DEVELOPMENT SOLUTIONS ETAS Dr.ゲァド・ウィットラー LABCAR-VDYM V5.0 ― 高精度なリアルタイム シミュレーションを可能にする 車両ダイナミクスモデル INTECとの共同開発による成果 ETASはLABCAR-VDYM V5.0のリリースを通じて、オープンスタンダードに基づくモジュール式の車両ダイナミ クスシミュレーションモデルを提供します。当製品は、車両ダイナミクスの分野で使われているメカトロニックシス テムの開発工程全般を支援するためのモデルとして活用いただけます。MATLAB®/Simulink®シミュレーションプ ラットフォーム上でモデリングを行い、リアルタイムシミュレーションを可能にするこの車両ダイナミクスモデルは、 INTEC GmbHとETASの共同開発によるものです。 図1: LABCAR-VDYM V5.0アニメーション コンポーネント 18 RT J1.2005 Simulink®によるLABCAR-VDYM V5.0 モデルは、ユーザーが作成したSimulink® モデルを容易に統合することが可能です。 また、オフライン/オンラインいずれのア プリケーションにおいてもオープンで拡 張性があります。当モデルはINTEC製の SIMPACKやMSC.Software Corporation 製のADAMS/Carといったマルチボディ シミュレーション(MBS)ツールとのイ ンターフェースを備えており、LABCAR アプリケーションの車両ダイナミクスモ デルのパラメータ設定を、お客様の開発 プロセスに沿った形で容易に行うことが できます。 モデル精度の向上 LABCAR-VDYM V5.0モ デ ル は 、 旧 バージョンのVDYM V1.2.0に比べてモデ リングの精度が向上し、LABCARの活用 範囲を広げました。例えばハードウェア インザループ(HiL)環境でのECU適合 や、ビークルダイナミクスコンセプトの 検討、開発早期のメカトロニクスシステ ム解析などに対応します。 ユーザーの開発プロセスに即して、容易 にデータへアクセス可能 自動車メーカでは自社の車両ダイナミ クスコンポーネントのモデリングデータ の管理に、データベースやCADシステム、 あるいはMBSツール(SIMPACK、 ADAMS/Car等)を用いています。従っ て開発工程の後半でこれらのデータにア クセスできれば、非常に効率的でコスト 削減につながります。例えばHiLテストベ ンチでECUのリアルタイムシミュレー ションを行う場合、すでに記録されてい るモデルのテストデータを再利用できれ ば非常に便利です。この情報には車両ダ イナミクスや走行/快適特性、車軸や車両 コンポーネントの耐用年数なども含まれ ます。またSIMPACKシミュレーション ツール用のパラメータ設定インター フェースがあれば、LABCAR-VDYM V5.0モデルに車両ダイナミクスのパラ メータを直接ダウンロードすることがで きます。この方法により、LABCARモデ ルの車両ダイナミクスモデルコンポーネ ントへデータをダウンロードする作業の 大半を確実に自動化することが可能にな り、ファンクション開発ツールとHiLツー ル間等のデータ交換を手作業で行うこと によるエラーも回避できます。プロセス の自動化により、モデルのデータを常に 最新の状態に維持できる点も重要です。 モジュールコンセプトの導入 この製品はモジュール構造を採用して おり、要件に応じて多種多様なプロジェ クトに対応させることが可能です。右 ページの図3をご覧ください。個々のプ ロジェクト用に作成した車軸を含む車両 ダイナミクスのコンポーネントなど、既 存のコンポーネントモデルやセグメント は、それぞれのSimulink®データのブロッ クを単純に交換するだけでL A B C A R VDYM V5.0モデル構造に組込むことがで きます。 LABCAR-VDYM V5.0の基本モデルは、 Simulink®によるドライバー・車両・走行 環境のシミュレーションを行うコンポー ネントを含む車両ダイナミクスシミュ レーションモデルです。車両モデルには パワートレインや車軸、ホイール、ブ レーキ等が含まれており、サスペンショ ンはセミトレーリングアームです。 この基本モデルに加えて、モデルの精度 を段階的に高めていくオプションとして、 2種類の拡張モデルLABCAR-VDME1 図2: LABCAR-VDYM V5.0 拡張モデル 各種のサスペンションに対応 ( Vehicle Dynamics Model Extension)、 LABCAR-VDME2(Vehicle Dynamics Model Extension 2)が用意されています。 拡張モデルLABCAR-VDME1は、特性 マップを用いてサスペンションの運動特 性を表すもので、基本モデルに比べては るかに高精度なモデルを提供します。