巻頭特集 エネルギーをより大切に使う時代 に つくって、その場で使う 83 イラストぎじゅつ入門−◯ マイクロメートル 100万分の1m(μm)単位の 超微小な粉体製造システムの粉砕機、 「新型ジェットミル」のしくみ 現場を訪ねて よりよい映像を、より早く、確実に FBS福岡放送で活躍する 「川崎式BK117 C−2型」報道ヘリコプター 6 川に見る・日本の四季◯ 木曾川水系の「夏」を追う はし 中天の陽の下を奔る、 白い渓流。 新製品・新技術 旋盤など既設の工作機械の消費電力を節約し、 CO2を削減する 「カワサキ省エネインバータシステム(KISS)」を開発 ●表紙説明● 爽やかなブルーカラーの構体に設けられた、何やら複 もう、 雑な構造の部材。そこから突き出た櫂のようなもの− お分かりですね。ヘリコプターのメインロータ (主回転翼) ハブです。福岡空港で撮影しました。 川崎重工が海外メーカーと共同開発し、 国産で製造し ている中型双発機「川崎式BK117ヘリコプター」の最新 モデル「C−2型」が2年ほど前、 FBS福岡放送の報道ヘ リに導入されて活躍しており、 出動回数は年間80回にも 及んでいます。振動が少ない、広いキャビンスペースを自 由にレイアウトできる、 航続距離が長いなどに加え、 操縦性 に優れているなどの特長が報道の現場で高く評価されて います。 (詳しくは「現場を訪ねて」 をご覧ください) 発 行……2011年7月 編 集 発行人……川崎重工業株式会社 広報部 広報部長 西野 光生 東京都港区浜松町2ー4ー1 世界貿易センタービル TEL 03-3435-2133 http://www.khi.co.jp 1 こ の 身 近 な エ ネ ル ギ ー を − ●水力 ●排熱 ●風力 ●太陽エネルギー これまでの水力発電のイメージは、ダムに 大量に貯えた水を利用して発電する大がかり 日本全国の工場やごみ焼却場、下水処理場、 発電所などで発生する排熱量は膨大である。 国の試算では、条件設定にもよるがわが国 の風力発電の可能性は約250万kW〜約500 地球に降り注ぐ太陽のエネルギーは、 1時間 で全世界が1年間に使用するエネルギー量に なもので、ベーシックな電力供給の一部を担っ ている。しかし、 近年は、 これまで活用されなかっ このうち、 120℃以上の排熱は利用されてきた が、温度が80℃〜120℃の低温水や排ガスな 万kWにのぼるとされている(総合エネルギー 調査会)。風力も、風まかせという不安定さが 相当するとされている。しかも、 クリーンで無 2 限だ。しかし、 1m 当たり平均約1kWと密度が た浄水場、工場排水、小川や農業用水路など 多岐に渡る小さな水の流れを利用する発電が 注目されている。 わが国では農業用水路や水道用水路が発達 しており、 また、 これまで建設された多くのダム どのいわゆる低温排熱は、今までほとんど利 用されずに捨てられていた。 これらの低温排熱から、沸点の低い媒体を あるが、太陽エネルギーと違って夜間も発電 できる強みがある。 低く、 日射量が季節や天候によって大きく左右 され、夜間はまったく利用できないのが難点 である。 で河川維持のためなどに放流が行なわれてい る。こうした水の流れの活用が始まっている。 えられている。 利用して蒸気をつくり、 タービン発電機を回し て電力を生み出す省エネルギーシステムが考 風力発電といえば、プロペラ型のイメージ が強いが、 中小型分野では装置がコンパクトで、 どの方向の風でも変わらずに発電できるなど の特長から、ローターの軸が垂直の縦軸型風 力発電装置も用いられている。 太陽エネルギーの利用といえば、一般的に は太陽電池による太陽光発電がイメージされる。 しかし、エネルギーの変換効率では太陽熱利 用のほうが太陽光発電に比べて約2倍も高い とされていることなどから、太陽熱の利用もさ まざまに考えられている。住宅の屋根の集熱 器で温水をつくるものから大型の発電プラン トまで、活用の規模もさまざまである。近年、 大型商用プラントが、 スペイン、 アメリカなどで 運転を始め、黎明期から普及期に移行しつつ ある。 2 Kawasaki News 163 2011/7 3 −こ う 小 ● 活 用 す る 熱 ●太陽 複合サイクル 発電設備(ISCC) 水力発電装置 川崎重工が2009年に開発した「小 水力発電装置(リング水車)」は、水が 流れる配管の途中にすっぽりと収めて 設置するインライン型と呼ばれるタイプだ。 水車と発電機が一体構造になっている のが最大の特徴で、 サイズは従来のイン ライン型の半分以下。そのため、 これま では導入が難しかった既設の狭い配管 スペースにも容易に設置でき、 日常メンテ ナンスは不要である。 実証試験は、 兵庫県内の多目的ダム の放水管に設けたバイパス配管に出力 40kWタイプを設置して行ない、 好成績 を収めた。実機第1号は徳島県内の正 木ダムで、 出力75kWタイプが設置工事 中である。 また、浄水場向け、発電所向 けなどで商談中である。 利用できる。 (なお、 バイナリー とは、 水 と低沸点媒体の2種類の媒体を利用す るということ。) 縦 低 4 Kawasaki News 163 2011/7 して売電が可能など多くの特長があり、 ビルや工場などの屋上設置に適している。 定格最大出力5kW、 10kW、 20kWの 3タイプ。 