「米国IT業界動向2007年2月」(PDF/99KB)

米国 IT 業界動向 2007 年 2 月
JETRO, New York
1.企業動向
(1)アップルコンピュータ
アップルは、同社が発表した携帯電話機「i フォン」の名称の問題で、シスコと和解し
たと発表した。シスコは、同件でアップルに対して商標侵害訴訟を起こしていた。和解に
より、両社は「iPhone」の商標をそれぞれの製品で自由に利用できる。金銭的な条件など
の詳細は明らかにされていない。【2 月 21 日】
スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、デジタル著作権管理(DRM)の搭載義務を
やめるよう、4大レコード会社に要請した。自社サイトに同氏の声明を掲載している。同
社の楽曲販売サービス「i チューンズ・ストア」などでは、独自の DRM 技術を採用してい
るため互換性が乏しい。アップルは、音楽会社が DRM の義務付けを免除すれば、互換性の
問題を解消できる主張している。ジョブズ CEO はまた、楽曲販売の 90%を占める CD が
DRM を持たないことを指摘して、デジタル楽曲販売の DRM 義務づけだけでは不正が防止で
きないと述べている。【2 月 7 日】
アップルは、ビートルズが設立した英レコード会社アップルと商標「アップル」とリン
ゴのロゴの使用差し止めを求めて争っていた件で、両社が和解したと発表した。和解金な
どの詳細は明らかにしていないが、米アップルが商標権を保有し、英アップルに一部貸与
することで合意した模様。これにともない、これまでネット上で販売されていなかったビ
ートルズの曲が登場するとの希望的観測も出ている。
両社は 1991 年に互いの分野へ進出しないという「不可侵条約」を元に商標を共有して
いたが、米アップルがネットでの楽曲販売に乗り出し事から訴訟へと発展した。【2 月 5
日】
(2)デル
経営不振がささやかれる中、創業者のマイケル・デル会長が最高経営責任者(CEO)に復
帰したが、アナリストらは、業績回復にすぐに結びつかないと見ているようだ。ケビン・
ロリンズ前 CEO は、投資家からの辞任要求によって1月末に退任している。
デル会長はまた、CEO への復帰を発表した際に、顧客サービスと製品向上を掲げる「デ
ル 2.0」の取り組みを本格化する意向を示したが、具体的な計画は明らかになっていない。
デルは昨年、競合の HP にパソコン市場シェアの首位を明け渡した。さらに、ソニー製バ
ッテリの大量リコールにも見舞われている。【2 月 2 日】
(3)シスコシステムズ
シスコの 11-1 月期決算は増益となった。主力製品のルータの売り上げが好調だったの
が要因。さらに、ケーブルテレビ(CATV)用セットトップ・ボックスを製造するサイエンテ
ィフィック・アトランタの買収効果もあり、売り上げを 6 億 3900 万ドル増やした。【2 月
7 日】
(4)IBM
IBM は、チップに格納されるデータの量を 3 倍に高めた新型メモリを開発した。さらに、
使用するシリコン面積も格段に縮小化し、データ処理能力の倍増も実現させている。これ
により、メインメモリとして使用されている DRAM の速度をキャッシュメモリとして利用
する SRAM 並みに高速化する「eDRAM」を実現した。ゲームのグラフィック処理などへの利
用が期待されている。DRAM は大量のデータを保存できるものの、これまで処理速度が低速
だったことが課題となっていた。【2 月 14 日】
IBM は、国防産業大手レイセオンから米海軍の駆逐艦「ズムウォルト(Zumwalt)」のシス
テム・アップグレードの契約を受注した。レイセオンは、2 隻の駆逐艦の基幹システムの
構築で総額 30 億ドルの契約を米海軍と結んでおり、IBM はその一部を担当することになる。
【2 月 9 日】
IBM は、ビジネス・ソフト「ロータス」の企業向けソーシャル・ネットワーキング・サ
ービス(SNS)製品「ロータス・コネクションズ」を発表した。通常の SNS サイトと同様の
機能を持ちながら、機密性を重視する企業環境でも利用できるだけの安全性を確保してい
る。同ソフトでは、個人のプロフィールやブログ、ウェブサイトのブックマークなどを投
