第1学年 国語科学習指導案 1 単元名 「オツベルと象」を読む ~読みの交流を通して~ ・学習指導要領との関連 C読むこと(1)エ 文章の構成や展開、表現の特徴について、自分の考えを持つこと。 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項イ(ア) 音声の働きや仕組みについて関心を持ち、理解を深めること。 2 単元について 教室の中で、集団で同じ文学作品を読むことの意義やおもしろさの一つは、ひとりで読んだと きには気づかなかったことや、味わえなかった読み方に出会ったり、共有できたりすることにあ るだろう。また、一人ひとりの考えを互いに交流することによって、さらに何かに気づいたり、 発見できるような学習が生まれることが望ましい。多様な読みの可能性を持つ作品を題材にして、 生徒が主体的に読み味わい、さらには個々の読書につながっていくような学習活動を心がけたい。 そのためには、一人ひとりが作品としっかり向き合い、ひとつひとつの言葉の意味や表現の特徴 などを読み取れる力を育てていく必要がある。 「オツベルと象」は、生徒が中学校で初めて出会う文学作品である。しかし、宮沢賢治の詩や 童話は、読み聞かせや小学校の教材などでも取り上げられているので、多くの生徒が賢治の世界 に接した経験を持っていると思われる。しかし、賢治の作品は、何度読んでも不思議なことや疑 問が生じ、様々な読みが出てくる。「オツベルと象」もまた、そうした作品の一つである。言葉巧 みに白象を自分のものにしていくオツベル、オツベルの言葉や心の内を疑うこともなくオツベル の言うがままになる白象、赤い着物の童子、白象の寂しい笑い。そして、オツベルと白象の物語 を語る牛飼いの思い、最後の一行・・・。ストーリーを読み取る学習だけでは読み解くことがで きない様々な問題が浮かび上がってくる。この単元では、今後の三年間の文学を「読むこと」の 始めの学習として、言葉や表現を丁寧に読む経験をさせたいと考える。構成や表現、言葉に着目 して丁寧に読むことを中心に学習を進め、自分の思考の過程がノートに残るように書くことを意 識させたい。また、生徒一人ひとりの読みをグループで交流する場を設定し、その中から多様な 読みを引き出せるような学習を展開していきたい。 3 教科の研究主題と授業との関連 (1)国語科の研究主題 「豊かな表現力を育成する指導はどうあるべきか」 ~互いに学びあう場の工夫~ (2)授業との関連 豊かな表現力育てるためには、書くこと、話すことの力を育てることはもちろんのこと、 それを支える基礎的な語彙力や、話し手の意図を正しく聞き取る力などをしっかりと身につ けさせる必要がある。本校の生徒は、一人ひとりは比較的落ち着いて学習でき、学習意欲も ある。反面、考えや意見を他に向けて発表したり、友達とのコミュニケーションを苦手とす る生徒が増えている傾向が見られる。その実態を踏まえ、この単元では、一人ひとりが読み 取ったことや解決できなかった疑問などを小グループ内で話し合い、それを全体の場でさら に交流し、読み深めていく学習を展開したい。互いの考えを交流する活動を通して、自分の 考えを深められるような学びあいの学習を成立させたい。 4 生徒の実態 授業では、与えられた課題に関して意欲的に取り組もうとする生徒が多い。わからない語句を 自主的に辞書で調べたりするなど、基本的な学習習慣は身についている。しかし、自分の考えを 発表したり、深く思考したりすることに関しては苦手意識を持っている傾向も見られる。1学期 -1- は、授業の中でなるべく声を出して発言すること、ノートに自分の考えをメモすることなどに取 り組ませてきた。 本単元に向けての事前アンケートの結果は、以下のとおりである。 1,宮沢賢治について 知っている 知らない 18人(51%) 17人(49%) 2,知っている作品名など(複数回答) 詩を書く人 雨ニモマケズ(9人) 銀河鉄道の夜(7人) 注文の多い料理店(2人) セロ弾きのゴーシュ(2人) 雪わたり(4人) 山なし(1人) 3,面白いと思った内容や表現は? 「クラムボンは笑ったよ かぷかぷ笑ったよ」 『セロ弾きのゴーシュ』で、たくさん動物が出てくるところ 小学校5年で『雪わたり』を学習しているはずであるが、内容が難しいせいか、あまり印象に残 っていないようである。