2009年、 寒冷地仕様の20kWタイプ を国立極地研究所に納入し、現在、南 極と気象条件が似ている秋田県仁賀 保高原で運用試験を実施中。 2011年 冬に南極・昭和基地に設置予定の寒冷 地仕様の20kWタイプ縦型風力発電装 置も受注した。 川重冷熱工業(株) 工場やビル、大型店舗などの冷暖房 に欠かせない吸収冷温水機。その冷房 時に必要な冷水は従来、 ガスを燃やし てつくっていたが、 これに太陽熱を利用 するソーラー吸収冷温水機を中心とし たシステムである。 住宅の屋根に設置する家庭用太陽 熱温水器と原理が同じ集熱器(集熱効 率が高い真空管式) を工場の屋上など に設置し、発生した温水を吸収冷温水 機に供給する。従来は83℃以上の温 水しか利用できなかったが、吸収冷温 水機を75℃まで使用可能に改良したの で太陽熱をより有効に活用できる。 川重冷熱工業・滋賀工場に2010年 12月に設置した「ソーラークーリングシス テム」は、有効集熱面積が約213m2の 太陽熱集熱設備に加え、集熱設備用 補機と吸収冷温水機用の動力源に最 大出力6. 6kWの太陽光発電パネルも 設置した。試算では。従来より約14%の 省エネルギーを図ることができ、年間約 18 tのCO2を削減できる見込みだ。 すでに、 このシステム用に開発した「ソー ラー吸収冷温水機」が大型店舗などに 5基納入されている。 ● 軸型風力発電装置 「NWT Aシリーズ」 ● 温排熱利用 グリーンバイナリータービン 川崎重工が2010年に開発した「グリー ンバイナリータービン」は、 沸点が40℃弱 の新しい低沸点媒体を低温排熱と熱 交換させて蒸気を発生させ、 その蒸気 でタービンを回して発電する。低温排熱 を利用して工場などの電力需要の一部 を賄えるわけで一石二鳥といえる。 この新しい低沸点媒体は、 オゾンを破 壊せず、 地球温暖化係数が非常に小さ いので地球にやさしい。 40℃弱で沸騰 するので低温排熱が持つ熱を最大限 現在、川崎重工・神戸工場の「神戸 パワーセンター」に設置した最大出力 250kWタイプ(約100℃の低温排水が 1時間当たり180 tあれば、 250kWの発 電が可能)が運転中。 24時間連続運 転の場合なら、 250kWの発電で年間 約700 tのCO2削減が図れることになる。 川崎重工が多くの納入実績を持つコ ンバインドサイクル発電設備(CCPP:ガ スタービン発電設備で発電し、 その排ガ スに含まれる排熱を利用して発生させ た蒸気で蒸気タービンを回して発電する、 二段構えの発電システム) と太陽熱集 熱設備を組み合わせたハイブリッドシス テム (ISCC)。 太陽熱集熱設備(独・ソーラーミレニ アム社と提携) は、 放物線状に湾曲した 鏡で太陽熱を集め、焦点に設置した真 空チューブ内のオイルを熱する仕組み。 約400℃に熱したオイルを熱交換して発 生させた蒸気を、 CCPPの川崎重工独 自設計の特殊排熱回収ボイラ (HRSG) に合流させ、 蒸気タービンの出力を増加 させるもの。 これにより昼間のピーク需要 をカバーできる。一方、 太陽熱発電単体 では、 昼間の余剰熱を蓄熱できたとして も日没後最大6時間程度しか利用でき ないが、 この複合システムはその弱点を 補完し、夜間はCCPPの単独運転によ り発電し夜間の電力需要に自在に対応 する。 ISCCは今後、直達日照強度の強い 中東、 北アフリカ地域での需要が期待さ れている。現在、 クウェートでこのシステ ムによる出力約28万kWの発電設備の 建設が予定されている。 ●ソーラークーリングシステム (ソーラー吸収冷温水機) 日本飛行機(株) 「神戸パワーセンター」の設置例 空気力学や電気工学、 制御技術など 幅広い技術を有する川崎重工グループ の日本飛行機が開発した小型風力発 電設備「縦軸型風力発電装置」は、 ど の方向からの風でも高効率で発電でき、 プロペラ型に比べて翼端速度が低いの で騒音が少ない。動く部分が中央の回 転軸だけで、 また、 発電機などの機器装 置が地面に近い位置にあるのでメンテ ナンスが容易である。交流発電で、 周波 数を調整する電力変換器を内蔵してい るので電力会社の系統にムダなく連系 「川重冷熱・滋賀工場」の設置例 太陽熱集熱設備 Copyright© Solar Millennium AG 5 イラストぎじゅつ入門― 83 ●集塵機 排気 捕集器で集め切 れなかった微粉を 回収する。 マイクロメートル ●サイクロン (捕集器) ●ブロワ 粉体を吸引空送する。 排気は大気中に放出さ れるが、粉体はサイクロ ン(捕集器)および集塵 機で全量を回収するの で外部に出ることはない。 ※: 1μm (マイクロメートルは100万分の1m= 0. 001mm)は長さの国際単位。ミクロンと も表現されることがあるが、 ミクロンは国際 単位系に含まれていない。 微粉 JEDI(ジェディ)EJM20型 樹脂 高圧空気の噴流の中で 原料を衝突させて粉砕 顔料 副原料 (原料としてリサイクル) 副原料 ●微粉分級機 超微小な粉体の身近な例に、オフィスや家庭 で使われているコピー機やレーザープリンタ のトナー(粉末状のインク)がある。一般的にト ナーのひと粒は5μm前後である。 トナーの原料は、 樹脂に顔料を混ぜたものだ。 撹拌→溶融→延伸→冷却という前工程でフレー ク状にし荒粉砕する。これをさらに小さく粉砕 するのが粉砕機である。 