五羊ホンダレポート

五羊―ホンダモーター(広州)有限会社
レポート
060034 池田
060574 松本
060601 宗像
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1.五羊
ホンダモーター
◆会社概要
設立
:1992 年 8 月 6 日
資本金
:3000 万米ドル
出資比率
:本田技研工業株式会社 50%
従業員数
:4200 名(うち約 4 割は臨時社員)
管理職
:五羊 5 名
人材育成
:研修 72h/人
運営方針
:お客様第一
広州摩托集団公司 50%
ホンダ 6 名
品質第一
信用第一
◆新工場
設立
:2006 年 2 月 28 日
投資総額
:3.8 億元
敷地面積
:32 万㎡
(約 56 億円
㊟1 元=14.7 円で換算)
建屋総面積:10.8 万㎡
緑化率
:33.3%
生産能力
:(操業当初)70 万台
(現在)100 万台
給排気設備:960Mwh/年
照明減少
:456Mwh/年(毎年削減中、自然採光の活用)
節水
:66800t/年
(処理水の再利用、排水処理場)
◆平均年齢
現場
:23~25 歳
事務室:30~35 歳
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臨時職員の給料
→
地域の中レベル
工場での現場作業は2交代制
◆チームワーク向上のための企業文化
「人間尊重」の管理体制
「信頼を基本とする」経営戦略
「質を基本とする」仕事のやり方
「調和のとれた」事業運営環境、働きやすい環境と仕事の流れ
→
2 年に 1 回のスポーツ大会
従業員合同結婚式
マラソン大会
企業内新聞
◆地域社会への貢献
交通安全運動
学生への奨学金提供
植林活動
◆二輪車市場の推移
92 年
HONDA、ヤマハ、スズキが各二輪生が合弁会社を設立
92~94 年
創成期
売り手市場
95~99 年
拡大期
都市部中心に開拓
→
市場の成長
ナンバー規制の開始
→
農村部の市場開拓へ
2000~2002 年
2003~
(94 年
農村市場の成長
500 万台市場)
(2006 年
2000 万台市場)
◆販売機種
現在、13 機種を生産
・輸出
4 機種
アジア、アフリカ(ナイジェリアなど)、中南米(チリなど)等、海外 60 カ国に年間約 7 万
台を輸出
欧州、アメリカへの輸出を計画
・売れ筋商品
GCC シリーズスクーター
日本向けにも、国内向けにも売れている。
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大きいバイクよりも小さい実用型のバイク
7000 元程度と主力スクーター(約 5000 元)に比べ割高になるものの、低価格。
→
スクーターやモーターサイクルが売れている。
・新商品
低公害型のスクーター「SCR110」
燃費向上と低排ガス量を実現。
08 年にも中国が導入予定の欧州連合(EU)基準「EUROⅢ」をクリア。
価格は 9980~10800 元と高いものの、ガソリン高、環境への関心の高まりを背景に売り
上げが見込まれている。
→
環境配慮、ブランド確立
・販売網
2006 年
特約販売店
1929 軒
旗艦店
213 軒
専売店
592 軒
(特約とダブっているかは不明)
◆競争
メーカーの数が多く、競争が激しい。
ナンバープレート規制により都市部市場の頭打ち
→
価格競争
ホンダの平均仕切価格
96 年
業界平均比
2.3 倍
99 年
業界平均比
2.1 倍
2006 年
業界平均比
1.2 倍
◆五羊ホンダの価格戦略
1992 年
ブランド確立を目指す。当初は価格が高すぎる。
2~3 年で新機種を導入
→ 受け入れられる価格を目指す
現在は 1998 年からのナンバープレート規制(170 都市で実施)により、都市部だけではな
く、主要都市である郡部、農村部に受け入れられるブランドを目指す。
→
主力スクーターの価格は 5000 元
中国では環境規制が厳しくなってきており、それを満たさなければならなくなっている。
また、環境対策の先駆けた取り組みはブランドイメージの向上につながるため生産面、
製品面ともに重視している。
◆生産設備、部品
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・生産設備
基本的に日本から輸入、部品の一部(シリンダー部品)も日本から輸入
・部品
完成車の部品点数は 5000~6000 点
部品の 9 割は 1992 年設立当初から取引している地元企業から調達。
ただし、部品は五羊ホンダ専用ではない。
・ライン
長さ、115 メートル
各行程 30 秒
時間厳守
→
守れなかった場合、罰金
その後、性能検査
五羊-ホンダモーター有限会社は、1992 年 8 月 6 日に本田技研工業株式会社と広州摩托
