米国 IT 業界動向 2006 年 10 月 JETRO, New York 1.企業動向 (1)アップルコンピュータ アップルが、コンピュータ・ウイルスに感染した iポッドを出荷していたことが明らか になった。感染したのは、9 月 12 日以降に販売した動画対応のビデオ i ポッドで、そのう ちの 1%未満が感染しているという。同社によると、製造を委託していた工場でウィンド ウズ搭載パソコンを経由して感染した模様。アップルは利用者に対し、既存のウイルス対 策ソフトか、アップルのサイト(http://www.apple.com/jp/support/windowsvirus)からの無料 ダウンロードを呼びかけている。 【10 月 19 日】 アップルの 7-9 月期決算は増収増益となった。iポッドの売り上げが好調だったのが奏功 した。出荷台数は前年同期比 35%増の 872 万 9000 台に達した。一方、パソコンの出荷台 数も同比 30%増の 161 万台に達している。【10 月 18 日】 アップルは、ストックオプション(自社株購入権)の不正問題に関する内部調査結果を公 表した。その結果、同社のスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が不正操作の慣行 を一部承知していたことが明らかになった。ただし、同社は、ジョブズ CEO が会計上の 問題を認識していなかったほか、不正操作から利益も得ていないとしている。ジョブズ CEO は声明の中で株主や従業員に謝罪している。一方、元最高財務責任者(CFO)のアンダ ーソン取締役は、取締役職を辞任。今回の問題に絡み引責辞任したと見られている。経営 陣や従業員に一定価格での自社株の購入権を付与するストックオプションでは、権利行使 日の株価が権利付与日の価格を上回れば差額が報酬になる仕組みだ。ところが、米国内で は、権利付与日を株価が安値だった日に付け替えて報酬を膨らませる不正行為が相次いで 発覚している。今回の問題に関して、一部の専門家は、ジョブズ CEO に対しても罰則が 適用される可能性を指摘。ジョブズの退陣によるアップルへの影響を懸念する声もある。 特にデジタル楽曲市場での競争が激化している時期だけに、カリスマ性の高いジョブズの 進退問題は大きな波紋となりそうだ。【10 月 12 日、6 日】 (2)シスコシステムズ シスコは、大企業がユーチューブのようにビデオメッセージを作成して配信するための 製品ライン「デジタル・メディア・システムズ」を発表した。同システムには、管理ソフ トのほか、エンコーダが付属している。また、ビデオにアクセスするためのウェブポータ ルも含まれている。 同社は向こう 5〜7 年以内に年間の売上高が 10 億ドルに達すると見込んでいる。【9 月 27 日】 (3)IBM IBM の 7-9 月期決算は大幅な増益となった。ミドルウェア「ウェブスフィア」事業が好 調だったのが要因。売り上げは微増に留まった。売り上げを部門別に見ると、ハードウェ ア部門が前年同期比 9%増の 55 億 8300 万ドルと好調だった。さらに、システム事業の伸 びも業績を支えた。コンサルタント事業を含む主力のサービス部門は 3%増の 120 億 1700 万ドルに留まった。同社は 7-9 月期に 36 億ドルを投じてデータ管理などのソフト会社を買 収した。サービス部門が頭打ちになりつつある中、ソフト事業の強化を図っているようだ。 【10 月 20 日】 IBM のロータス部門は、コラボレーション・ソフトにソーシャル・ネットワーク・サー ビス(SNS)機能を導入するプロジェクト「IBMコミュニティ・ツールズ」を発表した。ロ ータスのクライアント・ソフト「ノーツ」や、インスタント・メッセージング「セームタ イム」、およびウェブポータル・ソフトに、新しいコミュニティ機能を追加していく。た とえば、近々に導入されるツールでは、1 つのグループに対して、個人が質問を投げかけ られるようになるという。将来的には、社交ブックマーキング・システムの「ドゥギアー (Dogear)」を利用して、複数のグループ間で情報を共有できるようにしていく考え。