川崎重工グループの(株)アーステクニカ(千 葉県八千代市)が開発した最新の気流式粉砕 機「新型ジェットミル」は、装置下部の3方向か ら約7気圧の圧縮空気を噴出させ、その噴流の 中で原料同士を衝突させることで粉砕する、 シ ンプルな構造ながら極めて精緻な仕組みになっ ている。 ●サイクロン (捕集器) 粉体を捕集する。 粉砕品中に含まれる 微粉(所定の製品サ イズより小さな粉体) を除去する。除去した 微粉は、原料として再 利用する場合もある。 ●サイクロン (捕集器) ●原料計量装置 ●外添剤計量装置 粉砕・分級後のトナーに 外添剤(シリカなど) を配 合・混合する。外添剤を 混ぜることで流動性が向 上し、 扱いが容易になる。 原料を決められた量で配合し、 混合する。 外添剤 粒子の一個一個を丸くする工程には 表面処理装置 粉砕してふるい分けたトナーの粒子は、形状 がゴツゴツしていて印字の輪郭が不鮮明にな りかねない。そこで近年はトナーの性能を上げ、 印刷の仕上がりをより鮮明にするため、粒子の 一個一個を丸くする工程が設けられている。こ れには同社の「クリプトロンオーブ」 (連続式表 面処理装置)が最適である(イラスト参照)。 このようなトナー製造システムのほか、 「新 型ジェットミル」は、同社の金属粉砕システム (電池材料やカーボンなど)、食品粉砕システ ム(茶葉や米など)などさまざまな粉砕システ ムに活用されている。 今回は、適用例の多いトナー製造システムを イラストで表現した。 製品の流れ 排気の流れ 製品より分離した微粉の流れ Kawasaki News 163 2011/7 ●混合機 ●空気輸送装置 ●定量供給機 ●混合機 ●定量供給機 ●前粉砕機 フレーク状の原料を 20μm〜30μm程度 まで荒粉砕する。 一般的に次工程 は高所に配置され るケースが多いた め、空気輸送装置 で粉砕・分級済み の粉体を高所に搬 送する。 製品 処理品 ●混練機 6 ダスト 計量されたトナーの各種 原料を溶融して練り混ぜ、 溶けたチョコレート状の混 練品にする。 エア+粉砕品 原料 原料 ●冷却機 混練品を冷却 しながらフレー ク状にする。 ●クリプトロンオーブ(連続式表面処理装置) ■気流式粉砕機「新型ジェットミル」 ●粉砕メカニズムと特長 ●分級ロータ 粉砕品は気流に乗って装置内を 上昇し、上部の分級(粒子の大 小を選別すること)ロータでふる いにかけられる。粉砕品は、回転 する分級ロータの遠心力により、 製品(この場合、 トナーとなる超 微小な粉体) と重量の重い粗粉 に分けられ、製品はロータ内部に 取り込まれて製品出口に向かい、 粗粉は装置内下部の粉砕部に 戻ってもう一度粉砕される。分級 ロータの回転数を変えられるので、 分級レベルを自由に設定できる。 エア 装置下部に設けた3本のジェットノズルから約7気 圧の圧縮空気を噴出させ、 その噴流の中で原料 同士を激しく衝突、接触させて粉砕する。 粉砕性能が高く、極めて細かく粉砕できるのが大 きな特長で、 1μm〜15μmまでの粉砕品を製造 できる。原料同士を衝突させて粉砕するので、電 子部品用原料やセラミックなど装置を摩耗させる 可能性のある硬い原料の粉砕でも安心だ。装置 自体もメッキあるいはセラミック仕様が可能など、 十分な耐摩耗対策を立てている。 原料同士の衝突のため粉砕時の温度上昇が少 ないので、 トナーや粉体塗料など溶融する温度が 低い樹脂系原料、温度上昇を避けたい食品原 料の粉砕が可能である。 トナーのように粒子の表面を丸くす る工程に用いられる装置。特殊な 溝形状を持ったロータを回転させ、 粉体製品の粒径を変えずに表面を 丸く滑らかにする。 24時間連続運転が可能な機械式 連続処理装置は「クリプトロンオーブ」 のみである。 〈処理前〉 〈処理後〉 ●粉砕工程には「クリプトロン」シリーズも用意 (株)アーステクニカでは、粉砕工程に機械式 粉砕機「クリプトロン」シリーズも用意している。 特殊な溝形状を持つロータの高速回転と、 ロー タと同じような溝形状を持つステータとの狭い 空間で発生する無数の渦流によって原料同士 が激しい衝突、接触を繰り返すことで粉砕する。 処理品 表面処理用ステータ 表面処理用ロータ 原料 7 現 場 を 訪 ね て 8 Kawasaki News 163 2011/7 9 現 場 を 訪 ね て 雲仙・普賢岳上空 (サブ)、 さらに主調整 で取材中の報道ヘリの機内(写真提供/FBS福岡放送)。報道ヘリからの映像データは基地局(電波塔) を経て のリモートセンターで受信し、 の副調整室 室(マスター) での調整を経て放送される。 はこの日、 長崎国際テレビが放送した「島原 祈りの日 スペシャル」の一場面。 低振動・広いキャビンスペース・ 長い航続距離 夕日に染まる雲仙・普賢岳 の上空に達した報道ヘリ。 左手が飛行方向。通常、 ヘリは右旋回でフライトす るため、 カメラマンなど取材 クルーは機体の右側に座り、 カメラマンは右側の窓から 被写体(現場) を目視で確 認しながら、機外右側に設 置されたカメラをリモートコ ントロールする。 (写真提供/FBS福岡放送) 低振動、広いキャビンスペースとレイアウトの自在性、 長い航続距離などが報道ヘリコプターとして最適と好評 雲仙・普賢岳の上空を目指して 「川崎式BK117ヘリコプター」の 福岡空港を離陸 6月3日、 午後4時半過ぎ。 