集団公司が資本金 3000 万米ドルを 50%づつ出資して創った合弁企業である。現在の従業
員数は約 4200 名で、そのうち約 4 割を臨時社員が占める。管理職は五羊-5 名、ホンダ-
6 名となっている。
2006 年 2 月 28 日には新工場が設立され、その投資総額は 3.8 億元、敷地面積は 32 万㎡、
建屋総面積は 10.8 万㎡、緑化率は 33.3%である。生産能力は操業当初は 70 万台であった
が、現在は 100 万台と増加している。給排気設備、照明減少、節水はそれぞれ、960Mwh/
年、456Mwh/年、66800t/年となっている。照明、節水に関しては、自然採光の活用、処
理水の再利用などにより、毎年削減中であり、地球環境に優しいグリーンファクトリーを
目指している。
五羊ホンダモーターでは現在、13 機種を生産しており、輸出専門の機種と合わせて 4 機
種を輸出している。輸出先は主にアジア、アフリカ(ナイジェリアなど)、中南米(チリなど)
で、海外 60 カ国に年間約 7 万台を輸出している。また、現在はまだ行われていないが、欧
州、アメリカへの輸出も検討中である。国内市場との歴史では、1992 年、創業当初のブラ
ンド確立を狙った製品は価格が高すぎたため、あまり受け入れられなかった。しかし、92
~94 年の二輪車市場の創成期には新機種を導入し、受け入れられる価格を目指した。以後
は都市部を中心に市場開拓を進めてきたが、1998 年からのナンバープレート規制(現在 170
都市で実施)により、今後は郡部、農村部に受け入れられるブランドの確立が重要となって
きている。また、中国では環境規制が厳しくなってきており、五羊ホンダモーターは 08 年
にも中国が導入予定の、欧州連合(EU)基準「EUROⅢ」をクリアした低公害型のスクータ
ー「SCR110」を発表した。こうした環境への先駆けた取り組みはブランドイメージの向上
にもつながるため、生産面、製品面ともに重視している。
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2.中国の自動車産業合弁に関する規定・歴史・政策
広州トヨタについてもそうであったが、この五羊ホンダも合弁企業である。そこで、以
下では、合弁企業に関する歴史や政策を概観する。なお、データや資料の豊富さという観
点から、自動車産業について述べる。
<外資導入の歴史>
中国の自動車産業での合弁の歴史は以下の通りである。
•
83 年北京汽車と A MC (現ダイムラークライスラー)による初の自動車会社合弁。
•
84 年上海汽車と独フォルクスワーゲンが合弁。
•
85 年広州汽車と仏プジョーが合弁。
•
97 年米国ゼネラルモータース(GM)と上海汽車が合弁。
•
99 年に初めてホンダがプジョーの撤退を受け、合弁。
•
2002 年 6 月にはトヨタと天津汽車が合弁。また同年、フォードも長安汽車集団と合弁。
•
2003 年に日産は東風自動車と合弁。同年、ダイムラークライスラーが北京汽車と合弁。
以下の表に合弁している企業を示す。複雑な合弁関係が形成されている背景には中国の外
資の進出規制が厳しく、外資メーカーの単独進出は認められていないため、現地の中国メ
ーカーとの合弁という形態を取らなければ進出できないことが大きな要因。
主要中国メーカー
合弁パートナー
第一汽車
VW トヨタ フォード
上海汽車
VW GM いすゞ
東風汽車
PSA 日産 ホンダ
長安汽車
スズキ フォード
広州汽車
ホンダ トヨタ
北京汽車
DC 現代自動車 日産
<外資に対する規制>
2004 年に公布された「新自動車産業発展政策」の外資に対する規制を以下に示す。
●外資が合弁できる中国企業は乗用車、商用車それぞれ 2 社迄
●外資のグループ企業は1社とみなす
●外資合弁は中国企業を吸収買収可
●外資の合弁比率は最大 50%(⇒中国側が 50%以上)
●輸出目的の合弁企業の場合は上記 2 規定は適用されない
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<中国の自動車産業に対する政策>
中国の自動車産業に対する政策に「三大三小二微政策」と呼ばれるものがある。これは中
国政府がその強い指導力によって、選定したいくつかの国産自動車メーカーを重点的に育
てる政策である(下表)
。しかし、中国の国内企業だけでは自動車産業の大きな発展は望め
ない。そこで中国政府は積極的に外資を利用しようと導入を進めてきた。だが同時に外資
側には常に厳しい条件を提示してきた。これは中国側が国外の技術を取り入れたい反面、
外資導入が進展しすぎると「三大三小二微政策」に支障がでると判断したためであると考
えられる。
「三大三小二微政策」
三大
第一汽車