【10 月 5 日】 IBM は、出願中の特許申請を自社のウェブサイトで一般公開する方針を打ち出した。今 回の方針に基づき、IBM はいくつかの自主規制を盛り込んでいる。たとえば、特許は正式 な企業名で申請し、個人名やダミー企業の名前は使わない。また、具体的な技術仕様を伴 わない事業手法のみの発想に対して、特許は申請すべきでないという点も明確にしている。 通常、特許を一般公開する際に問題となるのは、他社に企業秘密の詳細を知られてしまう 点。しかし、IBM は米国の現行法を改正するための一助として方針を貫く考えだ。現在、 米国では ITやバイオテク、ナノテクの急速な発展で特許出願数が急増、米国特許商標局 (USPTO)に負荷がかかっている。このため、申請を速やかに処理することができず、結 果として、実際にはあまり新奇性のないアイデアに特許が認められるという事態が起きて いる。これが、さらに特許侵害訴訟を増やし、投機的な申請に拍車をかけている。そこで、 IBMは、オープンソースのように特許技術を公開することで、特許の品質を高めたいと考 えているようだ。IBMの新方針策定にあたっては、欧米、日本、中国の専門家 50 人以上 が、ウィキを活用したウェブサイト上で、今年 5 月と 6 月の 2 カ月月にわたり意見を交換 したという。その経緯は同社のサイト( http://www.ibm.com/gio/ip )で公開中。【9 月 28 日】 (4)ヒューレット・パッカード(HP) カーリー・フィオリーナ元会長兼最高経営責任者(CEO)は、HP の機密情報漏えい問 題で、漏えい源を特定するための内部調査を行うよう指示していたことを自伝で明らかに した。その自伝によると、漏洩問題はすでにフィオリーナ氏が在任中から起きており、 2005 年 1 月に指示を出したという。しかし、同氏は翌月に解任されたため、後任のパトリ シア・ダン前会長が引き続き行っていたという。【10 月 9 日】 HP は、カナダのパソコンメーカー、ブードゥーPC を買収した。これにより、北米で 300 万人に上ると見られるゲーム愛好者を対象にパソコンの販促を目指していく。競合の デルは今年 3 月、ブードゥーPC の競合エイリアンウェアを買収している。【10 月 2 日】 (5)インテル インテルの 7-9 月期決算は、減収減益となった。最大の要因は、競合アドバンスト・マ イクロ・デバイシズ(AMD)との価格競争による圧迫。一方、携帯機器やサーバ向け半導体 の出荷は過去最高を記録している。売上高を地域別で見ると、日本は横ばいの 9 億 2300 万ドルだったが、アジア太平洋地域では前年同期比 16%減の 43 億ドル、米州が1%減の 19 億ドル、欧州が 20%減の 16 億ドルと低迷した。 インテルはまた、2つのコアを搭載したデュアルコア型プロセッサ「コア 2 デュオ」の 出荷が発売後 2 カ月で 500 万個に達したことを明らかにしている。インテルは今年の全プ ロセッサ販売が 2 億個近くになると予想している。【10 月 19 日】 インテルはまた、ワイヤレス通信機能を持つノートブック向け半導体セット「セントリ ーノ」に「ワイマックス(WiMax)」を組み込む計画だ。新セントリーノの発売は 2008 年を見込んでいる。同社はさらに、45 ナノメートルの線幅加工技術を使った半導体の量産 を予定通り 2007 年下半期に始める計画も明らかにした。同社は現在、45 ナノ技術を使っ た 15 種類の半導体を開発しているという。【9 月 27 日】 (6)マイクロソフト マイクロソフトは、仮想マシン環境化の仕様を無償公開する。これは、1 台のコンピュ ータで複数の OS を実行できる技術で、試験的にソフトをインストールする時などに有効 だ。同技術では、EMC の子会社である VMウェアが有名だ。 一方、同社のバルマー最高経営責任者(CEO)は、同社の 2007 年度(06 年 7 月〜07 年 6 月) 研究・開発(R&D)投資額が 75 億ドル程度になるとの見通しを明らかにした。