一機のヘリコプターが福岡空港から 飛び立った。ブルーを基調とした爽やか なカラーデザインのボディにはNNN、 尾翼にはFBSと書かれている。NNN (Ni ppon News Ne two rk) は、 日本 テレビをキー局とする日本の民放テレビ のニュースネッ トワークで、 FBS (福岡放送、 以下FBS福岡放送、 福岡市中央区) は その基幹局のひとつである。 この日は、 長崎県の雲仙・普賢岳で大 火砕流が発生してから20年経った節目 の日。そこで、 普賢岳の現状を上空から 撮影して実況で視聴者に届けようという のである。 FBS福岡放送報道局のチーフ・カメラ マン、神崎慎治さんは、 「長崎市内の場 外ヘリポートで長崎国際テレビの女性ア ナウンサーとカメラマンを乗せ、 普賢岳に 向かいます」 と言って同機に乗り込んだ。 最新モデル 「川崎式BK117 C−2型ヘリコプター」 (以下「C−2型」) が、 報道ヘリコプター (以 下報道ヘリ) としてFBS福岡放送向け に納入されたのは2009年のこと。 「C− 2型」がテレビ局向けに報道ヘリとして 納入されたのはこれが初めてだった。 「C−2型」は、川崎重工が欧州の MBB社(メッサーシュミット・ベルコウ・ブ メインロータを回転させて待つ報道 ヘリに、 FBS福岡放送チーフ・カメ ラマンの神崎慎治さんが乗り込む。 10 Kawasaki News 163 2011/7 ロウム社、 現ECD社:ユーロコプタードイ ツ社) と共同開発して製造している、 日 本で唯一の国産中型双発機「川崎式 BK117ヘリコプター」の最新モデルだ。 コンパクトな機体で安全性・操縦性に優れ、 機体後部に設けられた大型の観音開き ドアなど従来型の特長を受け継ぎながら、 キャビンスペースの約30%拡大(キャビ ン床面積: 5. 10m2)、航続距離の約30 %向上(航続距離: 685km)、 騒音の低 減などが図られている。 カメラマンの立場から報道ヘリの選 定に関わった神崎慎治さんは、 「ヘリ情報をあれこれ集めて検討しま したが、納入時期なども含めてこちらの 要求に合うものがありませんでした。そん な時、機体運航を委託することになって いる西日本空輸で、 ドクターヘリとして運 航されている『BK117』に注目したので す。ただ、 報道ヘリとしては初めてになる ということでしたので、 川崎重工・岐阜工 場でさまざまなテストフライトを行ない、 検 討を重ねました」 「C−2型」が採用された主なキメ手 は以下のようだ。 まず、 振動が少ないこと。機体外部に 設置されるカメラは防振型だが、 振動が 少ないに越したことはない。この点はテ ストフライトで試験を繰り返し、 あらゆる飛 行条件で極めて良好な画像が得られた。 次にキャビンの広さ。機内には大きな 放送機器が設置される。ハイビジョン放 送用機器は従来型より大型で、重量も 重く400kgを越える。そのため、 機器ラッ クを機内前方と後方に分けて設置した。 広くフラットなキャビンで、 自由なレイアウト が可能なのだ。座席は3席。 「それでも 機内にはまだ余裕があります。通常、撮 影で乗るのは一人。機外のカメラをリモー トコントロールしての撮影からマイクロ波 による映像伝送、 局からの無線対応など すべて一人でこなします。そんな状況で すから、左右も上下も機内スペースにゆ とりがあると精神的にもゆとりが生じ、 ミス 防止にも役立ちます」 (神崎慎治さん) 福岡空港から鹿児島上空までのフラ イト時間は約1時間。仮に最大航続時 間が2時間程度のヘリコプターでは、鹿 児島上空で撮影したら給油なしでは福 岡空港に戻れない。その点、 「C−2型」 の最大航続時間は約3時間半だが、 こ の報道ヘリは重量のある放送用機器を 搭載しているので約3時間となっている。 「この報道ヘリは、 NNN九州系列局 との共同運航なので、 九州沖縄エリアを カバーしなければなりません。仮に4人乗っ ても約3時間フライトできるのは大きなメリッ トです」 (神崎慎治さん) ちなみに昨年11月、神崎さんはこの 報道ヘリで沖縄・石垣島を飛び立ち、 尖 閣諸島・魚釣島付近の上空からレポート したという。航続距離の長さが活かされ た一例といえよう。 「操縦反応の速さが 報道ヘリとして最適」と機長 報道ヘリは事件や事故、災害などの 発生に備えて1日24時間、 1年365日、 い つでも万全な状態でスタンバイしていな ければならない。この報道ヘリの管理・ 整備・運航を担当している西日本空輸 (株) (福岡市博多区) の関係者に伺った。 しんぽう まず、 整備部課長補佐の神宝恒夫さん。 「安全第一に毎朝と飛行後、 目視点 検を中心に1時間ほどかけて点検して おり、 さらに年1回、 1か月ほどかけて行な う年次点検があります。導入以来、 トラブ ルはありません」 パイロットの感想は、運航部の浦西 のぶよし 伸美機長。 「操縦反応が速い、つまり操縦性に 優れています。取材・撮影者の意図を 瞬時に反映して操縦しなければならな い報道ヘリでは、操縦反応のよさは重 要な要素です。騒音、 振動の少なさも大 きな特徴。事故などの取材では、 カメラ マンとレポーター、 ディレクターの3人が乗 りますが、 可載重量が大きいので余裕で 飛べます」 この報道ヘリは年間80回ほど、各地 に飛んでさまざまな取材・撮影を行なっ ている。 