稿して、他のメンバーと共有できる。また、オンライン・コミュニティを形成して、共同
作業を行なえる。競合製品には、マイクロソフトの「ウィンドウズ・シェアポイント・サ
ービシズ」がある。【1 月 22 日】
(5)ヒューレット・パッカード(HP)
HP は近日中にも、HP ブランドを前面に押し出したソフト・パッケージ「HP ソフトウェ
ア」の提供を開始する。これにより、ソフトウェア事業に本格的に乗り出す。また、企業
の最高情報責任者(CIO)らをイベントに招いて、パッケージのプロモーションを行なう予
定。パッケージには、マーキュリー・インタラクティブが開発した人気のネットワーク管
理ツール「オープンビュー」も含まれる。
ソフト事業はこれまでずっと、HP では脇役となってきた。たとえば、10 月末締めの四
半期、同社の売上高は 246 億ドルを計上したが、ソフト事業はわずか 1.4%を占めたにすぎ
ない。しかし、マーク・ハード最高経営責任者(CEO)は新たにソフト事業にてこ入れする
戦略を打ち出した。同社は昨年、マーキュリー買収後、顧客活動をモニタするソフトの開
発メーカー、ブリストル・テクノロジーも買収している。
HP の 11−1 月期決算は増収増益となった。年末商戦期におけるノート型パソコン(ラッ
プトップ)やプリンタ販売がいずれも好調だったことが奏功した。売上高を部門別に見る
と、パソコンが 17%増の 87 億ドルとなったほか、プリンタが 70 億ドル(7%増)、スト
レージ・サーバが 45 億ドル(5%増)、ソフトが 5 億ドル(81%増)となった。
ハード CEO は、これまで人員削減などのリストラを決行してきたが、その効果がようや
く顕在化してきたようだ。HP は、2-4 月期については、売上高を 245 億ドル前後と予想し
ている。【2 月 20 日】
また、HP は、独ビジネスソフト大手 SAP との提携を拡大する。その一環として、SAP の
インフラソフト「ネットウィーバー」関連の新サービスと、サービス指向アーキテクチャ
(SOA)を提供していく方針を明らかにした。また、企業向けソリューションを開発中で
あることも明らかにした。このほか、サーバーやストレージをアップグレードするサービ
ス、SAP の「ディスカバリー・システム」向けサービス、「R3」向けの評価、管理、アー
キテクチャ・サービスも含まれている。 さらに、HP ラボズと SAP の間では、新たな 10
年契約の共同研究も行なわれる。【1 月 30 日】
HP は、情報管理技術の研究開発センターをロシアに開設する。これで、同社の研究セン
ターは、本社(カリフォルニア州パロアルト)、英国、イスラエル、東京、中国、インドに
次ぎ世界で 7 ヵ所目になる。同研究センターでは、ネット上に蓄積された膨大なデータを
抽出、分析する新技術などを開発していく。【1 月 22 日】
2005 年における世界の管理ソフト市場シェア(売り上げベース)
IBM
16%
CA
11%
その他
48%
BMCソフトウェア
10%
日立
5%
HP
10%
*世界の売り上げ:93 億 7000 万ドル
(出典:IDC、WSJ)
(6)インテル
インテルは、携帯電話機メーカー世界最大手ノキアと共同で進めて来たノート型パソコ
ン向け HSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)モジュールの開発を中止した。理由は
明らかにしていないが、ビジネスとして双方に利益がないと見た模様。同計画は、ノキア
が昨年 9 月に発表した。このモジュールによって、ノート型パソコンからのワイヤレス接
続が改善されると期待されていた。ただし、インテルは、ノキアと引き続き協力体制を維
持して行く。【2 月 14 日】
インテルは、80 個の電子頭脳に匹敵するチップを開発した。商品化は予定していないが、
その処理能力は極めて高く、たとえば、群衆の中から特定の人物を割り出すビデオ監視シ
ステムや、フットボールの試合で個々の選手のプレーに自動的に焦点を当てるといった応
用が期待できる。また、ビデオゲームの処理速度をさらに高速化し、プレーヤの分身モデ
ルをゲーム内にリアルに投影できるという。【2 月 12 日】
