2011年9月号

天晴
てんおう かい
天翁会 だより
あっぱれ
9
月号
2011
●発行者:医療法人財団天翁会 理事長 天本 宏
●発行日:2011年9月1日
特集 1
第7回 もっと元気が出る講座より
特集2
共に歩む在宅介護の会・多摩市家族介護者教室より
「認知症にまつわるあれこれ」
「第 1 回 男性介護者のつどい」
を開催しました
連載〈第2回〉わたしの履歴書 ~天翁会までの道程~ 天本 宏
もくじ
2 特集1/第7回 もっと元気が出る講座より
「認知症にまつわるあれこれ」
〜基礎知識から最新の話題(新薬など)まで〜
4 特集2/共に歩む在宅介護の会・多摩市家族介護者教室より
「第1回 男性介護者のつどい」を開催しました
6
連載〈第2回〉
7
News 天翁会 防災委員会合同による勉強会を開催!
わたしの履歴書 ~天翁会までの道程~ 天本 宏
●表紙の花…キバナコスモス
特集
*1*
第 7 回 もっと元気が出る講座より
「認知症にまつわるあれこれ」〜基礎知識から最新の
天翁会では、 19 8 6(昭和 61)年から“共に歩む在宅介護の会 ”という勉強会を開催してい
ますが、 介護の知識や技術の提供だけでなく、 地域の皆様に「もっと元気に過ごしていただき
たい!」「天翁会やあいセーフティネットをもっと身近に感じていただきたい!」 という思いから、
2 0 0 9(平成 21)年より“もっと元気が出る講座 ”を開催しています。
7 月 2 4 日に第 7 回目を行い、 3 0 名ほどの方に受講いただきました。
講座開催のお知らせは、 天翁会各事業所や多摩市役所などでチラシ配布、 ポスター掲示を
しているほか、 たま広報や地域情報誌「週刊もしもししんぶん」 などにも掲載しておりますが、
「気がつかなかった、 参加したかった」「次はいつ?」 といったお声もいただくことから、 講座
の内容や当日の様子をごく一部ですが、 誌面でご紹介いたします。
講師:新天本病院 杉山恒之医師
認知症の方に対する支援の視点
認知症は残念ながら現在の医療では完治できません。
このような状態の中で、
「もし自分が認知症になった場
合に、どうしてほしいか」と考えますと、たとえ認知症
であっても、自分らしい生活の実現、できるだけ自分
らしく生きるということに尽きると思います。こういっ
た視点で支援を考えていきますと、非常に個別性があ
り、また、障害が日常生活に直接リンクするため、医療、
特に薬の果たせる役割というのは、実はほんの一部な
のです。医療と共にケア、つまり、
「対応の仕方や環境
の工夫」
、それから「制度・福祉の活用などのソーシャ
ルワークを利用すること」
が非常に大事になります。医
療+ケア+制度・福祉、この三つ巴で支援をしていく
かたちになります。
抗認知症薬の種類
認知症の半分以上を占めるアルツハイマー型認知症
の認知機能障害に対する市販薬は、現在まで世界で 5
つ(内 1 つはほとんど使用されず)
の「対症療法薬」があ
り、
「根本治療薬」も市販化に向けて急ピッチで臨床試
験が進行しています。
対処療法薬とは、病態そのものには変化を及ぼしま
2
せんが、認知機能症状の進行を遅らせる薬です。記憶や覚
醒に関連する神経の伝達が衰えるのを守る薬ですが、脳細
胞が徐々に壊れていくことに関して作用することはできま
せん。このような神経伝達機能改善薬として、アセチルコ
リンという神経伝達物質を分解する酵素を阻害し、神経伝
達をスムーズにする薬が、アリセプトや、国内で新しく市
販化されたレミニールとイクセロン・リバスタッチパッチ
です。また、神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に出
続けてしまい神経の伝達不良が起こるというグルタミン仮
説に基づく薬として、それを抑制するメマリーという薬が
あります。
こうして神経伝達機能改善薬であるアリセプトに似た薬
が新しく2 つ、また違うタイプの薬が 1 つ、日本で市販化さ
れたことになります。これらは病態そのものには影響を及
ぼさず、症状の進行を遅らせる範囲にとどまるものです。
根本治療薬とは、脳内の Aβ(アミロイド・ベータ)
やタウ
蛋白の蓄積などの病態そのものに作用し、病態の改善また
は進行を止める薬です。臨床試験中の根本治療薬には、最
も初期の脳内の変化で A β(アミロイド・ベータ)
ができる
認知症の方に対する支援の視点
その人らしい生活の実現
認知症であっても、できるだけ自分らしく生きること
【医療】
・中核症状の治療
・周辺症状の治療
・合併症管理
・終末期医療
・介護者の健康管理
【ケア】
【制度・福祉】
・生活障害の進行予防
・周辺症状への対応
・介護保険利用
・施設利用
・成年後見制度・
権利擁護事業利用
・家族会・勉強会参加
対応の工夫
サービスの活用
●
話題(新薬など)まで〜
新しく市販化された薬の効果の違いは?