なお、 西日本空輸(株) では、 報道ヘリ やドクターヘリ向けに数機の「C−2型」 を導入予定という。 ● 雲仙・普賢岳上空からの映像はその日、 長崎国際テレビで夕方放送されている 「news eve ry. 」の「島原 祈りの日 スペシャル」で視聴者に届けられた。 (左)大型で重量のあるハイビジョン放 送用機器は、 半分に分けてキャビ ン前方と後方に設置された。写 真は前方の機器で、本番に備え てカメラマンが調整中である。 (右) 機外に設置されたカメラ (左手前) とアンテナ。アンテナは後部機外 にも設置されている。 11 な ぎ そ に入る。 (上)本流の木曾川沿いに南木曽町(長野県) お目当ては、木曽路の渓谷で一、二を争う美しさと いわれる柿其渓谷だ。支流の柿其川が花崗岩の 山地を侵食してできた渓谷で、 澄んだ水に心を洗わ れる。その柿其川が白い帯となって落下する牛ケ滝 は落差約25m。滝壺の大きさとのアンバランスが何 となくユーモラスに映る。 かき ぞれ は し あ てら (下)南木曽町からさらに上流の大桑村で支流の阿寺川 に入る。一帯は木曽桧やサワラなど 木曽五木 が生い茂る阿寺風致探勝林で、 渓流と樹木のハー モニーがすばらしい。緑が目に染み入るようだ。 また、 エメラルドグリーンに輝く流れの美しさは例えようが ない。蝉時雨の中で巨大な花崗岩の上に佇み、 し ばしせせらぎに耳を傾けた。 12 Kawasaki News 163 2011/7 13 新製品・新技術 既設の旋盤やマシニングセンタなどの油圧ポンプを制御する、 「カワサキ省エネインバータシステム(KISS)」を開発 旋盤などは補助動作用に 油圧ポンプを使用 旋盤は、 機械加工で最もよく使われて いる工作機械である。 部品などの被切削物(ワーク) をチャッ クと呼ぶ部分に固定してチャックを回転 させ、 回転するワークにバイト (金属用刃 物) を当てて切削加工を行なう。 大型の旋盤 ともいえるのがマシニ ングセンタで、 旋盤がワークを回転させて 切削するるのに対し、 マシニングセンタは 刃物を回転させ、 テーブルに固定したワー クを切削加工する。 また、 工具の自動交 換機能を有し、 コンピュータ数値制御 (NC) の指令で自動的にさまざまな切削 旋盤のチャック。油圧の力で 3本爪 が被切 削物(ワーク) をつかんで固定する。 加工を行なえるのが旋盤とは異なる点だ。 旋盤にもコンピュータ制御によるNC旋 盤がある。 こうした工作機械は主動力は電動だ が、 補助動作用に油圧ポンプを使うケー スが多い。例えば、旋盤では、 チャックに よるワークの固定だ。チャックは 3本爪 の万力 のようなもので、 3本爪がワーク をしっかりつかんで固定する。 このチャッ クを作動させるのが油圧である。 大きな油圧パワーが不要な時にも 全力運転 ところで、 3本爪の閉開 (ワークをつかむ、 放す)時には大きな油圧パワーが必要 だが、切削加工を行なっている間や、切 削加工が終わってワークやバイトを交換 する間 (待機時間) などには同等のパワー は必要ない。ただし、 バイトの交換が済 んだ後、 次のワークを固定する指令に即 応できるように、 ある一定のパワー (保持力) を維持しておく必要はある (例えば、 テレ ビなどの待機電力のようなもの)。 ところが旋盤の中には、 状況に関わら ず油圧ポンプが常に最大限の油圧パワー を生み出すようになっているものもある。 そのため、 不要な油圧パワー (圧力を持っ た油)は、 リリーフ弁というバルブを通し て油タンクに戻していた。 これは無駄なことである。 状況に応じて 油圧ポンプの運転をコントロール 川崎重工が開発した、 各種の工作機 械や工場設備向け油圧ポンプ専用のイ ンバータシステム 「カワサキ省エネインバー タシステム (KISS)」は、 この無駄をなく す省エネルギーシステムである。 その仕組みは、油圧ポンプが吐き出 す圧力から、 油圧系統が圧力保持 (待機) 状態であることをセンサが瞬時に判断し、 油圧ポンプ駆動用モータの回転数を下 げるというもの。つまりこれまでは、 状況に おかまいなく常にフル運転だったのを、 必要な油圧力をチェックしながら無駄の ない運転をするようにしたのである。 「KISS」は、 既設の工作機械側の改 造はせず、省エネルギー装置の追加の みで効果が出るものという視点で開発し たので、取り付けが非常に簡単なのが 大きな特長のひとつ。既設の設備に圧 力センサとインバータ収納盤を取り付け るだけでOKだ。調整作業の簡素化も 開発条件のひとつで、導入時の調整は 工作機械などの油圧ポンプ専用の「カワサキ省エネインバータシステム (K I SS) 」。 川崎重工独自のオートチューニング機能 により、 およそ10〜20分という驚くほど短 時間でのセッティングが可能である。 また、 オプション機能の商用バックアッ プ回路により、 「KISS」の万一の異常時 には商用電源運転に切り替えるので短 時間での復旧が可能だ。スイッチ操作 のみで素早く対応でき、生産ラインへの 影響を最小限に抑えられる。 50%を超す省エネルギー効果、 高い副次効果も ものづくりの現場では近年、 製造拠点 における電力節約 (ひいてはCO2の削減) が重要な課題になっているが、 「KISS」 の 油圧ポンプに対する省エネルギー 効果 を見てみよう。 