「かた雪かんこ、しみ雪しんこ」「キック、キック、トントン」などの特 徴的な部分も覚えていない生徒が多かった。また、『雨ニモマケズ』についても同様で、最初の部 分だけは聞いたことがある、という回答がほとんどであった。東日本大震災後、賢治の詩やこと ばに希望やくじけない勇気を与えられたという被災者の方々の声が、多くのメディアで取り上げ られた。特に「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」の詩は、いろいろな場で読まれることが多かった が、そのようなニュースは、当時小学生だった現在の中1にはあまり届いていないようである。 この実態を踏まえ、事前に帯単元でいくつかの童話の読み聞かせをし、既習の学習を思い出すこ とからこの単元の学習を始めることにする。また、表現や言葉からどのように考えたのか、自分 の思考過程がわかるようなノートづくりを意識させ、個人からグループ、さらに全体で交流する 活動をとおして読み深めていく体験をさせたい。 5 単元の目標 (1)作品を意欲的に読み、考えを深めようとしている。 (関心・意欲・態度) (2)作品の構成や展開、表現の特徴をとらえることができる。 (読むこと) (3)擬声語や擬態語などの効果について考えることができる。 (伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項) 6 単元の観点別評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 言語に関する知識・理解・技能 作品について自分なりに感想 語り手と登場人物の関係に注意 擬声語や擬態語などに注意し、そ や疑問を持ち、交流を通して して読み、作品の構成や展開、 の効果を考えながら読んでいる。 考えを深めようとしている。 表現の特徴について考え、理解 している。 -2- 7 単元の指導計画と評価計画(8時間) 時間 学習活動と内容 評価規準【観点】・評価方法( ) 事 帯 ・いくつかの童話の読み聞かせを聞き、既習の学習 前 を振り返る。 一 1 ・単元の学習の見通しを持つ。 ・疑問などをメモし、今後の学 ・『オツベルと象』の読み聞かせを聞く。 習の見通しを持とうとしている。 次 ・おもしろいと思ったところ、疑問に思ったことなど 【関心・意欲・態度】 (ノート・発表) 簡単な印象をメモする。 ・人物の関係や構成の特徴を理 通 ・登場人物と構成を確認する。 解している。【読む】(ノート・発表) 読 2 ・難語句を調べる ・擬声語、擬態語、比喩表現などについて理解する。 ・音読する。(2人で、グループで など、形を変え て読みあう。) 3 ・音読する。(2人で、グループで て読みあう。) ・初発の感想や疑問を書く。 ・感想を交流する。 など、形を変え ・自分の疑問や考えをグループ や全体で交流し、考えを深めよ うとしている。 【関心・意欲・態度】 (ノート・発表) 二 4 ・「第一日曜」を音読する。 ・言葉や表現に注目して、気になることや疑問点につ 次 いて考え、ノートに整理する。(個人) ・考えたことを出し合い、話し合う。 再 (4人グループ→全体) 読 ・擬声語、擬態語、比喩表現な どについて理解し、効果につい て考えている。【言語に関する知識 ・理解・技能】 (ノート・発表) ・オツベルや白象はどんなことを考えているのだ ろうか? ・語り手はオツベルや白象についてどのように考 えているのだろうか? ・自分の疑問や考えをグループ や全体で交流し、考えを深めよ うとしている。 【関心・意欲・態度】 (ノート・発表) ・表現や会話やをもとにして、 それぞれの人物像をとらえてい る。 【読む】(ノート・発表) 5 ・「第二日曜」を音読する。 ・自分の疑問や考えをグループ ・言葉や表現に注目して、気になることや疑問点につ や全体で交流し、考えを深めよ いて考え、ノートに整理する。(個人) うとしている。 【関心・意欲・態度】 ・考えたことを出し合い、話し合う。 (グループ→全体) (ノート・発表) ・表現や会話やをもとにして、 ・オツベルや白象はどんなことを考えているのだ それぞれの人物像をとらえてい ろうか?