推奨《グレードA》 認知症疾患治療ガイドライン2010(抜粋)
アルツハイマー型認知症患者の認知機能障害に対してドネぺジル、
ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの有効性を示す科学的
根拠があり、使用するように薦められる
リバスチグミン
一般名
ドネぺジル塩酸塩 ガランタミン臭化水
メマンチン塩酸塩
(リバスタッチパッチ・
(市販名) (アリセプト)
素塩
(レミニール)
(メマリー)
イクセロンパッチ)
米1997年
米2000年
米2007年
米2004年
発売時期
日1999年
日2011年3月22日 日2011年7月19日 日2011年6月8日
販売会社
エーザイ、ファイザー ヤンセン、武田
小野・ノバルティス 第一三共
適 応
軽度~高度
軽度~中等度
軽度~中等度
1回/日 経口
5、10mg
5mg
(427.5円)
10mg
(764円)
2回/日 経口
1回/日 貼付
1回/日
16、24mg
18mg
20mg
16mg
(427.6円)
18mg
(427.5円) 20mg
(427.5円)
24mg
(542円)
用法・用量
■ 神経伝達機能改善薬
一部の試験でアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の種類の違いに治療
効果の差異が報告されているものの、ドネペジル、ガランタミンおよび
リバスチグミンの治療効果には明確な差はないとされている。
NMDA 受容体拮抗薬のメマンチンのメタアナリシスでは、中等度∼重
度アルツハイマー型認知症患者に対する認知、日常生活動作、臨床全
薬 価
純粋なアセチルコ
リンエステラーゼ阻
害薬。軽度~高度
薬理学的・
まで対応。11月ご
臨床的特徴
ろ後発品が市販予
定。
般評価の改善が報告されている。
しかし、軽度∼中等度アルツハイマー型認知症患者に対する治療効果
は境界線上にあると報告されている。
のを抑制するタイプの薬やAβが沈着して毒性を持つの
を予防するもの、また、できてしまった Aβを取り除く
ワクチンによるアミロイド・ワクチン療法などもありま
す。さらに、アミロイドとは別の重要な脳内変化である
タウ蛋白に神経原繊維変化が起こる過程を抑制するタ
ウ蛋白凝集阻害薬なども開発中です。
NMDA受容体
阻害薬
アセチルコリン分解酵素阻害薬
(AchE 阻害薬)
作用機序
副作用
(%)
ニコチン性アセチル アセチルコリンエス
コリン受容体の感 テラーゼ阻害作用
受性亢進(APL)作 に加えブチリルコリ
用を併せ持つ。アセ ン分 解 酵 素 阻 害
チルコリン以 外の 作用を併せ持つ。
神 経 伝 達 物 質の
分泌促進作用あり。
中等度~高度
グルタミン酸による
過剰な神経興奮を
抑制し神経細胞死
を防ぐ。AchE阻害
薬と併用可。興奮・
攻撃性に対する抑
制効果あり。
1%以 上 : 悪心、 5%以 上 : 悪心、 5%以 上 : 悪心、 2%以 上 : 便秘、
嘔吐、下痢、食欲 嘔吐、下痢、食欲 嘔吐、食欲不振、 浮動性めまい、頭
不振
不振、頭痛
接触性皮膚炎、適 痛、体重減少
応部位紅斑
第 7 回 もっと元気が出る講座の様子
新しく市販された薬の効果の違い
日本神経学会における認知症疾患治療ガイドライン
に沿うと、アルツハイマー型認知症患者の認知機能障害
に対して、①ドネペジル(アリセプト)
、②ガランタミン
(レミニール)
、③リバスチグミン(リバスタッチパッチ・
イクセロンパッチ)
、④メマンチン(メマリー)は、有効
性を示す科学的根拠があり、その使用が「グレード A」
として推奨されています。
また、一部の臨床試験ではアセチルコリンエステラー
ゼ阻害薬の種類に治療効果の差異が報告されてはいる
ものの、①、②、③の治療効果には明確な差はなく、ガ
イドラインとしてはこれら 3 種類の薬にそれほど大きな
違いは認めていません。もうひとつの N M D A 受容体拮
抗薬の④メマンチン(メマリー)
では、中等度〜重度のア
ルツハイマー型認知症の患者に対する認知、日常生活動
作、臨床全般評価の改善が報告されていますが、軽い症
状の患者に対する治療効果は境界線上、微妙なところだ
とされています。これらを踏まえて、それぞれの薬の効