【10 月 20 日】 「ウィンドウズ・ビスタ」にマイクロソフトが独自のセキュリティ技術を導入することに 対して、セキュリティ大手らが批判していたが、同社はここに来て、同 OS 上でソフトを 動かすために必要な API を提供した。 また、同問題に絡み、ウィンドウズ・ビスタの販売が欧州で遅れるとの懸念が出ている が、同社は、企業向けを 11 月、個人消費者向けを来年 1 月に予定通り発売するという。 欧州連合(EU)欧州委員会は、ビスタの独自のセキュリティ機能が競合他社を市場から締め 出す可能性があることを懸念していた。【10 月 17 日、16 日】 また、EU はこれまで、独占禁止法違反でマイクロソフトへ制裁金を要求していたが、 逆にマイクロソフトは、EU 欧州委員会の措置を不服として欧州第 1 審裁判所(ルクセンブ ルク)に提訴した。EU 当局は、2004 年 3 月の EU 競争法違反認定時に出した是正命令に従 わなかったとし、今年 7 月に 2 億 8050 万ユーロ(約 420 億円)の制裁金を科していた。【10 月 6 日】 マイクロソフトは、同社が開発し東芝が生産するデジタル携帯楽曲プレーヤ「ズーン (Zune)」について、米国では 250 ドル(約 2 万 9400 円)で 11 月 14 日に発売する。同機器で は、保存した写真や一部楽曲をワイヤレス通信経由で交換できるほか、30 ギガバイトのメ モリを搭載する。さらに、アップルに対抗して、200 万曲が聴き放題になる契約制サービ スも月額 5 ドルで提供する計画だ。【10 月 2 日】 オンライン事業では、低価格パソコン向けオフィス・ソフト「ワークス」に、ネット広 告を収益源とする無料版の提供を検討している。グーグルを中心としたウェブ 2.0 勢力に 対抗する。今後は、「ワークス」の無料版などが「オフィス」の売り上げを損なわないよ うすることが課題になりそうだ。【9 月 25 日】 (7)グーグル グーグルは、自社ブランド名を使わず、新たな検索エンジンの実験サイト「サーチマッ シュ( http://www.searchmash.com/ )」を開設した。同サイトでは、グーグルの通常の検索エ ンジンに導入する新機能の候補をテストする。グーグルのブランド名を入れないことで、 よりより客観的なデータを集めるのが狙いだ。 サーチマッシュの機能には、結果のテキストをドラッグすることで並べ替える機能や、 緑色で表示される URLをクリックするとメニューが開き、そのサイトを現在のウィドウ か新しいウィンドウで開くオプションや、そのサイト内の他のページの記述をリスト表示 するオプションなどが示される。【10 月 21 日】 グーグルの 7-9 月期決算は増収増益となった。グーグルの売上高のうち、グーグルサイ トからが 60%で、39%が提携サイトからとなっている。【10 月 20 日】 グーグルは、カリフォルニア州マウンテンビューの本社に太陽発電システムを導入する。 米国企業のオフィス施設としては最大規模となる。同システムは、1600 キロワットを生産 できる。これは、1000 世帯に十分な電力を供給できる量だ。本社オフィスの電力消費の 3 分の 1 近くを賄う予定。【10 月 18 日】 グーグルは、自社サイトでワードプロセッサと表計算ソフトの無料パッケージ「グーグ ル・ドックス&スプレッドシーツ」を提供する。これまで、同社はこれまで、表計算ソフ トを導入しているが、今回新たにワードプロセッサ・プログラム「ライトリー (Writely)」をバンドルする。【10 月 15 日】 グーグルは、コンピュータソフトのプログラムコードを対象にした検索サービス「グー グル・コード・サーチ(Google Code Search)」を開始する。新サービス ( http://google.com/codesearch )では、ソフト開発者がウェブに公開された数十億ラインとい う膨大なソースコードの中から再利用可能なコードを検索できる。特定のプログラム用語、 あるいはコンピュータ言語や、圧縮されたコードの中から特定の機能を検索できるのが特 徴だ。