東風汽車
上海大衆汽車
三小
北京吉普汽車
天津市微型汽車
広州ホンダ
二微
国営長安機器
貴州航空
3.中国‐国有の3大自動車製造・販売企業グループ
International Highway HP データより作成
(http://www.iijnet.or.jp/IHCC/mem-north-chinamotor-industry-senryaku2002-seisan-06-1.html)
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グラフからもわかるように、3 大自動車製造・販売企業グループとして上海汽車集団・第
一汽車集団・東風汽車集団の3つの企業を挙げることができる。上位5社での中国自動車
市場シェアは 66.99%、上位 10 社でのシェアは 83.71%であり、100 社以上あると言われ
ている中国の自動車業界も上位陣への寡占化が進んでいるようだ。また、近年ではトップ
陣の生産・販売量の増加に伴い中位グループの成長率が高いため、上位陣との差を埋めつ
つあるのが現状だ。1
ここで、上位3つの企業(上海汽車集団・第一汽車集団・東風汽車集団)について簡単
に述べる。
【上海汽車集団】
・ 設立
1958 年
上海汽車装配廠が「鳳凰」ブランドの自動車を開発したことから始まる。
・ 海外提携企業
フォルクスワーゲン(ドイツ)、GM(アメリカ)、ボルボ(スウェーデン)
・ 傘下企業
上海 VW(50% - フォルクスワーゲンと折半出資)
上海 GM(グループで 50% - 残り半分は GM が出資)
【第一汽車集団】
・ 設立
1953 年に中国で最初の自動車メーカーとして設立
・ 海外提携企業
フォルクスワーゲン(ドイツ)、トヨタ自動車(日本)
ダイハツ自動車(日本)
、マツダ(日本)
・ 傘下企業
四川豊田(子会社の成都一汽汽車とトヨタ自動車で折半出資)
一汽 VW(60% - 残りはフォルクスワーゲン出資)
天津豊田(子会社の天津汽車の 100%子会社とトヨタで折半出資)
天津汽車(100%出資)
成都一汽汽車(80%出資)
【東風汽車集団】
・ 設立
1969 年
・ 海外提携企業
プジョーグループ(フランス)、ルノー(フランス)、日産自動車(日本)
ホンダ(日本)、起亜(韓国)
・ 傘下企業
「新」東風汽車(日産自動車と折半出資)
風神汽車(40% - 「新」東風汽車に帰属)
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中国株ドットコムの以下の HP も参照されたい(http://www.chuugokukabu.com/kiji/kiji61.html)
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4.中国自動車産業
中国で初めて自動車が生産されてから、50 年。中国の自動車産業は飛躍的な成長を遂げ
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2010 年には生産台数は 1000 万台を越えるものと予想されている。1994 年から 1998
た。
年までの成長率は比較的低かった(1.5%-7.3%)が、WTO 加盟が確実になるにつれ、自動
車産業は再び 10%以上の成長率を取り戻した。2002 年、WTO の正式加盟が実現すると、
自動車の生産台数は 325.1 万台にも達し、前年より 38.8%も増加し、この十年間で最も速く
成長した一年となった。
また、1999 年以降、自動車産業は中国における工業全体の成長率を上回っている。
工業部門全体の中で、成長に対する寄与は電子・情報産業に次ぎ、二年連続して第二位であ
った。(02~03 年)
1990 年以前、中国の自動車市場は公用車がその多くを占め、需要自体がきわめて少なかっ
た。70%の需要が政府、事業単位の公用車、30%が企業の商業用車であり、自家用車は殆
どゼロであった。1990 年から 2000 年にかけて、公用車の割合が減少し、商業用車がシェア
を拡大し、また個人による乗用車購入が始まった。
2002 年には乗用車販売のうち個人購入が占める割合が初めて 50%を超え、60%前後に達し
た。その中でも、最も活気の溢れる北京市の自動車市場では個人購入が 90%近を占めた。
中国自動車産業の問題点としては、自動車産業の分散した状況が改善されていない点で
ある。世界全体の自動車産業では、六つの多国籍企業集団と三つの独立した自動車メーカ
ーからなる「6+3」の局面がほぼ形成されている。
この六つの多国籍企業集団の年間自動車生産台数はどの企業も 400 万台以上であり、一つの
企業だけで中国全国の自動車生産台数を上回っている。
しかし現在、中国の自動車メーカーは 100 以上もあるため、競争が不十分かつ、自動車プロ