果の違いを上の表にまとめました。
新薬に共通する点として、薬事法によって市販開始か
ら 1 年間は 1 回に最大 2 週間分しか処方できないため、し
ばらくは 2 週間ごとに受診して薬を出してもらわなくて
はなりません。認知症の方が薬を飲む目的は、その人
※お問い合わせ先は、裏表紙をご参照ください。
らしい生活を維持し、その周りの人々も幸せであること、
そして介護負担の軽減が大事なことだからです。ただし、
2 週間に 1 回の受診は、介護負担の程度を上げてしまう
こともあります。新薬を使用する場合、新たな副作用の
可能性もあるわけですから、使用するメリットとデメリ
ットについてよく考え、医師と相談して使用することを
お勧めします。
「第 8 回 もっと元気が出る講座」のお知らせ
講師:山田明生 医師(あいクリニック 副院長)
(仮)
「冬場の健康管理術 !」
〜高齢者に多い病気や事故を防ぐ〜
▼日時:11月26日(土)13:30~15:00
▼ 場所:新天本病院5階 デイケアふくろう
▼ 定員:30人(要申込) 参加は無料です。
3
特集
*2*
共に歩む在宅介護の会・多摩市家族介護者教室より
「第1回 男性介護者のつどい」を開催しました
●
1 9 8 6(昭和 6 1)年から始められた“共に歩む在宅介護の会 ”は、天翁会にとって歴史ある活動で、
今回で 1 7 4 回を迎えました。 開催時によって異なりますが、毎回 1 0 〜 3 0 名以上の方が参加してく
ださっています。
全国に、夫が妻を、息子が親を介護しているなどの「男性介護者」が、1 0 0 万人いるといわれて
います。 介護を抱え込み、孤独におちいりがちな男性介護者の気持ちに寄り添う支援グループが、全
国に少しずつ増えてきています。
今回は、「荒川区男性介護者の会(通称オヤジの会)」 の役員、 神達 五月雄さんに、 その活動の
きっかけや内容など、 お話を伺いました。 講座の内容を一部ですがご紹介いたします。
話す・聞く・共感する・わかち合うことが背中の荷を軽くする
ストレスを逃がす場所、介護のヒン
トを得る場所を探して
限り時間の自由を確保して、仕事の範囲
も自分で決めたかったのです。今、母は
私が介護を始めたのは約 13 年前です。 82 歳で要介護 5 になっています。さらに
人工肛門をつけており、身体障害者手帳
当時、私は生命保険会社に勤務してい
ましたが、両立はぎりぎりの状態でした。 は 4 級です。
介護保険制度が始まってすぐに要介護
認定を受けまして、老人性うつ病から認 「男性介護者の会」について
知症を発症した父は、最初から要介護 5
介護というのはそれぞれいろいろな状
でした。その時の母は要介護 1。私より
況があり、単純に介護区分の線上に並べ
7 歳年下の弟には知的障害がありまして、 られるものではないですね。会をやって
愛の手帳 3 度。同居している 3 人が要介
いて、新しく入ってくる介護者の方は、同
護者ということでした。父の介護の時は、 じようにおっしゃるのです。
「うちは皆さ
何でこんなことになってしまったのかと、 んと違います」と。だからここで話して
まったくわからないうちに始まりまして、 何になるのかと、最初は疑問を持って来
一番苦痛なのが排泄ケアでした。肉体的、 られます。当然のことです。お一人お一
精神的に…、嗅覚・視覚を伝わって衝撃
人違うのですから。
がきますね。当時、歩行困難が出始めて
男性の場合は話すことが苦手で、自
いた母が排泄ケアのかなりの部分を担っ
分一人で解決しようとする傾向がおそら
てくれまして、何とか 3 年間続けました。 く女性より強いと思います。会にお誘い
それでもその間、父に手をあげたことが
しても、自分の弱さをさらけ出して、他
あります。今ですと、虐待といわれるも
人の話を聞いて何になるのだという考え
のです。あれから10年経っても後悔して
の方は多くいらっしゃって、そういう方
います。何で耐えられなかったのだろう
はなかなか参加につながりません。プラ
かと思いますし、夢に見ます。
イドがあるのです。私もそうなのですが、
父が亡くなって、母もどっと疲れが出
サラリーマンとして社会で何十年も仕事
たのでしょう、父の通夜・葬儀は車いす
をしてきますと、困難なんて幾つもくぐ