また、将来の特許侵害問題を避けるため、検索対象を特定のライセンス条件に基づ くコードに絞ることも可能だ。【10 月 15 日】 グーグルは動画投稿サイト最大手の新興企業ユーチューブを総額 16 億ドル 5000 万ドル の株式交換で買収する。グーグルにとって過去最大の企業買収。ユーチューブは、米国内 のオンライン動画閲覧で 46%のシェアを握り、動画閲覧本数が1日当たり1億本以上に上 る。グーグルも同様のサービスを手掛けているが、シェアは 11%に留まっていた。【10 月 9 日】 オンライン検索エンジン大手グーグルは、自社で提供するアプレット「グーグル・ガジ ット」を個人のウェブサイト向けに提供していく。同アプレットはこれまで、自社サイト でのみしか利用できなかったが、今後は、ユーザーのウェブサイトでも利用できるように なる。現在、およそ 1220 種類のアプレットがあるが、ほとんどが外部のプログラマによ って開発されている。利用するには、HTML ソースコードを挿入するだけ。同社のサイト ( http://www.google.com/ig/directory?synd=open/ )に掲載されている。【10 月 9 日】 (8)オラクル 米司法省は、ピープルソフトによる同国政府当局への不正な価格情報提出をめぐる訴訟 で親会社のオラクルと和解した。オラクルは当局に対して 9850 万ドルを支払う。ピープ ルソフトは、米連邦調達局(GSA)との契約交渉で虚偽の情報を提示。その結果、19972005 年にかけての政府支払額が過剰になったため、同社を訴えていた【10 月 11 日】 主な企業の決算報告: 企業 名 四半 期売上 高 前年 同期比 四半 期純益 前 年同期比 ア ップル IBM イ ンテル グ ーグル 48.4億ドル 226.17 億ド ル 87.4億ドル 15.8億ドル 32.00% 5.00% -12.00% 70.00% 5.46億ド ル 22.22億ドル 13億 ド ル 7.33億ド ル 41.00% 47.00% -35.00% 92.00% 2. パーソナル・コンピュータ(PC)と OS (1)新興企業のオータムウェイブ(AutumnWave)は、ノートブックに接続して高精細テレ ビ(HDTV)を視聴できるチューナー「オンエア GT」を開発した。同チューナーは、LG エ レクトロニクスの製品を採用。価格は 179 ドル。コンピュータの USB2.0 ポートに接続し て使い、デバイスドライバをウェブサイトからダウンロードしてインストールする。 米国ではすでに 1500 局以上のテレビ局が、HDTV の地上波放送を提供している上、ほと んどのノートブックが HD 対応モニタを搭載している。同社はこうした環境を考慮して、 同チューナーの販促を期待している。【10 月 20 日】 (2)ビジネスプロセス管理(BPM)ソフトの需要が高まっている。これを受けて大企業を交え た市場の競争が激化すると見られている。これまでは、BPMソフトのメーカーは中小企業 が中心だったが、最近では IBM、アドビ・システムズ、ティブコ(Tibco)、コンピュータ・ アソシエーツ(CA)など大手も積極的に開発に取り組んでいる。調査会社大手フォレスタ ー・リサーチによると、BPM ソフトの売上高は毎年 21%の割合で増加を続け、2009 年に は 27 億ドルに達すると見られている。一方、ビジネスソフト全般の伸び率は 8%から 10% と予想されている。【10 月 19 日】 (3)第 3 四半期における世界パソコン市場で、ヒューレット・パッカード(HP)が出荷台数ベ ースでデルを抜き、首位を奪回した。調査会社 IDC が発表した。デルは同期、決算の不調 や、業界で最大規模のリコール(回収・無償修理)で苦戦を強いられていた。これに対して、 HP はハード最高経営責任者(CEO)の下、業績を回復しつつある。また、IDC によると、世 界パソコン出荷台数の伸び率は、前年同期比 7.9%に鈍化した。欧州では 2 ケタ成長となっ たものの、米国では 0.7%減に留まった。