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道疾 患 1
ス ボ ー 帰学編 : 上気
平賀
署長
vo,.2
平賀
敦(ひらが
獣医学情士・獣医師
あっし)
現晦日高育成牧場量1)1揖長
1959年生まれ。1985年北里大学大学院獣医学
専攻修士接混在修了し、問年JRA鍵浦トレーニ
ンゲセンヲ一般走馬診繍i'fí1<:勤務.19鎗年以降、鏡走馬総合
・
・町 、
研究所において、競走馬の灘動生理学lこ関する研究に従事す
る.専門は、サラブレッドの呼暇循環償舗に関する研究で、
トレーニング効果lζ閉する研究や運動性肺出血の発生メカ
ニズムに関する研究などを行なっている. 2ぽ踊年より国際馬
、主運動生理特国腕負を務める.加時よリ珊.
に神経の軸索輸送に何らかの隠害が起こっ
ているのではないかという研究者もいる。
走行に必要なパワーを生み出すのは骨格
孔から咽喉頭部までの上気道、 気管から肺
左反田神経に麻海が起ζり、 左側の小角
筋なので、 競走馬が最高のパフォーマンス
胞にいたる下気道に不具合があれば、 それ
突起を引っ張る筋肉が萎縮して働かなくな
を発揮するためには、 骨格筋自体が十分に
はすなわち馬のパフォーマンスを損なう原
ると、 左側の小角突起が下垂する(写真2)。
発達し、 しかも健康な状態になければなら
因となる。 肺胞で酸素をとりこんだ血液は、
運動を開始して換気量が増えていっても、
ない。 さらに、 全力疾走中に骨格筋が正常
ポンプである心臓により全身に送り出され
本来聞くべき左側の披裂軟骨が関かなくな
に機能するためには、 骨格筋に酸素を届け
るので、 心臓に何か問題があれば、 これも
り、 声門裂の方向へ内転して倒れ、 声門裂
る酸素運搬システム(上気道から肺・心臓)
またパフォーマンスを減少させる要因となる。
もま た正常に働く必要がある。
を閉塞させ ることになる。 声門裂が閉塞す
ることで、 ちょうど口笛を吹くときに唇を
喉頭片麻痩(Laryngeal
Hemiplesia : LH)
すぽめるようなかたちになり、 呼吸の際に
岬(外鼻孔)から入 った空気は鼻腔を通
気管の入り口には門がある。 正常な場合
ゆるノド鳴りといわれる疾患の中で最もよ
って咽頭・喉頭に達する。 咽喉頭部の下側
は、 披裂軟骨の小角突起は左右対称になっ
くみられるもののひとつである。 安静時に
(腹側)には口議という口腔と庫腔を隔て
ている(写真1 )。 背側輪状披裂筋という
はもちろん音はしないが、 運動すると「ヒ
上気道から下気道
音がするというわけだ。 喉頭片麻痩はいわ
る壁があり、 口に近い前の方の硬い部分を
筋肉が収縮して、 左右の小角突起が外側に
ユーヒュー」という乾いた音が聞かれるこ
硬口蓋、 奥の方の柔らかい部分を軟口蓋と
ヲ|っ張られると(外転すると)声門裂が左
とが多い。
いう。 日因喉頭部の一番奥に喉頭蓋や披裂軟
右に大きく聞き、 空気を気管内に取り入れ
喉頭片麻簿は気道を閉塞する疾患のなか
骨などで作られる気管への入り口がある(写
やすくなる。 喉頭には反回神経という神経
でも、 特に吸息時に閉塞の影響が大きくな
真1 )。 咽喉頭部は、 空気が通る通路であ
が分布している。 反回という名前が示すよ
る吸息性の閉塞性気道疾患である。 閉塞の
る気道(鼻腔→咽頭→喉頭→気管)と食べ
うに、 この神経は、 脳から出発して胸腔内
程度によって数段階のグレードに分けられ
物が通る通路(口→咽頭→食道)の交叉点
に入 った迷走神経の一部が枝分かれして、
ている。 グレード分けするためには内視鏡
になっている。 喉頭蓋は、 物を食べて飲み
喉頭にまで‘戻って(反回して)、 喉頭部の筋
検査が必須で、 JRAトレーニングセンタ
込むときに気管の入り口にフタをして、 食
肉に分布しているのである。 したがって、
ーの競走馬診療所はもとより、 生産地で・あ
べ物が気管に入るのを防ぐ働きがある。 食
数ある馬の神経の中でも最も長い部類には
る北海道においても内視鏡検査は頻繁に行
べ物を飲み込むときに、 喉頭皇室が気管の入
いる。 特に左の反回神経の方が反目する位
なわれている。 安静時の内視鏡検査で異常
り口をうまくふさぐことが出来ないと、 食
置が遠いので、 右の反回神経よりも長くな
が認められなかったにもかかわらず、 運動
べ物の一部が気管内に入り、 大きな問題を
る。
時に何らかの異常が認められる場合もあり、
起こすことがある。 喉頭を通過した空気は
サラブレッドに発生する喉頭片麻癖のほ
その際にはトレッドミル上での運動時内観
鏡検査を行なうこともある。 次回は、 喉頭
気管に入る。 気管は、 気管支・細気管支と
とんどは、 左の反回神経麻癖に起因する左
枝分かれしていき、 最後は肺胞という袋状
側の喉頭麻簿である。 なぜ、 左側の反回神
片麻海が運動におよぽす影響について簡単
の構造となる。
経に麻簿が起ζりやすいのかについての詳
に紹介したい。
ぬ孔から肺胞にいたる全気道のうち、 ぬ
細は不明であるが、 神経が長すぎるがゆえ
写 真 2 ・喉 頭 片 麻 痩 の 内 視 鏡 写 真 。 左 側 (向 か っ て 右 側 )の 披 裂 軟 骨
。 とう い
矢印)
の 小 角 突 起 が 右 側 に比 べ て 下 が っ て い る の が わ か る (
、気 通
う 状 態 にな る と 、 吸 患 の 際 にも 扱 裂 軟 骨 は 聞 か す (外 転 せ ず )
は 閉 塞 する
写真
馬のノドの内視鏡写真。 銀製軟骨の小角突起lま左右対称に怒って
いる。披裂軟骨を動かす筋肉が麻薄すると喉頭片麻簿になる
(次回は11月14日発売号}