市立根室病院医療事故等公表基準 １．医療事故公表の意義 市立根室病院には、医療従事者として医療における安全管理を追求していくため、自ら医療事故を 公表する責務がある。医療事故の事実と対応策を公表することは、医療の透明性を高め、市民からの 信頼を得るとともに、他の医療機関への情報提供にもなり、医療の安全管理に資することとなる。こ こで重要なことは、患者や市民には事故の原因とその背景となった問題点を明らかにするだけでなく、 事故に対しどのような対策が施され、その結果何が改善されたかを知る権利があるということである。 それに応えて事故防止をはかることが最大の目的でもある。 ２．用語の定義 （１）医療事故 医療事故とは、医療に関わる場所※で、医療の全過程※において発生するすべての人身事故 で 1)、次の２つに区分される。 ① 医療過誤＝過失のある事故 医療事故のうち、医療従事者・医療機関の過失により 2)起きたもの ② 過失のない医療事故 医療従事者・医療機関の過失がないにもかかわらず起きたもの また、患者や見舞客が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない施設 や設備の使用・管理上の事故も医療事故に含むものとする。 なお、医療従事者が被害を受けたものは、本基準の対象としない。 （２）ヒヤリ・ハット事例 医療従事者が医療を行ううえで、“ヒヤリ”としたり、 “ハッ”とした経験を有する事例 1)で、 医療事故に至らなかった場合をさす。 具体的には，ある医療行為が、①患者には実施されなかったが、仮に実施されたとすれば、何 らかの被害が予測される場合、②患者には実施されたが、結果的に被害がなく、またその後の観 察も不要であった場合等を指す。 （３）合併症 医療行為に際して二次的に発生し、患者に影響を及ぼす事象をいう。2) 予期しなかった合併症は過失のない医療事故に含まれる。 ※ ※ 「医療に関わる場所」とは、原則として病院建物及び敷地内とする。 「医療の全過程」とは、医療に関わる場所において医療行為を行っている状況のほか、患者が医師等 医療従事者の管理下にある状況を含む。 1 ３．医療事故のレベル 医療事故の発生により生じた影響の大きさに応じて、そのレベルを以下のとおり設定する。 レベル 傷害の 継続性 レベル０ － レベル１ なし レベル２ 一過性 レベル３a 一過性 傷害の程度 障 害 の 内 容 エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが患者 には実施されなっかた 患者への実害は無かった（何らかの影響を与えた可能性 は否定できない） 軽度 処置や治療は行わなかった（患者観察の強化、バイタル サインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要 性は生じた） 中等度 簡単な処置や治療を要した（消毒、湿布、皮膚の縫合、 鎮痛剤の投与など） レベル3b 一過性 高度 濃厚な処置や処置を要した（バイタルサインの高度変 化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外来 患者の入院、骨折など） レベル4a 永続的 軽度～中等度 永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や 美容上の問題は伴わない レベル4b 永続的 中等度～高度 永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容 上の問題を伴う レベル5 死亡 死亡（原疾患の自然経過によるものを除く） ４．公表する医療事故の範囲（別表１参照） 病院長は、次のいずれかに該当する医療事故が発生した場合、これを公表する。 なお、医療事故のレベル及び公表については、院内に設置する医療事故調査委員会で決定する。 （１）上表レベル４ｂまたは５に該当する医療事故で原因が医療過誤によるものについては、事故発 生後速やかに公表する。 （２）上表レベル４ａに該当する医療事故で原因が医療過誤によるものについては、包括的に公表す る。 ただし、重大な過失の場合は医療事故調査委員会にて調査後、ホームページに掲載する等によ り公表する。 （３）上表レベル３ｂに該当する医療事故で原因が医療過誤によるものについては、医療事故調査委 員会にて調査後、ホームページに掲載する等により公表する。 ただし、重大な過失の場合は、事故発生後速やかに公表する。 （４）上表レベル０～３ａに相当する過失のある医療事故は、包括的に公表する。 2 また、過失のない医療事故または医療行為以外の事故であっても、公表することにより事故発生の予 防及び再発の防止に繋がると判断されたもの、社会的影響を考慮のうえ公表が必要と判断されたものに ついてはこれを公表する。 ５．公表の判断基準 公表の対象となる判断基準は次の各項のとおりである。 なお、医療事故等の公表にあたっては、社会的要因（公益性）と個人の権利・利益の保護との両方 を十分考慮しなければならない。ここでいう社会的要因とは、医療事故防止に有効な情報や社会に大 きな影響を与える可能性がある医療事故等を医療従事者として公表する責務及び市立病院の医療の 透明性が確保されている状態をいう。個人の権利・利益の保護とは、医療事故に関わった患者の事故 に係る「知る権利」と、個人に関わる「プライバシーの保護」が保証されることをいう。 （１） 何らかの過失がある医療事故例は、事故の経緯、今後の対応及び改善状況等を明らかにすべき で、公表の対象となる。 なお、集団院内感染事例もこの対象である。 （２） 予想されていなかった薬剤による重大な副作用や機器・器具そのものの欠陥による重大な事故 などで、その原因が明らかな場合、当院において医療的基準に反した過失がなくても、公表す ることにより今後の医療に寄与することが明らかな事例は、公表の対象とする。 この場合、十分な審議を経て、患者、家族の同意の有無にかかわらず公表しなければならない ことがある。ただし、個人情報は十分保護されなければならない。 （３） 薬剤の大量盗難や放射性物質の紛失・流出など、医療行為以外で発生した事故で、社会的に重 大な影響を与える事例は公表の対象となる。 （４） 薬剤や医療機器による既知の副作用や合併症は、従前に十分なインフォームド・コンセントが 得られている場合においても、包括的公表の対象となる。 ６．公表すべき主な内容 原則として、次の項目について公表するものとする。 （１） 発生した事実：日時、場所、患者の年齢、性別、状況、原因 （２） 当該関係者に関する情報：所属、専門分野 （３） 今後の対策と改善状況 （４） その他、必要と思われる内容 ７．公表の方法 （１） 公表が必要であると判断された場合、病院長は、報道機関へ資料提供を行うとともに、ホーム 3 ページへ情報を掲載するものとする。 （２） 病院長は、毎年 1 回、公表基準に基づき包括的に公表する医療事故の概要や対応策を取りまと めて、公表するものとする。 なお公表の方法については、前項による。 ８．公表にあたっての留意点 個別公表にあたっては、患者及び家族のプライバシーに十分な配慮をし、事前に患者、家族に公表 の内容､時期､方法等を説明し、原則として書面により同意を得るものとする。また、個別公表及び包 括公表にあたっては、公表する内容から、患者及び当該医療事故に関わった医療従事者が特定、識別 されないように個人情報を保護するとともに、医療従事者の個人情報の取扱いにも十分配慮しなけれ ばならない。 公表にあたっては，患者側の心情や社会的状況に十分配慮するものとする。 ９．病院の責務 （１） 医療事故にかかる責務は、病院が負う。ただし、個人の故意または重大な過失による医療過誤 を除く。 （２） 医療事故防止のための業務改善に向けた組織的な取組を行うものとする。 1) 2) リスクマネージメントマニュアル作成指針（厚生労働省、平成 12 年 8 月） 国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針（平成 17 年 3 月） 4
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