ベアリングの基礎知識

ベアリングの基礎知識
参考文献:NTN転がり軸受入門ハンドブック
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転がり軸受けと滑り軸受け
特徴
転がり軸受け(ベアリング)
滑り軸受け(ブシュ)
構造
内輪・外輪の間に玉・コロ存在し
転がり摩擦で荷重を支持
荷重を面で支え、滑り摩擦で荷重
を支持
摩擦係
数
0.001~0.005と少ない
0.1~0.2と大きい
負荷能
力
重荷重・衝撃荷重は劣る
重荷重・衝撃荷重に適す
潤滑
油・又はグリスの潤滑油必要
無給油タイプもある
交換性
交換容易
交換時軸の補修が必要となること
が多い
内部隙
間
負の隙間で剛性が上がる
隙間が必要
2
1
転がり軸受の構造
転動体の種類:
ボール・コロ・ ニードル
外輪:アウターレース
内輪:インナーレース
保持器:リテーナ
3
転がり軸受けの種類
ラジアル玉軸受
深溝玉軸受
アンギュラ玉軸受
自動調芯
転がりユニット
4点接触玉軸受
スラスト玉軸受
単列平面スラスト玉軸受
複列スラストアンギュラ玉軸受
高速用組合アンギュラ玉軸受
玉軸受
ラジアルころ軸受
ころ軸受
スラストころ軸受
特殊用途
円筒コロ軸受
針状コロ軸受
円すいころ軸受
自動調芯ころ軸受
スラスト円筒ころ軸受
スラスト針状ころ軸受
スラスト円すいころ軸受
スラスト自動調芯ころ軸受
転動体の形状による分類
・玉(点接触)
・ころ(線接触)
荷重の方向による分類
・ラジアル荷重
・スラスト荷重
カムフォロア
リニアガイド
ストロークボール
4
2
体表的な転がり軸受の種類
深溝玉軸受
アンギュラ玉軸受
自動調芯玉軸受
円すいころ軸受
複列円筒ころ軸受
スラスト玉軸受
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玉軸受のできるまで
参考文献NTNカタログ6
3
玉軸受とコロ軸受の比較
玉軸受
(ボールベアリング)
負荷荷重
(許容荷重)
コロ軸受
(ローラベアリング)
軌道面に点接触のため負荷
能力は小さい
軌道面に線接触してるので
負荷能力が高い
転がり抵抗が少ない
高速回転に適する
玉軸受より抵抗は大きい
接触面形状
特性
7
荷重方向と呼称
ラジアル軸受は、軸方向の
荷重を、スラスト荷重でなく
アキシャル荷重と言います
Axial:軸上の
8
4
深溝玉軸受
転がり軸受の中で、最も一般的な形式です。
玉の半径より少し大きい円弧の溝が軌道輪に設けられているので、
ラジアル荷重とアキシャル荷重の両方向の荷重を負荷できる。
シールの無い開放型と内部にグリスが封入された鋼板のシールド形・
ゴム製のシール形の3種類があります。
開放形
シール形
シールド形
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玉軸受のシールの特徴
シールド形
種
シ ー ル 形
非接触式
非接触式
接触式
低トルク形
金属シール板で
内輪に非接触
ゴムシール板で
内輪に非接触
小
小
大
中
不適
不適
良好
良好
構造
類
シールド・シール
の材質と形状
摩擦トルク
性
能
記号
防塵・防水性
高速性
(NTN)
(NSK)
シールの色
開放形と同等
ZZ
ZZ
開放型と同等
ゴムール板で
内輪が接触
シール耐熱による
ゴムシール板で
内輪が軽接触
シール耐熱による
LLB
VV
LLU
DDU
LLH
DDW
黒
茶
青
10
5
シール構造詳細1
非接触シールと接触シールの違いを理解しよう
シールド(ZZ)
2ケ所の絞りすきま
非接触シール
2ケ所の絞りすきま
空間(グリスだまり)
接触型シール
2ケ所の絞りすきま
1ヶ所の接触
空間(グリスだまり)
空間(グリスだまり)
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シール記号詳細2
非接触シール
2 ケ所の絞りすきま
空間( グリスだまり)
接触型シール
2 ケ所の絞りすきま
1 ヶ所の接触
空間( グリスだまり)
12
6
軸受の内部隙間
軸受は、運転状態のスキマにより寿命・発熱・振動・
精度が決まってくる。
そのため軸受のスキマを量が違う物を選択jできる。
例)
・高速機は発熱で熱膨張するのでスキマを大きく
・計測器は、ガタを少なくするためにスキマの小さく
・シメシロが大きい時はスキマの大きいタイプを使用し
組立後のスキマを確保
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アンギュラ軸受の接触角