で出席しました。それを見て、これから
ってきているのですよね。それを乗り切
母の介護が本格的に始まるのだなと思い
った時期を皆さんもお持ちだと思います。
ました。父の介護とはまた違ったものを
ですから介護に対しても、俺はやれるは
自分の中で意識しまして、母を虐待して
ずだと思っている人が多い。ただ、サラ
しまうことを回避するためにも、自分の
リーマン、社会人と
ストレスを逃がす場所、何か介護のヒン
しての困難は、ずっ
トを得る場所を探しました。そうして男
と続かない。これは
性介護者の会に入ったわけです。父が亡
失敗だったとか、何
くなった翌月から参加し、もう10 年が経
と か 乗 り 切 れ たと
過しました。入会してからずっと最若年
か、何かの結論がど
会員のままなのですが、その間に生命保
こかで出てくる。で
険会社を退職し、代理店に移行して、自
すが、介護の場合は
営の形でやるようになりました。できる
介 護し て いる 相 手
4
荒川区男性介護者の会(通称オヤジの会)
神達 五月雄氏
が亡くならない限り、終わらないのです。
この介護がどこまで続くかわからないと
いう中で、いっぱいになってしまうので
す。コップの中に一滴ずつ溜めていた我
慢が、表面張力いっぱいになってしまっ
たとき、悲惨な事件が起きる気がします。
「俺がこんなにしてやっているのに何や
ってるんだ!」と。粗相に対して手をあ
げたり、怒鳴ったり…。
何か吐き出して、どこかで気持ちを軽
くする場や機会を与えているのが男性介
護者の会だと思います。皆さん、やはり、
まず自分が話す場所、理解してもらえる
場所を求めて来るという感じです。他の
人の話を聞いて、
「そうか、そんな状況
もあるのだ」
「俺より苦労している人がい
る」と感じることもありますし、
いろいろ
なケースを耳にすることで、何かヒント
を得ていると思います。
男性か女性かで、明確な違いが出てく
ることは結構あります。例えば、
家事。会
のメンバーで、
「妻が要介護状態になって
困った。ラーメンを作ろうとしたが、作
り方がわからなかった」という方がいま
した。家のどこに何があるのかわからな
い、全自動洗濯機の扱いもわからない…、
ですとか。男性も家事をする社会になり
つつありますが、男女分業の時代を生き
てきた世代は、家の中のことでわからな
いことが多すぎるんです。
自分の住んでいる地域で男女の区別
のない介護者の会に入ったけれど、そこ
では浮いてしまう、自分の困った経験や
共感してほしいことが伝わらないし、居
心地が悪く感じてしまうといって、川崎
市から来られている方がいます。女性と
は違う側面を話すときは、男性が多く集
まっているほうが話しやすいのかもしれ
ません。
地域で自分の情報を発信しよう、
同じ立場の人とつながろう
会にはいろいろな状況の方がいらっし
ゃいます。少し前に他界された方なので
すが、奥様を 8 年間介護し看取り、知的
障害のある息子さんと二人になりました。
その時点で、彼はガンの告知を受けてい
ました。
奥様を看取って3カ月後に入院し
たのですが、荒川区社会福祉協議会が入
院前に成年後見の手配をして、同時に区
の障害者福祉課で息子さんのグループ
ホームへの入居を速やかに進めていまし
た。また、入院中の病院に高齢者福祉課
の人が出向いて、今後の生活相談・退院
後の生活支援・その後の施設入所なども
支援してくれました。これは、彼が会に
所属して自ら情報を発信しているから手
が差し伸べられたのであって、そうでな
いとどこからも手は伸びてこない。
日本人の悪い傾向で、昔から身内に障
害者がいる、認知症の方がいるとなると
世間に対して隠そうとする風潮がありま
す。これは本当に望ましいことではなく
て、むしろこういう状況だからこそ自分
から情報を発信して周囲の理解や協力
を得ていかなくてはいけないと思うので
す。今、この国は声を出さない人間はい
ないことにされてしまうのです。不測の
事態でも手を伸ばしてくれる人はいるの
で、自分の状況を発信できる環境にあっ
たほうがよいのです。地域で、
同じような
苦難を抱えている人たちが集まって、行
政などに情報を発信していくことが重要
です。荒川区男性介護の会も17年ですが、
行政の支援なしでは決してやってこれま
せんでした。会として荒川区の社会教育