例えば、 NC旋盤では1台で年間約 2, 170kWhの電力を節約(待機状態の 消費電力省エネ効果約55%) し、 CO2 に換算すると年間約1. 2t削減できたと いう実績がある。また、 マシニングセンタ では同様に1台で年間約2, 060kWhの 電力を節約(待機状態の消費電力省 エネ効果約50%) し、 同じくCO2を年間 約1. 14 t削減できた。大手の機械加工 企業では1工場で数百台の工作機械を 保有するケースもあり、 「KISS」の導入 によって大きな省エネルギー効果を上げ ることが可能である。 省エネルギー効果だけではない。 「KISS」は、待機時間に油圧ポンプ の回転数を下げるので、運転騒音も低 下する。騒音対策のための工事をする ことなく職場環境を改善することができ るのである。 状況に関わらず油圧ポンプがフル運 転をしている時は、 余分な油圧パワー (圧 力を持った油) はバルブを通して油タン クに戻していたが、狭いバルブを圧力を 持った油が通るので、油が摩擦熱を帯 びる。 この熱が伝わって工作機械そのも のの温度が上昇し、 加工精度に影響す るケースもあった。 「KISS」では、 バルブ を通る高圧な油の量が減るので、 そのた めの温度上昇がほとんどない。 「KISS」 を導入したあるゴム製品メー カー (ゴム成形機に設置)からは、温度 上昇が抑制された結果、 製品の加工精 度が上がり 「想定外の高い副次効果が 生まれた」 という声が寄せられた。ちな みに、 同メーカーのゴム成形機の待機時 間の省エネルギー効果は約60%に上っ ているという。 ● 川崎重工では、圧力保持(待機)時 間の長い旋盤やマシニングセンタが稼 働している、 あるいは保持動作のためだ けに油圧を使用しているなどの生産ライ ンを主要ターゲットに、 環境性能にも優れ た省エネルギーシステムとして「KISS」 の市場展開を本格化させる方針である。 なお、川崎重工ではこれより先、油圧 駆動システムの省エネルギー効果を高 める電油ハイブリッドシステム「カワサキ エコサーボ」 を開発しており、 「KISS」は その姉妹商品として開発したものである。 必要な動力に応じて、油圧ポンプをダイレクト に回転数制御する電油ハイブリッドシステム「カ ワサキ エコサーボ」。 ある自動車メーカーの工場に納入された「K I SS」 のインバータ収納盤。 マシニングセンタに設置された「K I SS」。油圧が 大小2系統あるため、 油圧ポンプの容量に応じて 2種の「K I SS」が使われている (マシン前面中央。 インバータ収納盤の青ランプは省エネ運転中の シグナル)。 (川崎重工・西神工場) 旋盤への設置例(川崎重工・西神戸工場)。既 存の設備に圧力センサとインバータ収納盤を取 り付けるだけで簡単に設置できるのが「K I SS」の 大きな特長のひとつである。 14 Kawasaki News 163 2011/7 15 韓国向け蒸気タービン発電設備を出荷 川崎重工は、 韓国の現代エナジー社(韓国・ 麗水市)向けに、 発電容量2万4, 200kWの蒸 気タービン発電設備2基を神戸工場から出荷 した。 出荷した設備は、 2009年に韓国の現代建 設から受注したもので、現代建設が麗水市の 石油化学産業団地に建設中のコージェネレーショ ンプラントに設置される。 このコージェネレーショ ンプラントは、石炭焚きボイラと蒸気タービン発 電設備で構成され、発生する電力と蒸気を石 油化学産業団地に供給する。 本設備は、 タービン排気を蒸気として利用す る背圧式と、 タービンの中段落から蒸気を取り 出す抽気システムを組み合わせた仕様になっ ており、 多様な条件の蒸気を石油化学産業団 地に供給できる。 運転開始は2012年2月の予定。 今回の出荷により、 川崎重工の韓国向け発 電用蒸気タービンの納入実績は合計40基に、 また、 全世界総計では345基となった。 名古屋第一工場と明石工場に 太陽光発電設備を導入 川崎重工は、 航空機部品を製造している名 古屋第一工場(愛知県弥富市) と、二輪車や ガスタービン発電設備などを製造している明石 工場(兵庫県明石市)で、工場の環境負荷を 低減するため太陽光発電設備を導入した。 名古屋第一工場に導入したのは、 出力750 kWの太陽光発電設備で、 2010年3月に完成 した南工場の屋上に設置し、 名古屋第一工場 全体の電力消費量の約5%をまかなう。明石 工場は同100kWの設備で、発電した電力は すべて同工場で使用する。両工場を合わせた 名古屋第一工場 明石工場 CO2削減効果は年間約400 tを見込んでいる。 進協議会の新エネルギー等事業者支援対策 事業補助金を活用して導入したものである。 なお、本設備は、 ( 社)新エネルギー導入促 「川崎式BK117 C−2型 ドクターヘリ」を2社に相次いで納入 川崎重工は、 最新式の「川崎式BK117 C −2型ヘリコプター」を朝日航洋(株) (本社:東 京都豊島区) と、 セントラルヘリコプターサービ ス (株) ( 本社:愛知県豊山郡) に相次いで納 入した。いずれも救急救命用のドクターヘリとし て運用される。 「川崎式BK117ヘリコプター」は、 機体後部 に大きな観音開きドアを備え、 患者の搬出入が 容易なことをはじめ、 機内での医療行為がしや すい広いキャビンスペース、 コンパクトなボディと 機動性のよさなどが高く評価され、 救急医療専 用機として全世界で使用されている。 