特定非営利活動法人 九州大学こころとそだちの相談室 第17号 発行日 2013/11/23 こだち News ■ ■ ■ ■ ■ 巻頭言 心理臨床のパラダイム転換とこだちの使命 九州大学こころとそだちの相談室専務理事 目次 こだちの紹介 2 書評 3 研修会の 報告と紹介 3 掲示板 4 九州大学大学院教授 増田健太郎 心理臨床は国家資格問題をめぐって大きな転換期を迎えようとしています。また、教育の世 界では、体罰問題やいじめ問題が大きな社会問題として取り上げられ、日本の教育の在り方を 変えていく必要があります。そして、今なお続く被災者支援の問題、ブラック企業の問題、就 職活動でダウンして、引きこもりになっている若者も増加しています。 臨床心理士が活躍を期待される分野は、多岐に渡るとともに、その多様性・汎用性が問われ ています。若手の臨床心理士も増える中、社会のニーズに対応できる臨床心理士になるために は、日々の研鑽と弁護士などの様々な専門家とのネットワークを創っていくことが求められま す。現在は弁護士と臨床心理士とペアを組んでの相談活動も企画・運営されるようになってき ました。 こだちは、創設七年目を迎えました。こだちのミッションは社会の心理的ニーズにきめ細や かに対応すること、臨床心理士の研修機会を設けること、専門家のネットワークの起点になる ことです。こだちの基盤はカウンセリングです。こだちの認知度と信頼度が高まるとともに、 他機関やクリニックからの紹介も増え、個別臨床は増加傾向にあります。また、労働安全衛生 法改正とともに企業・公務員の精神疾患対応としての、研修会・講演会依頼も増えてきまし た。昨年度は十五年ぶりに自殺者が三万人をきりましたが、先進国の中では、非常に多い状態 が続いています。心理臨床は「心を援助すること」を目的にしていますが、究極的には「生命 を守ること」だと考えています。 講演会・研修会も「メンタルヘルス研修」の依頼が増えました。事業者が企画しても、受講 者はあまり積極的ではありません。しかし、その研修会を通して、一人ひとりがメンタルヘル スのことを考えてもらい、何か困った時に、「こだちがある」ということを知ってもらうこと に大きな意義があると考えています。 臨床心理士の汎用性に対応するためには、ひとりで学習することは不可能です。そこで、こ だちでは、アセスメント研修や臨床動作法やロールシャッハ研修など、臨床心理士のニーズに 応じた研修会を行っています。また、春には「公開事例検討会」を秋には「講演会」を行い、 臨床心理士の資質向上に努めています。今では、九州各県や山口・広島などからの参加者も増 えてきました。九州における臨床心理士研修の拠点になっているのではないかと自負していま す。今後も皆様のニーズに対応する研修会を企画運営していく所存です。 しかし、経営的には厳しい状況が続いています。臨床心理士が経済的にも自立できること が、混迷し、精神疾患が増えている状況を変えていくためにも重要なことだと考えています。 皆様のご理解とご支援をこれからもよろしくお願いいたします。 七年目を迎えた本年度は秋の講演会は、災害支援・いじめの被害者支援、ストレスマネジメ ントの第一人者である冨永良喜兵庫教育大学大学院教授をお招きして、講演会を行います。講 演会などの場は、事務局員にとって、こだちのミッションを確認する場にもなっています。皆 様のご参加を心からお待ちしております。 こだちとは…?? 「特定非営利活動法人 九州大学こことろそだちの相談室」 の愛称が「こだち」です。 〒814-0002 福岡市早良区西新2-16-23 九州大学西新プラザ内 産学交流棟 tel:092-832-1345 開業時間:月~土(祝・祭日を除く)10時~18時 〇こだち ・2006年10月に地域の皆さまのお役に立ちたい と考え、九州大学のOBを中心に設立しました。 ・九州大学西新プラザ内の洋館がこだちです。 昔、外国人教師の宿舎として使われていた建物 (左の写真)です。 カウンセリングルーム「こだち」 家庭学習支援事業 ・ご家庭に支援員(心理学を学ぶ学部、大学院 生)を派遣し、学習サポートを行います。 ・「学習」と「こころ」の両面から支援を行いま す。 ・①支援員の派遣、②保護者へのカウンセリン グ、③支援員の資質向上(相談員との連携、支援 員同士のシェアリング、等)をセットで行ってい ます。 ☆家庭学習支援が適切か判断した上での開始とな ります。 ☆派遣可能な支援員が必ずしも見つからない場合 もあります。 ☆年会費:5,000円、1回2時間:6,000円+交 通費(実費)(別途面接料金が必要です) ・子育てについて、誰かに相談したい… ・人間関係について困っている… ・自分の性格について悩んでいる… その他、様々なこころや育ちについての相談を お受けしています。 ☆事前にお電話でお申込みが必要です。 ☆秘密は厳守いたします。 ☆料金 初回:6,000円 継続面接:4,000円 合同(保護者と子ども) :6,000円 フリースペース「ここりーと」 ・人と話したり、一緒に過ごすのが苦手だった り、外へ出るのが苦手な方がゆっくり自分のペー スで過ごせるような居場所活動です。 ・臨床心理学を学ぶ大学院生がスタッフとなり参 加者と一緒にのんびりしたり、話をして過ごしま す。 ☆10~22歳までの 方が対象です。 ☆水・金の13時~ 16時の時間内で自 由に出入りすること ができます。 ☆保護者がこだちで の面接を受けている ことが必要です。 Page 2 講演会・研修会・講師の派遣 ・こころの健康やストレスへの対処、人間関係や 親子関係など、こころとそだちに関する講演会や 研修会、講師派遣を行っています。 ・臨床心理士向けの研修会の他、一般市民向けの 講座(こだちゼミナール)も行っています。 ☆詳しくはHP、またはこだちまでお問い合わせく ださい。 第17号 紹介~「臨床心理学 第13巻第5号 スクールカウンセリングを知る」 金剛出版 「臨床心理学」は毎回ひとつのテーマを様々な視点で 掘り下げていく専門誌です。今回は「スクールカウンセ リングを知る」がテーマとなっています。 目次を見ると、スクールカウンセリングに関する①基 礎知識(学校組織、学校の見立てと入り方、守秘義務、 薬物)、②基本的方法(直接支援活動、間接支援活動、 協働活動、研修会、等)、③個別の具体的展開の方法 (緊急支援、特別支援教育、いじめ、非行問題)と多岐 に渡る項目が並びます。執筆陣はベテランから若手の SC、各領域の第一人者の臨床心理士や精神科医など、 様々な専門家となっています。 以下、その中から抜粋して紹介していきます。「学校 の見立てと入り方」では、若手SCが悩みやすい“学校の 中で何を見てどのように活動を組み立てていくか”につ いて参考となる考え方が論じられています。「教員との 協働と守秘義務」では、面接で取り扱われる秘密とそれ にまつわる教員との協働のあり方が非常に具体的に書か 研修会の報告 増田健太郎・石川悦子(編) れており、日ごろの活動を振り返らずにはいられなくな ります。「スクールカウンセリングに役立つ精神疾患治 療薬の基礎知識」ではSCとして知っておくべき精神科薬 について端的にまとめられています。「いじめ問題への 構造的介入」では専門的視点から具体例を通して介入方 法が複数提示されています。SCだけでは展開が難しい側 面もあるように思われますが、SCにこれまで以上に高い 専門性が求められてきていることを強く感じるものでし た。 冒頭でSCの置かれている厳しい現 実が指摘されます。パラダイム転換と いう言葉でも表現されていますが、基 本的な知識と方法をもちつつ、必要な 活動をどう展開するか、1人1人が考え ていかなければならないものです。活 動を省察し、展開させていくためのヒ ントがちりばめられた一冊となってい るのではないでしょうか。 ~こだちで企画運営する研修会の紹介と報告です~ 事例で学ぶテストバッテリー アセスメントに関する研修会は、講演会や他の研修会 でのアンケートでも要望が多く寄せられています。 今年度、こだちとして新たに「事例で学ぶテストバッ テリー研修会」を企画し、6月30日(日)に成人編、7月 14日(日)に思春期編を髙橋靖恵先生(京都大学大学 院)を講師としてお招きし開催いたしました。 