オリエント~前半戦~ オリエント…古代ローマから見た東の地方。 →オリエントは3つに分かれる ・メソポタミア…ティグリス川・ユーフラテス川流域 ・エジプト…ナイル川流域 ・小アジア(アナトリア) [メソポタミアの民族] メソポタミア…川の間の土地という意味。ティグリス川・ユーフラテス川流域 肥沃な三日月地帯を中心に農耕文明が成立。 〈今回のポイント〉 シュメール… アッカド… アムル… 〈シュメール人〉…民族系統不明、紀元前30世紀~ ・ウル、ウルク、ラガシュなどの都市国家を建設。 ・国家ごとに守護神を持つ多神教で神権政治を行った。 ・青銅器をもちいた。 ・ウル第一王朝の時全盛期。 シュメール人の都市国家 ・ウル…聖塔(ジックラト)や王墓を持つ。 ・ウルク…最古の文書・印章が出土。『ギルガメシュ叙事詩』の舞台になる。 ・ラガシュ…ウルの北方にある。 シュメール人の発明 ・楔形文字:粘土板に記述。ローリンソンが解読。 ・太陰暦や六十進法の発明。 ・一週七日制、印章の使用。 ⇒アッカド人(セム語系)がシュメール人を滅ぼす。 〈アッカド人〉…セム語系、紀元前24世紀~ ・メソポタミアの北方からシュメール人を征服 ・サルゴン1世の時メソポタミアを統一 →メソポタミア最初の統一王朝を立てる。 ⇒アッカド人繁栄の後、一時シュメール系のウル第三王朝が勢力をもつ。 創始者:ウルナンム(最古の法典を出した。) →ウル第三王朝はエラム人の侵入で滅亡 〈アムル人〉…セム語系、紀元前18世紀~ バビロン第一王朝(古バビロニア王国)を建てる。 都:バビロン(ユーフラテス川中流) →都市神マルデュクは後に最高神となる。 →第6代:ハンムラビ王の時、全盛期 ・ハンムラビ法典を出す。 内容: 「目には目を歯には歯を。」の一節で有名。復讐法の原則。 身分によって刑罰差あり。つまり、奴隷などは例外。 ⇒ヒッタイト(インド・ヨーロッパ語系)の侵入で滅亡 [インド・ヨーロッパ語族の南下] 小アジア(アナトリア)…現在のトルコの領域とほぼ一致。 〈今回のポイント〉 ヒッタイト… カッシート… ミタンニ… 〈ヒッタイト〉…インド・ヨーロッパ語系、紀元前17世紀~ ・特徴…馬と戦車に加えて、鉄製の武器を使用。 ・小アジアに王国を建てる。都:ボアズキョイ(ハットゥシャ) →アムル人のバビロン第一王朝を滅ぼす。 →前 1286 年…カデシュの戦い:vs エジプト、ラメセス2世の時代。 →戦後、現存最古の国際条約が結ばれる。 ⇒海の民(東地中海一帯の民族)の侵入でヒッタイトは滅亡。 〈カッシート〉…(インド・ヨーロッパ語系)、紀元前16世紀~ ・バビロン第三王朝として、メソポタミア南部を支配。 ⇒エラム人の侵入で滅亡。 〈ミタンニ〉…(インド・ヨーロッパ語系)、フルリ人の王国を建てた。 紀元前16世紀~ ・メソポタミア北部を支配したが、ヒッタイトに破れて衰退。 ⇒アッシリアに併合される。 <メソポタミアの文化> 特徴…理論的な物ではなく、実用的な文化が発達。 楔形文字…シュメール人が発達させる。粘土板に記載された。 六十進法…シュメール人が発明。 太陰暦…シュメール人が発明。季節のずれは閏月、閏年で調整する。 →バビロニアで太陽暦を併用する太陽太陰暦が確立される。 一週七日制…バビロニアで確立された。 天文学・占星術の発達。 [エジプト統一王国] エジプト…ナイル川流域:増水期に泥が運ばれ農業が発達。 ヘロドトス(ギリシアの歴史家)は「エジプトはナイルのたまもの」という言葉を残した。 紀元前 3500 年頃…ノモスと呼ばれる独立集落が現れる。 →紀元前 3000 年頃…上エジプト(ナイル川中流)のメネス王が 下エジプト(ナイル川下流)を統一。 →ファラオ(王)を中心とした、中央集権国家の形成。 古代エジプト統一王朝は3つに分けられる。 古王国…第3~6王朝:都はメンフィス。巨大ピラミッドの建設。 中王国…第 11~12 王朝:都はテーベ。 ヒクソスの侵入。 親王国…第 18~20 王朝:都はテーベ。 アメンホテプ4世の改革。 〈古王国〉…第3~6王朝、都:メンフィス(ナイル川下流) ・神権政治の基礎を確立。 ・巨大ピラミッドの建設。クフ王のものが最大 →ギザの三大ピラミッド(クフ王・カフラー王・メンカウラー王) 〈中王国〉…第 11~12 王朝、都:テーベ(ナイル川中流) ・ヒクソス(アジア系民族)が侵入。 →第 15~16 王朝を建てる。 〈新王国〉…第 18~20 王朝、都:テーベ ・ヒクソスをエジプトから追い出して成立。 ・アモン=ラーの信仰…中王国時代からテーベの守護神アモンと太陽神ラーの信仰が 結びつきアモン=ラー信仰として有力になった。 →テーベのアモン神官の政治的発言力が高まる。 ⇒アメンホテプ4世の改革…アトンの信仰を強制し、自身をイクナートンと改名。 テル=エル=アマルナに遷都。アケト=アトンと命名。 →アマルナ美術(自由で写実的)が発達。 ⇒アメンホテプ4世(イクナートン)の死後、ツタンカーメン王が後継者となるが、アモ ン神官が勢力を巻き返し改革は挫折。都はテーベに戻る。 →前 1286 年…ラメセス2世、カデシュの戦い(vs ヒッタイト)に勝利。 [古代エジプトの文化] 〈宗教〉:多神教 ※アメンホテプ4世の改革時は一神教。 ラー…太陽神。ファラオはラーの子とされる。 アモン(アメン)…テーベの守護神。 →二神が結合しアモン=ラーの信仰が生まれる。 :中王国以降で盛ん。 ⇔アトン…新王国時代にアメンホテプ4世が創出した唯一神。 オシリス…死を司る神。人間の死後に審判を行う。 →人々は死後の審判に備えて『死者の書』を著す。 『死者の書』…死者の生前の行いや呪文を示したもの。 パピルスという草から、一種の紙を作ってそれに記した。 ミイラ…霊魂の不滅を信じたエジプト人は、死体を保存した。 〈建築〉 :古王国時代の巨大建造物 ピラミッド…ミイラを保存するための巨大墳墓。クフ王の物が最大。 スフィンクス…ピラミッドを守る守護神。 〈文字〉 :ヒエログリフを始めとして簡略化が進んだ。 ヒエログリフ(神聖文字)…最初のエジプト文字で、最も正式書体。 ヒエラティック(神官文字)…ヒエログリフが簡略化された形。 デモティック(民用文字)…最も簡略化された書体。紀元前4世紀頃に成立。 <ヒエログリフの解読> 1799 年、ナポレオンのエジプト遠征の際、ロゼッタ=ストーンを発見。 →そこには上から、神聖文字・民用文字・ギリシア文字で同じ内容が刻まれていた。 →19 世紀フランスのエジプト学者シャンポリオンが解読に成功。 〈エジプト文明の発明〉 太陽暦…太陽の一年間での周期を基準にした暦。 →後に古代ローマで採用されてユリウス暦となる。 →16 世紀になると、西欧では現在の暦であるグレゴリオ暦に移行する。 測地術…ナイル川の氾濫後の土地の復元のために発達。幾何学の原点になった。 [地中海東岸の民族] 〈今回のポイント〉 アラム人… フェニキア人… ヘブライ人… 東地中海世界は海と砂漠に囲まれていて、統一王国は形成しづらい。 その一方で、交易や文化の面で活路を見出した民族が出現する。 紀元前 14 世紀~15 世紀…カナーン人が栄え、アルファベットの原型を作る。 紀元前 1200 年頃…海の民がヒッタイトとエジプトの力を弱める。 〈アラム人〉 :セム語系 都…ダマスクス ・ダマスクスを中心に小国家を形成。 →紀元前 1200 年頃…内陸貿易の担い手として活躍。 ・彼らが用いたアラム語は全オリエントの公用語になる。 フェニキア文字から発展したアラム文字は次第に東へ伝播した。 〈フェニキア人〉 :セム語系 ・地中海沿岸に、シドンやティルスなどの都市国家を形成。 →紀元前 1200 年頃…ミケーネ文明に代わって地中海貿易を独占。 →ティルスは紀元前 9 世紀末に北アフリカに植民市カルタゴを建設。 ・シナイ文字(エジプト象形文字から発達した文字)をもとにフェニキア文字を作成。 →フェニキア文字はのちギリシアに伝わって、現在のアルファベットのもとになる 〈ヘブライ人〉 :セム語系 のちにイスラエル人・ユダヤ人とも呼ばれる。 前 1500 年頃…地中海東岸のパレスチナへ移住。カナーン人を服属させる。 →その後、一部はエジプトに移住するが厳しい扱いを受ける。 →前 13 世紀頃、預言者モーセに率いられて、エジプトを脱出:出エジプト →シナイ山で、唯一神ヤハウェからモーセは十戒を授かる。 パレスチナに戻ったヘブライ人は王国(ヘブライ王国)を建てる。 →2代:ダヴィデ王、3代:ソロモン王の時に全盛期を迎えるがその後二つに分裂… →北をイスラエル王国、南をユダ王国と呼ぶ。 ⇒前8世紀末…北のイスラエル王国はアッシリアに征服される。 ⇒前 586 年…南のユダ王国は新バビロニアに滅ぼされ、住民の多くはバビロンに強制 移住させられた:バビロン捕囚 →前6世紀後半…アケメネス朝ペルシアのキュロス 2 世がユダヤ人をバビロンから解放。 →以後、ヤハウェ信仰の正しさを実感し、ユダヤ教が成立する <ユダヤ教の成立>…十戒を中心とした律法をもとにユダヤ教が成立する。 ・ヤハウェを唯一神とする一神教。 ・偶像崇拝の禁止。 ・この世の終わりに神が審判を行う:最後の審判思想…ゾロアスター教の影響 ・律法を遵守するユダヤ人のみが救われる。:選民思想 ・民族を破滅から救う救世主(メシア)への信仰 ・聖典は『旧約聖書』 :キリスト教の新約に対する呼び名。ヘブライ語ではミフラー [オリエントの統一 その1] 〈アッシリア〉 :セム語系 都:アッシュル→ニネヴェ 前 7 世紀前半…エジプトを含めたオリエントの主要部分を征服し統一。 →強制移住、重税など過酷な支配で統治をした。 →アッシュル=バニパル王のとき領土は最大になり、ニネヴェに大図書館を建築。 ⇒高圧的な政策に1世紀も持たずに服属民族の反乱で滅亡。 〈四国分立時代〉…アッシリアの滅亡以後、四王国が分立。 新バビロニア(カルデア)…都はバビロン。セム語系。 肥沃な三日月地帯を支配する最も有力な存在。 前 586 年にバビロン捕囚を行った。 リディア…インド・ヨーロッパ語系。世界最古の鋳造貨幣を使用した。 メディア…都はエグバタナ。インド・ヨーロッパ語系。 小アジア東部~インダス川付近まで、広い領土を持つ。 エジプト…第 26 代王朝。 <領土がでかいほうがメディアなので、マス=メディアと覚えよう!!> ⇒四王国はエジプトを除いてアケメネス朝ペルシアのキュロス 2 世に滅ぼされる。 →アケメネス朝はエジプトを滅ぼして、オリエントを再統一。 [オリエントの統一 その2] 〈アケメネス朝ペルシア〉…インド・ヨーロッパ語系ペルシア人 都:スサ 国教:ゾロアスター教 初代:キュロス 2 世 メディアを滅ぼして自立した後、新バビロニア、メディアを滅ぼす。 2代:カンビュセス 2 世 エジプトを滅ぼしてオリエントの統一を果たす。 3代:ダレイオス 1 世 サトラップ(知事)を派遣するなど、中央集権体制を強化して全盛期を築く。 祭祀のための都市であるペルセポリスの建設。 →前 500 年~ ペルシア戦争(vs ギリシア) のち前 449 年にアケメネス朝はペルシア戦争に敗北。 ⇒前 330 年…アレクサンドロス大王(マケドニア王国)の東方遠征で滅ぼされる。 〈アケメネス朝の政治〉 ・サトラップ(知事)を各州に派遣し治めさせる。 ・『王の目』『王の耳』という監察官にサトラップを見張らせて報告させる。 ・国道『王の道』を建設。有名なものはスサ~サルデスまでの距離を走るもの。 ・国道の途中で宿舎を設ける駅伝制を施行。 ・楔形文字の一種であるペルシア文字を使用。 ・国教をゾロアスター教に定める。 <ゾロアスター教(拝火教)について> ・中国名…祆教:後に中国に伝来する。 ・善の神:アフラ=マズダと悪の神:アーリマンの戦いののち、アフラ=マズダが勝 利して善人、悪人の審判を行う。:最後の審判 →その後、最後の審判で善人の魂は救済されるという思想。 ※この考え方は後にユダヤ教・キリスト教に影響を与えた。 ・火や光の崇拝を行ったことから拝火教とも呼ばれる。 〈楔形文字の解読〉←ハイレベル 18 世紀後半…ドイツのグローテフェントがペルセポリス碑文から解読の手掛りを得る。 19 世紀前半…イギリスのローリンソンがダレイオス 1 世の残したベヒストゥーン碑文 をもとに解読。 [オリエントのための古代ギリシア史] ギリシア世界は地中海を中心として発展し、ポリスと呼ばれる都市国家が成立していた。 