【10 月 20 日】 表1:2006 年第3四半期におけるパソコン市場の動向(世界) 企業名 HP デル レボノ エイサー 東芝 その他 合計 06Q3出荷台数 (単位:1000台) 9,831 9,803 4,447 3,418 2,385 27,168 57,052 06Q3 市場シェア 17.20% 17.20% 7.80% 6.00% 4.20% 47.60% 100.00% 05Q3出荷台数 (単位:1000台) 8,540 9,465 4,054 2,546 1,982 26,292 52,879 05Q3 市場シェア 16.10% 17.90% 7.70% 4.80% 3.70% 49.70% 100.00% 前年同期成長率 15.10% 3.60% 9.70% 34.30% 20.40% 3.30% 7.90% 表2:2006 年第3四半期におけるパソコン市場の動向(米国) デル デル HP ゲートウェイ アップル 東芝 その他 合計 06Q3出荷台数 (単位:1000台) 5,258 3,725 1,023 975 715 5,260 16,956 06Q3 市場シェア 31.00% 22.00% 6.00% 5.80% 4.20% 31.00% 100.00% 05Q3年出荷台数 (単位:1000台) 5,638 3,486 1,020 737 664 5,532 17,077 05Q3年 市場シェア 33.00% 20.40% 6.00% 4.30% 3.90% 32.40% 100.00% 前年同期成長率 -6.70% 6.90% 0.30% 32.30% 7.60% -4.90% -0.70% 注1:パソコンにはデスクトップ、ノートブック、ポータブル、x86 系サーバが含まれる。 注2:ゲートウェイと東芝は決算報告書から推測 (4)DVD の複製ソフトを開発するソニック・ソルーションズと、暗号ソフト・メーカーの マクロビジョンは、映画フィルムをダウンロードしてオンデマンド DVD で販売できるソ フトを小売店向けに提供する。作成した DVD は一般家庭のプレーヤで再生できる。ネッ トで好みの映画を注文後に購入者の自宅に郵送されるか、店内のキオスクで受け取る仕組 みだ。特に収益があまり見込めないフィルムを愛好者向けに DVD 化できる。現在、2 社は 小売数社と提携へ向け交渉しており、来四半期中にも合意に達する見込み。【10 月 12 日】 (5)オンデマンドの顧客管理(CRM)システムを提供する Salesforce.com は、開発者向けに同 社ソフトのコードへのアクセス権を与える。これにより、ビジネス向けアプリケーション の開発を促していく。 同社は、「アペックス(Apex)」プログラムコードその他のツールを 2007 年初頭に提供す る計画で、作成したプログラムを販売する「アップエクスチェンジ」向けプログラムのラ イセンス販売を促進する。【10 月 12 日】 (6)新興企業リングキューブ(RingCube)は、i ポッドや USB フラッシュメモリにパソコンの 内容を圧縮して持ち運べるソフト「モジョパック(MojoPac)」を開発した。これにより、ユ ーザーは、パソコンの個人設定、プログラム、データの複製をストレージ機器に保存でき る。後は、別のパソコンに USB 経由で機器を接続するだけで、あたかも自宅のパソコン のように各種アプリケーションを利用できる仕組みだ。大抵の汎用ソフトを利用できるほ か、オンラインゲームも別のパソコンで設定することなくすぐに遊べる。 ソフトは、仮想 OS を作り、プログラムをストレージ機器上で動かす仕組みだ。対応す るのはウィンドウズ XP のみ。価格は 29.99 ドル。無料ソフトの使用期間を超えると 49.99 ドルになる。【9 月 27 日】 3.インターネットとメディア・ビジネス (1)音楽大手ユニバーサル・ミュージック・グループは、ソニー傘下のグルーパー・ネット ワークスを著作権侵害で訴えた。同サイトにユニバーサルが著作権を持つ音楽ビデオが投 稿され、自由に閲覧されているというのが訴えの理由。ユニバーサルは、映像 1 本当たり 最大 15 万ドルの賠償を求めている。