インテルは、従来のチップ基盤の素材だった二酸化ケイ素(酸化シリコン)と多結晶シ
リコンを、今年下半期にも開始する次世代のチップ生産から別の素材に変更する方針を打
ち出した。新素材の一つは、「ハフニウム」と呼ばれ、原子炉の制御ロッドに使われる銀
のような素材だという。また、導入するという別の素材は明らかにしていない。現在、回
路の線幅は 65 ナノメートルに達している。しかし、その後の 45 ナノメートルまで縮める
には、従来の製造方法では限界がある。インテルは新素地によってさらなるチップの高速
化を期待している。【1 月 29 日】
インテルは、サン・マイクロシステムズと提携した。これにより、サンがインテル製チ
ップをサーバ・システムに採用する。導入時期は、2007 年後半になる見込み。一方、イン
テルはその見返りとして、サンの OS「ソラリス」および Java を承認する。対立してきた
2 社は、協力してアドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD)に対抗する格好だ。また、開
発や設計、マーケティングでも協力していく。【1 月 22 日】
(7)マイクロソフト
マイクロソフトのバルマー最高経営責任者(CEO)は、2008 年の営業経費が前年を若干下
回るとの見通しを明らかにした。具体的な数字では、27 億ドルをやや下回る水準になる見
込み。
同社は 1 月 30 日、5 年ぶりの刷新となるビスタの発売を世界中で開始したばかり。ビス
タはウィンドウズ XP」に比べ、情報を盗み出すスパイウェアの排除など安全対策を大幅強
化している。さらに、動画の再生や検索の機能を拡充している。ビスタの価格は、一般利
用者向け「ホーム・プレミアム」が 239 ドル。【2 日 17 日、1 日 29 日】
マイクロソフトはスマートフォンや携帯情報端末(PDA)向け OS を刷新したウィンドウ
ズ・モバイル 6 を近々正式に発表する。同 OS では、電子メールをパソコン画面同様に閲
覧できる機能などを充実させたのが特徴となっている。同 OS を搭載した携帯電話機は今
年 4 月に出荷が始まる見通し。【2 日 9 日】
マイクロソフトが昨年立ち上げた「ウィンドウズ・ライブ・サーチ」が低迷している。
実際に検索市場のシェアで見ると、10%減少し 8.4%になっている。これに対して競合の
グーグルは、50.8%と前年から 22%増となった。アナリストの評価も厳しく、「新ブラン
ドとしての差別化がない」という酷評も出ている。【1 日 30 日】
(8)グーグル
グーグルは、ゲームに広告を挿入する技術を提供するアドスケープ(Adscape)を 2300
万ドルで買収する。同社の買収によってビデオゲームの広告という新規市場を開拓してい
きたい考えだ。ただし、アナリストらは、ゲーム広告市場が急速に変化する中、しばらく
は大口契約を望めないと見ている。【2 月 17 日】
グーグルは、かねてからユーザーの招待でのみ新規加入を受け付けていた電子メールサ
ービス「G メール」を一般向けに開放する。対象となるのは、米国のほか、カナダ、メキ
シコ、中南米、アジア圏のユーザー。サービス自体は依然として「ベータ(試験)版」とし
て提供していく。サービスは基本的に無料だが、今後、追加のストレージを有料で提供し
ていく。【2 月 14 日】
大手映画スタジオは、オンラインの海賊版映画を奨励したとし EasyDownloadCenter.com
および TheDownloadPlace.com サイト所有者 2 人を訴えているが、その中でグーグルを名
指している。これらのサイトがグーグルの広告サービスを利用する際に、グーグルの担当
者が「pirated(海賊版)」や「bootleg movie download(密売映画ダウンロード)」などの
キーワードを被告に勧めたという。また、グーグルの従業員 1 人が、この件ですでに宣誓
証言を裁判所に提出。同社はさらに疑わしい広告を排除し、承認された広告主のリストを
作成することを約束。また、海賊版コンテンツの販売サイトが使っているキーワードを販
売しないこと、キーワード監視のガイドラインを策定し、従業員をトレーニングすること
