高専生を対象にした構造力学の復習用テキストの作成 山田研究室 1.研究背景と目的 米子高専 3 年生の構造力学Ⅰの授業はプリントを 中心に授業が行われていた。テキスト中心であった ので,教科書は少し見るが内容が難しく書かれてい たのでそこまで活用はしなかった。しかし,4 年生 の構造力学Ⅲの授業は教科書中心の授業で,3 年生 の時教科書を使用していなかった自分は教科書の 内容の理解や前年の授業の復習ができておらず,4 年生の構造力学Ⅲも理解できたとは言えない状態 だった。 そこで,米子高専生を対象にした復習用テキスト を制作し,理解しやすいテキストを作成することが 目的である。 2.参考書の分類 最初に,図書館から構造力学に関する本を約 60 冊借りてきた。構造力学の参考書を問題,例題の多 い順番に 20 冊まで絞り込んだ。そしてそれぞれの 参考書を上級,中級,初級に振り分けた。取り扱っ ている問題の複雑さ,解説の細かさ,文字数,微分 積分の有無を参考書ごとに見比べ,自分が米子高専 生には易しい内容だと思う参考書は初級,ちょうど よいと思う参考書は中級,難しいと思う参考書は上 級と振り分けた。 3.1 回目のテキストの作成 3 つの参考書の問題を参考にテキストを作成した。 一つ目のテキストは初級に振り分けた一番やさ しい構造力学を参考に作成した。文字が少ない,反 図1 1 回目に作成した資料【1】 図2 08537 湊崎 敦 力の求め方も簡単に書いてある,図がシンプルにし てあること以外はあまり書いていないということ がこのテキストの特徴で,大まかな計算と求め方の 流れは理解しやすいが詳しい部分は理解しにくい と思う。 次に二つ目のテキストは中級の初学者の建築講 座建築構造力学を参考に作成した。合力の計算のル ールが大きく最初に書いてある,図が多く書いてあ り図にも少し解説が加えられていることがこのテ キストの特徴で,計算式は理解しにくいが 1 つ目の テキストと比較し図は理解しやすいものだと思う。 三つ目のテキストは上級の建築構造力学上を参 考に作成した。文字と反力の計算,M 図 Q 図を求め るまでの計算が多いのがこのテキストの特徴で,詳 しく解説できるようにした。しかし,レイアウトが 良くなく,重要な点が分からないので読む時間が多 くいると思う。 4.アンケートの作成 このアンケートは,自分の参考書の振り分けは正 しかったのか,テキストの内容はどのようなものが 良いのかを調べるために実施した。 まず,一番やさしい構造力学を参考に作成したテ キストは資料【1】として,初学者の建築講座建築 構造力学を参考に作成したテキストは資料【2】,建 築構造力学上を参考に作成したテキストは資料【3】 としてアンケートに載せた。この 3 つのテキストを 見比べてもらい, 【1】 【2】 【3】の解説は理解しやす かったか,どの点が理解しやすかったか,【1】【2】 1 回目に作成した資料【2】 図3 1 回目に作成した資料【3】 【3】の解説は理解しにくかったか,どの点が理解 しにくかったか,授業とテキストと比較してどちら が理解しやすかったか,3 つのテキストのうちどれ が一番理解しやすかったか,3 つのテキストのうち どれが一番理解しにくかったか,授業で新しいテキ ストは必要か,の質問に回答してもらうようにした。 つ難しく書いてあるという意見は,図に説明を入れ 図を増やして改善した。全体的な意見では,資料【1】 で(a)Q 図の正負が授業と逆で少し戸惑ってしまう と意見があったので授業と同じになるように図を 描いた。 図4 2 回目に作成したテキスト 5.アンケートの結果 アンケートの結果資料【1】,資料【2】,資料【3】 の順に理解しやすいという結果が出た。資料【1】 はどちらかといえば理解しやすい,資料【2】はど ちらかといえば理解しにくい,資料【3】もどちら かといえば理解しにくいという人が多かった。授業 とテキストと比較してどちらが理解しやすかった かの質問では,資料【1】【2】【3】より授業が理解 しやすかったが多かった。授業で新しいテキストは 必要かの質問では少しは必要だと思うが一番多か った。 6.2 回目のテキストの作成 資料【1】では以下のような意見があった。 ・簡単な説明で読みやすい ・文字数が少なく簡潔 ・書き方が柔らかい ・公式が成り立つ過程をゆっくり解説して欲しい ・重要なポイントが分からない ・式の作り方が分かりやすい 資料【2】では以下のような意見があった。 ・基本的なルールが最初に大きく書かれていて分か りやすい ・説明が回りくどい ・文章ばかりで何を言っているか分からない ・図の間隔が狭い ・図にちょっとした説明があり分かりやすい 資料【3】では以下のような意見があった。 ・具体的な数値で想像しやすい ・細かいところまで書いてある ・式の作り方が分かりやすい ・文字が詰まりすぎ ・字が多く読みづらい ・計算式や文章の割合が図より多くなおかつ難しく 書いてある 次にアンケートの意見と最初に作成した資料【1】 【2】【3】もとに新しくテキストを作成する。資料 【1】では M 図 Q 図の説明が分かりやすいという意 見は,M 図 Q 図の説明を多くし,重要なポイントが 分かりづらいという意見は文章を段にして分け改 善した。資料【2】での図の間隔が狭いという意見 は,図の間隔を広くし改善して見やすくした。資料 【3】での計算式や文章の割合が図より多くなおか 7.考察 アンケートでの結果,文字が多くて理解しやすい 人がいれば簡潔な説明が理解しやすいという人も 多くいた。この結果から個人の解説の難しさの感じ 方は授業での理解度で違うと思った。やっぱり黒板 などで一から順を追って説明するのが一番理解し やすいです、という意見もあったので先生の解説で 理解しやすくなっていると思う。 8.まとめ 米子高専生を対象にした理解しやすいテキスト に少しは近づいたと思うが,全員に理解をしてもら えるようなテキストは完成しなかった。授業は教科 書と先生による解説があり,先生の解説によって理 解を深めることができるが,作成したテキストは文 章だけで理解しなければいけないため作成するの がとても難しかった。 参考文献 1) 著者:高木任之/『一番やさしい構造力学』/刊行年: 2010 2) 著者:構造力学研究会/『建築構造力学上』/刊行年: 2011 3) 著者:元結正次郎/『初学者のための建築講座建築構造 力学』/2004
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