これに対して、グルーパーは通達を受けて映像を削 除していると反論している。【10 月 18 日】 (2)ヤフーは、オンライン広告制作ツールを提供しているアドインテラックス(AdInterax)を 買収する。今後、ヤフーはアドインテラックスのツールを無償で提供していく。折りしも、 ヤフーの 7-9 月期決算はオンライン広告の伸びが鈍化したことから、純益が前年同期比 37%減の 1 億 5900 万ドルとなっている。一方、売り上げは同比 19%増の 15 億 8000 万ド ルとなった。【10 月 18 日】 (3)「セカンド・ライフ(SL)」や「World of Warcraft」といった仮想現実サイトが人気を博 している。これらのサイトでは、商品やサービスが売買されており、1 日当たり数億ドル 規模の金銭が動いているという。こうした現状から内国歳入庁(IRS)は課税を検討している。 セカンド・ライフでは、米ドルと変換できる使用通貨リンデン・ドルを使ってサイト上で 土地を購入でき、ユーザー同士の取引は 1 日当たり 50 万ドルまで可能となっている。実 際に、仮想経済上の資産の売却益を実際のドルに換えた場合は IRS に所得として報告する 義務がある。しかし、仮想経済から生み出された所得と資本収益を実際にどう扱うかに関 しては明確になっていないのが現状だ。 現在、セカンド・ライフの年間当たりの GDP は既に 1 億 5000 万ドルに達しているとい う。ロイター通信が仮想世界でのニュース配信を始めたほか、メジャーリーグ野球やハー バード大学、Cネットなどが参入、さらに、アニメのキャラクターを使ったデュラン・デ ュランやスザンヌ・ベガのコンサートの上演もある。【10 月 17 日、16 日】 (4)世界最大の Wi-Fi コミュニティを運営するフォン(FON)は、6 カ月以内に米国市場への 進出を図るため、ケーブルテレビ(CATV)会社数社と協議を進めている。マドリードに本 社を置くフォンは、無料の無線ブロードバンド接続サービスを提供している。現在、ホッ トスポットは 2 万ヵ所にあり、登録ユーザーは 9 万 5000 人。株主には、グーグル、スカイ プ、e ベイなどが名を連ねている。【10 月 12 日】 (5)米連邦地裁の判事は、P2P 技術を使ったファイル交換プログラム「モルフェウス (Morpheus)」を提供するストリームキャスト・ネットワークスのビジネスモデルがネット 上の違法コピーを助長しているとの判断を下した。判事によると、同社のビジネスモデル が著作権法に違反し、また違法コピーされたファイルの交換を食い止める対応策を講じな かったという。 これに対して、ストリームキャストは、今後は、控訴する予定。【10 月 2 日】 4.電子商取引 (1)アパレルチェーン大手のギャップ(Gap)は、他社製品も取り扱う靴のオンライン販売サ イト「Piperlime.com」を試験的に立ち上げた。11 月に正式に開設する予定。サイトでは 150 ブランド品を扱い、zappos.com や shoes.com など豊富な品揃えで知られる靴専門サイト に対抗する。また、自社ブランドのサイトからもリンクを提供し、最終的に自社サイトで も新サイトのブランド製品を販売する計画だ。 インターネット・リテイラー・マガジンによると、ギャップの昨年のオンライン売上高 は約 6 億ドルで、アパレル専門チェーンとしては業界最高を記録している。【10 月 19 日】 (2)オンライン決済システム開発のヨドリー(Yodlee)は、携帯機器向けのソフト「ヨドリ ー・モバイル」を開発した。銀行などの金融機関に販売していく。金融機関ではこれを使 って、携帯電話からの残高照会といったサービスを顧客に提供できる。また、同社の製品 「ヨドリー・マネーセンター」とリンクさせることで、支払いや振り込みも可能となる。 【10 月 18 日】 (3)ネットの普及で、これまで公正な価格がなかったスポーツやコンサートなどのチケット の販売が変わりつつある。長年プロスポーツの試合などのチケット販売は、人気のある試 合もない試合も基本的には同じ料金が課金されてきた。