関連団体という登録をしておりますけれ
ど、高齢者福祉課、介護保険課、障害者
福祉課、社会福祉協議会、皆関心を持っ
てくれています。そうした中でこちらの
情報が発信できる、行政側の情報もこち
らに伝わるということがあります。介護
で孤立する事態を回避することができま
す。多摩地区でも「男性介護者の会」が
立ち上がることを切望いたします。
「誰かに話す・聞いてもらうことで気持
ちが楽になる」というのは、今回のよう
な立場でお話しする場面でも同じで、ま
た心が軽くなった気がしています。あり
がとうございました。
参加者さまの声②
89歳の母の世話をしております。私が
サラリーマン現役の時は妻がずっと介護
しておりましたが、今度は私がというこ
とで。気負わずにやっていくつもりです
が、一番の悩みは情報不足ですね。本人
の病状が落ち着いているからいいと思う
参加者さまの声①
反面、もっと良い方法や用具などがない
私は妻を介護しています。実は今も時
かと。それから変わっていく制度などの
間が気になって…、妻がデイから帰って
知識。東日本大震災の時、
少しオムツの買
来るまでに私が帰らないと。
こういう会に
い置きをしました。その時、
薬局に置いて
男のプライドがどうとかで参加したくな
あった新しい商品を使ってみたら、非常
いとか、そういう気持ちは私にはないし、 に良かったのです。今まで使っていた物
むしろ求めているんです。ただ、
時間のや
より薄くて吸収力がある。製品もどんど
りくりが難しい。来ても中座しなくてはな
ん良くなるわけですが、震災がなければ
らないことも。何か聞きたいというよりは、 知らないままだったというわけです。こう
何か話したいという気持ちが強いですね。 いった会で、情報交換などがしたいと思
男女関係なく、介護をしている同士が話
います。その後、
ちょっと一杯飲みながら
し合える場でもよいと思います。
話ができれば楽しいですね(笑)
。
介護者自身が心身ともに健康であるために
医療法人財団天翁会 理事長
天本 宏
サービスの利用上手というのがあり
ます。人(他人)を家や自分の領域に入
れるのがとても苦手な方は、介護を独
りで抱えこんでしまいがちです。まず
は自分自身が健康であること、それか
らその健康を維持するために、ほどほ
どに人に任せることも必要だと思いま
す。ご家族だけで、一対一でなさるの
も良いですが、人間のエネルギーとし
ても、メンタルヘルス面でも不可能な
のですね。情報の使い方上手、時間の
やりくり上手、遊び上手など、いろい
ろなものの『使い上手』になっていただ
けたらと思います。
介護は教科書どおりにできるはずが
ないのです。ご家族がずっと付きっき
りで行っていると、やはり精神的に追
い詰められて怒鳴ってしまったりとい
うことが起こりうるのです。
しかしこれ
は危険なサインで、それを話せる場や
相手が必要でしょう。介護する方同士
の体験の共有や情報交換なども有用性、
活用性が高いということもわかってき
ました。このような会をいろいろな形
で続けられればと思います。
「第 2 回 男性介護者のつどい」のお知らせ
▼日時:平成23年10月26日(水)13:00〜14:30(受付12:40より)
▼ 場所:新天本病院 1階 第1・第2会議室 参加は無料です。
▼ テーマ:
① 介護者自身の身体を守ろう!〜生活場面でいつでも気軽に実践できる腰痛予防体操
〜体操指導:新天本病院 理学療法士 楠木あゆこ、石川達也、鈴木勇気
② 交流茶話会(情報交換など)
ファシリテーター:軽費老人ホーム「皆楽荘」施設長 鶴岡哲也 氏
※荒川区男性介護者の会「オヤジの会」
:会長 荒川不二夫氏 連絡先:神達氏(自宅)T E L 03 - 3895 - 1444
サロン:奇数月の第二金曜 荒川区社会福祉協議会のボランティアセンターにて、13:30 〜 15:00まで。
5
第2回
〜天翁会までの道程〜
旧天本病院開院から数えて創立 30 周年を迎えた昨年度は、本誌でもこれまでの出来事や
思い出などをたどり、皆様にお伝えしてきました。 今年度は、創設者である天本 宏 理事長が、
旧天本病院立ち上げまでの 個人の道のりを、エッセイ形式で振り返ります。
父
は、町医者(診療所)
で 365日診療を
「当たり前」
として実施していた。必