〈3つの代表的なポリス〉 アテネ…イオニア人のポリス スパルタ…ドーリア人のポリス テーベ…アイオリス人のポリス ヘレネス…ギリシア人の自称 バルバロイ…異民族に対する蔑称 〈ペルシア戦争再び〉 前 500 年…イオニア植民地の反乱 →ペルシア戦争が始まる。vs アケメネス朝ペルシア:ダレイオス 1 世 ⇒前 449 年…ダレイオス 1 世の死後、ギリシア勝利。 →戦後、アテネを中心する、デロス同盟が成立。 ⇔スパルタとの対立を招き、スパルタはペロポネソス同盟を作ってアテネに対抗。 →前 431 年…ペロポネソス戦争 ⇒アテネの政治腐敗もあり、スパルタが勝利 その後スパルタが派遣を握ったのち、テーベが勢力を伸ばす 〈マケドニア王国〉 :ギリシア人の一派 フィリッポス2世 前 338 年…カイロネイアの戦い ⇒アテネ・テーベの連合軍を破り、ギリシア全土を制圧 →ほとんど全てのポリスをコリントス同盟の配下に収める アレクサンドロス大王 前 334 年~東方遠征(アジア方面への遠征) 前 333 年:イッソスの戦い(vs アケメネス朝) ⇒ダレイオス3世を撃破 前 330 年:アケメネス朝ペルシアを滅ぼす。 ⇒大王の死後、ディアドコイ(後継者)争いから王国は3つに分裂する 〈ヘレニズム世界〉 ヘレニズム…マケドニア王国の領土が東へ広がったことで、ギリシアの文化が オリエントの文化と融合。このギリシア的思想をヘレニズムという。 アンティゴノス朝マケドニア…ギリシアを支配 セレウコス朝シリア…メソポタミア、小アジア一帯を支配 プトレマイオス朝エジプト…エジプトを支配 前 30 年…オクタウィアヌスがプトレマイオス朝を滅ぼしてヘレニズム時代は終結 以後、ローマとオリエントの諸王朝の間に抗争が続く [パルティアとササン朝] 前 330 年:アレクサンドロス大王がアケメネス朝ペルシアを滅ぼす →大王の死後、マケドニア王国は3つに分裂。 アンティゴノス朝マケドニア…ギリシアを支配 セレウコス朝シリア…メソポタミア、小アジア一帯を支配 プトレマイオス朝エジプト…エジプトを支配 〈バクトリア〉 :ギリシア系 前3世紀…セレウコス朝シリアよりギリシア系移民が独立。 ・インド(クシャーナ朝)にヘレニズム文化を伝えた。 〈パルティア〉 ;イラン系 建国:アルサケス 中国名:安息 都:ヘカトンピュロスなど→クテシフォン 前3世紀…セレウコス朝シリアから遊牧民の長アルサケスが自立。 前2世紀半ば…ミトラダデス1世の時全盛期。 ⇒後3世紀…ローマとの抗争で疲弊してササン朝によって滅ぼされる 〈ササン朝ペルシア〉 :イラン系 建国:アルダシール1世 都:クテシフォン ・イラン系の農耕民がファールス地方に建国した王朝 初代:アルダシール1世 ・224 年…パルティアを滅ぼして建国 ・クテシフォンを都に定め、ゾロアスター教を国教に定める 2代:シャープール 1 世 ・東方でクシャーナ朝を破る →260 年…ローマとの抗争(エデッサの戦い)で皇帝ウァレリアヌスを捕える。 最盛期:ホスロー1世 在位 531~579 年 ・東ローマ帝国(ビザンツ帝国)を圧迫 ・突厥(トルコ系)と協力してエフタルを滅ぼす。 →ホスロー2世…ビザンツ皇帝ヘラクレイオス1世に破れる。 642 年…ニハーヴァンドの戦い vs イスラーム軍 ⇒ササン朝は敗北し、まもなく滅亡。 [西アジアの文化] ・ゾロアスター教…ササン朝で国教とされて発展。 教典: 『アヴェスター』もこの頃に完成 ・マニ教…バビロニアのマニが創始した。 ゾロアスター教にキリスト教、仏教の要素を融合させる。 善悪二元論、禁欲、偶像崇拝の否定 ウィグル(9~10世紀)で信仰され、アルビジョワ派キリスト教などに影響を与える ネストリウス派キリスト教 中国名:景教 エフェソス公会議で異端とされたのちササン朝を経て中国へ伝わる。 ・ササン朝美術:ヘレニズム様式を始め、西アジア周辺の文化を取り入れた美術 ⇒東伝し、法隆寺や、正倉院の漆胡瓶に影響が見られる。
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