借り換え体験談~住宅ローン

税理士FPメルマガ通信
平成22年 8月 16日発行
編集:税理士 FP 実務研究会事務局
㈱日税ビジネスサービス 総合企画部
第107号
東京都新宿区西新宿 1-6-1 新宿エルタワー29階
〜続くゼロ金利政策〜 住宅ローン借り換え体験談
私事で恐縮ですが、住宅ローンを借り換えました。自分で体験してみて、ここまでインパクトがあるものかと、
ビックリ。知っているようで、実は、何も知らなかったのだと、反省しきりです。
住宅ローンをいかに早く完済するかというのは、ライフプラン上、最重要課題のひとつです。私の場合、とい
う前提つきですが、ご参考になれば幸いです。
◆ ローンはやっぱり長期固定?
もとのローンを組んだのは、4 年前。住宅金融公庫のフラット 35 で、3000 万円を 30 年・3.12%の固定金利で
借りました。毎月の返済額は 128,431 円で元利合計の総返済額は、46,216,140 円です。
8 頁に渡る返済予定表にため息をつきつつも、3 年ごとに 200 万円ずつ繰り上げ返済して、年金をもらい始める
頃には完済しようと仕事に対するモチベーションを高めたりもしていました。
フラット 35 を選んだ理由は、何といっても金利があがらないこと。4 年前というと景気も今度こそ本当に長い
長いトンネルから抜け出たと思えるようになった時期で(実際、この翌年、住宅ローン控除は縮小されています)、
ゼロに張り付いていた金利は、すぐにも上がり始めそうな気配でした。借入後 1 年間は金利 1%という銀行ロー
ンのCMもよく耳にしましたが、3.12%という水準は、30 年の固定金利としては十分低く、それで支払える限り
は、わざわざ変動金利のリスクを抱えようとは、全く考えませんでした。
ところが間もなく世界経済をサブプライムローン問題とリーマンショックが直撃。景気は再び深刻な状況に陥
り、上がると予想していた金利は、逆に下がり始めました。そんなとき、ポスティングされていたチラシの借り
換えローンの金利は、固定期間 10 年で 2.3%。HPで試算すると、毎月の返済額が 1 万円ほど安くなります。
FPを名乗りつつ、住宅ローンについては教科書の知識しかなく、いい勉強の機会だと思い、住宅ローン相談
会の予約をとりました。
◆ 赤字国債。金利はあがらない。
金利は固定期間が短いほど低くなりますから、低い金利のローンを選ぶことは、イコール将来の金利上昇リス
クを負うことです。ところが勧められたのは、固定金利期間なしの変動金利。こんな恐ろしいもの勧めるとは、
やはり銀行は販売優先なんだ...そんな私の気持ちを見透かしたように、担当者が言ったのが
「赤字国債ですからね。金利、あげようがないんですよ」
。
心の中の霧がス〜っと晴れていくようでした。国民1人あたり 800 万円に届かんとする国の借金。金利の上昇
は即、国家財政の逼迫を意味します。今の政治を見るかぎり、確かに当分、政策金利はあげようがないでしょう。
それまで教科書的に変動金利=リスクと検討しようともしませんでしたが、変動といいつつ下限に金利が張り
付いた状態が長期間続くと見越せるのであれば、思い切って変動金利を選択し、その恩恵を受けている間にピッ
チをあげて繰り上げ返済していく、という作戦も十分ありえます。
そこで繰上返済用に貯えていた資金を 130 万円ほど加え、借入期間を 1 年短い 25 年にして変動金利の 0.975%
-1-
で試算してもらったところ、月々の返済額は 98,444 円。あと 13 円で 1 カ月3万円ダウンというところまできまし
た。当事務所の顧問料水準では、顧問先が 1 件、増えた感じです。
もちろん、いずれ金利はあがります。私はどんなリスクを抱えることになったのでしょうか。
現在、住宅ローン金利の優遇プランが各金融機関で出されており、私の場合は、借入全期間に渡って、そのと
きの店頭表示金利より 1.5%低い金利を適用してもらえることになっています。もとのローン金利プラス 1.5%
は 4.62%。この水準まで変動金利が上昇しない限り、もとのローンより不利になることはありません。かなりの
長期間、心配はないと考えました。また、このローンの場合、随時、変動金利から固定金利プランへの変更可能
ですから、金利が上がり始めたタイミングで固定金利にすればリスクは回避できます。将来に絶対は禁物ですが、
返済額が減った分を即、使ってしまうというようなことをしない限り、金利上昇リスクは怖くないというのが私
の結論です。
◆ 気になる費用は
話が前後しますが、借り換えにそれまで消極的だったのは、費用の高さです。今回の借り換えでかかった費用は、
次の通り。2年もしないでとりかえせる計算です。もとのローンを借りる際、保証料を全額前払いしている人は、
未経過期間分が戻ってきますから、その分予算から、差し引いて考えることができます。
【借り換えの諸経費】
保証料
452,054 円
保証会社手数料
登記費用
31,500 円
160,000 円
契約書の印紙代
20,000 円
証明書や振込手数料等
合
計
4,000 円
667,554 円
住宅金融公庫では団体信用生命保険は別に加入するため年間 10 万円ほど保険料の負担がありましたが、民間の
ローンは金利に保険料が組み込まれているため、それがなくなったのも思わぬメリットでした。
借り換えにあたっては審査がありますし、金利差や借入額、残期間により借り換えの効果は人それぞれで、費
用との兼ね合いによっては、繰上返済の方が有利な場合もあるでしょう。それでも、住宅ローンのある方であれば、
一考の価値あり。いろいろなホームページで試算できますから、繰上返済の資金が貯まったら実行する前に、あ
わせて借り換えも検討してみていいのではないでしょうか。
<著者プロフィール>
東
富士子
氏
オフィスアズ代表。税理士・社会保険労務士・CFP(R)。
阿佐ヶ谷のけやき並木に面した事務所で士業業務の他、個人のライフプラン相談に取り組む。
趣味は、野菜づくりと聞き始めたばかりの落語。
敬遠されがちな税金や社会保険の話をハートの真ん中に届ける話術の開発が目下の課題。
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