納入した2機とも主な装備として自動操縦装 置と、 EMS (Eme r gency Med i c a l Se rv i c e) キットなどを装備している。 EMSキットはドクター ヘリとして救急医療サービスを行なうための装 備で、主として医療専用床、担架、医療席、看 護師席、 付添人席、 側壁医療機材ラック、 天井 および側方レール、前方医療用キャビネット、照 明灯および医療機材用電源ユニットなどで構 成されている。 (「川崎式BK117ヘリコプター」 の最新モデルである 「C−2型」 については、 「現 場を訪ねて」での紹介も合わせてご覧ください) 西神戸工場の新工場棟で建設機械用油圧ポンプの本格生産を開始 川崎重工は、油圧機器の生産拠点である 西神戸工場(神戸市西区) の新工場棟で、 建 設機械用油圧ポンプの本格生産を開始した。 新工場棟は、世界的な建設機械用油圧機 器の需要増を受けて建設を進め、 2008年12月 に工場建屋が完成したが、世界経済の景気 後退を受けて本格稼働を見合わせていた。 し かし、 昨年来の中国での需要急増に応えるため、 新たに加工機械や組立設備などを導入し、 油 圧ポンプの増産体制を整備した。 新工場棟には、 油圧ポンプの部品加工や組 アブダビ首長国の下水道工事向けシールド掘進機3基を受注 川崎重工は、 アラブ首長国連邦アブダビ首 長国の下水道工事向けシールド掘進機3基を Samsung C&T Co rpo ra t i on (韓国) から 受注した。中東地域では初めての受注である。 受注したのは泥土圧式シールド掘進機(掘 削径5. 22m)で、現在、 アブダビ下水サービス 公社(ADSSC)が進めているSTEPプロジェ クト (全長約42km) のうち、 Samsung C&T Co rpra t i onが受注したアブダビ都心部からム サファ工業地域に至る工区(全長約16. 2km) を掘削する。 泥土圧式シールド掘進機は、 軟弱土層の掘 進に用いられるシールド掘進機の技術と、 岩盤 や礫層などの掘削に用いられるTBM(トンネル ボーリングマシン) の技術を融合した複合地質 対応型の掘進機である。今回は、 1基で約5km の長距離トンネルを施工するため、 耐久性と高 速施工を重視した仕様になっている。 3基のシールド掘進機は2011年12月から 2012年3月にかけて順次納入し、 現地の下水 道建設工事は2014年中に完成の予定。 「舶用ハイブリッド給電システム」の実証実験を開始 川崎重工と日本郵船(株)、 (株) MTI、 一般 財団法人日本海事協会は2011年6月、太陽 光エネルギーを動力源の一部とする 世界初 の太陽光エネルギー船 である自動車運搬船「ア ウリガ・リーダー」 (総トン数: 6万213 t、 日本郵船 が運航) に、 共同で開発中の「舶用ハイブリッド 給電システム」を三菱重工業(株)船舶・海洋 事業本部横浜工場で搭載し、実証実験を開 始した。 本船は2008年12月に竣工後、約2年間に わたり太陽光パネルの発電状況や耐久性を検 証してきた。その結果、太陽光パネルによる発 日本郵船とMTIはCO2排出量の削減に向 けて、 太陽光など変動がある新エネルギーを導 入した場合の船内への電力の安定供給に関 する技術の確立、川崎重工は自社開発の大 型ニッケル水素電池「ギガセル®」 を利用した「舶 電は、 わずかな天候の変化が発電量に大きな 影響を与えるため、 安定的な電力供給が難しく、 将来、 太陽光発電を大型化してその依存度を 上げた場合、発電量の変動により安定的な電 力供給が難かしいことが判明した。 用ハイブリッド給電システム」の開発、 日本海事 協会は「業界要望による共同研究」スキームに よる支援の一貫として、 2009年度から 「ハイブリッ ド給電システム」の研究をそれぞれ行なってきた。 本船の太陽光発電の発電量変動を、 この「ハ イブリッド給電システム」による充電・放電で平 滑化すれば、 ディーゼル発電機の出力変動を 必要最小限にして発電状態を安定させること が可能になる。 「アウリガ・リーダー」は過酷な海上環境の中 で、太陽光発電と 「ハイブリッド給電システム」 による安定した電力供給を実現するための実 証実験を重ね、 その効果を検証していく。その 結果をもとに、 日本郵船とMTIは船舶での太 陽光発電の一層の大規模化を、川崎重工は 「舶用ハイブリッド給電システム」の商品化を目 指していく。 み立て、 運転、 塗装の設備を新たに導入すると ともに、 既存の工場棟で生産している油圧ポン プの生産ラインの一部も移設した。これにより、 西神戸工場の油圧ポンプの生産能力は年産 11万台から13万台へとおよそ20%増強された。 建設機械市場は、 中国のインフラ投資や都 市開発、 資源開発などに伴う急激な需要増加 に加え、南米などの資源国でも資源価格の高 騰を受けて需要が増えており、世界的に拡大 基調にある。 中国の合弁会社でセメント製造設備の新工場を建設 川崎重工は、 中国のセメント業界大手で世 界第4位の海螺水泥(CONCHセメント) と共 同運営している安徽海螺川崎装備製造有限 公司(CKE) において、 セメント製造設備の新 工場を建設する。 新工場は、 現在、 CONCHセメントが自社工 場向けに外部から調達している鋳造品などの 消耗部品や、 セメントプラントの主要機器を内 製化するためで、 安徽省蕪湖市にある既設の 工場敷地内に鋳造工場2棟(建屋面積:計 6万5, 000m2) と、製缶工場1棟(建屋面積: 1万9, 000m2) を建設する。