などを約束した。【2 月 13 日】
グーグルは、英携帯電話会社大手ボーダフォンと携帯電話向け地図サービスの開発で提
携した。提携により、ボーダフォンは、自社の携帯電話サービスでグーグル・マップを提
供していく。同サービスには、地図案内ほか、地域別イエローページ、検索機能などが含
まれる。【2 月 13 日】
韓国紙・東亜日報によると、グーグルが韓国市場攻略を進めている。同社は地図サービ
スやワープロソフトなどの韓国語化などで、人気のある国産ポータルに対抗していく。ま
た、研究開発センターの設置も計画しているという。【2 月 13 日】
グーグルの 10-12 月期は大幅な増益となった。オンライン広告が引き続き好調だったの
が要因。同社はこれまでのネット市場で活躍する一方、新聞向け広告配信にも進出するな
ど、広告代理店の機能も強化しつつある。【2 月 1 日】
グーグルは、初期段階のインド新興企業に特化した投資ファンド「シードファンド
(Seedfund)」に資金を提供した。これまでグーグルは、新興企業を買収する直接投資に
力を入れてきており、投資ファンドへの投資という間接投資は異例と言える。シードファ
ンドは昨年 11 月、1000 万∼1500 万ドル規模の第1回調達ラウンドを終了した模様。グー
グルはインド市場の取り込みを視野に入れて、インドでローカル・システムのための研究
開発をすでに行っている。【1 月 25 日】
主な企業の決算報告:
企業名
四半期売上高
前年同期比
四半期純益
前年同期比
シスコ
HP
グーグル
84.4億ドル
250.8億ドル
32.1億ドル
27.00%
11.00%
67.00%
19.2億ドル
15.5億ドル
10.3億ドル
40.00%
26.00%
176.91%
2. パーソナル・コンピュータ(PC)と OS
(1)ワイヤレス・スピーカー・システムの開発者は、セットトップ・ボックス(STB)を開
発するスリング・メディアが、技術特許に違反しているとしてテキサス東部連邦地方裁に
同社を訴えた。訴えによると、この開発者は、ホームオーディオの音源から無線電話ネッ
トワークを介して音声信号をスピーカーに伝送するシステムを開発し、その関連特許を保
有している。訴えによると、開発者は 2005 年 3 月、スリング・メディアに対して書簡を送
り、特許侵害があったとする意見を伝えたとしている。これに対して、同社の幹部は「ま
ったくの事実無根」としている。スリングの STB は、テレビに接続してその信号をネット
経由でパソコンに送信し、テレビ番組を再生できる。【2 月 17 日】
(2)「Arnezami」と名乗る人物が、ブルーレイと HD-DVD のコピー保護に使われている暗号
キーを発見したとの内容を、Doom9.org に投稿した。昨年 12 月には「Muslix64」と名乗る
人物が、暗号解読の詳細な情報を公開している。問題のコピー保護技術は、「アドバンス
ト・アクセス・コンテント・システム(AACS)」と呼ばれるもので、これまでに、ブルーレ
イおよび HD-DVD の保護技術として大手が採用している。
これに対して専門家は懐疑的な意見を出している。たとえば、マイクロソフトで HD-DVD
技術開発の責任者を務めるケビン・コリンズ氏は、AACS はいまだに破られたことがないと
主張している。さらに、たとえ、ハッカーが暗号の欠陥を見つけたとしても、コピー保護
を解除すれば、画像品質は低下するとの指摘もある。【2 月 15 日】
(3)セントリック CRM(Centric CRM)、エンタープライズ DB(EnterpriseDB)、ジャスパーソ
フト(JasperSoft)、スパイクソース(SpikeSource)といったオープンソース・ソフトの開発
を手がける企業が、相互運用性の確立を目指す業界団体「オープン・ソリューションズ・
アライアンス」を結成した。フルレンジのスイート製品を持たないこれらの企業で相互運
用性を確立して、大手に対抗するというのが狙い。今のところ、データベースを手がける
マイ SQL、CRM ソフトのシュガーCRM、さらに Linux 大手のノベルやレッド・ハットな
どといったオープンソース大手は参加していない。逆に、レッド・ハットとノベルは、