ず毎日、午後に昼寝をしてから訪問診療を
していた。オートバイに乗って出かけたが、
台風で増水した川に飛び込むという事故
診ずして病気を診るな」という、その指
針・ポリシーは、私自身の診療への基本
姿勢ともなっている。
初めて親元を離れた私は、教養課程の
2 年間、
「自然は永遠の勝利、道徳は一時
に遭ってからはジープに変えた。そうした
の勝利」という都合のよい言葉を口実と
訪問診療の手段を結構楽しんでいたと思
して、ひたすら社会勉強に精を出した。
う。夜は毎晩のように飲み歩いていた。父
しかし、3 年生になって授業内容はガラ
は、私が大学に入学するころに、精神科医
ッと変わり、医学知識の詰め込み第一主
ではなかったにも関わらず、精神科の病院
義となった。
「骨の隅々の名称」
「すべて
を開設した。なぜか日本においては、診療
の正常値」といった授業はすべてが記憶
所から病院開設に至るケースが多かった。
させ、覚え込ませる教育。当然、社会勉
宏
から固まっていった。
こうして私の知りうる医師像は、父の
強重視の生活習慣とは両立するはずもな
歩みである地域医療を担う医師、病院を
かった。年度末に帰省していた時、実家
開設し拡大したいという事業欲を持つ医
に落第通知が届いたが、両親からの小言
療、ネガティブデータばかりを追い求め、
師、自分なりの私生活を大切にしながら
はひと言もなかった。授業料や東京での
ポジティブデータに無関心な医療界であ
も診療が好きな医師、精神科医ではなか
生活費など、
余分の1年間の費用負担は莫
った。
ったが精神科医を志した医師であった。
大であったはずだ。辛い沈黙の時間を過
私は広島大学付属高校を18歳で卒業し、 ごした記憶は、今も鮮明である。
当時も今も、あまりにも病理重視の医
それに反発するように「科学者として
の医師」から「人文学に偏った医師像」へ
と私は逸脱していった。卒業後は迷わず
東京慈恵会医科大学(以下、慈恵医大)
に
自分自身を振り返り、やはり、
「医学の
入学した。しかし、この当時、明確な「こ
道」を選ぶと決めて、それから精進した。
医師として精神神経科への入局に進んだ。
のような医師になりたい」
と思い描く医師
落第も良い人生経験といえる。その屈辱
しかし精神医学においても、精神科診療
像、志があったわけではなかった。大学
的体験を通して、自分をあらためて内側
においても
「病理ばかりを追求している」
に入学してから、山本周五郎の『赤ひげ診
から見つめることができ、何かが身につ
ことに疑問を持つこととなる。
人がとる行
療 譚』を読み感動して涙し、新たな医師
いたはずだから。
動の背景において「精神」
「こころ」
「感
しん
りょう た ん
像を知る。それは、医学者より臨床医で
医学生時代を振り返ってみると、
「議論
情・情緒」といった可視化しにくい領域に
あり、強い人も、立場の弱い人も診る広
する(考える)
」
「協業・協働への意識づ
興味が進み、
「人物像」
「歴史的背景」
「宗
い度量を持つ医師像だった。
け」
「システム論」
「マネジメント論」
「人
教」について、
小説などの本が教科書とい
慈恵医大を選んだのは、兄が先に入学
を診るとは」の視点は、
医学教育の場に存
うか「人を学ぶ」手段となっていった。
していたからという単純な理由から。た
在しなかった。また、卒前・卒後教育に
入局後、精神療法のうち唯一日本の精
だし、国立大学と同一日に受験を実施し、 おいて、在宅・地域医療を担う医師とし
て重要な要件である「コミュニケーショ
「どちらかにしろ」と、明確な選択を迫る
神療法である「森田療法」
(禅の思想的影
大学の姿勢には納得できるものがあった。 ン能力」を培うトレーニングや実地指導
なども存在しなかった。国家試験突破の
受験時の科目に関しても、生物・物理・化
学の 3 科目を必須としているのは、慈恵医
ための積め込み教育中心であった。
響が強い)への関心が深まっていった。
「あるがまま」
「恐怖突入」
「不安を分析す
るのではなく、不安を取り払ってからで
はなく、不安とともに生きる」
「何をした
個人的には卒前・卒後の社会勉強、学
かを大切に」
「態度価値の重視」
「今この
生物学抜きで医学部に入学できるのだが、 生時代のクラブ活動における「学び」は尊
