ナンシー便り(3) 世界史分野 3 年:井上まな 研究テーマのキーワード:「ルネサンス、美術史、図像学」 【旅行面】~芸術の国、フランスで旅行することの醍醐味~ 私は、 「美術館と歴史的建築巡り」という目的のもと、国内外を巡っています。今回は、 私がフランス滞在中に訪れた都市や美術館で印象に残ったもの、特にフランスのものにつ いて綴りたいと思います。 ・サント・シャペル(Paris) パリのシテ島には、ノートル・ダム大聖堂とい う観光スポットとして非常に有名な建築物があ りますが、個人的にはこの教会のほうがお気に入 りです。同じくシテ島の一角に位置するこの教会 は、規模こそ小さいものの、建物がガラスででき ていると錯覚させるほどの、広範囲のステンドグ ラスが特徴的です。ステンドグラスで埋め尽くさ れた教会内は本当に息をのむほどの美しさで、ま るで宝石箱の中に入ったかのように感じました。 ・フルヴィエール大聖堂(Lyon) フランス第二の都市リヨンのフルヴィエール という丘の上にそびえ立つ大聖堂は、金と青、 緑を基調とした壁のモザイク画が圧巻です。 歴史・芸術・美食の街として名高いリヨンは、 地理上、イタリアに近いこともあって、ルネサ ンス建築やローマ時代の遺跡が数多く残ってい ます。ちなみに、静岡大学とは学部間での協定 が昨年から取られており、私もフランスに戻る ことがあれば、この街で暮らしたいと考えています。 ・ランス大聖堂(Reims) ランスは、ナンシーとパリの地中地点に位置す る、フランスの中では比較的大きな街です。この 街を代表するこの大聖堂は、クローヴィスの戴冠 式が行われた場所としてフランス建国の歴史にお いて重要な位置を占めてきました。5 月下旬から 8 月まで毎夜、光と音を使ったプロジェクトマッピ ングが催され、歴史あるこの後期ゴシック建築を よりいっそう美しく彩ります。また、ランスはシ ャンパンの生産で財政が豊かなため、都市政策が 非常に充実しているそうで、街の治安が良かった のが印象的でした。 ・ルーブル美術館(Paris) いわずとしれた、世界三大美術館のひとつで あり、所蔵作品の質・量ともにこの美術館に勝 るものはないのではないでしょうか。また、建 物自体がすでに歴史あるものであり、壁、天井 一面に絵画作品が掲げられた展示手法は、圧巻 です。もちろん、彫刻や工芸品の所蔵数も膨大 で、1 日で全館を見て回ることはできません。 実は、ここで働くという小学生以来の夢が、 私をフランスでの留学へと駆り立てた動機のひ とつである、私にとって非常に思い入れの深い ものです。ナンシーがパリから距離的に近いこ とも手伝って、私はすでに 3 回訪れました。 ・ルーブル・ランス(Lens) 先ほど、取り上げたランス(Reims)とは別の、フランス北部のランス(Lens)という 小さな街に位置する、2014 年に開館した美術館です。 この近代的な外観を持つこの美術館は、1 時間半もあれば全作品を見て回れるほどの規模 ではありますが、ルーブルの別館だけあって、質は一級です。 「時のギャラリー」という作 品を時系列毎に並べた展示手法が最大の見所で すが、芸術作品の修復作業現場や収蔵庫など、 美術館の裏側も見学できるようになっています。 新たな形の美術館として、今後期待されるでし ょう。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ フランスは、物価が高いと言われており、確 かにその通りなのですが、芸術分野に関しては 国民皆が気軽に親しむことのできるシステムが 整っています。例えば、フランスでは第一日曜 日は全ての美術館が無料になります。また、一 部の美術館は、EU 所属の 26 歳以下の学生にい つでも無料で公開しています。あのルーブル美 術館でさえ、学生証をみせるだけで簡単に入れてしまうのですから、驚きです。 それから、年間を通して、芸術系に関するイベントは非常に多いです。私の住む街ナン シーでは、9 月に大きな JAZZ フェスティバルが開催されました。もう少しで夏になります が、この季節は南仏を中心に、古代遺跡や歴史的建築を舞台にして野外コンサートや演劇 が毎夜のごとく催されるそうです。もちろん、特定の時期に限らず、日ごろから芸術に関 する催しはたくさんあります。このように、市民が気軽に芸術に触れることができるのが、 フランスが「芸術の国」と称される所以でしょう。
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