2006 年にマイクロソフトが発足した別の業界団体「インターオプ・ベンダー・アライアン
ス(Interop Vendor Alliance)」に加盟している。同団体には、BEA システムズや EMC など
の商用ソフト企業と、サン・マイクロシステムズなどのオープンソース提唱企業の両方が
含まれている。【2 月 14 日】
(4)ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)は、検索エンジンを開発する新興企業パワーセッ
ト(Powerset)に自然言語処理技術をライセンス供与する。この技術を使うと、ユーザーが
キーワードの代わりに簡単な英語表現で検索できるシステムを確立できるという。 同社は
昨秋、ベンチャー・キャピタルや個人投資家から 1250 万ドルを調達した。PARC の自然言語
処理技術は、専門家も高く評価しており、今後グーグルの脅威になるとの見方もある。今
回のライセンス供与に伴い、PARC における自然言語の筆頭研究者ロナルド・カプラン氏が
最高技術・科学責任者として同社に加わる。また、PARC はパワーセットの株とライセンス
料のほか、一部研究者への資金援助を受ける。【2 月 10 日】
3.インターネットとメディア・ビジネス
(1)音楽専門テレビ局「MTV」を保有するメディア大手バイアコムは、ネットテレビ
のヨースト(Joost)とコンテンツのライセンス契約を結んだ。提携により、バイアコムが保
有する数百時間分の映像コンテンツを提供していく。同社のフィリッペ・ダウマン最高経
営責任者(CEO)によると、提携の決め手となったのは、ヨーストによる著作権保護の確約。
これに対して、ユーチューブの親会社、グーグルとは相容れず、交渉が流れている。
ヨーストは昨年、ベニス・プロジェクトの名で、ファイル共有ネットワークのカザーや
IP 電話大手スカイプの共同創業者によって設立された。サービスは現在、試験段階だが、6
月 30 日までには正式にサービス開始する見込みだ。【2 月 20 日】
(2)米衛星ラジオ放送会社 XM サテライト・ラジオとシリウス・サテライト・ラジオが対等
合併することで合意に達した。これまで顧客争奪戦を繰り広げてきたが、両社が合併する
ことによって衛星ラジオ放送業界を一手に担うことになる。合併後、加入者数は 1400 万人
に達する。一方、反トラスト法(独占禁止法)に抵触するとの懸念事項も残されたままだ。
新会社の最高経営責任者(CEO)には、シリウスのカーマジン CEO が、また会長には XM のパ
ーソンズ会長がそれぞれ就任する。【2 月 20 日】
(3)新興企業のマイパンチボール(MyPunchbowl)は、ウェブ 2.0 技術を取り込んだオンライ
ンのイベント計画サービスを発表した。同社のサービサイト
(http://www.MyPunchbowl.com/ )は、ウェブ 2.0 技術の1つでユーザー・インターフェー
スを構築する「Ajax」を採用。ユーザーのリクエストに対して素早くコンテンツを表示で
きるのが特徴。同分野では、IAC インタラクティブ傘下のイーバイト(Evite)があるが、同
サービスはウェブ 2.0 を武器に対抗していく。サイトは、ローカル店のレビュー検索から
写真のアップロード、招待状送付など、イベントやパーティの計画に必要な準備を行うた
めの機能を提供する。将来はイベント参加者のためのソーシャル・ネットワーキング的要
素も盛り込んでいく計画だ。収入源は、広告とパーティ用品会社との提携という。【2 月
16 日】
(4)ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)大手マイスペース(MySpace.com)は、著作権
違反ビデオの公開を防ぐために、オーディブル・マジック(Audible Magic)の技術ライセン
スを取得した。同技術は、認証に必要となる「デジタル署名ベクトル」をビデオクリップ
から読み取って、データベースに保存されているものと比較する。もし、双方の署名が合
致した場合は、アップロードされた動画をサイトで公開できないようブロックする仕組み。
たとえば、新技術は、一般公開が許可されていないユニバーサル・ミュージック・グルー