かった。私はサッカー部員であった。な
人は生き物であるのだから、なぜ「生物」
「森田療法」からの学びは、30 歳以降にお
でしこジャパンのような感動は得られな
ける私、天本宏の生活信条、行動指針の
かったが…。部活動における組織的動き
基軸となった。
大のみであった。現在でも、他大学では
を医学部受験必須科目にしないのだろう
かと疑問に思う。
時、この場を大切に、全力を」といった
当時、医学部の最初の 2 年間は教養課
の大切さ、思い、感動によるモラールの
精神科医師としての治療技術は伸びな
程とされており、医学領域は一切科目に
向上、反復練習の積み重ねによる潜在能
かったが、森田療法の大家であられる先
含まれていなかった(現在は教養科目の
力の向上など、知識だけでは身につけら
輩諸氏からの教えや治療(私への)は、私
れない大切なことを体得した。
の人格形成において、その影響は多大で
時間を極端に減らし、医学の科目を増や
してきているが)
。
6
医療法人財団天翁会 理事長 天本
医学ではなく医療、知識力よりも行動
あった。
慈恵医大には、医師には社会人として
力、結果よりプロセス重視、学問的裏づ
このような道筋を経て老年精神医学、
の教養が大変重要であるという医科大学
け・科学性・合理性の追求より納得や共
高齢者医療への道、
「老い」への関心が深
としての明確な教育方針があった。
「人を
感重視といった「私の医師像」は学生時代
まっていくこととなった。
News 天翁会
防災委員会合同による勉強会を開催!
東日本大震災以降、被災地では大変な状況が続いており、余震も含め、まだ油断で
きない状況です。
平成 23 年 6 月 23 日(木)、法人内各事業所の防災委員会合同による勉強会を開催し、
「被災地の現状と医療」
「2011 東日本大震災を経験して」というテーマで行いました。
防災について再認識するとともに、医療法人として、日ごろから何を準備し、災害時
にいかなる役割を果たさなければならないのかを考える機会となりました。
70名ほどの職員が聴講しました
「気仙沼在宅支援プロジェクトに参加して」
あいクリニック院長 明石のぞみ
あい訪問看護ステーション所長 追風美千代
あい訪問看護ステーション理学療法士 小森 梓
追風所長、明石院長(右)
小森
J R S(巡回療養支援隊)として 5 月 20 日〜 23 日の 4 日間、気仙沼在宅支援
プロジェクトと気仙沼・地域リハビリテーション支援チームに参加した際の
報告を行いました。現地では、医療的支援に加えて、精神面のサポートの必
要性を痛感しました。
J R S(巡回療養支援隊):J M A T(日本災害医療
気仙沼在宅支援プロジェクトの特徴:
チ ー ム … 日 本 医 師 会 に よ り 本 年 3 月 結 成 )、
(1)在宅での支援が必要な人のピック
アップとフォロー
(2)市全体を巻き込んだ多職種のネッ
トワークと連携
(3)在宅医療の地域と受け皿づくりと
基盤整備
P C A T(日本プライマリ・ケア連合学会…多職種
の医療専門職で構成された災害医療支援チーム、
東日本大震災後に結成)、宮城大学チーム、兵庫
県保健師チームなどが参加して作り上げた在宅
医療チーム。
現在、新天本病院に勤務している今村 諭医師(福島県双葉郡富岡町で
「今村病院」を経営・運営していて、本年 3 月 11 日に東日本大震災被災)
の実体験の発表がありました。
今村医師より「震災の教訓」
*明日は我が身、想定外のことが起こり得る。
*懐中電灯の点検を。発電式や(情報を得る
「2011東日本大震災を経験して」
ための)ラジオやサイレン付があれば便利。
*飲料水確保のほか、トイレ用に水をためて
新天本病院 今村 諭医師
おくことが必要(大きいペットボトルに)。
東日本大震災に伴い発生した福島原子力
発電所の事故のため、避難してこちらに戻っ
てきました。
20 年以上前になりますが、旧天本病院で、
外来診療や当直をしていました。専門は神経
内科で、脳卒中の急性期における診断と治療、慢性期における理
*温かいものが食べたくなるので、カセット
コンロがあるとよい。
(配給食糧は冷たい)
学療法と再発予防・パーキンソン病のコントロール・頭痛・めまい
(耳鳴症)
の鑑別診断と治療・振戦(ふるえ)
