下2
療養
室 廊
4人
廊下1
廊下1
室
休憩
症
痴呆 ーム
ル
デイ
洗面
便所
ホール
吹抜
416
室
倉庫
2人
4
室 療養
415
B
室
413 室 個
療養
5
40 養室
療 室B
個
6
40 室
療養室A
個
倉庫
談話室
EV
ビス
3
サー ション 下
ー
廊
ステ
室
療養
室
4人
EV ル
ホー
2
40 養室
3
療 室B
40
個
室
療養室B
個
ろ過循環ポンプ 350r/min×1.5kW
避難
バルコニー
熱交換器 シェルアンドチューブ式
レクリエーション 便所
便所1
ルーム
避難
スベリ台
汚物
1
40 室
療養室B
個
浴槽加熱ポンプ 200r/min×0.75kW
ジェットポンプ
ム
ー
ル
ン
サ
最大循環量 24k/h
洗面1
2
417
バイブラファン
4 F
3−3 浴槽・給湯制御設備
DN
療養
2人
室 室
317
療養
2人
室 理容
コーナー
リネン庫
室
316
療養
2人
室 2人
室 2
休憩
室
312
2人
室 個室
室 B
310
308
療養
B
個室
室 B
個室
室 療養室
4人室
療養室
4人室
321
322
323
2
便所
室
処理
汚物
2
便所
女子
ス
車イ 2
便所
便所
光庭
2
倉庫
診察室
EV
1面
・循環ろ過装置動力制御盤
1面
便所1
家族介護
教室 車イス
便所1 汚物
図−1に各階平面図を示す。
避難
バルコニー
図−2に給湯配管および制御システム系統図を示す。
避難
スベリ台
ル
ン
サ
室
個室
室 廊下
室
養
療
B
室
個
掃除具入
EV ル
ホー
個
307
306
療養
廊下1
ホール
・給湯熱源動力制御盤
(CP−2)
・給湯・浴槽遠隔監視制御盤
(CP−1) 1面
洗面1
洗面
5
30 養室
療
B
療養
3 F
B
休憩室
食器洗浄消毒室
厨房
倉庫
機能回復訓練室
食品庫
前室
シャッター カウンター
戸棚
廊下
EV ル
ホー
廊下1
脱衣
避難
バルコニー
一般浴室
特殊浴室
EV
者用
通所 ーム
ル
デイ
脱衣室
男子便所1 女子便所1
リフト
窓下
ワー
フラ ット
ポ
療養室
4人室
320
室
養
療 室A
ビス
個 1
サー ション 下3
30
ー
B
廊
UT
室 U
ステ
養
療 室A
個 2
0
ム
3
3
30
ー
室
311
療養
男子
療養室
4人室
318
2
室
2人
室 療養
療養室
4人室
廊下1
廊下
室
313
療養
談話室
車イス 男子便所 女子便所
汚
便所
便所2
掃
室
315
療養
1台
避難スベリ台
堂
食
堂
者食
通所
写真−2 廊下・洗面コーナー
2 F
43,400
庫
LPG
家族
相談室1
ボラン
ティア室
事務室
ホール
家族
相談室2
ー
タ
PS
室
風除2
ッ
ャ
2
玄関 ホール
玄関1
V
シ
E
EV
00
34,0
駐車場
風除室1
女子
更衣室
廊下
訪問看護
ステーション
機
械
室
男子
便所
女子
化粧 便所
消火
ポンプ室
13,700
物置
避難スベリ台
15,262
PS
0
,75
17
1 F
図−1 各階平面図
写真−3 3階サービスステーション
― 47 ―
ヒートポンプとその応用 1998.
17.