これは、事前に適切な料金を設定 することが難しく、たとえば、スポーツでは試合当日のチームの順位、演劇の場合は批評 が出た前後などによって観客数が大きく左右されるからだ。 しかし、最近では e ベイ、スタブハブ(StubHub)、レーザーゲーター(RazorGator)などの ネット事業者がチケットをほぼ市場の適正価格で販売するようになっている。これに伴い、 日程が近づくにつれて人気がなくなる試合のチケット価格が徐々に下がったり、人気の高 い試合やコンサートのチケットがオークションで高額で販売されるようになっている。結 果的に人気のないチケットがより安く買えるようになる一方、人気の高いチケットはより 高くなるという二極化が進むと考えられている。【10 月 11 日】 (4)ネット小売業者は、今年の歳末商戦に合わせ、従来の販促に代えて価格や配達料の割引 に特化した戦略を導入する計画だ。全米小売連盟のネット部門 Shop.org が報告した。同部 門の調査によると、ネット業者はこれまでの抽選や常連客への割引のほか、ネットのみで の販売の代わりに、配達上の特典や早い時間帯の買い物客への割引も行う模様。また、調 査対象の 80 業者のうち、38%が昨年より販促開始時期を早め、そのうち 63%は 11 月 4 日 以前に導入すると回答した。条件にかかわらず無料配達を導入する業者は、前年の 25%か ら 36%に増加、条件付きの場合でも同 79%から 83%増となっている。しかし、燃料費の高 騰などによって業者が強いられる負担は重くなる。【10 月 9 日】 5.半導体 (1)台湾半導体メーカー大手 VIA テクノロジーズは、二酸化炭素 (CO2)の排出量を抑えるい わゆる「カーボンフリー」チップ「C7-D」を発売した。電力消費量を極力引き下げること で、発生する CO2 を削減する。これには、英国環境コンサルティング、ベスト・フット・ フォワード(BFF)も支援している。過去 3 年間のパソコンによる電力消費量の平均は 193 キ ロワットで、CO2 の排出量が 97 キログラム。これに対して、VIA 製品は同 52 キロワット、 26 キログラムにとどまっているという。「ペンティアム D」の CO2 排出量は 265 キログ ラムに上っている。【10 月 16 日】 (2)チップ開発を手がけるトランスメタは、同社が保有する特許技術 10 件を侵害したとし てインテルを訴えた。同社は、インテルが販売した 1000 億ドル相当のチップにこれらの 技術が使われたと訴えている。問題の特許は、省電力設計に関する部分。インテルは、非 動作中にチップを減速させる「エンハンスト・スピードステップ」という技術を導入して いるが、これがトランスメタの特許に抵触していると主張している。さらに、指示のスケ ジューリングやマイクロ・アーキテクチャに絡む部分の特許にも抵触しているという。 【10 月 16 日】 (3)米新興企業の光電子半導体開発アレイザー(Arasor)とレーザーモジュール供給ノバラッ クス(Novalux)はレーザー技術を利用するテレビ「レーザーテレビ」を開発。三菱電機は、 同技術を使って製造した 50 インチ試作品をオーストラリアで披露した。同技術は、プラ ズマテレビと液晶テレビに比べて 2 倍の色帯域を持ち、消費電力 75%削減を実現する。ま た、既存のフラットパネル・ディスプレイ製品より安価な価格設定ができる。来年 1 月に 米国で開催予定の国際家電見本市(CES)では 10 ブランドの製品が出展される見通し。 一方、レーザー以外の新興テレビ技術では、サムスンがルミナス・デバイセズ(Luminus Devices)の発光ダイオード(LED)技術を利用した 56 インチ製品を実演している。【10 月 16 日】 (4)携帯電話製造世界最大手ノキアは、既存のブルートゥースよりも小型かつ低消費電力の 短波無線技術「ワイブリー(Wibree)」を公開した。同技術は、時計などへの搭載が可能で、 電力消費の効率はブルートゥースに比べて、10 倍優れているという。ワイブリーは、最大 で 10 メートルまで機器同士を無線接続できる。