ま たLABCAR-VDME2は、コンポーネント をモデリングして運動特性を表すもので、 細部に渡るシミュレーションの要求があ るといった分野に最適です。サスペン ションアームやスプリング、ショックア ブソーバ等の軸受けの抗力や形状を物理 的な値でパラメータとして与えるため、 パラメータを1つ変えるだけで、図2のよ うに、5リンク、マクファーソン、ダブ ルウィッシュボーンといった一般的な乗 用車のサスペンションへと簡単に変更す ることができます。 5リンク マクファーソン 変形マクファーソン ダブルウィッシュボーン スイングアクスル クワドラリンク インテグラルアクスル 変形ダブルウィッシュボーン LABCAR-OPERATOR LABCAR-VCS LABCAR-RTC LABCAR-RIS ETASではECUテストを行うためのリ アルタイムモデルとして、この車両ダイ ナミクスモデルの他に、ガソリン/ディー ゼルエンジン用モデルなども提供してい ます。これらのモデルはすべて同じ構造 であるため、お客様のニーズに応じて Simulink®のシミュレーション環境にて異 なるモデルのコンポーネントを組み合せ ることも可能です。 LABCAR-OPERATORはテストのリ ファレンス等として使用するために、 ハードウェアインザループ環境のテスト をサポートするデフォルトのデータとグ ラフィカルユーザインターフェースを備 えています。 車両モデルの3Dアニメーションを表 示したい場合は、リアルタイムで実行可 能なLABCARモデル用アドオンコネクタ LABCAR-ACM(Animation Connector for LABCAR Models)が用意されていま す。 また車軸特性マップのデータを、 ADAMS/Carの Conceptual Suspension Designで使用するフォーマットから LABCAR-VDYM V5.0用のデータフォー マットへ直接変換することが、ADAM/ Car 用アドオンコネクタLABCAR-SPCA ( Suspension Parameter Connector to ADAM/Car)で可能になります。さらに 全モデルのパラメータの設定・管理を容 易に行うためのツールとして、パラメー タ設定アシスタントLABCAR-PA (Parameterization Assistant)が用意さ れています。 MATLAB® / Simulink® LABCAR-PA Real-Time Workshop® LABCAR-ACM Animation Connector for LABCAR Models LABCAR-VDYM V5.0 LABCAR-VDME1 Vehicle Dynamics Model Extension 1 – Look-up table susp. ■■ ■■ ■■ ■■ ■■ LABCAR-VDME2 LABCAR-SPCA Vehicle Dynamics Model Extension 2 – Macro joint susp. ETAS LABCAR-VDYM基本製品 Suspension Parameter Connector to ADAMS/Car Parameter connector Code generation connector ETAS LABCAR-VDYMアドオン INTEC製品 その他のLABCAR製品 SIMPACK ADAMS / Car 他社製品 LABCAR-VDYM V1.2.0から LABCAR-VDYM V5.0へ LABCARの汎用性を高めるため、既存 のVDYMプロジェクトのモデルのパラ メータを、新しい車両ダイナミクスモデ ルLABCAR-VDYM V5.0へ移すことがオ プションとして可能で、MATLAB®のm コードファイルとLABCAR-PAツールと してサポートしています。 成功のカギは共同開発 LABCAR-VDYM V5.0車両ダイナミク スモデルは、ソリューションおよびツー ルプロバイダのINTEC GmbHと、エンジ ニアリングツールのスペシャリスト ETASの2社による共同開発の成果です。 ダイナミックマルチボディシステムのモ デリング、解析、最適化に関する高度な ソ リ ュ ー シ ョ ン お よ び ツ ー ル (SIMPACK)に特化しているINTECに対 し、ETASは自動車用ECUの開発工程全 般に対応する統合ツール環境を手がけて います。両社は互いの専門性とお客様と の協力関係を通じて蓄積された経験やノ ウハウを共有し、共通の車両ダイナミク スシミュレーションモデルの開発に取り 組んでいます。 INTEC GmbH関係の記事は、リアルタ イムス2002-1号(30∼31ページ)にも掲 載されています。 図3: モジュール構造の LABCAR-VDYM V5.0 19 J2005.1 RT
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