No.46
―― 実 施 例 ――
空気熱源式給湯機 空気熱源式給湯機 空気熱源式給湯機
(20RT)
(20RT)
(20RT)
CRW
1−1
CRW
1−2
HP
1−1
HP
1−2
CRW
1−3
125
給湯熱源
動力制御盤
(CP−2)
50
動力盤
125
二方電動弁(MV1)
WL 1 WL 2
50
貯湯槽
(30K)
25
HP
1−3
50
125
50
HWT
1
給水
125
125
S
S
4
HS
50
3
給湯行き
HR
M−R
S
RF
50
50
5
給湯循環
25
50
50
HR
二方電動弁(MV2)
HUP
1
温度情報
水位情報
機器類警報
各種設定温度
4F
給湯・浴槽遠隔監視制御盤
HR
運転指令
動力盤警報
WL
2F
ジェットポンプ運転スイッチ
脱衣室
バイブラファン運転スイッチ
浴槽動力機器 緊急停止スイッチ
3
25
65
S
R
JS
25
S
65
25
浴槽給水電動弁
浴槽温度センサー
1F
循環ろ過
装置動力制御盤
A 40
25
M
20
50
50
給湯
給水
65
ろ過ユニット
32
浴槽加熱ポンプ
65
ヘアーキャッチャー
25
25
最寄りの排水桝へ 循環ポンプ
図−2 給湯配管および制御システム系統図
写真−4 浴室
ヒートポンプとその応用 1998.17.No.46
― 48 ―
JP
1
50
50
薬注
S
バイブラファン
BU
1
BHP
1
ろ過器
RU
1
HS
(CP−1)
3F
―― 実 施 例 ――
(2)ポリプロピレン製手巻きフ
表−1 試算と実績の比較 12 月
収容人員(実績)
1 月
2 月
合 計
46
59
75
180
夜間電力量(実績)
2,425
3,564
4,838
10,827
試算電力量(平均)
7,554
7,554
7,554
22,662
同上×(実績人員/120)
2,896
3,714
4,721
11,331
-16.26%
-4.04%
2.47%
-4.4%
ィルター使用の負圧式ろ過装
年間想定数値
置により,
安定したろ過能力と
120人×12=1,440人
容易なフィルター洗浄再使用
(逆洗を必要としない)による
維持管理コストの低減を得る
90,648kWh
ことができる。
試算・実績の差
4−3 給湯・浴槽制御
セントラル給湯の熱源制御の管
理と浴槽の各種制御の管理を一元
化して,
3階のサービスステーショ
ンで集中管理できる遠隔監視制御
(kWh)
盤を採用した。
老人保健施設の場合
8,000
6,000
電
力 4,000
量
夜間電力量(実績)
は,
常時サービスステーションに施
試算電力量(平均)
設のスタッフが待機しており,熱
同上×(実績人員/120)
源・浴槽のスケジュール運転,
およ
び状態監視,貯湯槽・浴槽内の温
2,000
度・水位などの監視制御がサービ
0
12月
1月
スステーションから集中して行え
2月
ることは,施設運営をスムーズに
運ぶことができ,かつ省力化につ
図−3 使用電力量推移
ながる。
4.給湯・浴槽設備システムの概要
5.ランニングコスト試算と実績
4−1 給湯熱源設備
当施設は,開設して間もないため,ランニングコスト
一般給湯系統,浴槽給湯系統とも熱源機を空気熱源ヒ
のデータはまだ少なく,12月,1月,2月分のみである。
ートポンプ給湯機とし,業務用蓄熱調整契約による夜間
そのため,年平均で試算したコストとの1年を通した比
運転で1日分の給湯量を貯湯槽にて蓄熱することとした。
較はできていない。しかし,月当たりの使用夜間電力量
採用の際に行ったランニングコスト比較の試算では,
重油焚き温水ボイラー+貯湯槽方式に比べ,40 %程度の
について試算
(平均)
と実績を比較すると,かなり近い結果
となっている。
ランニングコストで済む結果になっている。
今後,収容人員が増え,給湯・浴槽の使用量全体が増
従来,電気方式は,重油方式などに比べ,
えても,このデータが冬場の分であることを考慮すれば,
(1)安全性が高い
年間を通しては試算に近い数値になると思われる。した
(2)環境に優しい
がって,当初の目的である業務用蓄熱契約によるランニ
(3)維持管理が容易
ングコストの低減は,十分満足できると思われる。
(4)操作性が優れている
表−1,図−3に,
参考として試算と実績の比較を示す。
などの点で優れていたが,さらに,夜間電力利用により
6.おわりに
ランニングコストでも優位となる。
4−2 循環ろ過装置
今回のシステムは,給湯熱源,循環ろ過,給湯・浴槽の
循環ろ過装置の仕様は,水質活性化形,非逆洗形,フ
ィルター再使用可能形とした。
自動制御・遠隔監視制御と夜間電力利用による蓄熱を組
み合わせた設備として,経済的であり,使いやすく,維
特徴を下記に述べる。
持管理も容易で,安全性も高くさらに環境に優しい。今
(1)数種類の天然鉱物を組み合わせた「活性材」をろ
材として使用することにより,吸着作用・イオン交
後,ますます需要が増えると思われる老人保健施設には,
ベストマッチのシステムであるといえる。
換作用による浴槽水中の汚濁物質・有機物・雑菌な
最後に,当施工に当たり,ご理解・ご協力をいただい
どを吸着し減少させることや,ミネラルの溶出・水
た施主,設計事務所の方々をはじめ,関係各社の方々に
質の調整などの活性化作用を有している。
深く感謝いたします。
― 49 ―
ヒートポンプとその応用 1998.
17.
No.46