プの音楽を含んだビデオのアップロードをブロックしていく。ただし、ユニバーサルや所
属アーチストが自ら提供するプロモーション用のビデオなどは対象外となる。【2 月 12
日】
(5)ケーブルテレビ(CATV)最大手コムキャストと、ソーシャル・ネットワーキング・サービ
ス(SNS)フェースブックは、素人が製作した動画をテレビで配信するサービスを提供してい
く。提携により、フェースブックのユーザーが製作した動画の中で、コンテストを勝ち抜
いた作品が、コムキャストによってビデオ・オン・デマンド(VOD)配信される。これによっ
て、ビデオがテレビネットワークで放映される機会を提供していく。
さらに、フェースブックのユーザーが製作した動画で構成されるテレビ番組「フェース
ブック・ダイアリーズ」を制作する。両社は、双方のサイトによる動画配信に伴う広告収
入に期待しているほか、VOD 作品の他の CATV 事業者への販売も見込んでいる。【2 月 9
日】
4.電子商取引
(1)音楽会社 EMI グループは、音楽カタログすべてを、コピー防止機能を搭載しない MP3 フ
ォーマットで販売する可能性について検討している。同社は現在、オンライン楽曲販売サ
ービス数社と同件について協議を進めているという。オンライン楽曲販売では、「デジタ
ル著作権管理(DRM)」と呼ばれるコピー防止技術が掲載されることになっている。しかし、
DRM 技術は、楽曲販売サービスによって方式が異なるため、互換性がなく、再生できる機器
が限られている場合がある。音楽会社が DRM 搭載の義務を解除することによって、こうし
た制約がなくなり、市場が開放されるとの指摘もある。これに対して、音楽会社は、デジ
タル楽曲の違法コピーの温床になることを懸念している。
一方、米音楽大手ワーナー・ミュージック・グループのブロンフマン最高経営責任者
(CEO)は、DRM を引き続き搭載する意向を改めて示した。【2 月 9 日】
(2)オンライン百貨店大手 Amazon.com とデジタルビデオ録画(DVD)サービス大手ティーボ
は、映画やテレビ番組のダウンロード・サービスを提供していくことで合意に達した。提
携に基づき、両社はティーボの一部利用者向けに新サービス「アマゾン・アンボッ
クス・オン・ティーボ(Amazon Unbox on TiVo)」の試験提供を開始した。ユーザーは、ネ
ット接続に対応したティーボ端末にコンテンツを直接配信し、テレビで簡単に視聴できる。
本格提供は今年末を予定し、ネット接続機能付きティーボを購入した 150 万世帯が対象と
なる。また、コンテンツ供給では、ワーナー・ブラザーズ、パラマウント・ピクチャーズ
など大手映画会社 4 社、およびネットワーク局の CBS、フォックスと契約している。【2 月
7 日】
(3)マイスペース(MySpace.com)は、e ベイとの間で「ピア・コマース」関係を結ぶべく、
数カ月に渡り協議していることが明らかになった。提携により、マイスペースの会員が、e
ベイの e コマース技術と傘下の決済システムであるペイパルを利用できる。さらに、プロ
フィールに売りたい商品を掲示し、会員間で互いに売買できるしくみを確立する。
一方、マイスペースは、グーグルと広告契約を交わして最終署名する段階だが、今回の
協議が表面化したことで修正が加わる可能性が出てきた。【2 月 7 日】
(4)動画配信サービスのビジネス・モデルに変化が現れている。動画配信大手ユーチューブ
がコンテンツ提供者に料金を支払うことを発表したことが引き金となりそうだ。
動画コンテンツの投稿が急増しているが、多くのサイトはこれらのコンテンツを掲載する
だけだった。しかし、一部のサイトは以前から投稿者へ報酬を出しており、今回、ユーチ
ューブが同様のビジネス・モデルを採用したことから、業界のトレンドとなる可能性があ
る。現在、Break.com は月に約 100 件の投稿コンテンツに計 400∼2000 ドルを支払っている
ほか、Spymac.com も 1 日計 3000∼5000 ドルを支払っている。また、Revver.com は、ビデ
オの最後に掲載する広告の売り上げを共有しており、視聴者が広告をクリックすると投稿
者に売り上げが発生する。【2 月 7 日】