接触角が大きいほど、スラスト方向の荷重を
支えることが出来る
通常一個で使用しないで2個セットで使用する
接触角記号
C
A
B
接触角
15°
30°
40°
標準はAで軸受の軸受記号の表記は省略される
14
7
アンギュラの組合せ
背面合わせ
DB
正面合わせ
DF
並列合わせ
DT
作用点
L(作用点)が長いので
モーメント荷重の負荷
能力が大きい傾きの許
容差は小
(芯出精度が必要)
許容傾き角が背面
合わせより大きい
芯ずれの許容が大
一方向のスラスト方向の
荷重を多く受けられる
参考:double back
double face
double twin
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コロ軸受の種類
1.転動体がコロ(線接触)のため負荷能力が高い
2.軸方向の伸びを吸収できる(取付誤差・熱膨張)
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8
スラストベアリング
1.スラストベアリングには向きがある。
外径・内径寸法が違う。固定側を確認して組立(赤線部)
2.基本的には予圧を掛けて使用(スミアリング防止)します。
3.スラストベアリング単独では使用することは稀で、通常
ラジアルベアリングと組合わせて使用する
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ニードルベアリング
コロの直径が小さく、長さが直径に比べて長い針状のころ
(直径が5mm以下で長さが直径の3~10倍)を用いた軸受
ソリッド形
シェル形
1.コロが円周上に細かく配置されているので負荷能力が高い
2.シェル形は外輪が薄板鋼板ゆえ、ベアリング精度がハウジング穴の
精度で決まる
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9
カムフォロア①
カムフォローの給油には
片側に埋め栓
B
A
片側にグリスニップル
を取り付ける
埋め栓
取付誤差を吸収するため
外径に500Rがついているのが標準
グリスニップル
グリスニップルの取付けを
A側にするかB側にするかは
給脂しやすい方向で決める
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カムフォロア②
油穴
給油穴はメーカー名の記号方向にあるので一般
に荷重方向と反対側に油孔を向けた方がよい
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ベアリングユニット
ピロー形
角フランジ形
ひしフランジ形
丸フランジ形
1.軸受と歯車箱(鋳鉄性)が一体となっている
2.調芯性がある(1~3°)
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熱膨張による伸び①
一般に軸は、2個の軸受で支えられているが、取付誤差や熱膨張を
吸収するためと一方を自由側、他方を固定側として設計されている。
逃げの吸収場所は、外輪・内輪・軸受の3種類
外輪で逃げ
内輪で逃げ
軸受゙で逃げ
駆動側が固定側、操作側が自由側とすることが多い。
22
11
熱膨張対策②
ベアリングユニットの熱膨張対策
固定側
自由側
止めネジで固定
キー溝に特殊ネジを挿入し
軸方向は自由に移動可能
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ベアリングの記号①
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
基本記号
形式記号
直径系列
内径番号
接触角記号
補助記号
保持器記号
組合わせ記号
内部すきま記号
等級記号
24
12
ベアリングの記号②
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
形式記号
軸受形式
記号
接触角
1、2
自動調芯軸受
A
30
3
円すいころ軸受
B
40
5
スラスト玉軸受
C
15
6
深溝玉軸受
B
10~17
7
アンギュラ玉軸受
C
17~24
8
スラストころ軸受
D
24~32
N、NU
NA、NF
針状ころ軸受
軸受形式
アンギュラ玉軸受
円すいころ軸受
赤字は呼び番号に表示しない
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ベアリング記号③