ジェクトからの営利があまりにも簡単に得られるため、政府主導型の投資行為と地域間の
保護主義がいまだに深刻であり、地域を越えた M&A は非常に困難となっている。
5.感想
松本:私は以前中国の映画産業についても調べたことがあるが、なぜ中国はこんなにも規
制が厳しいのだろうという感想を持った。今回も同じである。映画産業では、輸入映画の
本数が限られているため、外国はほとんど中国に映画を輸出できない。そこで外国は中国
と映画を共同制作することで中国映画を輸出している。自動車産業も単独出資では中国に
参入できないため、合弁という形を取るしかない。中国は自国産業を保護する形で政策を
進行しているので外国産業が参入しづらいことは明白であるが、それでも中国市場に外国
が参入を考えるのはなぜだろうか。やはりそれは中国がそれだけ魅力的だからであるのだ
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詳細は、経済産業研究所中国経済新論の HP を参照されたい
(http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/030707sangyokigyo.htm
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)
ろう。中国市場は外国からすればいまだ未開拓の市場であり、人口と照らし合わせてみて
も、その市場に多くの需要が眠っていることがうかがえる。また生産地としても、豊富な
土地面積、徐々に整ってきたインフラ、安価な賃金など他の国にはないものを持っている。
中国は隣国ではあるが、国が違えば、その国のことなどなかなかわからないものである。
中国が発展してきたのはここ 2~3 年のことではないし、世間でも中国の魅力はよく取り沙
汰されてきていたが、私自身はっきりとわかっていなかった。今回の見学で中国を訪れた
ことでやっと中国の可能性・魅力を自分自身の肌で感じ、また中国のすごさに気づけたよ
うに思う。これから中国がどのような動きをしていくのか、資本主義に転換するかもしれ
ないし、もっと規制が緩和され、外国企業が参入しやすい状況になるかもしれない。しか
しどんな動きを見せようとも、それは他国に大きな影響を与えるであろう。それほど中国
は大きな存在になっている。これからも機会があれば、中国についてもっと調べていきた
いと思う。
池田:五羊ホンダは中国の二輪車市場をリードしてきたと言えるのではないだろうか。そ
して、これからの二輪車市場のさらなる発展に担う役割は大きいと考える。
今回、五羊ホンダの二輪車工場に行ってみて感じたのは、思ったより忙しそうではなかっ
たということだ。勝手なイメージかもしれないが、工場というと機械がずっと動いていて
それに合わせて人も機械的に働いているような殺伐とした印象があった。しかし、見学に
行った時間がたまたま休憩中だったのかもしれないが、従業員の方たちは集まって何やら
話している様子で、逆に私たちが見学されているような感じもあり、くつろいだ雰囲気だ
った。製造工程にある部品も通路の脇に置いてあったりして、無造作な印象を受けた。(も
ちろん実際は管理されているのだろうと思うが) しかし、ここで述べたのはあくまで私の
主観的な感想である。ほかの地元の二輪車工場や、日本の工場を知らないので相対的な意
見を述べることができないのが残念だ。けれども、世界経済において今、最も注目されて
いる中国に行って実際の生産現場を見られたことは大変勉強になったと思う。
宗像:今回実際中国に行き、中国の発展のスピードに驚かされた。
自動車の生産・販売の増加は数値的にも明らかであり、広州市内を走る車の量や道路が整
備されている状況も想像していた中国をはるかに超えていた。
日系のホンダやトヨタ以外にも欧米の大手自動車企業が進出しており、中国にそれらの優
れた技術が流出するのに時間はかからないのだろうと実感できた。
ただ、中国の発展に伴って知的財産の問題などについては日本ほど考慮されていないのが
気になった。確かに日本は安全面や知的財産に対し過剰と言えると思うが、自国の技術を
守っていくことはこれから発展するにあたって重要なことであると思う。
今回の中国での研修では、合弁企業について学べたことはもちろん、日本では感じること
のできない文化の差異を体験できたことが大変印象的であった。
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また、発展途上とされてきた中国がものすごいスピードで先進国に近づこうとしているの
を知る大変良い機会だった。
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