(5)小売世界最大手ウォルマートは、映画とテレビ番組のダウンロード販売を開始した。新
規サービスには、すべての大手映画会社が協力しており、同社のライブラリには、すでに
約 3000 タイトルの映画およびテレビ番組が含まれている。今後は、DVD 販売市場に大きな
変化をもたらす可能性もある。サービスでは、新規リリース作品が DVD 発売と同日にダウ
ンロードできる。新作は最高 19 ドル 88 セント、古い作品は最高 9 ドル 88 セント。
一方、テレビ番組は、放送日翌日にダウンロードでき、1 本につき 1 ドル 96 セントとな
る。コンテンツを提供するテレビ局には、フォックス、CW、MTV、ニケロデオン、コメデ
ィ・セントラル、ロゴ、VH1 などが含まれている。【2 月 6 日】
5.半導体
(1)メモリカード大手サンディスクは、従業員削減や、取締役報酬削減といったリストラに
踏み切る方針を明らかにした。世界中で約 250 人の雇用を削減するとともに、役員報酬を
10∼20%減らし、全従業員の昇給を凍結する。最近のメモリチップ価格急落が要因で、市場
シェアを維持するためには、多くの製品で 30∼40%の値下げを迫られることになるという。
サンディスクによると、NAND 型フラッシュメモリ価格は、供給過剰や季節的な需要鈍化を
受け、ここ 2 カ月間で約 50%も下落している。 【2 月 20 日】
(2)カリフォルニア大学バークレー校の工学研究陣は、現行よりも 20 倍薄く、広範囲にお
よぶ光の波長に対応した反射鏡を開発した。高精細(HD)DVD やパソコン用光学マウス、レー
ザー・プリンタから発光ダイオード(LED)表示、通信機器まで、幅広い応用が期待される。
組み込むスペースも従来に比べて小さくすみ、製造も容易だという。【2 月 17 日】
(3)AT&T 傘下の携帯電話会社シンギュラー・ワイヤレスは、携帯電話用無線技術を開発す
るクアルコムと提携した。シンギュラーが計画する携帯電話向けテレビ番組視聴サービス
にクアルコムのモバイルテレビ技術「メディアフロ(MediaFlo)」を採用する。同技術は競
合ベライゾン・ワイヤレスも導入を決めている。
同社はメディアフロのネットワーク構築に 8 億ドルを投資し、今年中旬までにサービス範
囲を米国主要都市の加入者、1 億人に拡大する計画を打ち出している。さらに、世界展開を
加速するため、DVB-H ネットワークに対応した「ユニバーサル半導体」も開発している【2
月 14 日】
(4)レーザー技術開発のノバラックス(Novalux)が開発した技術を採用した背面投射型(リ
ア・プロジェクション)テレビが年内に 2 ブランドとして発売される予定。プラズマテレビ
と液晶(LCD)テレビが主力の高品位平面テレビ市場に新たな競争が生み出される。同社によ
ると、2008 年にはブランド数が増え、製品の大量生産が始まるという。最初のモデルは
HDTV 標準規格に準拠し、50 インチまたはそれ以上の大型製品となる。レーザーテレビは既
存の大型テレビに比べて輝度や色再現に優れ、消費電力も小さいのが特徴。コストも競合
技術並みになる見通し。さらに、LCD テレビとプラズマテレビは、人の目で捕らえるカラ
ー・コンテンツの約 40%を表示するが、レーザーテレビではこれを約 90%に向上できるとい
う。レーザーを採用すると大型になってしまうという難点があったが、これに対しノバラ
ックスは「ネクセル(Necsel、Novalux extended-cavity surface-emitting laser)」と呼
ばれる独自技術を開発し、主要部品をマッチ箱よりも小さなパッケージに格納することに
成功した。【2 月 14 日】
(5)連邦取引委員会(FTC)は、メモリチップを製造するラムバス(Rambus)に対し、同社が保
有する DRAM 技術の特許権使用料に上限を加える判断を下した。FTC は 2002 年 6 月、同社が
JEDEC の DRAM 標準決定会議に 4 年以上に渡り参加しながら、自社の技術情報を隠し、有利
な標準が採用されるよう誘導したとして訴えていた。当局の訴えは 04 年 2 月に棄却された
ものの、昨年 7 月に改めて他社へのラインセンス供与を要請していた。これに対して、ラ