また、ブルートゥースが 6 ギガヘルツを 超える高い周波数を必要とするのに対し、ワイブリーは 2.4 ギガヘルツと低く、他の技術 と連動できる。【10 月 5 日】 (5)携帯無線技術開発クアルコムが半導体大手ブロードコムの第 3 世代(3G)携帯電話向 け半導体の開発と販売の仮差し止めを求めた訴訟で、カリフォルニア州サンディエゴ連邦 地裁は、クアルコムの請求を却下した。連邦地裁判事は、クアルコムには仮差し止め請求 を行う資格がないとの判断を示している。【10 月 4 日】 (6)IBMとサン・マイクロシステムズは、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(ADM)に よるチップ接続用ソケット「トレンザ(Torrenza)」(コード名 )の開発計画に支持を表明した。 同技術を使うと、たとえば 4 つのソケットを備えるサーバなら、そのうち 2 つをビデオの 暗号化など特定の機能向けのチップ用に確保できる。これにより、「オプテロン (Opteron)」と他社製エンジンを併用して多様なソフトを稼働させる事ができる。同社の技 術にはこのほか、スーパーコンピュータ・メーカーのクレイ(Cray)、富士通シーメンス・ コンピュータも支持を表明している。【9 月 21 日】 6.その他 (1)パソコンおよび消費者家電業界は、年末にもケーブルを必要としないワイヤレス USB の初期版を投入する計画だが、2 つの規格が対立するなどの問題に直面している。超広帯 域無線(UWB)は、プリンタや外付けのハードディスク、 MP3 プレーヤなど付属機器や家電 製品をパソコンに無線接続する技術。3 メートルの範囲内において最大で毎秒 480 メガビ ット分のデータ送信できる。しかし、同技術の推進団体には、インテル、テキサス・イン スツルメンツ、ヒューレット・パッカードなどが推進するワイメディア・アライアンスと、 フリースケールがモトローラとともに設立した UWB フォーラムがあり、互いに技術開発 で競っているのが現状。これが逆に市場での普及を遅らせているという指摘もある。【10 月 18 日】 (2)連邦通信委員会(FCC)は、2009 年 2 月に予定されるデジタルテレビ移行後、テレビチャ ンネル間の空き周波数帯域を技術系企業に開放する方針を明らかにした。空きチャンネル はロサンゼルスのような大都市では帯域の約 3 分の 1、地方では約 4 分の 3 に相当する。 これまでは、ほぼ独占的にテレビ放送局に割り当てられてきたが、技術系企業は、自治体 向けブロードバンド接続やコンピュータからテレビへの動画ストリーミング配信など、新 興サービス向け家庭用固定無線機器へこれら周波数を開放するよう要求。議会が FCC に圧 力をかけた格好だ。 FCC は今後、空き周波数利用を有料のライセンス制にするか、あるいは「Wi-Fi」サー ビスのように無料の非ライセンス制とするかといった問題に対処していく必要がある。こ れに対して、テレビ放送事業者団体マキシマム・サービス・テレビ協会は、空き周波数を 使った新サービスがデジタルテレビ信号と電波干渉を起こし、視聴環境に悪影響を与える ことを懸念している。【10 月 16 日】 (3)米政府の通信関連支出は今後、2006 年の 170 億ドルから 2011 年は 220 億ドルに増大す るという。しかし、その予算のほとんどは、無線通信や業務のモバイル化に関連した革新 的技術を持つ小規模企業に費やされる見通しだ。政府系調査会社 INPUTが発表した。政 府の通信プロジェクトは従来、AT&T、ベライゾン・コミュニケーションズ、シスコシス テムズなど大手有力ベンダーが大手システムインテグレータ(SI)と提携して受注してき た。しかし、旧式システムの単なる置き換えと違い、革新的システムの構築では小規模企 業の大型プロジェクトへの参画が期待できるという。その一方で、連邦政府の通信予算獲 得をめぐるベンダー間競争は激しさを増しそうだ。【10 月 9 日】
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