鋳造工場では、 主 に破砕機ハンマーやエアクエンチングクーラ (AQC) グレート、 チューブミルライナなどを製造 し、 製缶工場では、 主にローラプレス、 AQC、 キ ルン、 チューブミルなどを製造する計画である。 中国では、 好調な国内需要を背景に今後も セメントの生産量が増加する見通しだ。 この状 況を踏まえ、 中国のセメント業界では最新鋭の 大規模セメント工場を建設する動きが出ており、 セメントプラント主要機器や鋳造品などの消耗 部品の需要増が見込まれている。川崎重工は、 CKEのセメントプラント主要機器の一貫製造 体制を活用することで、 セメントプラント事業に おける製品競争力を高めるとともに、 さらなる合 弁事業拡大と収益基盤強化により、 世界有数 のセメントプラント総合サプライヤーとしての地 位確立を目指す考えである。 東日本大震災の被災者・被災地を支援 川崎重工グループは、東日本大震災による 被災者・被災地へ義援金1億円を支援すると ともに、復興に役立てていただくための支援 物資として川崎重工製モーターサイクル「D− TRACKER X」 と、 「D−TRACKER 125」、 KCM製「ホイールローダ」、 アーステクニカ製 「破砕機」 (支援物資の総額1億円相当)、総 額にして2億円相当を支援することを3月14日 に決定しました。 モーターサイクルは、支援物資の運搬や道 路状況が劣悪な地域での車の先導、緊急的 な被災者の搬送などに活用されています。 また、 ホイールローダは、 がれき処理や土地をならす 作業などに活躍しており、 それぞれほぼ毎日稼 働しています。 川崎重工の大型ニッケル水素電池「ギガセル」。 16 Kawasaki News 163 2011/7 川崎重工の最新情報はホームページでもご覧いただけます。 http://www.khi.co.jp 17 金山平三の世界 《晴れ》 1956-60(昭和31-35)年 相 良 周 作 ︶ ︵ 兵 庫 県 立 美 術 館 学 芸 員 い 詩 は 金 る る 情 ︑ 山 筆 ︒ 豊 さ 独 致 ざ か 波 自 に に の の よ 眼 音 広 っ て 前 や く 表 の 温 深 現 世 度 い さ 界 ︑ 視 れ を 潮 野 て で い 五 の 香 感 り と る に を ら ︒ に 響 も え も ら か き 感 渡 じ れ か ら さ た わ せ せ 風 ら て ︑ 景 ず 53.1×72.5cm て う 水 ね 平 り に ︑ 賦ふ 潮 彩さい の 違 さ い れ に た よ ︑ ほ る と 色 ん の ど 変 抽 化 象 が 的 ︑ 画 と 面 も に 言 対 え し の 描 写 で は ︑ 波 打 ち 際 の 白 波 ︑ 次 々 と 寄 せ る 波 の な 色 彩 の 表 現 で あ ろ う ︒ 画 面 の 半 分 を 占 め る 海 そ の 光 源 を 受 け た 海 面 や 浜 辺 の 変 化 す る ︑ 微 妙 油彩・布 光 や 雲 を 含 む ︑ 光 源 と し て の 空 の 描 写 以 上 に ︑ し か し こ こ で 画 家 の 心 を と ら え て い る の は ︑ 日 た 空 間 で あ る よ う す が う か が え る ︒ 川崎重工業株式会社蔵 題 に ふ さ わ し く ︑ そ こ が 強 い 日 射 し に 満 た さ れ 力 強 い 筆 致 で 的 確 に 表 現 さ れ ︑ ﹁ 晴 れ ﹂ と い う 画 描 か れ た 家 々 の 傾 斜 の 浅 い 屋 根 は ︑ 簡 潔 で か つ ら 見 下 ろ し て い る こ と が わ か る ︒ 画 面 下 ︑ 手 前 に 部 に 押 し や ら れ て お り ︑ 画 家 が か な り の 高 台 か こ の 作 品 の 場 合 ︑ 水 平 線 が 画 面 の ほ と ん ど 上 を 探 る こ と が 挙 げ ら れ よ う ︒ よ う に 認 識 し ︑ そ し て ど の よ う に 表 現 し た の か ひ と つ に ︑ 画 家 が そ の 風 景 を ど の よ う に 見 ︑ ど の 金 山 に 限 ら ず ︑ 風 景 画 を 鑑 賞 す る 醍 醐 味 の 金山平三と川崎重工 金山平三画伯は、1883年(明治16年)神戸に生まれ、1964年(昭和39年)80歳で生涯を終えました。 1909年(明治42年)東京美術学校(現在の東京芸術大学) を首席で卒業した後、 欧州各地で制作を重ね、 1916年(大正5年) には、 第10回文展に出品した作品が特選第二席になりました。生涯にわたって旺盛な創 作活動を続け、 自然風土を相手に多くの名画を残し、 その業績は近代洋画史上に燦然と輝いています。 川崎重工は第11回文展に出品された「造船所」が縁となり、 その後、 交流を深めました。画伯の晩年には、 自選作品138点の永久保管の依頼を受け、 その作品を預かるほどでした。後になり川崎重工は、 一部の作 品を残して、 兵庫県立近代美術館(現・兵庫県立美術館) にすべて寄贈しました。 微光 妙に な反 色応 彩す がる 五海 感や に浜 響辺 くの
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