(会話に注目し、言葉に隠されている問 る。 【読む】 (ノート・発表) 題を考えよう。) ・語り手はオツベルや白象についてどのように考 えているのだろうか? -3- 6 ・「第五日曜」を音読する。 ・言葉や表現に注目して、気になることや疑問点に 7 ついて考え、ノートに整理する。(個人) ・考えたことを出し合い、話し合う。 (4人グループ→全体) ・オツベルや白象はどんなことを考えているのだ ろうか?(白象の手紙・月や赤い着物の童子との 会話などから、オツベルと白象の様子やそれぞれ の問題を考えよう。) ・語り手はオツベルや白象についてどのように考 えているのだろうか?・。 ま 8 ・読みとってきたことをまとめる文章を書く。 と め ・自分の疑問や考えをグループ や全体で交流し、考えを深めよ うとしている。 【関心・意欲・態度】 (ノート・発表) ・表現や会話やをもとにして、 それぞれの人物像をとらえてい る。 【読む】(ノート・発表) ・白象の「寂しい笑い」や語り 手について考え、読み取ったこ とをもとに自分の考えをまとめ ている。【読む】(ノート・発表) 8 本時の指導 (5/8) (1)本時の主題 読みの交流を通して、オツベルと白象の問題や人物像について考えを深める。 (2)本時の目標 ①疑問や課題について話し合い、考えを深めようとしている。【関心・意欲・態度】 ②言葉や表現をもとにして、人物像をとらえることができる。【読む】 (3)本時の観点別評価規準 ①自分の考えを他と交流して、深めようとしている。【関心・意欲・態度】 ②人物の言葉や表現をもとにして考え、オツベルと白象の人物像をとらえている。【読む】 (4)展開 過程 時 学習内容と活動 形態 ○教師の支援 ◆評価規準【観点】(評価方法) 間 導入 5 ・前時までの学習を振り返る。 一斉 ・ 「第一日曜」のオツベルと白象の 人物像 ・牛飼いの語り方 ・学習課題を確認する。 ○前時までのノートで確認する。 オツベルや白象に対する牛飼いの評価について考えよう 展開 20 ・「第二日曜」を音読する。 ・牛飼いの評価を確認する。 一斉 ○牛飼いの評価の部分を提示し、確 認する。 -4- ・オツベルときたらたいしたもんだ。 ・主人が偉いのだ。 ・頭がよくて偉いためだ。 ・象も実際たいしたもんだ。 ・力も二十馬力 ・牙は・・きれいな象牙 ・牛飼いの評価をどう思うか? 個人 (本当に「たいしたもん」なのか) ・気になった表現や疑問点に線を引き、 自分の考えをノートに書く。 注目させたい表現 オツベル ・おい、お前は時計はいらないか ○牛飼いが評価しているオツベルや 白象の様子を叙述から読み取らせる。 ○どんなことがわかるか。 ○オツベルは何をしたいのか。言葉 の裏と表に気づかせる。 ○白象はオツベルのたくらみに気づ かないのか。 ・すまないが税金も高いから ・顔をしかめながら・少しぎょっとして ・またどきっとしたが 白象 ・なかなかいいね・稼ぐのは愉快だねえ ・ああ、せいせいした。 10 10 まと め 5 ・サンタマリア ・4 人グループで話し合う。 ・各自が読み取ったオツベルや白象の 様子から、牛飼いの評価をどう思うか を中心に話し合う。(互いの考えから学 びあう) ・グループごとに話題になったことを 発表する。(互いの考えから学びあう) ・各グループの発表を聞き、気づいた こと考えたことを発表する。 ・今日のまとめを書く。 グル ープ 一斉 ◆話し合いを通して自分の考えを深 めようとしている。【関心・意欲・ 態度】(観察・ノート) ◆牛飼いの評価やオツベルと白象の 人物像を、表現をもとにしてとらえ ている。【読む】(発表・ノート) ○人物像をつかめない生徒への支援 個人 ・オツベルと白象の会話に注目させ る。 (5)板書計画 オツベルと象 宮沢賢治 *オツベルや白象に対する牛飼 いの評価について考えよう ・牛飼いの評価をどう思うか? ・オツベルときたら たいしたもんだ。 ・主人が偉いのだ。 ・頭がよくて偉いためだ。 ・象も実際たいしたもんだ。 ・力も二十馬力 ・牙は・・きれいな象牙 ・気になった表現から考えたこ と 各グループから 全体で -5-
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