「事例で学ぶテストバッテリー」は、テストバッテリー を組んだ1つの事例を取り上げ、1日かけて検討していく 研修会です。 髙橋先生の講義に始まり、各検査に関する質疑応答、 総合した見立て、さらにケースに活かすためのフィード バックをどのように行うかについてグループ内でディス カッションを行い、それを会場全体でシェアリングして いく、という流れで実施しました。 アセスメントに関する研修会で1つのケースを1日かけ て丁寧に深めていくという試みは非常に珍しいのではな いかと思います。実際の研修会では、温かで活発なディ スカッションの中で、検査を通してケースを全体でゆっ くりと共有しながら深めていくような雰囲気が徐々に醸 成されていったように思われました。 特に思春期編では検査や経過を読み込んでいく中で ケース理解や検査の解釈が複雑化していきました。セラ ピストとクライエントとの関係性を含みながら検査を読 み込んでいく中で、ケース理解はもとより、テストの深 みに触れられたように感じられました。 30人の定員でしたが、成人編、思春期編、共に定員満 員となる参加をいただき、アンケートからも非常に満足 度の高い研修会であったことが分かりました。髙橋先生 をはじめ、参加してくださった先生方に感謝申し上げま す。 こだちでは、今年度は以下の研修会を予定しています。詳細は後日お知らせいたします。 ●こだち精神医学講座(仮):三木浩司先生(小倉記念病院)をお招きしての精神医学に関 する研修会です。ワークショップ型の研修会を予定しています。 ●養護教諭とスクールカウンセラーのための研修会(仮):養護教諭とスクールカウンセラーを対象に、保健 室でよく出合う事象や問題への対応に関する研修会です。 Page 3 掲示板 こだちよりお知らせ 書籍紹介 ミドリ印刷の広告 目で見る動作法(DVD付)初級編 成瀬悟策監修/はかた動作法研究会編 動作法とは動作を手段とする心 理療法です。動作法では「こころ の不適応は必ずからだの不調とし てあらわれる」と捉え援助を行い ます。動作の不調を変えるプロセ スの中で動作の仕方が変わり「か らだの不調」が改善し、さらにこ ころの使い方(体験)で生じた 「こころの不適応」が改善されることで生活体験の仕方や生き方 が変わって、より適応的に生きていくことを目指します。 本書では動作の見方、課題の選び方、援助に重要なからだの部 位について等、基本的な知識を提供します。全ての援助につなが る基本的な4つの動作について、クライエントの主体的な動作を 引き出す援助法を示します。それぞれの動作の各ステップのポイ ントを写真とクライエントへの言葉かけの例で解説します。 付録DVDではベテランセラピストによる実演によって,援助の ポイントを視覚的に学ぶことができます。動作法初学者だけでな く上級者も基本を再確認できる一冊です。(金剛出版HPより) ○入会のご案内 こだちは7年目を迎えました。地域に定着した心理臨床 サービスを継続するには、収支の安定が求められます。 NPO法人の会員となって私たちの活動を支えていただけ ると幸いです。会員になっていただける方はぜひこだちまで ご連絡ください。なお、会費は1年毎の更新制です。よろし くお願いいたします。 交通のご案内 ■■■■■■ ○ご支援のお願い 当NPO法人では会員以外の方からも、ご寄付をおまちし ております。関心や興味をもたれた方はぜひご連絡くださ い。 編集後記 スタートして7年、少しずつではありますが、地域の方々、専 門領域の方々にこだちの存在が広まっている事を日々の業務の 中で感じます。コツコツ積み重ねることは、大切ですね。(M) 特定非営利活動法人 ■ ■ 地下鉄でお越しの方 ■ ■ 福岡市営地下鉄空港線西新駅下車後 7番出口より徒歩にて約10分 九州大学こころとそだちの相談室 〒814-0002 福岡市早良区西新2-16-23 九州大学西新プラザ内 産学交流棟 TEL 092-832-1345 FAX 092-832-1346 HP http://www.geocities.jp/npo_kodachi/
© Copyright 2024 Paperzz