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
内径 外径
負荷能力が高くなる
幅 形式
ベアリングは内径基準
に幅と外径が変わる
(転動体の大きさ変わる)
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13
ベアリングの記号④
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
保持器記号
L1
黄銅製保持器
DB
背面合わせ
F1
炭素鋼保持器
DF
正面合わせ
G1
黄銅製保持器
DT
並列組合わせ
G2
ピン形保持器
G
フラッシュグラウンド
J
鋼製保持器
+○○
間座寸法
T1
フェノール樹脂
T2
合成樹脂
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ベアリング記号⑤
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
C2
普通すきまより小
C3
普通すきまより大
C4
C3すきまより大
GL
軽予圧
JIS
0級
6級
5級
4級
2級
GN
普通予圧
ドイツ規格
P0
P6
P5
P4
P2
GM
中予圧
GH
重予圧
高精度
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ベアリング記号⑥
7 3 05 B L1 BF+10 C3 P5
内径番号
内径寸法
00
10
01
12
02
15
03
17
04
20
96
480
/500
500
備
考
04~96までは内径記号
を5倍した値が内径寸法
04×5=20mm
500以上は内径寸法の
前に/(スラッシュ)を付ける
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高精度ベアリング
高精度の軸受には振れの頂点の印がある
組立てる軸の振れ方向を合わせると振れを最小に出来る
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15
シメシロの考え方
軸受の嵌合は、回転するのが内輪か外輪かで決まります
内輪回転の場合
・内輪はシメシロ
・外輪はスキマばめ
外輪回転の場合
・内輪はスキマばめ
・外輪はシメシロ
内輪・外輪にシメシロを付けるのはクリープ事故を防ぐためです
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クリープとは
回転荷重軸受でしばしば起きる現象であるクリープ(creep)は、
回転方向と相対的に逆方向にゆっくり滑り出す現象です。
その結果、軸・軸受の摩耗や発熱を引き起こす。
この現象を防ぐにはシメシロを与えるしかない
荷重
スキマ
軸
スキマがあると、軸の外周長さより、
軸受内周の長さが長い。
回転する毎に内輪の回転が遅れる
この現象をクリープという
32
16
歯車の組立
軸受に無理な力が掛かる
歯車
外輪回転である歯車に軸受を組立てる場合、シメシロを
考えれば、左図と右図のどちらが良いかわかります。
外輪回転は、外輪にシメシロが付いているので右図が正解
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予圧の目的
滑り軸受は必ず軸受にスキマが必要ですが、転がり軸受は
スキマを負の状態にして使用することが出来ます。
これを予圧と言い、アンギュラ軸受や円すいころ軸受等の
2個1組で使う軸受で使用します。
工作機械の主軸等に使用されています。
次のような効果が得られます。
・軸受剛性が高くなる
・高速回転に適する
・回転精度及び位置決め精度が向上する
・振動及び騒音が抑制される
・転動体の滑りに起因するスミアリングを軽減する
・外部振動で発生するフレッティングを防止する
過大の予圧をかけると、軸受が発熱・破損します
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17
予圧の方式
定位置予圧
シム
ナットで締付け
シムで調整
調整で位置決め
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予圧の方式
間座締め切り
内輪用間座と外輪用間座の寸法調
整し内外輪共締切りで予圧設定
組立は容易だがシメシロも管理する
必要がある
定圧予圧
バネの圧力で予圧設定
36
18
円すいころ軸受の予圧