ムバスはこの判断を不服として控訴する予定。【2 月 7 日】
(6)カリフォルニア工科大学(カルテック)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
の研究者らは、同回路は1平方センチ当たり 1000 億ビットと、既存の記録回路に比べ約
100 倍も密度が高いメモリ回路を開発した。同回路の容量は 16 万ビットで、400 のシリコ
ン・ワイヤーと 400 のチタン・ワイヤーが格子状に並び、間に分子スイッチの層がある。
同回路の大量生産までにあと最低 10 年はかかる見通しだが、回路のさらなる小型化が可能
になると期待されている。【1 月 30 日】
6.その他
(1)ベライゾンが昨年 6 月、IP 電話大手ボナージュを訴えた特許侵害訴訟が始まった。同
訴訟の行方は、新興 IP 電話業界とその利用者に大きな影響を与える可能性がある。仮に、
ベライゾンが勝訴すれば、ボナージュは特許に抵触しないよう、サービスの見直しを迫ら
れる。また、一時的に事業閉鎖に追い込まれることになる。ベライゾンが主張する特許は、
詐欺検出、課金、通話転送といった「ゲートウェイ・インターフェース」と呼ばれる機能
を網羅し、計 48 件におよぶ。これらの技術は、IP 電話会社が従来の電話に近いサービスの
質を確保するために欠かせない。 ベライゾンはすでに裁判所から広範な解釈が認められる
との判断を勝ち取った。【2 月 20 日】
(2)世界のコンピュータ・トラフィックを管理する 13 のルートサーバのうち、少なくとも
3 基がハッカーによる攻撃を受けたことが 2 月 6 日に確認された。攻撃は最大 12 時間にわ
たって続いたが、ほとんどのネット・ユーザーには気づかれないまま終わった。しかし、
世界各地のコンピュータ専門家は、ネットの根幹とも言えるパイプラインを脅かしたトラ
フィック急増への対処に追われることとなった。米国土安全保障省は、攻撃があったこと
を認めたが、攻撃の目的は明らかになっていない。ある専門家によると、ハッカーは攻撃
の発信元を隠す技術を用いたと見られるが、データの大半が韓国経由だったという。【2 月
7 日】
(3)金融機関の間でネットの二次的セキュリティ対策として普及した技術「サイト認証イメ
ージ(site-authentication image)」のセキュリティ効果がほとんど期待できないようだ。
ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の共同研究班がまとめた。
パスマーク・セキュリティ(PassMark Security)が開発したサイト認証イメージは、顧客
に「犬」といったイメージをあらかじめ選ばせておき、パスワード入力画面に進む前にそ
のイメージを表示し、顧客にサイトの信憑性を確認させる仕組み。イメージが表示されな
いサイトは偽サイトと判断されるため、顧客の無用心なパスワード入力を防止できるとい
うのが狙い。バンク・オブ・アメリカ、バンガードといった金融機関がセキュリティ対策
の一環として採用している。
しかし、今回、バンク・オブ・アメリカの顧客を対象にした調査では、大半がイメージを
確認できないままパスワードを入力していたという。
これに対しバンク・オブ・アメリカはサイトキーの効果を強調し、「サイトキーは広範な
セキュリティ対策の一部に過ぎない」と説明している。【2 月 5 日】
(4)大学の教科管理ソフトを開発するブラックボードは、オープンソースの競合他社に対し、
同社が保有する特許および係属特許を行使しない誓約を表明した。この誓約は、大学が学
内で開発した教科管理ソフトなどにも適用される。
ブラックボードは 2006 年、「ネットを利用した教育支援システムおよび手法」の特許を
取得した。同特許には、成績や資料、試験などオンライン情報源へのアクセス権を、学生
や教師など利用者の属性に応じて変更・付与する内容が含まれている。これに対して、各
団体から支援を求められたソフトウェア自由法律センター(SFLC)が同年 11 月、特許商標庁
に再審査を要請。同庁では、ブラックボードが保有する全 44 件の特許を再審査する事で合
意に達していた。【2 月 2 日】