不随意運動の鑑別診断
と治療などですが、福島では消化器科(上部・下部の内視鏡検査と
ポリープ切除術などの治療・胃瘻増設術とその後のケア)
や循環器
科(生活習慣病のコントロール・心エコーでの心機能評価とホルタ
*ウエットシート(お風呂に入れないため)
、ア
イスノン(暑い時期用)があるとよい。
*財布、携帯、お薬手帳のほか、身分を証明す
るものを身につけておこう。
*缶切不要の缶詰、ソーセージ、ゼリー飲料、
野菜ジュースなどが重宝する。
ー心電図検査と不整脈治療)
など総合診療を行ってきました。
「今村病院」での今村医師(前列右)
震災直後の今村病院カルテ棚
震災直後の急患処置
救急患者が次々と運ばれてきた
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理念と方針
◎ 理 念 「信頼と安心の創造」
◎ モットー 「愛と知恵と行動」
◎方 針
① 保健・医療・福祉を核として、利用者最
適のサービスを目指します。
② いつでも(24時間、365日)、利用可能な
サービスを目指します。
③ 地域のサービス機関とも連携し、チーム
で様々な問題解決を目指します。
④ 働きがいのある組織を維持し、かつ健全
経営を目指します。
医療法人財団 天翁会
●新 天 本 病 院
〒206-0036 東京都多摩市中沢 2-5-1
TEL:042-310-0333 FAX:042-310-0334
● あい介護老人保健施設
〒206-0036 東京都多摩市中沢 1-17-38
TEL:042-374-7111 FAX:042-374-7115
● あいクリニック
〒206-0012 東京都多摩市貝取 1431-3
TEL:042-375-9581 FAX:042-375-9584
◎ケアプランセンターあいクリニック
TEL:042-375-9598 FAX:042-375-0085
● あい訪問看護ステーション
〒206-0012 東京都多摩市貝取 1431-3
TEL:042-371-6888 FAX:042-357-4801
● あいグループホーム「はなきりん」
〒206-0012 東京都多摩市貝取 1431-3
TEL:042-375-9587 FAX:042-375-9687
●URL http://www.ten-ou-kai.or.jp
●E-mail [email protected]
◎取材・編集◎平成 23 年度法人広報委員会
前山 英之(あい介護老人保健施設)
田中亜裕美(あい介護老人保健施設)
鈴木 勇気(新天本病院)
久積 花里(あい介護老人保健施設)
篠 公朗(新天本病院)
井出 芳美(あい訪問看護ステーション平尾)
大石 洋人(デイケアオリーブ)
鶴田 正芳(ケアプランセンターあいクリニック)
上林 恵美(グループホームはなきりん)
◎ASN連携推進室
淵野純子 平井理香
●広報誌に関するお問い合わせ先:
医療法人財団天翁会 あいセーフティネット連携推進室
TEL : 042-310-0300 FAX:042-310-0301
*本誌に関するご意見、ご感想をお寄せください。
● あいクリニック平尾
10月1日移転予定
● あいケアプランセンターいなぎ
10月1日移転予定
● あい訪問看護ステーション平尾
10月1日移転予定
〒206-0823 東京都稲城市平尾 1-43-15 アブニール新百合 1F
TEL:042-350-5062 FAX:042-350-5063(電話・FAXは変更なし)
〒206-0823 東京都稲城市平尾 1-43-15 アブニール新百合 1F
TEL:042-350-7220 FAX:042-350-7221(電話・FAXは変更なし)
〒206-0823 東京都稲城市平尾 1-43-15 アブニール新百合 1F
TEL:042-350-8615 FAX:042-350-8616(電話・FAXは変更なし)
● 多摩市中部地域包括支援センター
〒206-0012 東京都多摩市貝取 1431-3
TEL:042-375-0017 FAX:042-357-9551
● 多摩市桜ヶ丘いきがいデイサービスセンター
「さくら」
〒206-0013 東京都多摩市桜ヶ丘 2-1-1 TEL:042-311-7300 FAX:042-311-7300