円すいころ軸受の予圧は、軸受外周の回転トルクで計測します。
この回転トルクは、ころ端面と内輪大つばとの間の滑り摩擦抵抗
によって決まります。その他の原因による起動トルクは無視できる
滑り摩擦
転がり摩擦
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アンギュラの予圧
軽予圧
δ
:GL
普通予圧:GN
中予圧
:GM
重予圧
:GH
δが調整加工されているので
組み合わせ方向を変えてはいけない
組合せ方向の印
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軸と軸受の固定
軸受を正しく取り付けるには、軸の肩と軸受の面を接触させる必要がある
軸受の面取りより、軸のRを小さくする必要がある。(A図)
軸受の面取りより、軸のRが大きくスキマが出来た状態(B図)
強度上軸のRを小さく出来ない時は、間座を入れる(C図)
B図
A図
C図
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潤滑
油潤滑とグリース潤滑の比較
項目
油潤滑
グリース潤滑
回転速度
グリース潤滑に比べ高い
油潤滑の60~80%
冷却作用
油循環で効果大
冷却作用なし
ハウジング構造
やや複雑。油漏れ処置必要
簡略化できる
潤滑剤の取替え 比較的簡単
やや複雑
潤滑剤の流動性 非常に良い
劣る
40
20
油潤滑
1.潤滑油は、一般に鉱油が多く用いられています。
2.軸受温度が、100℃以上の高温になると合成油が使用されます。
3.潤滑油の粘度の選び方
高粘度(ねばい)
低粘度(さらさら)
低速度
高速度
高荷重
低荷重
4.軸受の温度上昇
軸受温度上昇は時間経過と共に上昇し、
最高温度に達する。しばらくすると温度が
少し下がり以降安定する(右図)
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グリス
軸受のグリス充填量は,軸受の空間容積の30~40%とする。
回転速度の高い場合や温度上昇を低く抑えたいときには少なめ。
グリ-ス充填量が多過ぎると攪拌熱で温度上昇が大きくなり,
グリ-スの軟化による漏れ,又は酸化などの変質によって
グリ-スの潤滑性能の低下を招く
リチウムグリース
カルシウムグリース
最も汎用性が高い
万能型グリース
-30~130℃
耐水性に優れている 高圧・高熱に適す
-20~70℃
複合グリース
-20~150℃
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特殊グリス
熱固化型グリース(ポリリューブ用潤滑剤)NTN
LP03
熱固化型グリースは常温ではグリ-ス状であるが一度加熱し冷却する
(焼成処理と呼ぶ)と,多量の潤滑剤が保持されたまま固化する。その
ため,軸受に強い振動や大きな遠心力が作用する場合でも潤滑剤が漏れ
にくく,潤滑剤の漏れ防止および長寿命に貢献する(高温に弱い)
NSハイリューブ:NSK
NS7
高温用・低摩擦・グリス漏れが少ない
NOKクリューバ(NBU15)工作機械の主軸に使用
発熱・低摩擦・耐久性大
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軸受の材料
化学成分(%)
JIS記号
C
Si
Mn
Cr
Mo
SUJ2
(一般用)
0.95~
1.10
0.15~
0.35
0.50>
0.90~
1.20
-
SUJ5
(大型用)
0.95~
1.15
0.40~
0.70
0.90~
1.15
0.90~
1.20
0.10~
0.25
硬度:HRC 58~65
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軸受の焼きばめ温度
軸受の焼きばめ温度はなぜ120℃以上上げてはいけないか?
軸受鋼の熱処理は下図のごとく、焼入れ後焼き戻しを行う。
この焼き戻し温度以上に、焼きばめ温度を上げると
1.軸受の硬度が下がる
2.組織が変わる
軸受鋼の熱処理
焼入れ830~850℃
Ac1
温
度
焼戻し150~200℃
時間
45
ベアリングの寿命
基本定格寿命:
軸受けを同一条件で回転させた時、90%が疲れによる剥離
(フレーキング)が生じることなく回転できる回転数
基本動定格荷重
100万回転の基本定格寿命を与える荷重
L:基本定格寿命
基本定格寿命
C
L=
P
p
C:基本動定格荷重
P:動等価荷重
P:玉軸受け 3
コロ軸受け 10/3
46
23